アフィリエイト広告を利用しています
<< 2024年02月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29    
検索
リンク集
最新コメント
チェコの銀行1(十二月二日) by ルイ ヴィトン 時計 レディース hウォッチ (03/20)
メンチンスキ神父の謎(四月卅日) by にっしやん (12/30)
メンチンスキ神父の謎(四月卅日) by にっしゃん (12/30)
メンチンスキ神父考再び(七月卅日) by にっしゃん (12/30)
カレル・チャペクの戯曲残り(二月朔日) by K (08/16)
最新記事
カテゴリーアーカイブ
記事ランキング
  1. 1. 『ヨハネス・コメニウス 汎知学の光』の刊行を寿ぐ(四月十日)
  2. 2. no img 『羊皮紙に眠る文字たち』『外国語の水曜日』(三月十九日)
  3. 3. no img コメンスキー――敬虔なる教育者、あるいは流浪の飲んだくれ(九月廿七日)
  4. 4. no img すべての功績はピルスナー・ウルクエルに(一月廿六日)
  5. 5. no img 「トルハーク」再び(三月廿日)
  6. 6. no img トルハーク四度(十月二日)
ファン
タグクラウド










ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

広告

posted by fanblog

2020年09月20日

ユリウス・フチーク(九月十七日)



 共産党関係者なら知らなければもぐりといってもいいぐらい世界中で有名だった作家で、その作品は全部で90もの言葉に翻訳されたという。これは、翻訳がなされたのがビロード革命以前だったということを考えれば、驚異的な数字である。チェコスロバキアでも基礎学校の必読書で、チェコ文学の授業でも熱心に取り上げられていたようだ。
 作品とはいっても特筆されるべきは、第二次世界大戦中にゲシュタポに逮捕され収監された刑務所の中で書いたとされる『Reportáž psaná na oprátce』(1945)ぐらいで、日本語への翻訳もこの作品が中心となる。『Reportáž psaná na oprátce』を翻訳しているのは以下の三人。


@栗栖継訳『嵐は樹をつくる : 死の前の言葉』(学芸社、1952)
 題名は違うが、内容を確認すると「絞首台からのレポート」に、さまざまなフチークの文章を合わせて一冊としている。訳者の栗栖継が読者の便宜を考えて、理解しやすくなるように独自に編集したのだろう。書名も収録作品から取ったものではなく独自のもの。そのため、別の作品の翻訳だと思われる恐れもありそうである。著者名が「フーチク」になっているのは、エスペラントからの翻訳であるからか。
 この作品は1962年に、筑摩書房が刊行していた『世界ノンフィクション全集』の第25巻に「絞首台からのレポート」として収録される。その際に、他の雑多な文章も収録されたのか割愛されたのかは不明。この巻にはナチス・ドイツに対する抵抗を描いた作品が収められているようである。こちらの著者名は「フゥチーク」。気持ちはわからなくはないけれども、「フゥ」なんて日本語の表記体系にはない。
 その後1977年には、『絞首台からのレポート』と題して岩波文庫に収められた。作者名の表記がようやく「フチーク」に落ち着いた。この岩波文庫版は現在でも手に入らなくはないようだ。岩波は再販制を利用せずに、買いきりで書店に卸すから、版元に商品がなくても、品揃えのいい書店ならかなり掘り出し物が手に入る。この本が掘り出し物になるかどうかはともかく、古い岩波文庫を手に入れるためには、古本屋だけではなく新刊本屋も回らなければならない。性格の悪い出版社である。


A木葉蓮子訳『絞首台からの報告』(須田書店、1953)
 栗栖訳の翌年に刊行されたこの本については詳しいことはわからない。作者名は最初の栗栖訳と同様「フーチク」。訳者の木葉蓮子は、翌年もひとつフチークの作品を翻訳出版するがそれについては後述。


B秋山正夫訳『愛の証言 : 絞首台からのレポート』(青木書店、1957)
 国会図書館で確認できる最古の秋山訳がこれ。「愛の証言」というのが本題で「絞首台からのレポート」は副題扱いになっているようにも読める。作者名はこれも「フーチク」。1964年には同じ出版社から『絞首台からのレポート』と題して文庫化されている。出版社の青木書店は、マルクス主義を標榜する左翼系の出版社で、学生運動の華やかなりし頃には文庫も手がけていたらしい。
 さて、前回紹介した浦井康夫氏の「日本でのチェコ文学翻訳の歴史」(入手はこちらから)には、英語からの翻訳である秋山訳はすでに1949年に刊行されているようなことが書かれている。国会図書館では発見できなかったので、「CiNii 」を使って大学図書館の蔵書を検索してみた。
 フチークの作品は発見できなかったが、秋山正夫の著作として、『絞首台からの叫び : 革命家フーチクの生涯』(正旗社、1949)というのが出てきた。題名からフチークの作品の翻訳であることは間違いなさそうだが、それに伝記をつけたことで、全体としては秋山の著作ということにされてのだろうか。これが、フチークの初訳で、第二次世界大戦後初めて日本で出版されたチェコ文学の翻訳単行本ということになる。


 フチークは、1930年代にジャーナリストとして活動していた時代にソ連を訪問してレポート記事を書いている。それをまとめたのが、『V zemi, kde zítra již znamená včera』(1932)で、木葉蓮子訳が存在する。

・木葉蓮子訳『わが明日、昨日となれる国』(須田書店、1954)
 これも詳細は不明で、作者名は「フーチク」。


 ビロード革命後、フチークの評価は、共産党のシンボル作家だったという過去から、ある意味地に落ちた。ドルダが晩年に「プラハの春」を弾圧したソ連軍に反抗したことで失脚したのとは違い、すでになくなっていたフチークは、反抗のしようもなく、最後まで共産党の象徴であり続けた。その反動で、実はゲシュタポと組んでいたんだとか、真偽の定かでないことを言われていたらしい。ただ最近は再評価が進んでいるようである。

 『絞首台からのレポート』は栗栖訳の岩波文庫版を買って読んだはずだけれども、正直あまり印象が残っていない。同じレポートならムニャチコの『遅れたレポート』のほうが、個人的には評価が高い。
2020年9月18日24時。









この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10207831

この記事へのトラックバック
プロフィール
olomoučanさんの画像
olomoučan
プロフィール


チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。