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2021年01月16日

「魔術師」本文 vol,3

「魔術師」VOL,3



善も悪も、美も醜も、笑いも涙も、すべてのものを溶解して、ますます巧眩な光を放ち、炳絢(へいけん)な色を湛えている偉大な公園の、海のような壮観を云うのです。

そうして、私が今語ろうとする或る国の或る公園は、偉大と混濁との点において、六区よりも更に一層六区式な、怪異な殺伐な土地であったと記憶しています。


浅草の公園を、鼻もちのならない俗悪な場所だと感ずる人に、あの国の公演を見せたなら果たして何と云うでしょう。
其処には俗悪以上の野蛮と不潔と潰負とが、溝(どぶ)の下水の澱んだように堆積して、昼は熱帯の白日の下に、夜は煌々(こうこう)たる燈火の光に、恥ずる色なく暴き暴かされ、絶えず蒸し蒸しと悪臭を発酵させているのでした。

けれども、支那料理の皮蚕(びいだん)の旨さを解する人は、暗緑色に腐り壊れた鶩(あひる)の卵の、胸をむかむかさせるような異様な匂を掘り返しつつ、中に含まれた芳鬱(ほううつ)な渥味(あくみ)に舌を鳴らすということです。

私が初めてあの公園へ這入(はい)った時にも、ちょうどそれと同じような、薄気味の悪い面白さに襲われました。何でもそれは初夏の夕べの、涼しい風の吹く時分だったでしょう。




私がその町のとあるカフェで、私の恋人と楽しい会合を果たした後、互いに腕を組みあって、電車や自動車や人力車の繁く往き交うアベニュウを、睦まじそうに散歩している最中でした。





「ねえあなた、今夜これから公園へ行って見ようではありませんか。」
と、彼の女が突然、あの妖艶な大きな瞳をぱっちりと開いて、私の耳元で囁いたのです。


引用書籍
「魔術師」谷崎潤一郎著、中央公論社刊



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