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2021年01月16日

「魔術師」本文 vol,8

「魔術師」本文VOL,8


噴水の周囲には、牛乳色の大理石の石垣が冠のような円形を作って、一間ごとに立っている女神の像の足下から、泉の水は淡々として溢れ膨らみ、絶えず大空の星を目がけて吹き上げながら、アーク燈の光のうちに虹霓(こうげい)となり雲霧となりつつ、夜の空気に潺湲(せんかん)と咽び泣いているのです。



とある公路樹の、鬱蒼とした葉蔭のベンチに腰を卸して、暫く街頭の人ごみを眺めていた私は、間もなく其処の雑踏に異常な現象が現われていることを発見しました。



町の四方から、その四辻の噴水に向かって集まって来る四条(よすじ)の道路は、いずれも夕方のそぞろ歩きを楽しむらしい群衆によって賑わっていますが、しかもそれらの人々のほとんど全部は、一様に同じ方角を志しつつゆるくなだらかに流れて行くのです。



南と北と西と東との道路のうち、南の一筋を除く以外の三つの線を歩く者は、一旦悉く四辻の広場に落ち合ったのち、今度は更に濃密な隊を作り、真っ黒な太い列を成して、南の口へぞろぞろと押して行きます。



そうして今しも、噴水の傍のベンチに憩うている私等二人は、云わば大河の真ん中に停滞している浮州の様に、独り静かに周囲から取り残されているのでした。



「御覧なさい。これほど大勢の人たちがみんな公園へ吸い寄せられていくのです。さあ、我々も早く出かけましょう。」

彼の女はこう云って、優しく私の背中を押して立上りました。



二人はどんなに押し返されても別れ別れにならない様に、鉄の鎖の断片の如く頑丈に腕を絡み合って、人ごみの内に交じったのです。



引用書籍
谷崎潤一郎著「魔術師」中央公論社刊



                          次回に続く。













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