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2021年01月18日

「魔術師」本文 vol,27

「魔術師」VOL,27


舞台の背景には、一面に黒幕が垂れ下がって、中央の一段高い階段の上に、素晴らしく立派な玉座の如き席が設けておりました。

これがいわゆる「魔術のキングドム」の王の依る可(べ)き席なのでしょう。其処には生きた蛇の冠を頭に戴き、羅馬(ローマ)時代の袍衣(トーガ)を身に着けて、黄金の草履(さんだる)を穿(は)いた極めて年若な魔術師が、端然として腰かけているのです。

階段の下の、玉座の右と左とは、三人ずつの男女の助手が、奴隷のように畏まり、足の裏を観客のほうへ曝して、さも賤し気に額づいています。
舞台の装置と人物とは、僅かにこれだけの、簡単過ぎたものでした。

私は上着のポケットを探って、門を入る時に渡されたプログラムを開けて見ましたが、それには大凡そ二三十種の演技の数が記してあって、どれもこれも悉く前古未曾有な、驚天動地の魔術であるらしく想像されました。  

最も私の好奇心を煽った二三番の例を挙げれば、第一にメスメリズムというのがあります。これは小書きの説明に依ると、場内の観客全体に催眠作用を起こさせるので、劇場内のあらゆる人間が、魔術師の与える暗示の通りに錯覚を感ずるのです。  

たとえば魔術師が、「今は午前の五時だ。」と云えば、人々は爽やかな朝の日光を見、自分たちの懐中時計がいつのまにやら五時を示していることに気が付きます。

その他「此処は野原だ。」と云えば野原に見え、「海だ。」と云えば海に見え、「雨だ。」と云えば体がビショビショに濡れ始めます。

次に恐ろしいのは「時間の短縮」という妖術です。魔術師が一箇の植物の種子を取って土中に蒔き、徐に呪文を唱えると、十分間にそれが芽を吹き茎を生じて花を咲かせ実を結ぶのです。

しかもその植物の種子は、観客のほうで勝手な物を何処からでも択んでくることを望むばかりか、亭々として雲を凌ぐような高い幹でも、鬱蒼として天を覆うような繁った葉でも、十分間に必ず発育させると云うのです。

それに似たのでもっと不気味なのは、「不思議な妊娠」と題せられた演技でした。これも同じく呪文の力で十分間に一人の婦人を妊娠させ分娩させるのだそうです。

引用書籍
谷崎潤一郎
「魔術師」中央公論社刊



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