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2021年01月18日

「魔術師」本文 vol,34

魔術師」VOL、34


「・・・・・・皆さんは魔の王国に捕虜となることを、そんなに気味悪く思うのですか。人間の威厳や形態というものに、それ程執着する値打ちがあると思うのですか。

あなた方は、私のために変形させられた奴隷たちの境遇を、浅ましいもの、哀れなものと考えるかも知れません。しかし彼らの外見は、たとえ蝶々であり孔雀であり、豹の皮であったり燭台であっても、彼らは未だに人間の情緒と感覚とを失わずにいるのです。

そうして彼らの胸の中(うち)には、あなた方の夢にも知らない、無限の悦楽と歓喜とが、溢れ漲っているのです。彼らの心境がいかに幸福を感じているかは、一遍私の魔術を試したお方には、大概お分かりであろうと思います・・・・・・。」

魔術師がこう云って場内の四方を見回すと、人々は彼の瞳に睨まれて催眠術にかけられることを恐れたのか、皆一度に肩を縮めて膝に突っ伏してしまいました。

すると忽ち、さやさやと鳴る衣擦れの音に連れて、土間の一隅から舞台の方へ歩いて行く微かな女の靴の響きが、深い沈黙の底を破って聞こえたのです。

「・・・・・・魔術師よ、お前は私を定めて覚えているだろう。私はお前の魔術よりも、お前の美貌に迷わされて、昨日も今日も見物に来ました。

お前が私を犠牲者の中へ加えてくれれば、それで私は自分の恋が叶ったものだとあきらめます。どうぞ私を、お前の足に穿いている草鞋(サンダル)にさせてください。」

こういう声に誘われて、おずおずと顔を上げた私は、先刻特等席にいた覆面の婦人が、殉教者の如くひれ伏して、魔術師の前に倒れているのを見出しました。


魔術師の魅力に惑わされて、舞台へふらふらと進み出た男女は、覆面の婦人の後にも数十人ありました。
そうして、ちょうど二十人目の犠牲者っとなる可く、夢中で席を離れたのはかく云う私自身でした。


引用書籍
谷崎潤一郎「魔術師」中央公論社刊



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