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2022年に就役が始まったもがみ型護衛艦FFMは、省人化やステルス性など大きく力が入れられました。
1番艦から8番艦まではVLS搭載無しとなり、いろんな議論を呼んでいます。
図1 もがみ型護衛艦
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ffm/mogami/#1-1
ここで意外と触れられていないのが、通信電波アンテナ関係の話です。
ステルス性に対して非常に相性の悪い、通信電波に関するお話をご紹介!
(前回記事):【【軍事技術】GTエンジン沼にはまってみないか?】
\こちらもご参考に!PR/
(1)ユニコーンは頑張ったんだよ!
もがみ型護衛艦について、ステルス性に考慮をされた船体となっていますが一部は従来型になっています。
図2 航海用アンテナ
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ffm/mogami/#3-2
従来のアンテナなどを搭載せざるを得ない状況も発生しています。
1.1 ユニコーンは頑張った!
もがみ型護衛艦の大きな特徴は、複合型空中戦NORA-50ユニコーンの搭載です。
図3 UNICORNマスト
引用URL:https://www.mod.go.jp/atla/en/policy/pdf/defense_equipment_unicon_reference_guide.pdf
長らく艦船技術者が夢見た、マスト周辺のごちゃごちゃした通信アンテナをひとまとめにしたユニコーンアンテナはステルス性能向上に役立つでしょう。
搭載されているだけでも、
・UHFアンテナ
・VHFアンテナ
・LINK16アンテナ
・IFFアンテナ
・方探アンテナ(逆探知系)
・TACANアンテナ(航空用)
・Wi~Fiアンテナ(FCネットワーク用?)
などいろいろあります。
よくぞここまで集合させて、すっきりとした形状にまとめきれたといえます。
図4 統合空中戦システム
引用URL:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11339364/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/22/jizen/sankou/16.pdf
平成22年度に登場した、統合空中線システムの研究などを経てユニコーンは登場したといえます。
防衛装備庁はよく頑張ったよ!アンテナだらけのマストをよくまとめたよ!
もっと評価されても良いポイントかもしれません。
1.2 航海用レーダーは仕方がない!
もがみ型護衛艦の海上公試が始まったときに、回転式レーダーが付いている!なんて指摘がされました。
図5 回転式航海レーダー
引用wiki
航海用レーダーはXバンド帯の発信をしますが、GMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)にて反応がするためには民生用と同じ製品を使う形になります。
わざわざ専用品を作るよりも、安上がりとなります。
(私は漁船ですよ〜?と電波的に化けることもできる)
1.3 衛星通信亜アンテナはもっと仕方ない!
もがみ型護衛艦はユニコーンアンテナの前後に、衛星通信用アンテナを置いています。
図6 衛星通信アンテナ
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ffm/mogami/#3-3
大出力大容量データーの通信を行うには、どうしてもパラボラアンテナ方式が必要となります。
そのため丸いアンテナレドームを使用せざるを得ません。(中にパラボラアンテナが入ってる)
変に遮蔽版を置くと、衛星電波の利得がめちゃくちゃになり通信がうまくいきません。
まあこれも仕方ないでしょう。
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(2)HF(短波)アンテナは収納できなかったのね?
もがみ型護衛艦のアンテナ周りで特徴的なのが、HF(短波)無線機用アンテナが出ていることです。
図7 HFアンテナ
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ddg/kongou/img/173_05l.jpg
こんごう型以降に船体後部に、太いHFアンテナが付くようになりました。
2.1 HF(短波)は何に使うの?
ここでHF(短波)と言っても、あまりなじみがないかもしれません。
身近にあるケータイ電波はUHFなど波長の短いものを使います。
図8 用途
引用URL:https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/eqsp001.gif
波長10m〜100m周波数帯3MHz〜30MHzが、短波の領域で船舶や航空機の通信に使用します。
短波通信が便利なのは、水平線越えの長距離通信が可能な点です。(その代わり雑音がひどい)
図9 洋上管制所
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/E-4qeffVQA4GkWt?format=jpg&name=900x900
海上自衛隊航空集団には、洋上飛行をする航空機管制を行う管制所があります。
かつてこの通信管制室は撮影禁止だったので、海自航空集団がTwitterで写真掲載したのは驚きです。
海自では船舶通信やHS運用通信に利用するため、欠かせないものです。
ただ送信出力の大きさや、アンテナが長く大きくなるのが難点です。
2.2 ORA-19は偉大な存在!
短波通信空中線は以前から艦艇に搭載していましたが、アンテナだらけになり苦労していました。
そんな中で、短波空中線を共用して使えるORA-19受信空中線共用器が装備されるようになります。
図10 ORA-19
引用URL:https://ssl.bsk-z.or.jp/kenkyucenter/pdf/25sannbakou11.25.pdf
空中線周りをすっきりさせたORA-19は、短波通信の偉大な存在といえます。
ちょうど艦船の煙突についてる2本のアンテナがHF送信アンテナであり、送信位置として他の電波機器に干渉しない位置となっています。
そんな短波通信アンテナは、やはりステルス性との闘いになります。
2.3 格納すると他の通信機器に影響する。
もがみ型護衛艦は、HF送信空中線や受信空中線は従来のままとなっています。
図11 みくま横から
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ffm/mogami/#3-6
煙突付近でにて、飛び出ているのがHF送信空中線です。
ユニコーンの中に格納すると、各種の通信機器に電波干渉してしまうので格納をやめたのでしょう。
(マジにHF電波は通信機器に電波干渉します。)
ステルス化への最終関門は、通信アンテナとなるのは皮肉な話です。
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(3)ぐるぐる巻きにしてえなぁ〜!
潜水艦搭載のHFアンテナは、ループアンテナをぐるぐる巻きで複合空中線に格納しています。
図12 AN/OE-538
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ss/oyashio/#595-1
黄緑色のものが、潜水艦用のAN/OE-538複合空中線です。
3.1 短くしてぇ〜!
現職時代に聞いたのは、「HFアンテナもっと短くしてえ!特にHS甲板のやつ!」という悲鳴です。
図13 ヘリ甲板アンテナ
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/dd/akizuki/#118-3
折り畳み式にはなっていますが、HSパイロットから一番文句が出るのがヘリ甲板のアンテナ類です。
電波の送受信には最も適していますが、発着艦には邪魔です。
ぐるぐる巻きにすると短くできるけど、電波利得が低下するしな〜!
中々苦労の連続です。
3.2 アンテナから見るもがみ型も面白い!
もがみ型護衛艦はステルス性に配慮した形状となりましたが、HFアンテナは従来の形状となりました。
電波干渉を考慮すると仕方ないですが、まだまだステルスの道は遠いところです。
HFアンテナなんてイラン!とすると、搭載HSとの交信ができません。
図14 N-AS-299
引用wiki
N-AS-299のように短い短いものもあるけど、出力が足りなくなります。
けっこうもがみ型もいろんな面からみると、面白いですよ!
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もがみ型護衛艦の源流について、30DEXなどから大変化していきました。
コンセプトの変更から、全く新しいコンセプトに変更されたことはもっと知られてもいいと思います。
やはりフォーミダブル級フリケートの影響は大きいといえます。
N-AS-299については、便利な短波(HF)用アンテナとして使用しています。
短波(HF)については、電離層にて反射して通信できることからUHF/VHFのように、マストの高い位置に設置して利得を稼ぐ必要が無いのが利点です。
電波見通し線外のビークルとの通信には、HFが役立ちます。
また、それほど出力の必要のないHF通信(GMDSS送受信用やヘリ通信用など)に使用しています。
万が一にも、電波妨害においてUHF/VHFが通信できないときにソフトウェア通信機でHFで送受信できるようにもなってきています。
(SDR化してない既存艦との通信も考えています。)
意外と、電波も突き詰めると奥が深いものです。
たしか19DDの案でタンブルホーム艦首の案があったので、そちらの復活かと思っていました。
ユニコーンアンテナは随分"ミサイルじゃないか?"疑われてました、、、(笑)
あれだけ各種アンテナを集積すると、送信波の干渉対策が大変だったのではと思います。
N-AS-299の話しが!ずっと疑問に思っている事がありました。
このアンテナは護衛艦だけでなく補助艦にもほとんど設置されているように思います。
しかもマストではなく艦橋や艦上部の周囲4隅に必ずあります。
なぜ高い場所でなく低い位置の四隅にあるのか?ひょっとしてECMの役割もあるのかと勝手に考えていました。
全長や形状からするとHFよりVHF/UHFのようにも思われます。
無線機側でも当然SDR化やアンテナチューナー付など想像してます。
そうなんですよね、あさひ型護衛艦「しらぬい」にてようやくRWSを付けたけど近接防護用小火器の装備が遅れ気味なのが海自の現状です。
インド洋派遣から慌てて装備を始めたものの、いまだ応急仮設状態が続くのも問題です。
もがみ型の場合は、旗甲板(艦橋の後ろ)とSeaRAMの隣りに自衛用小火器(12.7mm)を設置する形になるかな?
海賊対処派遣任務だとやはり、数が少ない状況となるのでどうにかしたいものです。
共同対処は、一つの方法として有効でしょう。
失敗作のLCSも予算不足のフリゲートも協力すれば十分な抑止力になると思います。
個人的には海自艦は専守防衛なので近接小火器が少ない気がします。反対に敵が多い米英艦は中小銃器が多く感じます。対艦ミサイルが無いと舐められて中国艦に追いかけられたりしますが、対艦ミサイルを打つ状況は戦争が始まるまでは無いと思います。
実際の脅威はドローンや不審船、武装(偽装)漁民等で、その対処には小火器の多い米英艦が傍にいると安心です。
UNICORNマストについては、単体での輸出により既存艦艇へのアップグレード用として商機がありそうですね。
31型フリゲートについては、英国海軍の海外展開と共にインドネシア海軍が導入を進める模様でありけっこう実現の可能性が大きいでしょう。
お互いの任務分担を行いながら、共同警備というのもなかなかいいと思います。
すごくいい視点を見せていただき、ありがとうございます。
詳しい解説、ありがとうございます。
インドにも売れた?ようですね。マストだけでも開発費の回収が早まりますね。
別件ですが、イギリスが31型フリゲートをアジア配備するそうですが、もがみ型の外遊時にはぜひペアで行動して欲しいです。
お互い予算の都合で装備を最低限に絞った艦ですが、用兵思想の違いにより、「装備が全く被っていない!」のです。今時は同じような装備になりがちなのに。そんなわけで、お互い補完しあえるのでは、と勝手に妄想しております。
引用ありがとうございます。
もがみ型護衛艦は毀誉褒貶の激しい船ですが、かつてのむらさめ型も発想の大転換を激しく非難されました。
しかしながら、現在は海自になくてはならない船となっています。
かつて海自が夢見た19DD先進型プランの再来が、フォーミダブル級フリゲートの衝撃でようやく日の目を見たといえます。
これからもよろしくお願いします。
大変興味深い内容だったので、一部抜粋して当方のblogの記事にさせて頂きました。支障があるようでしたら、仰ってください。
もがみ型のルーツはシンガポール海軍フォーミダブル級フリゲートだった!?
https://fanblogs.jp/keenedge1999/archive/31/0
>05予算で10隻分まとめ買いするようです。
やはりバックフィットで装備するVLS調達計画が立ったのですね。
1〜8番艦は、掃海仕様になるかと思いましたが何とかなったようで何よりです。
>我らがFurunoレーダーですか。
私がいた時からFURUNOだ!という声が大きかったのですが古野電気さんにしてみると、当時の防需は利益が出ないとはっきり本社の事業部長からバッサリ切られたことを思い出します。
(海保さんより利益率が低くてとてもじゃないが事業として構築できないと言われました。)
まさに隔世の感があります。
AN/OE-538はよく取り扱っており、輸入品のFOB書類などの過大見積もりをやられたのでエライ目にありました。見抜けなかったのが悔やまれます。(写しだったので、商社出身の上司さえも見抜けなかっませんでした)
(某Y洋行と○防貿易ィ・・・怒)
性能が良かっただけに、惜しいところです。
もがみ型は、横須賀の若い装備幹部がシンガポール海軍フォーミダブル級フリゲートを見て大変な衝撃を受けて報告書を作成して技術研究本部や海幕長まで報告したのが設計の始まりでした。(これは意識を180度変えないといけない!と)
防大同期つながりのよしみでで、当時最新鋭のフォーミダブル級を徹底的に研究できました。
艦船主任設計官や海幕装備体系課長まで見学にきてました。
もがみ型設計を担当した、艦艇主任設計官○海将補も、当時横須賀の若手幹部で見ていたのが知られざる話です。
>1番艦から8番艦まではVLS搭載無しとなり、いろんな議論を呼んでいます。
05予算で10隻分まとめ買いするようです。VLA用とのことですが、ESSM Blk2の購入目途が付いたからと仰る方もいます。そう言えば、A-SAMの実用試験は本年度でしたね(早い)。
垂直発射装置VLS MK41の整備(787億円)
https://www.mod.go.jp/j/budget/yosan_gaiyo/2023/yosan_20230328.pdf
>民生用と同じ製品を使う形になります。
我らがFurunoレーダーですか。やはり最大のメリットはESMで民間船と区別がつかないからと大塚先生も仰ってました。
>AN/OE-538
さすがマニアックなアイテムを(w ロッキードマーチン社製ですね。
https://cdn.thomasnet.com/ccp/01150582/110349.pdf
もがみ型には毀誉褒貶ありますけど、個人的には新しい時代を見据えた海洋事業部の新たな取り組みとして評価したいと思います(T提督辺りはボロカスに言ってますが)。