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2016年09月10日
被災したピアノの修理(天声人語9/10)
東日本大震災で壊れたピアノを修理している宮城県石巻市の楽器店サルコヤを訪ねた。
難敵は隅々にしみ込んだ海水の塩分だと井上晃雄社長(87)は話す。
水で汚れを落とし部品を交換しても、塩分が残っているため錆が出て音が狂う。
失敗の末、塩分を除去する技術を持つ神奈川県のベンチャー企業を探し当てた。
これまで修理されたピアノは愛知や兵庫へ引き取られた。
今修理中の6台目は、被災の翌春、歌手シンディ―・ローパーさんが市へ寄贈した一台である。
この16日には市民病院で演奏される。
音色に関係の少ない傷はあえて残しましたと井上社長。
当時、店には30台のピアノ、管楽器、弦楽器があった。被害総額は5千万円。
店を畳めば津波に負けたことになるとがんばってきました、と。
感想とか…
私は学生時代に中学からずっと吹奏楽部に所属していました。
おもに金管楽器を担当し楽しい時間を過ごしました。
大人になってお金に余裕ができると自分の楽器を何度か買い、大切に使いました。
毎日、毎回使う楽器には当然愛着がわき自分の分身のように思えてきます。
そんな楽器たちが津波の被害にあって壊れて処分されてしまう事はとても悲しいことです。
もちろんいつかはこわれて処分されるのですが、天寿を全うできずにこの世を去っていく楽器にいたたまれない気持ちになります。
私は楽器を修理してくれる職人さんを尊敬しています。
大切にしているケガした「分身」を直してくれるからです。
楽器がなければ、私の音楽活動は成り立ちません。
重要な部分をあつかって貰ってるのです。
ただでさえそういう気持ちを持っている中、この石巻市の井上社長のような方には敬意を表したいです。
私が使っている管楽器は個人的な所有が多いですが、ピアノとなればその性質上、多くの人に演奏してもらう機会があるようにそれに携わる人の数は管楽器の比ではありません。
数の問題ではありませんが、一つの楽器を修理する、それも困難な状況にある楽器を救うことはとても大きな意味があるからです。
市民病院で演奏されるとのことですが、その音色に癒される人も多いはず。
同じ趣味をもつひとのなかに、まれに楽器を乱雑に扱う人がいます。
あえて注意などはしませんが、心の中では「あなたに音楽をやる資格はない」と言ってやります。
音楽から離れざるを得なくなった今、強くそう思います。