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2020年02月01日

戦前の『ロボット』(正月廿九日)



 チェコ語起源の外来語というのは日本語にはほとんど存在しないが、そのうちの一つである「ロボット」が完全に日本語に定着し、日常的に使用されていることを否定する人はいるまい。そのロボットという言葉を世に送り出したのが、チェコスロバキア第一共和国の誇る作家カレル・チャペクの戯曲「R.U.R」である。「ロボット」という言葉自体は、カレル本人の発案ではなく、兄ヨゼフのアイデアだったなんて話もあるようである。
 この作品でのロボットは、現在一般的になっている機械的なロボットではなく、人間の体の組織を別々に培養し、それを組み立てて生産するという、よく考えると恐ろしいものなのだが、人間が作り出した人間と同じように動き、人間のために働くものという点では機械的なロボットと同じである。その本来自我を持たなかったロボットたちが、人間に対して反乱を起こすというあたりが極めてSF的で、チェコとは何の関係もないSF関係者の間でもよく知られた作品だったようだ。

 では、日本での受容がどうだったのだろうかということで、国会図書館のオンライン目録を使って調べてみた。うまく行ったら、これも定期的なシリーズにしようなんてことを考えつつ、あれこれ検索をかけて、わかったのは作者名としては、出版物における表記がどうであれ原則として「チャペック」で登録されているということ。ただし一部の作品だけは「チャペク」になっているのもあって完全に統一はされていなかった。
 チェコスロバキアで、この作品が刊行されたのは独立後間もない1920年のことだったが、日本語訳が最初に出版されたのは1923年である。当然、当時はチェコ語からの翻訳者など存在しておらず、英語かドイツ語に翻訳されたものからの重訳であったことを考えると、かなり早いといってよさそうだ。


@宇賀伊都緒訳『人造人間』(春秋社、1923年7月)
 これが国会図書館に所蔵される最初の日本語訳である。現在の「ロボット」という言葉にまとわりつく機械的なイメージを考えると、この『人造人間』のほうが、内容に即した題名と言えるかもしれない。一方、作者名のカタカナ表記が「カアレル・カペツク」になっており、チェコ人の人名について知識がなかったであろう時代をしのばせる。英語からの重訳であろうか。ちなみに、国会図書館のデジタルライブラリーで確認したところ、扉の作者名表記は「カペック」と促音が小さく「ッ」で表記されているように見える。春秋社は現存する出版社で、作家の直木三十五が創設にかかわったという話である。
 また、宇賀伊都緒の訳は、近代社が刊行した『世界戯曲全集』第22巻(1927年)にも収録されているが、高橋邦太郎も訳者として名前が上げられている。宇賀の訳を高橋が改訳したのか、共同で改訳したのかは不明。作者名表記は、姓しか確認できないが、「チヤペク」。拗音が直音で表記されていた時代なので、これで「チャペク」と読ませていたと考えてもいいか。国名表記は「チエコ・スロワキア」で、「ヴァ」の音を「ワ」で代表する表記がすでに登場している。


A鈴木善太郎訳『ロボツト』(金星堂、1924年5月)
 金星堂から「先駆芸術叢書」の第二編として刊行されている。この叢書は、「ゲエリング」の『海戦』を第一編として刊行が開始され、国会図書館のデジタルライブラリーでは第十二編までの刊行が確認できる。作者名表記が、表紙と扉では「カーレル・チャペック」と今日につながる拗音と促音の表記がなされているところには、宇賀訳の翌年の刊行であることを考えても驚きを隠せない。ただし、奥付の表記は「チヤペツク」である。これには翻訳者の鈴木善太郎が新聞社の出身であることが影響しているかもしれない。新聞社であれば世界中に特派員を派遣していただろうから、チェコ語の人名についてもある程度の情報があったと考えられる。左翼が強かった当時の演劇関係者のソ連人脈からの情報ということもありえるのかな。
 ちなみに表紙にはなぜか国名が入っていて、「チエツク」となっている。これは当時行なわれていた「チェックスロヴァック」という表記の略なのか、チェコとスロバキアは別の民族だという知識に基づくものなのか。「緒言」に「ボヘミア語」なんて表記があるところを見ると前者だろうか。
 また、鈴木訳は平凡社が刊行した「新興文学全集」第20巻(1930年)にも、「ドイツ篇」の末尾に付される形で収録されている。こちらでの国名表記は「チエツコ」。この全集は当時平凡社が続々と刊行していた左翼系の全集シリーズの一つで、当時の様子、いかに平凡社が全集で儲け、いかに左翼系の文化人に食い物にされていたかは、荒俣弘の『プロレタリア文学はものすごい』(平凡社新書、2000年)に詳しい。

 戦前に刊行された『R.U.R.』の日本語訳は以上の二つなのだが、雑誌「婦人之友」の大正十四年七月号(1925年)に「近代劇物語 人造人間」と題した作品が掲載されている。作者は「カール・チヤペツク」で訳者は前田晁となっているが、これが全訳なのか抄訳なのかは、デジタルライブラリーでは見られないので確認できない。
 それから、桜井学堂が1929年に刊行した『未来科学の進化』(日本学士院出版部)に「人類に奉仕する十億人の機械奴隷」と「地球を占領した人造人間」という二つの文章がチャペクのものとして掲載されている。どちらも「ロボット」を思わせる題名なのだが、『R.U.R.』との関連も訳者も不明。

 以下いつになるかわからんけど次号。新たにチェコ文学のカテゴリーを立てるけど、文学云々の話にならないのはいつものことである。
2020年1月30日9時。









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