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2021年01月18日

「魔術師」本文 vol,25

「魔術師」VOL,25


門を入って僅かに五、六歩進んだ時、今まで陰惨な暗黒の世界に慣れていた私の瞳は、俄かに満場のまばゆい光線に射竦(いすく)められて、ぐりぐりと抉られるような痛みを感じました。

あの、礧々(らいらい)たる土塊の外見を持っていた魔術の王国は、以外にも金壁燦爛(さんらん)たる大劇場の内部を備えて、柱や天井に隙間なく施された荘厳な装飾が、ようよう(漢字なし)とした電燈に映じて眼の醒めるように輝いているのです。

そうして場内のあらゆる座席は、土間も二階も三階も、ぎっしりと塞がって、身動きも出来ない大入りでした。観客のうちには、支那人だの、印度人だの、欧羅巴人だの、種々雑多な服装をしたすべての人種が網羅されていましたが、なぜか日本人らしい風俗の者は、われわれ以外に一人も見当たりませんでした。

それから又、特等席のボックスには、この都の上流社会の、公園などへ容易に足を踏み入れる筈のない、紳士や貴婦人のきらびやかな一団が並んでいました。

彼らの婦人の或る者は、由緒ある身の外聞を憚るためか、回々(ふいふい)教徒の女人のような覆面をして、人影に肩をすぼめていましたけれど、なおかつ舞台に注がれた二つの瞳には、秘密を裏切る品威と情欲との、鮮やかな色が現れているのでした。

紳士の中にはこの国の大政治家や、大実業家や、芸術家や宗教家や道楽息子や、いろいろの方面で名を知られた男たちが交じっていました。

私は彼らの多くの顔を、嘗て幾度も写真で見たことがあるように感じました。彼らの或る者はナポレオンに似、又或る者はビスマルクに似、或る者はダンテのような、或る者はバイロンのような輪郭を備えているのでした。

其処にはネロもソクラテスもいたでしょう。ゲエテもドン、ファンもいたでしょう。



引用書籍
谷崎潤一郎「魔術師」中央公論社刊



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