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2017年11月09日

2017年下院総選挙ČSSD(十一月六日)



 今回の選挙で圧勝したANOに対して、惨敗したのが社会民主党である。前回の選挙で勝利し第一党にはなったものの、予想されたほどの勝利でなかったために、反ソボトカ一派の党内クーデターの試みを許してしまったのが、ケチのつけ始めだった。そこで、中途半端な対応に終始してしまったことが、その後の支持率の低下を招いたと言ってもいい。ここで、反対派も含めて党内融和、党内合意を達成するか、不祥事を起こした反対派の知事を除籍処分にするかしていれば、多少はましだったのではないかと思う。
 いや、今年の入ってからの社会民主党とソボトカ首相の迷走がなければ、ここまでひどいことにはならなかったはずである。この党、共産党と並んでコアな支持層を誇っているのだから。その何があっても社会民主党を支持するという層が、大体得票率で言うと6〜7パーセントだと言われるから、今回の選挙では、そこからほとんど上積みできなかったということになる。これまでの選挙では、社会民主党を支持してきた層の支持が向かった先が、ANOだったというのが今回の結果である。
 社会民主党が負けたのは、もう自滅としか言いようがない。選挙の行われる今年に入って、ANOが支持を伸ばし、社会民主党が支持を減らす世論調査の結果が相次いだことに焦ったソボトカ首相をはじめとする指導部が、無理やりバビシュ財務大臣を排斥するために動いたのが一番の失敗だった。バビシュ氏を政権から排除することで、社会民主党への支持が上昇すると考えていたのだとしたらお粗末だとしか言えない。

 チェコの有権者たちが、既存政党の政治家たちからあれだけ批判されるようなことをしたバビシュ氏を支持し続けるのには、理由があるはずである。それは、恐らく政治家たちが執拗に非難するバビシュ氏の不祥事が、基本的に自分の運営する企業の資金繰りに関する物であって、最終的にはそれがバビシュ氏の資産を増やすことになるにしても、企業で使うための資金を多少犯罪的な手法で手に入れたというものであるのに対して、既存政党の政治家の不祥事は金を自らの懐に入れるためのものであるという点である。言い換えれば、バビシュ氏の不祥事は経済活動を促進する可能性があるのに対して、政治家たちの不祥事は何の役にも立っていない。だから、いかに政治家たちが脱税だとか、補助金の不正な獲得だとか批判しても、有権者はお前らが言うなという反応になるのである。
 既存の政党の側が市民民主党がプラハでやったような党内の腐敗政治家の排除をやって見せていれば多少は違ったのだろうが、政治家たちが不祥事に於いてかばい合うのはどこの国でも変わらないのである。賄賂としてもらった現金を所持していたことで現行犯逮捕された元厚生大臣で中央ボヘミア地方知事のラート氏に対してでさえ、バビシュ氏に対するような強い批判を浴びせる政治家はいなかった。あれも実は社会民主党の政治資金集めだという話もあったからなあ。その疑惑を放置して、バビシュ氏を批判してもなあ。市民民主党もベーム氏などの怪しすぎる政治家とロビイストの結びつきを明らかにして、告発するぐらいのことをすれば、もっと支持率を延ばせたと思うんだけど。

 何をやっても世論がバビシュ氏解任に向かわないことを知ったソボトカ氏の第二の失敗が、内閣総辞職を言い出したことで、第三の失敗が、ゼマン大統領が辞表を提出した場合、首相のみの辞職だと認識すると言ったときに、辞職を撤回してしまったことである。ここで撤回せずに辞表を提出していれば、打つ手がなくなるのはゼマン大統領の側だっただのだが、ソボトカ氏は社会民主党の閣僚を信じることができなかったのか、辞表の提出を撤回してしまった。これで、このときの騒動はバビシュ氏をやめさせたいソボトカ氏があれこれ画策しているに過ぎないという印象を与えてしまった。
 そして、最悪だったのが、選挙までは首相を続けるが、選挙後は社会民主党が勝った場合でも首相候補にはならないと宣言してしまったことだ。これで、本人が政界を引退するというのならまだ救いもあったのだが、本人は選挙には出馬して国会議員は続けるというのだから、開いた口が塞がらない。
 ソボトカ氏は党の支持率が10パーセントを割りそうなところまで下がったことで、自分が首相を続けるとさらに支持率が下がると考えたのだろうが、下院の任期満了まで務めるなんていう中途半端なことはしないで、その場で国会を解散して臨時の総選挙に持ち込めばよかったのだ。それを七月八月の夏休みに選挙を行うのはよくないとかいうわけのわからない理由で解散しなかったのだから、地位にしがみついていると思われても仕方がない。

 さらに後継者として、選挙戦のリーダーにザオラーレク氏、党首にホバネツ氏という二人を指名したのも意味不明で、選挙における社会民主党の顔がぼやけてしまった。これで迷走から抜け出せなくなってしまった社会民主党の選挙運動は、全く有権者を引き付けることのできないものになってしまっていた。新聞なんかでも意味不明だとこき下ろされていたし、選挙速報では、みんな賛成できるようなスローガンは掲げているけど、ありきたりでこれ見て社会民主党に投票する人はいないと酷評されていた。
 選挙速報では、ソボトカ内閣の功績がバビシュ氏の功績だと受け取られてしまっていたのも社会民主党の敗因だと指摘されていた。これをANOが功績を盗んだのだと考えてはいけない。社会民主党が自ら手放したのである。選挙に負けたわけでもないのに党首である首相が退陣するというのは、党が自ら内閣の功績を否定しているに等しい。そうなればもう一人の内閣の立役者バビシュ氏に票を投じたほうが、現在の内閣の政策が継続されると考えるのも当然である。ソボトカ氏が、病気か何かを理由に政界から引退すると言って、後をザオラーレク氏あたりに託すとかいう筋書きでもあればまた話は別だったのだろうけどさ。

 選挙に負けたことで、選挙のリーダーだったザオラーレク氏、選挙後の党首とみなされていたホバネツ氏など指導部の退陣も確実視されているが、惨敗に対する対応が遅すぎる。同じく得票率を減らしたTOP09では、カロウセク氏がはやばやと党首の座を降りることを表明し、12月の党大会で新しい党首を選ぶことになっているのに対して、社会民主党では来年の四月、その後、少し早めて二月に新しい指導部を選出する党大会が行われることになっている。新しいとは言っても、ハシェク氏とかジモラ氏とか、金銭的スキャンダルを起こして隠されている連中が、またぞろ表に出てくるだけだろう。これでは次の選挙も大変そうである。
 社会民主党が敗因の一つに挙げているものに、チェコで世界最大級の埋蔵量が確認されたリチウムの採掘に関して、社会民主党の大臣が外国企業と契約を結んだのを事件化されたというものがあるけれども、選挙前の微妙な時期にすることではないよな。自業自得である。いや、このぐらいのことはしても、得票率は減らないと高をくくっていたのだろう。そんな政治家であること、既存の大政党であることからくる傲慢な行動が積み重なった結果が、今回の自滅だったのである。市民民主党は党内改革を経て立ち直りの道を見つけたように見える。社会民主党はどうであろうか。
2017年11月7日24時。







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