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2021年01月18日

「魔術師」本文 vol,21

「魔術師」VOL,21

読者は多分、ベックリンの描いた、「死の島」という絵のあることをご存知でしょう。そうして私が、現在説明しようとしている場合は、多少あの絵に似通った効果を、更に冷たく、更に暗く、更に寂寞たる物象に依って現わしているのでした。

先ず第一に、私の神経を極端に脅かしたものは、あの一郭を屏風の如く囲繞(いじょう)して、黒く、堆く、ちくちく(漢字見つからず)とさんりつ(漢字見つからず)しているポプラアの林です。

私がそれを林であると気がつくまでには、よほどの時間を要しました。なぜというのに、遠くから望むと、それはほとんど林と思えないくらい、不可解な格好をしていたからです。

たとえてみれば、ちょうど監獄署の塀のような、頭もなく足もなく、ただ真っ黒な平らな壁が井戸側の如く円く続いて、空に聳えているのです。

しかもだんだん精細に熟視すると、この蜿蜒(えんえん)たる黒壁の輪は、二匹の偉大な蝙蝠が、右と左に立ち別れつつ両方から暗鬱たる翼を拡げて、手を握り合った形状を備えているのでした。

注意すれば注意するほど、蝙蝠の眼や耳や、手や足や、翼と翼との間隔などが、明瞭な輪郭を以て、障子へ映る影法師のように、ありありと、天地の間にふさがっているのです。

それ故、この巧妙なSilhouetteが何で作られたものであろうか、私が判断に苦しんだのも無理がありません。一番最初は森に見え、その次には壁に見え、その次に蝙蝠に見えだしたモンスタアが、じつはやっぱり枝葉の茂った白楊樹(はくようじゅ)の密林を、非常に大規模な、非常に精妙な技術に依って、怪物の姿に模したものだと分かった時、私は一段の驚異と讃嘆とを禁じ得ませんでした。




引用書籍
谷崎潤一郎著「魔術師」中央公論社刊



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