2016年08月22日
チェコ人テロリスト?(八月十九日)
今月の初めだっただろうか。チェコで初めてテロリストだと認定されたグループの裁判が始まったというニュースが流れた。これはアナーキストのグループで、貨物列車の襲撃を計画して、武器などの入手を進めていたときに逮捕されたらしい。
このグループの具体的な政治目標などは明らかにされていないし、具体的にどんな貨物列車を狙ったのかもはっきりしない。アナーキストということで政府を転覆させて、無政府状態を作り出そうとしたのだと考えると、テメリンの原子力発電所あたりに向かう核燃料を積んだ貨物列車ではなかったかと想像をたくましくしたくなる。
検察側はテロ行為の計画および未遂ということで、起訴したようだが、被告側は無罪を主張している。その理由は、この計画はグループ内にもぐりこんだ警察のスパイが計画したもので、本来のメンバーは、警察が自分たちに何をさせたいのかを見極めるためにその計画に従う振りをしただけだというのである。警察のスパイを発見したらリンチというのが、左翼テロ組織の不文律だと思っていたのだが、チェコの組織は優しいなあ。日本でリンチされたのは、公安の人間じゃなくて、公安に脅されてスパイになっていた、いわゆる公安の犬だったっけ。いや疑いだけでやられたのかな。
それはともかく、警察側は警察の人間が組織に入り込んだときには、貨物列車襲撃の計画はすでに動き始めており、武器や火薬の調達が始まった時点で逮捕に踏み切ったのだという。潜入捜査に際して、法律に違反するようなことは何もしていないというが、これは汚職事件のような盗聴などの違法すれすれの行為が必要な事件の捜査では決まり文句みたいなものである。
グループ側と警察側のどちらの証言でも、警察からのスパイを通じて武器の調達を図ったということのようである。うーん、新入りにやらせるなよ。いや、武器を調達できそうな人間とコンタクトをしていたら警察のスパイに突き当たったということだろうか。
そもそもこの事件、どこまで重大なものとして受け止められているのかわからない。起訴されたグループ数人のうち、一人を除いては保釈が認められていて裁判で刑が確定するまでは収監されないみたいだが、本当に国に対する脅威だと認められていたら、全員保釈なんてさせないだろうに。
ことだ。実際には、それほど脅威だとは認められていないということなのだろうか。
歴史的な経緯を見れば、左翼テロの全盛期だった戦後の冷戦の時代に、チェコは、チェコスロバキアは、西側で左翼テロを支援していたソ連の影響下にあったのだから、国内で左翼テロが起こるはずがなく、右翼はそもそもテロを起こす前に思想的な問題で秘密警察に逮捕されるか、亡命するかしていたはずだから、右翼テロも起こりえなかったのだろう。アラブ諸国に対しても、医学生を受け入れるなどの支援をしていたから、アラブの民族テロリストに狙われることもなかっただろうし、久しぶりのテロ未遂になるのだろう。今後起こりかねないイスラム国の影響を受けたテロや、 反イスラムの右翼によるテロ対策の準備としては、このぐらいがちょうどよかったのかもしれない。
ところで、「ス・トホ・ベン」というアナーキスト的芸術家?のグループがある。歩行者用の信号の人形の形を変えるなどという罪もないいたずらをしていたグループなのだが、プラハ城の屋根に登って掲揚されていたチェコの国旗を盗むという事件を起こした。ミロシュ・ゼマン大統領に対する抗議として、国旗の代わりに大きなトランクスを掲揚して逃げ出したらしい。今の大統領にはチェコの国旗よりも男性用の下着が似合うという意味だろうか。
プラハ城でも改修が進められており、その工事用の足場を使って屋根まで登って降りたのに、警備にとがめられることもなかったということで、プラハ城の警備は大丈夫なのかという意味でも世間の注目を集めた。結局プラハ城の警備主任が辞職する騒ぎになったのだったかな。
このグループも何かの理由をつけて逮捕されて裁判沙汰になっているのだけど、裁判でプラハ城の、いや大統領側から盗んだ国旗を返却するように求められて、「プラハ城に掲揚されていた国旗は国民の財産であるから、すでに細かく切り分けて国民に還元したので返却はできない」とかなんとか答えていた。
うーん、こいつらのほうが、テロ認定された連中より手ごわそうである。こんなテロもどきで経験を積んで、本物のテロリストが国内で活動を始めたときには、しっかりと対策をとってくれることを願っておこう。
そういえば、クラウス大統領が地方を視察していて、集まった人たちと交流していたときに、警備員が傍にいたにも関らず、近づいた男にモデルガンで撃たれるなんて事件もあったなあ。今年の一月にはイスラム国に参加しようとしたチェコ人がトルコの空港で捕まって、強制送還されたという事件も起こっている。情報が公開されたのは最近だけど。どれもこれも今後に向けての教訓にはなっていると信じよう。
8月21日12時。
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5354682
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック