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2023年1月に発生した、護衛艦いなづまの座礁事故について最初の修理概算額が出てきました。
修理費40億円で、修理に数年かかることになりそうです。
図1 護衛艦いなづま
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/dd/murasame/#105-13
何でそんなにかかるんだ?!なんて思うかもしれません。
しかしこれは、海上自衛隊の苦しい後方支援基盤も関係してきます。
(関係記事):『【海上自衛隊】修理費があ!修理費がああ!「いなづま」の件に思うこと!』
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(1)修理費と造船所ドック不足が絡んでくる!
すぐにドックに入れて修理できないのか!なんて意見もあるかと思います。
図2 駆逐艦コール
引用wiki
米海軍のように、すぐに大修理ができるほど海自の後方支援体制は整備できていません。
1.1 2023年度予算でひねり出すのは厳しい!
2023年度予算をやりくりすれば、約40億円くらいすぐに出せると思われがちです。
しかしながら、他の艦艇の定期検査・年次検査を中止するわけにはいきません。
図3 修理のドック入渠
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/oominato/butai/orsf/images/hamagiri003.jpg
ここに予定外の、緊急修理の費用が出てくると予算のやりくりが大変になってきます。
海幕を中心に、必死に予算をかき集めて捻出することになります。
定期検査等の造船所工事分を、乗員修理に変更したり部品交換の先送りなどで費用捻出になります。
(その分艦船乗員に負担がかかってしまう。)
当然、艦艇の稼働率にも影響してくるのでギリギリのところで妥協する形になります。
艦船修理費は、ポンポン出てくるものじゃないんですよ。
1.2 潜水艦そうりゅう修理でかなりの額が圧迫している。
護衛艦いなづまは、呉を母港としていますがおなじ呉の船で潜水艦そうりゅうの修理がまだ終わったわけではありません。
図4 そうりゅう状態
引用wiki
2021年2月8日に事故を起こして、まだ修理が続いています。
修理を担当する呉造修補給所としては、ただでさえ修理費用が掛かっているところにいなづまの事故が来たことになります。
護衛艦ががの特別改造も行っているので、相当な修理費用の圧迫になります。
1.3 造船所の修理ドックは開いていない!
破損したプロペラや舵の修理は、造船所のドックに入渠して行うことが必要です。
図5 破損したプロペラ舵
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/FGlXtLZWQAgaJaw?format=jpg&name=medium
おそらくこのくらいの破損状況と推定されるため、プロペラの組みなおしと舵可動部の大修理が必要になります。
しかしながら、造船所としても修理スケジュールが詰まっているところに「早急に修理して!」とと凹まれても困ります。
呉地方隊の警備区内では、
・JMU因島工場(今回の定期検査担当事業所)
・JMU呉工場(護衛艦かが特別改造実施中)
・三菱マリタイム玉野事業所(FFM建造中)
の3つの事業所でしか、護衛艦検査修理ができません。
航行不能の状況を考えると、この3事業所で修理の隙間を縫って修理を行う形になります。
そのため、修理に数年かかると報道されたのです。
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(2)まずは自力航行可能に回復させることが優先!
座礁事故により自力航行不能となった、護衛艦いなづまについては自力航行可能にするのが優先です。
図6 ドック中の米艦艇
引用wiki
まず2023年度中には、自力航行可能にするのが目標になるでしょう。
2.1 自力航行できなければ始まらない。
1回の修理で完全に修理完了となるのが理想ですが、他の艦の修理もあるのでまずはプロペラと舵の修理です。
図7 プロペラと舵
引用wiki
画像は、揚陸艦「ボノム・リシャール(LHD-6)」のプロペラと舵の写真です。
2010年に米国での修理の際に撮影されたもので、かなり大きなものになります。
とにか優先すべきは、自力航行可能になるようプロペラ交換と舵修理でしょう。
予備品などを活用しても、10億円以上の修理費がかかるといえます。
ドックに入渠と、重量物交換のクレーン費用は結構シャレにならない高額な費用になります。
2.2 自隊保有ドックが少ない弱さが露呈している。
本当ならば、海上自衛隊が自前の修理用乾ドックを持つのが良いのですがそんなにうまくいきません。
図8 大湊1万トンドック
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/oominato/butai/orsf/images/dock01.jpg
自前で管理しているのは大湊造修補給所の1万トンドックのみです。
横須賀には、米軍基地にある1〜6号ドックがありますが米海軍の修理が優先されることになっています。
(日米地位協定第2条第4項(a)の規定が適用される。)
佐世保・舞鶴・呉造修補給所については、基本的に民間造船所ドックに修理を注文することになります。
海自艦艇修理の後方基盤は、非常に不安定な状態なのですが海自が自前で乾ドックを持てなくなったのは歴史絵的な理由もあります。
2.3 軍転法という制約
これには軍転法(旧軍港市転換法)という法律で、横須賀・呉・佐世保・舞鶴の旧海軍用地が民間に解放された結果があります。
図9 JMU呉工場
引用URL:https://www.city.kure.lg.jp/uploaded/image/33295.JPG
かつて戦艦「大和」が建造された、呉海軍工廠も戦後すぐに民間に払い下げられました。
現在は、JMU呉工場が使用しています。
大湊だけが軍転法の対象外となったので、何とか海自が旧海軍ドックを持てたのです。
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(3)問題はソーナードーム交換かな?
問題は、損傷したという艦首のソーナードーム交換でしょう。
図10 バウソナードーム
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/a8hS5xN_BdI/maxresdefault.jpg
ラバードーム交換は、かなり手間のかかる作業です。
3.1 ラバードーム交換だけで済むかな?
ニュース情報だと、艦首のソナードームにも損傷があるとの情報があります。
図11 ソナードーム
引用URL:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11502835/www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/kouritsuka/rev_gaibu/pdf/2017_01_shiryo.pdf
米軍とは違う形状の硬質ゴムであり、ソナー機器を保護するソナードームを使用しています。
内部はスチールワイヤーで補強がされており、破けにくくなっています。
これが厄介なもので、もしかするとラバードーム交換直後の事故かもしれません。
予備品のラバードームと交換するだけで済めばいいですが、もしかするとソナー素子に異常があるかもしれません。
3.2 ソナー素子交換だと厄介だぞ〜!
ソナーについては、多数の素子が使用されています。
図12 ソナー素子
引用wiki
だいたいこんなようなものが、中にあると思っていただければ幸いです。
下手をすると、ソナー素子にもダメージが来ており損傷があるかもしれません。
一度全部のハイドロフォンアレイを、陸揚げして分解点検する必要が出てきます。
それならば、先にプロペラと舵だけを交換して自力航行可能にするのが優先となるでしょう。
なかなか厄介な状況です。
3.3 自前の浮きドックが欲しいねえ!
海自で艦船修理をしてた時は、自前の浮きドックが欲しいと思ったことが多々ありました。
アレがあれば、乾ドックを占有せずに修理が行えるのでうらやましかったところがあります。
弾薬備蓄増加もいいですが、できれば海自後方支援に浮きドック1隻が欲しいものです。
今後の修理状況に注意が必要ですよ〜!
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ようやく公試に出れるまでに、修理が進んだことにほっとしております。
何とか各種修理が終了して、乗員再錬成がすすんでくれることを願います。(特定秘密の不適切取扱いも出てきたので乗員は総入れ替えかな?)
護衛艦いなづまについては、できるかぎり呉地区での修理を目指すことになると思います。
地方隊の管区を超えての修理は、契約上かなり厄介になるため可能な限り避けることになります。
現状としては、三菱マリタイム玉野工場での修理になるかと思います。
護衛艦かがの特別改造終了を待って、JMU呉での修理を模索しているのかもしれません。
横須賀や神戸などにある浮きドックは魅力的ですが、浮きドックも結構不便なところがあるため状況によるでしょう。
長崎は人員器材もありますが、海自と米海軍修理で忙しい状況です。
浮きドック、横浜近辺だとJMUに(磯子2、鶴見1)ありますね。大きいものは磯子だけ?
いなづまは自航できるようになってから、横須賀1号や大湊に入れるのでしょうか。
(MHI長崎も空いているような)
今回の件を防ぐためにも、新しい哨戒艦で幹部の航海の練度を上げるのですかね。
造船所は新造が増えているようですが、艦が入れる(武器管理できる?)ドックはMHI、KHI、JMUも統合が進み修繕のみになったドックが多いように思います。
まあ場所が空いていても治せる人員がいないと無理なんでしょうけど。
横浜近くのドックでは近年、米海軍の輸送艦等が修繕してるような、、(停泊だけ?)
近年だと、コロナ過の経済回復に合わせて商船の修理新造が多くなっており日本の造船所のドックの空きが少なくなっているそうです。
国内造船業の統合集約が進み、官公庁艦船を受け入れる余裕が無くなっているのが大きいですね。
防衛産業の基盤確保を、10年早く行っていればこんなことにはならなかったといえます。
米海軍の艦船修理・建造検討については、とりあえず第7艦隊に展開する艦船修理を先行して行うようです。
2019年に試験的に、JMUにて米海軍「ミリウス(DDG69)」の修理が行われました。
そこでの修理成績が良かったから、本格的に展開する気かもしれません。
(米海軍艦船修理廠SRF横須賀もありますが、マンパワー不足になっているとの話があります)
米国本土は、バス・インガルス・ニューポートニューズで建造していますが、人員不足・工程遅れ・品質保証・技術不足で日本以上に艦艇造船能力が壊滅的になっていると聞いています。
日本だと起工から就役まで3年ほどですが、米国では4年から6年ほどまで工事期間が延びている状況です。
さらに建造費の高騰も問題となり、円安により日本で建造した方が安いくらいになっている状況です。
バイアメリカン法の絡みもあるため、例外措置をクリアできたなら米国艦船の日本建造もあるかもしれません。
(建造鋼材全部を米国製鋼材輸入にしないと、議会の承認が得られないでしょう。)
修理はほぼ確定でしょうが、艦船建造までは無理かな?と思っています。
修理ドックは結構満杯なんですね。これも国内造船業の経営統合の結果なのでしょうか。早く修理が終わって復帰して欲しいですね。
アメリカ海軍(議会?)から、日本での米軍艦艇の修理・メンテナンスと将来の建造を検討している、との報道が日経新聞でありましたが、できるんですかね?
アメリカもドック不足なのでしょうが、本当に海外(日本)で建造するのかな?