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2021年04月28日

ゼマン大統領予想通り(四月廿五日)



 2014年のズリーン地方で起こった弾薬倉庫の爆発事件に関して、ロシア軍の情報機関であるGRUの関与が明らかにされて以来、沈黙を保っていたゼマン大統領だが、民放のプリマが毎週日曜日に放送している政治番組で自ら見解を発表しインタビューに応じた。以前は、大統領選挙で協力したソウクプ氏の率いるバランドフテレビに、「大統領との一週間」という番組があって、そこであれこれ物議を醸す発言をすることが多かったのだが、どうもこの二人の関係が悪化したようで、最近大統領のお気に入りのテレビ局はプリマになっている。
 今回も、例によってあれこれ問題になることを発言したのだが、一番問題にされているのは、ブルビェティツェの爆発事件に関して、二つの方向で捜査が続いていると発言したことである。一つは当然ロシアのGRUが関与したというもので、もう一つは倉庫の従業員が爆発物の取り扱いに失敗したというものである。ただ、この二つ目は、警察関係者によれば、すでに2015年の時点で、ありえないとして捜査の対象からはずされたという。

 ゼマン大統領が改めて、この除外された可能性をことさらに取り上げて発言したのは、ロシアを擁護する意図があると見て問題あるまい。党内のゼマン派の支持によって党首の座を維持したハマーチェク氏ですら、この見解には賛同していないが、オカムラ党と共産党は、もろ手を挙げて賛成の声を上げている。オカムラ党が、選挙のスローガンにしていた「チェコはチェコ人の手に」のチェコ人の中にはロシア人も入りそうである。
 全体的な評価としては、政府与党側は、穏当なもので、政府の方針と大きく外れてはいなかったと、本当かよといいたくなるようなコメントをしている人がいた。野党の中でも反ゼマンの海賊党や市民民主党などは、大統領が自国の防諜機関の報告を信用せずに、ロシアよりの発言をするのはどういうことだと批判している。実際、ロシアの政府系のネット上の情報サイトなどでは、チェコの大統領がロシアの主張を認めたというニュースになっていたようだ。

 ゼマン大統領は、この件について、決定的な物証はなく、全てが状況証拠でしかない状態でロシアを批判するのはよくないなんてことも言ったのかな。スパイやら秘密工作員やらの仕事に物証が残っているなんて期待できないだろう。あるとすれば、ロシア国内のエージェントに対する命令の文書だろうけど、軍事機密で閲覧できるわけがないし、すでに廃棄処分になっている可能性も高い。そもそも文書化されたかどうかも怪しいか。
 流石は、ゼマン大統領、期待を裏ぎらないと言うとことである。裏切らないといえば、大統領の職権についても憲法に記されていることを否定するような発言を繰り返したらしい。あちこちからこのままでは立憲国家としての本質が崩れてしまうなんて声も上がっているのだが、現時点では大統領の罷免のためのリコール運動をするなんてところまではきていない。大統領をリコールできるのかというのもよくわからないけどさ。

 それで、バビシュ政権を退陣に追い込みたがっている海賊党は、市民民主党が主張する下院で政府の信任決議をするのではなく、国会の解散を議決で決めようと言い出した。信任案の否決で内閣総辞職に追い込んだ場合、大統領の存在が大きくなりすぎるというのである。つまり、信任なしでバビシュ内閣に選挙まで政府を運営させるのも、暫定内閣を組織させるのも、ゼマン大統領の決断一つになってしまうのが問題だという。下院の解散が決まってもゼマン大統領が臨時選挙はやらないといえば、結果は同じになるような気もするんだけど。
 どうも。同じ反バビシュ、反ゼマンでも、海賊党と市民民主党は同属嫌悪でお互いにいがみ合っているらしい。それで、協力するよりも、少しでも相手とは違うアイデアを出して出し抜こうというすることのほうが多く、これもまたバビシュ政権が何とか生き延びてきた原因の一つになっている。秋の総選挙で、ANOが負けてバビシュ首相が退陣したとしても、将来はばら色というわけには行かないのである。

 考えてみれば、チェコスロバキア独立以前の時代から、スラブの旗頭としてロシアを担ごうとする汎ロシア主義と、オーストリア=ハンガリー帝国内でチェコの地位を上げようという考え方とで割れていたチェコ民族だから、一世紀以上の年月を経ても変わらないと考えるのがいいのかもしれない。ソ連にあれだけの目に遭わされていながら、なおロシアを信じる人たちがいるのは意外ではあるけどさ。
2021年4月26日22時










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