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2017年05月16日

肝臓病の食事療法

肝臓病の食事療法は結構複雑です。
病期は通常肝炎から肝硬変、肝がんに進行。
よく食事代わりにアルコールっていうような男性に多くみられるのが肝硬変。
ポイントは肝性脳症があるか(非代償期)ないか(代償期)。

肝性脳症とはアンモニアが溜まることによる意識障害のこと。
血液検査でアンモニア量が分かり、この数値が高くなると意識障害が出ます。
こうなるとタンパク質制限が重要になります。
食事からとるタンパク質は血中アンモニア上昇につながり、肝性脳症を悪化させるからです。
低タンパク質食と併せてアミノ酸製剤(アミノレバンなど)をプラスすることが多いです。
黄疸(ビリルビン上昇)が出てくると脂質制限も必要です。
黄疸は皮膚全体や白目の部分に出やすいので見て分かります。
あとは独特のアンモニア臭もあります。
腹水が出てくると水分制限や塩分制限も必要です。
人間は肝臓に1日分のグルコースを蓄えて飢餓時に備えているのですが、
肝臓の機能が悪くなると蓄えられないので、すぐに飢餓状態になってしまいます。
そこで、飢餓予防の寝る前の栄養補給としてLES食を摂ることが推奨されています。
LES食にはBCAA(分岐鎖脂肪酸)を多く含むビスケットなどを良く使います。
また、食道静脈瘤の場合には硬いものや刺激物は避けることが推奨されています。
C型肝炎では鉄沈着予防で鉄制限がかかる場合もあるので覚えておきましょう。

国家試験の問題を解く場合には、必ずこの基本をおさえておきましょう。
良く出題されるのは肝臓病とFischer比の関係。
Fischer比はBCAA/AAAで、健常人のFischer比は3〜4です。
BCAAは不足して補充しなければならないので、肝臓病になるとFischer比は?
そう、当然「低くなる」が正解です。

ここからは国家試験とは切り離して読んで下さいね。
肝臓病は予後が非常に不良なので、
実際に患者さんを診ていると非常に辛くなることが多いです。
腹水穿刺と言ってお腹の水を抜く治療を1〜3日に1回行うことが多いのですが、
抜いても抜いても腹水はすぐに溜まります。
当然苦しくなりますので、食欲も落ちます。
肝性脳症になると意識レベルが落ち会話もままならない状態になりますので、
当然食事は摂れなくなります。
肝臓でグルコースを貯蔵する機能が落るため、その分ダイレクトに血糖値が上がります。
血糖コントロールも不良になります。
このように肝臓病というのはとても診ていてとても辛い疾患なのです。
どの疾患でもそうですが、ターミナルになると
食事療法云々ではなく、患者さんの好むものを出すというのが現状です。
肝臓病でもこのような場面に遭遇することが非常に多く、
「なんでもいいから好きなものを食べてほしい」という思いで病室に通っています。

管理栄養士である以上、食事療法は食事療法としてしっかり頭に入れておくことが重要です。
ただ、素晴らしく管理されている食事を提供しても食べてもらえなければ全くの無意味。
最終的には患者さんの思いを一番に尊重できる管理栄養士でありたいものですね。



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食品会社で勤務しながら、半年間の独学を経て管理栄養士の国家試験に合格。その後、管理栄養士として勤務するために病院へ転職。6年間で3つの病院を経験。現在は、管理栄養士国家試験の参考書の校正や答案添削を行っています。 <取得資格>管理栄養士、栄養教諭、糖尿病療養指導士、病態栄養認定管理栄養士、NST専門療養士
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