2019年12月29日
鉄道の問題未だ終わらず(十二月廿六日)
人的な被害は出なかったが、鉄道の運転士が赤信号を無視して発車した結果、線路の切り替えの設備が破壊され、その後大きな遅れが発生するという事故が二件起こった。事故を起こした会社は、チェコ鉄道とアリバである。アリバは、ダイヤの改変によっていくつもか路線をチェコ鉄道から引き継いでたったの一週間ちょっとで二件目の同様の事故らしい。
これは、チェコ鉄道などのほかの会社と比べて、アリバの事故頻度が高いという話ではあるのだけど、その根底には運転士の人材不足という問題が横たわっている。私鉄が運行を開始する以前から、運転士の超過勤務が問題になっていた。チェコ鉄道と、分離した貨物部門のČDカーゴや他の貨物鉄道会社の運転士を掛け持ちする事例がかなりの数に上っていたらしい。
今回のダイヤ改正で、担当する路線がかなり減ったチェコ鉄道だが、余剰になった運転士の解雇はせずに、運転士の勤務体制を見直すことで対応すると言っていた。誰一人辞めなかったということはないだろうが、アリバやレギオジェットなどの担当する路線の増えた私鉄では、運転士の確保に苦労していたようである。単なる利用客のところにまで、運転士を含むスタッフ募集のメールが届いたぐらいである。
人材不足の運転士を確保するために、他業種から転職を考えている人のための運転士養成コースが開かれているなんて話もニュースになっていたから、新人の経験のない運転士も仕事をしているはずだ。そんな新人が遅れてばかりで批判されているアリバで仕事をしていたら、遅れを出さないことに気が行き過ぎて信号を見落としたとしても不思議には思わない。事故を起こした運転士が本当に新人だったかどうかはわからないけれども、ほとんどすべての便が遅れるという状況を解決しないと、いつまた同じような事故が起こるかわからないとは断言できる。
アリバの運行する路線が遅れを連発する理由もニュースになっていたが、一言で言えばドイツ鉄道に押し付けられた中古の気動車がチェコの鉄道の路線に適応できていないことに尽きる。これらの車両は、ドイツの中でも平地、ほとんど起伏のない路線を走っていたもので、平地でスピードを出すことに特化しているらしい。
それが緩やかとはいえ、起伏の多いチェコの路線では実力を発揮することができず、登り坂の途中で止まってしまったなんてこともあったらしい。事前に一回でも試走していれば問題の発生する可能性があることがわかっていただろうに。ドイツ鉄道からの引渡しが遅れたことが原因だろうか。どこかの地方では各駅停車だけではなく急行も運行しているらしいが、登り坂で必要なスピードが出せずに止まったり遅れたりする急行に意味があるのだろうか。
また、登り坂でスピードが上がらない結果、何の問題なく運行できた場合でも、10分程度の遅れが発生するという例も報告されている。今回のダイヤ改正で運行担当がアリバに代わったところでも、去年までのチェコ鉄道が運行していた時代のものを基に時刻表が設定されている。チェコ鉄道のオンボロ気動車で可能なダイヤだから、ドイツ鉄道の旧型ならどうにでもなると安直に考えたのだろうか。こうなると会社の体質が問題と言ってもいいかもしれない。
アリバの広報担当は、準備期間が短かったわりにはよくやっていると自画自賛していたけれども、準備していたとは思えない結果である。登り坂で遅れてしまう問題に関しても、これから調整すればチェコ鉄道の使用しているものと同等の力を発揮するはずだと言っていたのかな。ということはエンジンやギアなどの設定が変えられるということだろうから、事前に試走して設定を変えておくのが普通だと思うのだけど、経費がかさんで利益が減るのを嫌がったのかね。
最近、チェコ鉄道が使用する機関車や客車などの車両を更新するのに、ドイツ鉄道からではなく、オーストリア鉄道から中古を購入している理由がわかった気がする。チェコ鉄道も準備期間が足りずに、車両の塗装がオーストリア鉄道のまま走らせたりはするけど、調整不足で性能を発揮できないなんて話は聞いたことがない。
ペンドリーノは試験走行を繰り返してなお、まともに運行されるようになるまで時間がかかったけど、あれは特殊例で、もう十五年も前の話だし、走らせるためにだけでも路線の大改修工事が必要だったのだ。あのときもドイツではなく、わざわざイタリアの電車を選んだわけだ。
それはともかく、アリバには一度オロモウツからプラハまで乗ったことがあるけれども、そのサービスのあり方やら車両やらにはまったく感心するところはなく、二度と乗るまいと思ったのだった。こちらが鉄道を利用しそうな行き先は、アリバを使う必要はなさそうなのが救いである。原則として行政区分としての地方の境を越えて走る長距離特急、急行を使っていればほぼ実害はないと言っていいのかな。
2019年12月26日24時。
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