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2021年01月16日

「魔術師」本文 vol,7

魔術師」VOL,7

「私はたびたびその小屋の前を素通りしましたが、まだ一遍も中へ這入ったことがないのです。
その魔術師の姿と顔とは、餘に眩しく美しくて、恋人を持つ身には、近寄らぬ方が安全だと、町の人々が云うのです。

その人の演ずる魔法は、怪しいよりもなまめかしく、不思議なよりも恐ろしく、巧緻なよりも奸悪な妖術だと、多くの人は噂しています。

けれども小屋の入り口の、冷たい鉄の門をくぐって、一度魔術を見て来た者は、必ずそれが病みつきになって毎晩出かけて行くのです。

どうしてそれ程見に行きたいのか、彼らは自分でも分かりません。きっと彼らの魂までが、魔術にかけられてしまうのだろうと私は推量しているのです。

ですがあなたはその魔術師をまさか恐れはしないでしょう。人間よりも鬼魅(きみ)を好み、現実よりも幻覚に生きるあなたが、評判の高い公園の魔術を見物せずにはいられないでしょう。

たとえいかなる辛辣な呪詛や禁厭(まじない)を施されても、恋人のあなたと一緒に見に行くのなら、私も決して惑わされる筈はありません。・・・・・・・・・」

「惑わされたら惑わされるがいいじゃないか。その魔術師がそんなに綺麗な男なら。」
私はこう云って、春の野に啼く雲雀のように、快活な声でからからとわらいました。

しかしその次の瞬間には、ふと、胸の底に湧いてきた淡い不安と軽い嫉妬に裏切られて、早速言葉を荒(あ)らげずにはいられませんでした。

「それではこれからすぐ公園へ行って見よう。われわれの魂が魔法にかかるかかからないか、お前と一緒にその男を試してやろう。」

二人はいつか町の中央にある廣小路の、大噴水の滸(ほとり)をさまようていたのでした。



引用書籍
谷崎潤一郎著「魔術師」中央公論社刊


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