スポンサードリンク 「魔術師」本文 vol,30: 1分読むだけ文学通
アフィリエイト広告を利用しています
ブログ紹介
(^_-)-☆管理人アスカミチルです。

このブログは、ユーザーさんを文学通にさせるのがねらい!!
内容は2構成。
★YOUTUBEチャンネル
「動画文学通」毎日P.M.4:00までに「三国志演義」朗読更新。

https://www.youtube.com/
channel/UCTZ5GnDOX9
JTi8NHODbF26A

そして、
★「1分読むだけ文学通」毎日P.M.4:00までに谷崎潤一郎「痴人の愛」本文更新。


アスカミチルさんの画像
アスカミチル
<< 2021年04月 >>
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
カテゴリーアーカイブ
最新記事
月別アーカイブ
検索
アスカミチルお勧めリンク

広告

posted by fanblog

2021年01月18日

「魔術師」本文 vol,30

「魔術師」VOL,30



これは恐らく、誰しも彼の皮膚の色を見た者には当然起こるべき疑いで、その男だか女だかは、決して純白の白人種でも、蒙古人種でも、黒人種でもないのです。

強いて比較を求めたなら、彼の人相や骨格は、世界中での美人の産地と云われているコウカサスの種族に、いくらか近い所があるかも知れません。

けれどももっと適切に形容すると、彼の肉体はあらゆる人種の長所と美点ばかりから成り立った、最も複雑な混血児であるとともに、最も完全な人間美の表象であると云うことができます。

彼は誰に対しても常にエキゾティックな魅力を有し、男の前でも女の前でも、ほしいままに性的誘惑を試みて、彼等の心を蕩(とろ)かしてしまう資格があるのです。

「・・・ところで私は、あらかじめ皆さんにご相談をして置きますが・・・・・」
と、魔術師はなおも言葉を続けました。

「私は先ず試験的に、此処に控えている六人の奴隷を使用して、彼らを一々変形させてご覧に入れます。
しかし私の妖術のいかに神秘な、いかに奇跡的なものであるかを立証するため、私は是非とも満場の紳士淑女が、自ら奮って私の魔術にかかって頂くことを望みます。

既に私がこの公園で興行を開始してから、今晩で二月余りになりますが、その間毎夜のように観客中の有志の方々が、常に多勢、私のために進んで舞台へ登場され、甘んじて魔術の犠牲となって下さいました。

犠牲・・・・・・そうです。それは確かに犠牲です。

貴き人間の姿を持ちながら、私の法力に弄(もてあそ)ばれ、犬となり豚となり、石ころとなり糞土(ふんど)となって、衆人環視のうちに恥を曝す勇気がなければ、この舞台へは来られない筈です。

にも拘わらず、私は毎夜観客席に、奇特な犠牲者を幾人でも発見することが出来ました。中には身分の卑しからぬ貴公子や貴婦人なども密(ひそ)かに犠牲者の間へ加わっておられるという噂を聞きました。

それ故私は、今夜も又例に依って、沢山の有志家が続々と輩出せられることを信じ、且つ誇りとしている次第なのです。」



引用書籍
谷崎潤一郎「魔術師」中央公論社刊




この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/10478268
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。