2021年01月18日
「魔術師」本文 vol,28
「魔術師」VOL,28
この魔法に使われる婦人は、多くの場合「王国」の奴隷のおんなですが、もしも見物人の内に有志の婦人があってくれれば、更に有難いと書いております。
以上の例を読んだだけでも、読者はいかにこの魔術師が、凡庸の手品使いと類を異にしているか、了解することが出来るでしょう。
しかし非常に残念なことには、私が入場した折には、既にぷプログラムの大部分が演了せられて、僅かに最終の一番を余している所でした。
私たちが席へ就いてから間もなく、玉座に座っていた彼の魔術師は、やおら立ち上がって舞台の前面へ歩み出て、子供のように顔を赤らめながら、可愛らしい、羞恥を含んだ低い声音(こわね)で、今から取り掛かる魔法の説明を試みました。
「・・・・・・さて、今晩の大詰めの演技として、私は茲(ここ)に最も興味ある、最も不可解な幻術を、諸君にご紹介したいと思います。
この幻術は、仮に『人身変形法』と名付けてありますが、つまり私の呪文の力で任意の人間の肉体を、即座に任意の他の物体・・・・・・鳥にでも虫にでも獣にでも、もしくは如何なる無生物、たとえば水、酒のような液体にでも、諸君のお望みなさる通りに変形させてしまうのです。
或いは又、全身でなくとも、首とか足とか、肩とか臀とか、ある一局部だけを限って、変形させることも出来ます・・・・・・。」
引用書籍
谷崎潤一郎「魔術師」中央公論社刊
この魔法に使われる婦人は、多くの場合「王国」の奴隷のおんなですが、もしも見物人の内に有志の婦人があってくれれば、更に有難いと書いております。
以上の例を読んだだけでも、読者はいかにこの魔術師が、凡庸の手品使いと類を異にしているか、了解することが出来るでしょう。
しかし非常に残念なことには、私が入場した折には、既にぷプログラムの大部分が演了せられて、僅かに最終の一番を余している所でした。
私たちが席へ就いてから間もなく、玉座に座っていた彼の魔術師は、やおら立ち上がって舞台の前面へ歩み出て、子供のように顔を赤らめながら、可愛らしい、羞恥を含んだ低い声音(こわね)で、今から取り掛かる魔法の説明を試みました。
「・・・・・・さて、今晩の大詰めの演技として、私は茲(ここ)に最も興味ある、最も不可解な幻術を、諸君にご紹介したいと思います。
この幻術は、仮に『人身変形法』と名付けてありますが、つまり私の呪文の力で任意の人間の肉体を、即座に任意の他の物体・・・・・・鳥にでも虫にでも獣にでも、もしくは如何なる無生物、たとえば水、酒のような液体にでも、諸君のお望みなさる通りに変形させてしまうのです。
或いは又、全身でなくとも、首とか足とか、肩とか臀とか、ある一局部だけを限って、変形させることも出来ます・・・・・・。」
引用書籍
谷崎潤一郎「魔術師」中央公論社刊
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