2017年08月26日
H脂質の代謝と栄養【ポイント】
今日は、脂質の消化と吸収についてお話します。
【脂質の消化】
摂取された脂質は、十二指腸に分泌される胆汁酸塩によりまず乳化されます。
乳化によって各消化酵素の効率は高められます。
トリアシルグリセロールは膵液リパーゼによって、
大部分がモノアシルグリセロールと脂肪酸に加水分解されます。
リン脂質はホスホリパーゼA2によってリゾリン脂質と脂肪酸に、
コレステロールエステルはコレステロールエステラーゼによって、
遊離コレステロールを脂肪酸に加水分解されます。
【脂質の吸収】
消化により生成されたモノアシルグリセロール、長鎖脂肪酸、リゾリン脂質、遊離コレステロールは、
胆汁酸塩とミセルを形成して可溶化され、
小腸吸収上皮細胞の表面でミセルから抜き出されて吸収されます。
吸収細胞に入ったモノアシルグリセロールと長鎖脂肪酸は、トリアシルグリセロールに再合成され、
リン脂質、コレステロールエステル、遊離コレステロールと共に、
アポたんぱく質との複合体であるカイロミクロン(キロミクロン)を形成します。
カイロミクロンはリンパ液中に分泌され、リンパ管を経て血液に入り、
脂肪細胞や筋肉、組織でトリアシルグリセロールの70〜90%を放出し、
カイロミクロンレムナントとなり、肝臓に取り込まれます。
グリセロールと短鎖及び中鎖脂肪酸は、ミセルを形成せずそのまま容易に吸収細胞に吸収され、
トリアシルグリセロールに再合成されることなく、門脈を経て肝臓に運ばれます。
中鎖トリアシルグリセロールは、長鎖トリアシルグリセロールに比べ、消化吸収されやすいものです。
脂質の吸収のほとんどは空腸で行われます。
【吸収後の脂質】
各組織に運ばれたカイロミクロン中のトリアシルグリセロールは、
末梢血管壁に存在するリポたんぱく質リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解されます。
脂肪酸は脂肪組織に取り込まれてトリアシルグリセロールとして貯蔵したり、
筋肉などに取り込まれてβ酸化を受けてアセチルCoAとなり、
クエン酸回路、電子伝達系を経てエネルギー篇として利用されます。
【リポたんぱく質】
食物から吸収した脂質や、肝臓・脂肪組織などで合成された脂質は、血中を通って各組織へ輸送されるが、
脂質は水に溶けないため、そのままの形では輸送することができません。
そこで、疎水性のトリアシルグリセロールやコレステロールエステルを、親水性部分をもつリン脂質や
遊離コレステロールで包み込むような形状にして、
リンパ液や血液中に溶け込めるようにしています。
その表面には、少量のアポたんぱく質と呼ばれるたんぱく質が結合しています。
このような脂質とたんぱく質の複合体をリポたんぱく質と言います。
アポたんぱく質は、リポたんぱく質の構造を安定させ、
リポたんぱく質代謝に関与する酵素を活性化し、
各種細胞の表面にあるリポたんぱく質受容体を結合する分子として働きます。
【遊離脂肪酸】
血中を流れる脂質には、リポたんぱく質の他に有利脂肪酸があります。
脂肪組織から放出された遊離脂肪酸は、血漿中ではアルブミンと結合した形で輸送され、
肝臓や筋肉、心臓でエネルギー源として利用されます。
血漿中の遊離脂肪酸濃度は、食事直後で低く、飢餓状態で高いのが特徴です。
【脂肪酸の分解】
脂肪酸の分解過程をβ酸化といい、ミトコンドリアのマトリックス内で行われます。
細胞内の脂肪酸は、アシルCoAシンターゼの作用によりアシルCoAに変換され、活性化されます。
アシルCoAそのままではミトコンドリアの内膜を通過できないので、
内膜中に存在する運搬隊のカルニチンとCoAを変換し、
アシルカルニチンとなってミトコンドリアに入ります。
ミトコンドリア内でカルニチンを通して再びアシルCoAとなり、β酸化を受けます。
β酸化は、脂肪酸のカルボキシル基側から2個ずつ炭素が酸化され、
アセチルCoAとして切断され、離脱していく反応です。
この反応の繰り返しによってアシルCoAは全てアセチルCoAとなります。
【ケトン体の生成】
ケトン体とは、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称です。
脂肪酸のβ酸化によって生じたアセチルCoAの内、
クエン酸回路で処理できない過剰のアセチルCoAは、
主に肝臓のミトコンドリアでケトン体に合成されます。
生成されたケトン体は血中に放出され、
筋肉、脳、腎臓などの肝外組織に運ばれ、再びアセチルCoAに変換されてクエン酸回路に入り、
エネルギー源として利用されます。
ただし、肝臓にはケトン体を代謝する酵素がないため、
ケトン体をエネルギー源として利用することができません。
飢餓や糖尿病のように末梢の細胞へのグルコース供給十分でない場合、
血中の遊離脂肪酸濃度が上昇し、ケトン体の合成が亢進します。
ケトン体の合成亢進により、血中のケトン体濃度が上昇した状態をケトーシスと言います。
ケトン体の内、アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は酸であるため、
ケトーシスが進むと血液のpHが酸性に傾くアシドーシスとなり、生命の危機となります。
【コレステロールの生合成】
コレステロールは生体膜構成成分として重要な物質であるとともに、
胆汁酸やステロイドホルモン、プロビタミンD3の前駆物質でもあります。
ヒトは食事から1日0.1〜0.5gのコレステロールを吸収していますが、
生体内ではそれよりも少し多い1日0.5〜1gが生合成されています。
コレステロールは、肝臓や小腸などでアセチルCoAから何段階もの反応を経て合成されます。
脂肪酸合成と同様、ペントースリン酸回路で作られたNADPHが利用されます。
この系の律速酵素はHMG-CoA還元酵素で、
最終生成物であるコレステロールによりフィードバック調整を受けます。
次回、問題を出題します。
【脂質の消化】
摂取された脂質は、十二指腸に分泌される胆汁酸塩によりまず乳化されます。
乳化によって各消化酵素の効率は高められます。
トリアシルグリセロールは膵液リパーゼによって、
大部分がモノアシルグリセロールと脂肪酸に加水分解されます。
リン脂質はホスホリパーゼA2によってリゾリン脂質と脂肪酸に、
コレステロールエステルはコレステロールエステラーゼによって、
遊離コレステロールを脂肪酸に加水分解されます。
【脂質の吸収】
消化により生成されたモノアシルグリセロール、長鎖脂肪酸、リゾリン脂質、遊離コレステロールは、
胆汁酸塩とミセルを形成して可溶化され、
小腸吸収上皮細胞の表面でミセルから抜き出されて吸収されます。
吸収細胞に入ったモノアシルグリセロールと長鎖脂肪酸は、トリアシルグリセロールに再合成され、
リン脂質、コレステロールエステル、遊離コレステロールと共に、
アポたんぱく質との複合体であるカイロミクロン(キロミクロン)を形成します。
カイロミクロンはリンパ液中に分泌され、リンパ管を経て血液に入り、
脂肪細胞や筋肉、組織でトリアシルグリセロールの70〜90%を放出し、
カイロミクロンレムナントとなり、肝臓に取り込まれます。
グリセロールと短鎖及び中鎖脂肪酸は、ミセルを形成せずそのまま容易に吸収細胞に吸収され、
トリアシルグリセロールに再合成されることなく、門脈を経て肝臓に運ばれます。
中鎖トリアシルグリセロールは、長鎖トリアシルグリセロールに比べ、消化吸収されやすいものです。
脂質の吸収のほとんどは空腸で行われます。
【吸収後の脂質】
各組織に運ばれたカイロミクロン中のトリアシルグリセロールは、
末梢血管壁に存在するリポたんぱく質リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに分解されます。
脂肪酸は脂肪組織に取り込まれてトリアシルグリセロールとして貯蔵したり、
筋肉などに取り込まれてβ酸化を受けてアセチルCoAとなり、
クエン酸回路、電子伝達系を経てエネルギー篇として利用されます。
【リポたんぱく質】
食物から吸収した脂質や、肝臓・脂肪組織などで合成された脂質は、血中を通って各組織へ輸送されるが、
脂質は水に溶けないため、そのままの形では輸送することができません。
そこで、疎水性のトリアシルグリセロールやコレステロールエステルを、親水性部分をもつリン脂質や
遊離コレステロールで包み込むような形状にして、
リンパ液や血液中に溶け込めるようにしています。
その表面には、少量のアポたんぱく質と呼ばれるたんぱく質が結合しています。
このような脂質とたんぱく質の複合体をリポたんぱく質と言います。
アポたんぱく質は、リポたんぱく質の構造を安定させ、
リポたんぱく質代謝に関与する酵素を活性化し、
各種細胞の表面にあるリポたんぱく質受容体を結合する分子として働きます。
【遊離脂肪酸】
血中を流れる脂質には、リポたんぱく質の他に有利脂肪酸があります。
脂肪組織から放出された遊離脂肪酸は、血漿中ではアルブミンと結合した形で輸送され、
肝臓や筋肉、心臓でエネルギー源として利用されます。
血漿中の遊離脂肪酸濃度は、食事直後で低く、飢餓状態で高いのが特徴です。
【脂肪酸の分解】
脂肪酸の分解過程をβ酸化といい、ミトコンドリアのマトリックス内で行われます。
細胞内の脂肪酸は、アシルCoAシンターゼの作用によりアシルCoAに変換され、活性化されます。
アシルCoAそのままではミトコンドリアの内膜を通過できないので、
内膜中に存在する運搬隊のカルニチンとCoAを変換し、
アシルカルニチンとなってミトコンドリアに入ります。
ミトコンドリア内でカルニチンを通して再びアシルCoAとなり、β酸化を受けます。
β酸化は、脂肪酸のカルボキシル基側から2個ずつ炭素が酸化され、
アセチルCoAとして切断され、離脱していく反応です。
この反応の繰り返しによってアシルCoAは全てアセチルCoAとなります。
【ケトン体の生成】
ケトン体とは、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称です。
脂肪酸のβ酸化によって生じたアセチルCoAの内、
クエン酸回路で処理できない過剰のアセチルCoAは、
主に肝臓のミトコンドリアでケトン体に合成されます。
生成されたケトン体は血中に放出され、
筋肉、脳、腎臓などの肝外組織に運ばれ、再びアセチルCoAに変換されてクエン酸回路に入り、
エネルギー源として利用されます。
ただし、肝臓にはケトン体を代謝する酵素がないため、
ケトン体をエネルギー源として利用することができません。
飢餓や糖尿病のように末梢の細胞へのグルコース供給十分でない場合、
血中の遊離脂肪酸濃度が上昇し、ケトン体の合成が亢進します。
ケトン体の合成亢進により、血中のケトン体濃度が上昇した状態をケトーシスと言います。
ケトン体の内、アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は酸であるため、
ケトーシスが進むと血液のpHが酸性に傾くアシドーシスとなり、生命の危機となります。
【コレステロールの生合成】
コレステロールは生体膜構成成分として重要な物質であるとともに、
胆汁酸やステロイドホルモン、プロビタミンD3の前駆物質でもあります。
ヒトは食事から1日0.1〜0.5gのコレステロールを吸収していますが、
生体内ではそれよりも少し多い1日0.5〜1gが生合成されています。
コレステロールは、肝臓や小腸などでアセチルCoAから何段階もの反応を経て合成されます。
脂肪酸合成と同様、ペントースリン酸回路で作られたNADPHが利用されます。
この系の律速酵素はHMG-CoA還元酵素で、
最終生成物であるコレステロールによりフィードバック調整を受けます。
次回、問題を出題します。
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