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2021年01月18日

「魔術師」本文 vol,24

魔術師」VOL,24

「丘のような物」が何であるかは、今少し詳しく説明する必要がありますが、それはあたかも地獄の絵にある針の山に酷似した、突兀(とつこつ)たる岩石の塊なのです。三角形の、矛(ほこ)のように鋭い岩が磊々(らいらい)と積み重なって、草もなく木もなく、家もなく、黙然と蟠(わだかま)っているのです。


ただこれだけで、「魔術の王国」という看板はあるものの、その王国が何処にあるのやらさっぱりわかりません。

「あそこです。・・・・・・あそこが小屋の入口です。」
と云って、彼の女が指さした方を見ると、成る程看板の辺に、岩と岩との間に挟まった、小さな、窮屈な、鉄の門らしいものがありました。

そうして私たちの立っている沼のほとりから、一条の細長い危なっかしい仮橋(かりばし)が、この門の前までかかっているのです。

「だがあの門は堅く締まっているようだ。見物人の出入りする風もなければ、人間らしい声というものがまるきり聞こえない。あれでも魔術をやっているのかしら。」

私は独り言のように云うと、彼の女はすぐに頷きました。
「そうです。今が大方、魔術の始まっている最中でしょう。あの魔術師はふつうの手品使いと違って、演技の半ばに囃子を入れたり、拍手を求めたりしないそうです。それ程魔術が深刻で、敏速だという話です。

見物のお客も一様に固唾を呑んで、ほとんど総身へ水をかけられたような気持になって、ときどきこっそりと溜息を洩らすばかりだと云います。あの静かさから推量すると、今がきっと演技の最中に違いありません。」

こう云った彼の女の声は、抑えきれない恐怖のためか、それとも怪しい興奮のためか、例になく皴嗄(しわが)れて顫(ふる)えているようでした。
二人はそれ切り黙り込んで、島に通ずる仮橋を渡り始めました。



引用書籍
谷崎潤一郎著「魔術師」中央公論社刊

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