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2021年01月16日

「魔術師」本文 vol,5

魔術師VOL,5


「私はこの間、彼処(あすこ)の活動写真館で、あなたが平生耽読している古来の詩人芸術家の、名高い詩篇や戯曲の映画を幾度も幾度も見せられました。

ホオマアのイリアッドだの、ダンテの地獄の写真などは、あなたも多分ご存じでしょう。しかしあなたは、支那小説の西遊記の、西梁女国(さいりょうじょこく)の艶魔の媚笑をご覧になったことがありましょうか。

又アメリカのポオの作った、恐怖と狂騒と神秘との、巧緻な糸で織りなされた奇(あや)しい幾個の物語が、フィルムの上に展開して、眼前に現れて来る凄まじさを、嘗(かつ)て想像したことがあるでしょうか。

”The Black Cat”の戦慄すべき地下室の状況や、”THE Pit and the Pendulum"の暗鬱たる牢獄のありさまが、小説よりも更に不気味に、実際よりも更に鮮やかに、強く明るく照らし出される刹那の気持ちを味わってごらんなさい。

しかもそれらの幻燈劇を、黙って静かに見物している数百人の観客は、みんな悪魔に魘(うな)されたようにビッショリと冷や汗をかき、女は男の腕に絡まり男は女の肩にしがみついて、歯をくいしばっておののきながら、一心に執拗に、昂奮した怯えた瞳を、映画の上へ注いでいるのです。

彼らは折々、熱に浮かされた病人のような微かな嘆息(ためいき)を洩らすばかりで、咳(しわぶき)一つ、眼瞬(またた)き一つしようとする者はいませんでした。

そんなことをする隙のない程、彼等の魂は興味で充たされ、彼等の体は硬直しているのです。
たまたま餘の明白さに堪えかねて、面を背けて逃げ出そうとする者があると、真っ暗な観客席の何処からともなく、気違いじみた、けたたましい拍手の声が起こります。

すると拍手は忽ちの間に四方へ瀰漫(びまん)し、内々浮き腰になっていた連中までが相和して、館の建物を震撼(しんかん)するような盛んな響きが、暫く場内にどよめき渡るのです。・・・・・・・・・」




引用書籍
谷崎潤一郎著「魔術師」中央公論社刊

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