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2016年02月06日

刑事訴訟法 予備試験平成26年度

問題文省略

回答
1 本件ICレコーダーに伝聞法則が適用され証拠能力が否定されないか。
(1)320条1項は、供述証拠であって、反対尋問、偽証罪の警告と宣誓、裁判官による供述態度のチェックを経ない証拠の証拠能力を原則として否定している。したがって、伝聞証拠とは公判廷外の供述を内容とする証拠であって、供述内容の真実性を証明するために用いるものをいうと解する。本件ICレコーダーは公判廷外の供述を内容とする供述といえ、また、要証事実は甲が刑法198条の構成要件事実該当事実を行ったことと解され、その証明には供述内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たり、原則として証拠能力が否定される。
(2)もっとも、以下の場合には証拠能力が認められる。
ア 甲の同意があり、相当性が認められる場合(326条1項)。
イ 321条以下の伝聞例外に当たる場合も、証拠能力を認める必要性と信用性の情況的保障があるため例外的に証拠能力が認められる。本問では322条1項該当性を検討する。
(ア) 前述のように本件ICレコーダーは「被告人が作成した供述書」に当たる。「書面」と解すると甲の署名・押印が必要となるが、署名・押印を要求する趣旨は録取者の供述過程を解消することであるところ、録音過程は機械的ゆえに供述過程とは質的に異なるから、「書面」と解する必要はない。
(イ) 供述内容は刑法198条1項の犯罪事実の全部を認める内容であり、「自白」(憲法38条2項、法197条1項)に当たるから、「承認」(刑事上不利益な内容すべて)に含まれる。
(ウ) 但書の任意性の要件を検討する。憲法38条2項、刑訴法197条1項が不任意自白の証拠能力を否定した自白法則の趣旨は、不任意自白は虚偽の可能性が高く、また、人権侵害のおそれもあることである。したがって、不任意自白か否かは@虚偽の供述が行われるほど強い心理的圧迫があることまたはA人権侵害があることを要件として判断すべきと解する。本件では、偽計が用いられてはいるが強い心理的圧迫はないと認められ(@不該当)、甲は黙秘権の告知を受け自らの意思で供述を始められたと認められるから人権侵害もないと認められ(A不該当)、不任意自白に該当しない。したがって、任意性も認められる。
(3)以上より、322条1項の伝聞例外が認められ、伝聞法則により証拠能力が否定されることはない。
2 次に、違法収集証拠排除法則により証拠能力が否定されないかを検討する。同法則は先に検討した自白法則とは別物であるから(二元説)、別に検討する必要があると考える。
(1) 証拠採取過程の違法性
ア 強制処分法定主義(197条1項但書)違反の有無
 供述調書にしないし誰にも言わないと虚言を述べたうえで甲の供述内容を密かに録音した捜査方法には明文がないため、強制処分法定主義(197条1項但書)に反しないか検討する。
 多彩な捜査方法がある現代において可及的に人権保護を図るため、「強制の処分」とは意思を制圧し、重要な権利利益の制約を伴う処分を言うと解する。
 本件では黙秘権(憲法38条1項)という重要な人権が問題となっているが、自白法則の検討の際に見たように甲は自らの意思で供述しており、意思の制圧を伴っていない。また、供述させるに至った態様も「制約を伴う」ものとは言えない。
 したがって「強制の処分」には該当しない。
イ 捜査比例原則(197条1項本文)違反の有無
 すると本件の捜査方法は任意捜査となるが、任意捜査の適法要件は必要性・相当性である。
 本件では、銀行取引の履歴などから犯罪の有力な間接証拠は得ていたという捜査の進展状況から、甲の嫌疑の程度は高い。しかし、罪体につき直接証拠はなく、この点につき自白を得たとしても結局補強法則(憲法38条3項、法319条2項)により補強が必要であるから、証拠の重要性は小さいから、必要性はそれほど大きいものではない。
 にもかかわらず、Kはあざとい虚言を用いたうえ甲に無断で供述を録音しており、相当性は認められないというべきである。
 したがって、本件捜査には比例原則違反の違法がある。
(2)排除相当性
 違法収集証拠排法則の趣旨は、違法収集証拠は適正手続(憲法31条)を害し、司法の廉潔性を害し、将来の違法捜査抑止の観点から証拠とすべきでないことであり、そのため@違法の重大性とA排除の相当性を総合的に判断して排除相当性を判断すべきである。
 本問では前述のようにあざとい虚言と無断の録音という行為は甲の供述の自由に対する重大な違法であり、Kの法無視の態度から将来の違法捜査抑制のため排除相当性が大きい。
(3)したがって、本件ICレコーダーは違法収集証拠として証拠能力が認められない。 以上

刑事訴訟法 平成19年度第2問

問題文
 検察官は、甲を、「被告人は、乙と共謀の上、平成19年3月4日、東京都内のX公園駐車場の自動車内で、殺意をもって、被告人において、Aに対し、その頸部をロープで締め付け、よって、そのころ、同所で、Aを窒息死させたものである。」との事実で起訴した。甲は、公判において、「自分はその場にいたが、犯行に関与しておらず、本件は、乙とは別の男がやった。」その男の名前は知らない。」旨弁解して無罪を主張した。
 証拠調べの結果、裁判所は、乙とは断定できないが、現場に共犯者がおり、これと甲が共謀したことは明らかであるとして、「被告人は、氏名不詳者と共謀の上、平成19年3月4日、東京都内のX公園駐車場の自動車内で、殺意をもって、被告人または上記氏名不詳者あるいはその両名において、Aに対し、その頸部をロープで締め付け、よって、そのころ、同所で、Aを窒息死させたものである。」との事実を認定し、有罪判決を言い渡した。
 以上の手続における問題点について論ぜよ。

回答
1 本問の公訴事実から本問の事実認定をするには訴因変更手続(312条1項)が必要ではないか。訴因変更の要否の判断基準が問題となる。
2(1)そもそも公訴事実と訴因は同義であるが、公訴事実に訴因を明示する(256条3項)趣旨・目的は、審判対象を識別・特定し、また、被告人の防御の利益に資することである。このうち、被告人の防御の利益に資する点は、訴因に明示しなくても公判手続全体を通して達成されるべき事柄であるから、第一次的趣旨は審判対象の識別・特定と解する。そうすると、審判対象の識別・特定のために必要な事実について異なる認定をするためには訴因変更が必要である。
(2)本件は公訴事実では「乙と共謀の上」「被告人において」というように、共謀者と実行行為者が特定していたが、認定された事実ではこれらがそれぞれ「氏名不詳者と共謀の上」「被告人又は上記氏名不詳者あるいはその両名において」というように、いずれも不特定とされている。
 しかし、これらの事実は殺人罪の構成要件該当事実のうち主要事実になるものではないし、他事件との識別の上でどうしても必要な事実でもない。
(3)したがって、これらの事実は審判対象の識別・特定のために必要な事実ではないから、審判対象の識別・特定の見地からは訴因変更は不要である。
3(1)もっとも、審判対象の識別・特定のための事実に変化はなくても、被告人の防御のために重要な事実について異なった認定をする場合には、原則として訴因変更手続きを経たうえで、被告人に防御の対象を明らかにすべきである。したがって、被告人の防御のために重要な事実が訴因に明示された以上、それと異なった認定をするには原則として訴因変更が必要と解する。しかし、具体的な審理経過から、当該事件において被告人の防御の利益を害していない場合には例外的に訴因変更手続きは不要と解する。
(2)本件では、共謀者及び実行行為者が訴因に明示されており、甲は乙との共謀の事実や自ら実行行為をしたことに対して防御を集中させると考えられるから、それらは甲の防御のために重要な事実と言える。
 具体的な審理経過を見ると、確かに、本件では共謀者及び実行行為者は争点として顕在化していない。しかし、甲はその場にいたことを認めたうえで犯行への関与を争っており、実質的には乙との共謀や自ら実行行為を行ったことを争っていたと見得るから、少なくとも具体的審理経過において甲の防御の利益に支障がないとは言い切れない。
(3)したがって、本件の事実認定をするには被告人の防御の利益の観点から訴因変更手続が必要であった。
4 本件の手続には訴因変更手続きを経ていないという問題点がある。 以上

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刑法 予備試験平成27年度

1 丙の罪責
(1)丁を通じて甲から50万円を受け取った行為に受託収賄罪の成否を検討する(197条1項後段)。
 賄賂罪の保護法益について、判例は職務行為の公正とこれに対する社会一般の信頼であるとしている(信頼保護説)。この他に職務行為の適正性であるとする見解(純粋性説)や、公務員の職務に関する権限行使が不正な対価によって左右されることとする見解(不可買収性説)がある。信頼保護説を採用するとしても、職務の公正とこれに対する社会一般の信頼が害されるのは、賄賂によって公務員の権限行使が歪曲された場合のことであるから、不可買収性説の要素も加味して考えるべきと解する。
 「公務員」とは7条1項の者を言い、丙はB市職員であるからこれに当たる。
 「賄賂」とは職務行為の対価としての一切の利益を言う。現金はこれに当たるから、50万円はこれに当たる。
 「職務に関し」とは職務行為関連性を意味する。具体的職務権限の範囲内の行為の他、一般的職務権限の範囲内の行為や職務密接関連行為も含む。B市がA社と契約締結することは、公共工事に関して業者を選定し、B市として契約を締結する職務に従事していた丙の具体的職務権限の範囲内であるから、これを満たす。
 「嘱託」とは、公務員に対し、職務に関して一切の行為を行うことを依頼することであり、単に好意ある取り扱いを依頼することでは足りない。甲が丙に依頼したのは、今度発注予定の公共工事についてA社と契約することであり、これは単なる好意ある取り扱いを超えて職務に関する行為を依頼しているから、「嘱託」に当たる。「受けて」というためには承諾したことが必要であるところ、丙は「分かった。何とかしてあげよう。」と言っているから、これを満たす。
 以上により職務行為の公正とこれに対する社会一般の信頼が害されたから、丙の行為に受託収賄罪が成立する。
(2)なお、丙が実際にA社と契約を結んだ行為は法令上何ら問題がないから、加重収賄罪(197条の3第1項)は成立しない。同罪は公務員が受託収賄罪等により「不正な行為」をしたことを処罰するものであるところ、上記行為は「不正」ではないからである。
2 丁の罪責
 丁が甲から50万円を受領した行為に受託収賄罪の幇助犯(62条1項、197条1項後段)の成否を検討する。
(1)問議する犯罪は共同正犯ではないかが問題となる。正犯と共犯の区別は自己の犯罪と評価できるか否かで行うべきところ、丁は本件の犯行の意思形成過程に加わっていないこと、丙から何も聞かされていなかったところ賄賂の金員の受領のみを偶然に担当したに過ぎないことから、自己の犯罪とは評価できず、幇助犯にとどまる。
(2)公務員の身分を有していない丁が受託収賄罪を幇助できるかが問題となる。「身分によって構成すべき」「身分によって特に刑の軽重があるとき」という文言から、65条1項は真正身分犯、2項は不真正身分犯の規定と解する。受託収賄罪は「公務員」であることを要件とする真正身分犯である。したがって、65条1項に基づき、身分のない丁も受託収賄罪の幇助犯となりうる。
(3)丁は甲から現金50万円を受け取るという「収受」(197条1項)を分担することにより、丙の犯罪に物理的因果性を与えた。
(4)幇助犯は、正犯の実行行為及び結果に対し物理的心理的に因果性を及ぼしたことを処罰する処罰拡張類型である。幇助犯を含む狭義の共犯の処罰根拠は正犯を堕落させたことではなく、正犯を通じて間接的に法益侵害結果を惹起したことである。そのため、幇助犯が成立するためには、物理的心理的に正犯の実行行為及び結果に因果性を及ぼしたという客観的要件の他、そのすべてについて故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)が必要である。
 本件で丁は、甲からこれまでの経緯を聞いているから、自己の行為が賄賂の金員の授受に
あたることは認識していたといえる。
 よって、丁に受託収賄罪の幇助犯が成立する。
3 甲の罪責
(1)用度品購入用現金を賄賂に用いた行為にA社に対する業務上横領罪(253条)の成否を検討する。
用度品購入用現金はA社に所有権があるから、「他人の物」である。
 「占有」は窃盗罪との区別のための要件であり、その有無は、所有者と占有者に上下関係がある場合には、原則として所有者に占有があるが、占有者に占有物に関する包括的な権限があった場合には占有者に占有があると解する。本件で甲は、A社の総務部長として、A社から用度品購入用現金を手提げ金庫に入れてその用途に従って支出する権限を有していたから包括的権限があったといえ、甲に「占有」があると言える。
 「横領」とは不法領得の意思の実現行為を言い、横領罪における不法領得の意思とは、横領罪の保護法益が所有権及び委託関係であることから、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思をいう。用度品購入用現金をその他の用途に使うことは所有者でなければできない処分であるから「横領」に当たる。
 「業務」とは、委託を受けて物を管理することを内容とする事務のことであり、甲の有していた権限はこれに当たる。
 したがって、甲の行為に業務上横領罪が成立する。
(2)丙に対し、丁を通じて50万円を渡した行為は、197条1項の賄賂の「供与」(198条)に当たり、贈賄罪の共同正犯(60条、198条)の成否を検討する。
 甲は乙に頼まれて賄賂を供与したに過ぎないから、同罪の幇助犯ではないか。正犯と共犯の区別が問題となる。
 前述のように正犯と共犯の区別は自己の犯罪といえるか否かにより、その判断には@動機、A人間関係、B意思形成過程の積極性、C犯行に果たした役割、D犯行後の行為状況、E犯罪の性質を考慮する。
 本件でA甲は乙に恩義を感じていたことから、乙に恩返しをするため、自ら犯行を決意し、乙にその旨を告げている。また、C甲は単独で実行行為という重要な役割を分担している。これらのことを考慮すると、@甲の目的が専ら乙を助けることにあり、D行為後に自己に犯罪の利益を帰属する意思がなかったとしても、自己の犯罪と評価すべきである。
 したがって、甲に贈賄罪の共同正犯が成立する。
(3)業務上横領罪と贈賄罪は目的手段の関係があるから牽連犯となる(54条1項後段)。
4 乙の罪責
 甲を通じて、丙に50万円を渡した行為に贈賄罪の共同正犯の成否を検討する。ここでも乙の正犯性が問題となる。
 乙はA社の営業部長に就任したが売り上げが下降し、営業成績が直近1か月で向上しないと降格させられる状況にあった。この状況で降格を回避するため、乙は甲に対して、甲が丙の同級生であり、甲は自己に恩義を感じていることを利用し、B市との契約の受注という賄賂の対価の内容や、対価を用度品購入用現金から支出することなど、詳細に計画して甲に伝えている。このように、@乙に利益が帰属することや、B詳細な犯行計画を立てて犯行に主導的役割を果たしたことに鑑みると、C実行行為自体を分担していなかったとしても、自己の犯罪と評価すべきである。
 したがって、乙に賄賂罪の共同正犯が成立する。  以上

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posted by izanagi0420new at 17:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成26年度

1 甲の罪責
(1)Vに仏像を交付させた行為に詐欺罪(246条1項)の成否を検討する。
ア 代金を支払う意思がないのに鑑定が必要であると嘘をついて仏像の引渡しを求めた行為は、人の錯誤を惹起する行為であり、財物の交付に向けられており、交付の基礎となる重要な事項を偽るものであるため「欺いて」の要件を満たす。
 Vは代金を受け取り損ねることはないだろうと、甲の支払意思について錯誤に陥っている。
イ では、錯誤に基づく処分行為が認められるか。窃盗罪との区別のため、「交付」といえるためには占有の弛緩の認識では足りず、占有の移転の認識が必要と解するところ、Vは、仏像を近くの喫茶店で鑑定させる認識でいるのだから、他人の支配下に移す認識即ち占有の移転の認識があると認められ、「交付」の要件も満たす。
ウ 詐欺罪も財産罪であるから財産上の損害も書かれざる要件として必要と解するが、詐欺罪は個別財産に対する犯罪であり、財産とともに交付目的も保護法益と解されるから、交付目的に錯誤がある限り交付自体が財産上の損害に当たると解する。
 Vは、逃走しようとする甲の意図を見破り、同人の逃走を妨害して代金を支払わせる可能性を残したが、鑑定させるという交付目的には錯誤があり、すでに仏像は交付済であるため、交付自体が財産上の損害となる。
エ 以上より、甲の行為に詐欺罪が成立する。
(2)仏像の返還や代金の支払いを免れる意図で、Vの腹部を殺意をもってナイフで一回突き刺し重傷を負わせた行為に強盗殺人未遂罪(243条、240条)の成否を検討する。
ア 前提として、240条は「死亡させたとき」と結果的加重犯のような規定ぶりになっているが、同条は強盗の際に殺人が行われることが刑事学上顕著であることに鑑み特に構成要件化したもと解されるから、殺人の故意ある場合も当然に含むと解する。
イ 刃体の長さ訳15センチメートルという長いナイフという凶器で、腹部という身体の枢要部を突き刺す行為は殺人の実行行為というに十分であり、甲には代金の支払いを免れる目的即ち「財産上不法の利益を得」(236条2項)る目的があるので、強盗殺人罪の構成要件に該当する。
ウ もっとも、甲はVにナイフを突きつけられたことに対して上記の行為をしたから、正当防衛の成否が問われる。
(ア) ナイフを突きつけられて、仏像の代金を支払うよう脅されている甲には、自らの生命及び財産に対する急迫不正の侵害がある。ここで、Vが代金を支払うよう申し向けているのは権利行使であるが、行使態様が社会通常の相当性を欠くため恐喝罪を構成しており、「不正」(違法を意味する)の侵害である。
(イ) 「防衛するため」という文言から防衛の意思が必要と解するが、甲は自分の生命と財産を守る意思があると言える。
(ウ) 「やむを得ずにした」とは防衛行為の相当性を意味する。本問では、甲はVよりも若く体格も優っているから、Vからの侵害に対してはナイフを奪う時点で十分であり、その後ナイフを取り返そうとして甲につかみかかってきたVに対しては、素手で応戦するのが相当であったところ、甲は前述のように殺人の実行行為をもって応戦しているのだから、相当とは言えない。
(エ) したがって、甲には強盗殺人未遂罪が成立するが、正当防衛は成立せず、過剰防衛(36条2項)として刑が任意的に減免されるにとどまる。
(3)甲には@詐欺罪、A強盗殺人未遂罪が成立し、両者は併合罪(45条)となる。
2 乙の罪責
(1)仏像をホテルから持ち帰った行為は詐欺罪の幇助犯(62条1項、246条1項)の客観的構成要件に該当するが、乙には故意(犯罪事実の認識・予見、38条1項)がないため、同罪は成立しない。
(2)仏像をホテルから持ち帰り、自宅に保管中に盗品であることを知り、その後もなお保管をつづけた行為に盗品保管罪(256条2項)が成立する。成立の時点は盗品であることを知った時点である。
(3)甲に無断で仏像を500万円で第三者に売却し、その代金を費消した行為に委託物横領罪(252条1項)は成立しない。なぜなら、同罪の保護法益は所有権及び委託関係と解されるところ、甲には所有権がなく、また、甲乙間の委託関係は保護に値しないからである。
 しかし、乙の行為は「占有を離れた他人の物」を、不法領得の意思をもって領得する行為だから、占有離脱物横領罪(254条)が成立する。
(4)乙には@盗品保管罪とA占有離脱物横領罪が成立し、@とAは併合罪(45条)となる。 以上

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posted by izanagi0420new at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成25年度

第1 Vに現金50万円を振り込ませた行為
1 甲の罪責
 甲に詐欺罪(246条1項)の成否を検討する。
(1)Vの息子を装い、交通事故を起こしたと嘘を言い、50万円を要求する行為は「欺いて」に当たり、Vはそれにより錯誤に陥り、錯誤に基づく処分行為として50万円をA名義の預金口座に振り込んでいる。
(2)もっとも、引き出される前に預金口座の取引停止措置が講じられたから、財産的損害が生じておらず、詐欺罪は成立しないのではないか。詐欺罪も財産罪である以上、財産的損害が書かれざる要件になると解するが、詐欺罪は個別財産に対する罪であり、同罪は交付目的も保護法益としていると解されるから、交付目的が異なる限り、交付自体が財産的損害を構成すると解する。
 本問では、Vは交通事故の示談金として50万円を振り込むという交付目的であるから、交付目的が異なる。そのため交付自体が財産的損害となる。
(3)以上より、甲に詐欺罪が成立する。
2 乙の罪責
 乙に詐欺罪の幇助犯(62条1項、246条1項)の成否を検討する。
(1)前提として問議する犯罪は共同正犯なのか幇助犯なのかが問題となるが、乙は本件のVに対する犯罪について全く意図しておらず、本件は甲が乙に黙って行ったものであるから、乙には明らかに正犯意思がない。そこで幇助犯を検討する。
(2)幇助とは、正犯に物理的心理的因果性を及ぼすことによって正犯の実行行為及び結果惹起を促進することを言う。正犯である甲は犯行の際に乙の準備した部屋から、乙の準備した携帯電話を用いて、乙に誘われて常習的に行っている手口を用いて上記犯罪を実行し、既遂結果を惹起したのであるから、乙は甲が今回行った犯罪の実行行為及び結果に物理的因果性を及ぼしている。
(3)故意(38条1項)がないのではないかが問題となるが、故意とは犯罪事実の認識・予見である以上、だれの法益を侵害するかまでの認識の齟齬は故意を阻却しないと解する。つまり、概括的故意も認められる。
 本件では、乙は甲を誘って、今回甲が行ったのと同様の手口の詐欺罪を繰り返していた以上、Vの法益を侵害する認識がなかったとしても、甲が今回の手口で何者かの財産を侵害する認識を有していたといえるから、故意に欠けることはない。
(4)したがって、乙に詐欺罪の幇助犯が成立する。
3 丙の罪責
 丙は何ら物理的心理的因果性を及ぼしていないから、犯罪は成立しない。
第2 現金自動支払機から現金50万円を引き出そうとした行為
1 甲の罪責
 窃盗未遂罪(243条、235条)の成否を検討する。
(1)自ら準備したA名義の銀行口座に振り込みをさせた時点で預金の占有は甲にあり、占有を移転させるという「窃取」の要件を満たさないのではないか。または、金銭に関しては民法上占有の所在と所有権の所在が一致すると解されていることから、「他人の財物」に当たらないのではないか。いずれにしても本件預金の占有が誰にあるかが問題となるが、この点は金融機関は約款等において預金口座の譲渡を禁止し、これを預金口座の取引停止事由としているから、預金口座の譲渡がなされた時点以降は、当該預金口座に記入された額面の預金の占有は銀行にあると解される。
 したがって、甲が丙を介して引き出し、もって預金の占有を移転させようとして遂げなかった行為に窃盗未遂罪が成立する。
(2)そして、下記の通り、丙とは共同正犯となる(60条、243条、235条)。
2 丙の罪責
 丙を正犯とすべきか従犯とすべきかが問題となるが、正犯か否かは自己の犯罪と言えるか否かで判断すべきであり、事故の犯罪といえるか否かは@動機、A人間関係、B意思形成過程の積極性、C犯行に果たした役割、D犯行後の行為状況、E犯罪の性質を考慮して決めるべきと解する。
 丙は@自らの金欲しさという利己的な動機から甲の要請を受け、C預金を引き出すという実行行為のすべてを単独で担当しているので犯行に果たした役割は大きい。そのため、自己の犯罪と評価すべきである。
 したがって、丙に窃盗未遂罪の共同正犯が成立する。
3 乙の罪責
 乙はこの実行行為については何らの因果性をも及ぼしていないから、犯罪は成立しない。
第3 甲には@詐欺罪、A窃盗未遂罪が成立しているが、これらは別個の主体に対する犯罪だから併合罪(45条)となる。  以上

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posted by izanagi0420new at 15:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成24年度

1 甲及び乙が、甲がX車を運転して乙の乗るY車に衝突させ、よって乙に頸部捻挫の怪我を押させた行為に傷害罪の共同正犯(60条、235条)の成否を検討する。
(1)車同士を衝突させる行為は人の身体に向けられた物理力の行使ではないから「暴行」(208条)には当たらない。しかし、同行為は乙の生理的機能を害しているから「傷害」(204条)に当たる。
(2)しかし、身体という保護法益は放棄可能だから、「人」とは他人を意味し、傷害の被害者を含まないと解すべきであるから、被害者乙は傷害罪の構成要件に該当しない。そのため、以降は甲の傷害罪の単独犯として検討する。
(3)甲及び乙は保険金をだまし取ることを謀議して上記行為に及んだのであるから、乙には傷害を受けることの同意があると言える。この同意が傷害罪の違法性を阻却するかが問題となる。
 被害者の承諾が違法性を阻却するためには、単に承諾があるという事実だけではなく、承諾を得た動機、・目的、傷害の手段・方法、損傷の部位・程度など諸般の事情に照らし、承諾が社会観念上是認されることが要件となると解する。
 本件のように、過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を詐取する目的をもって、被害者の承諾を得てそのものに故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせた場合には、その承諾は保険金を詐取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであって、これによって当該傷害行為の違法性は阻却されない。
 したがって、乙の同意は違法性を阻却しない。
(4)以上より、甲に傷害罪が成立する。
2 甲がX車をY車に衝突させ、Y車が前方に押し出した結果、Aを転倒させてけがを負わせた行為に傷害罪(204条)の成否を検討する。
(1)乙も問題文1の謀議行為に加わっている以上、甲を実行行為者とするAに対する傷害罪の共謀共同正犯となり得るとも思える。しかし、「人の」(204条)を「他人の」と解した以上、甲及び乙はおよそ傷害罪の謀議をしていないと解すべきである。したがって、以下では甲の傷害罪の単独犯の成否を問題にする。
(2)前述のように甲は傷害罪の実行行為を行い、結果も発生している。因果関係があるかが問題となり得るも、Y車に接触して転倒することで生じた傷害結果は凍結した路上で甲車を乙車に衝突させる行為の危険が現実化したものと言えるから、因果関係は認められる。
(3)しかし、甲及び乙は、乙以外の者に傷害結果を生じさせる認識がなく、故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)が阻却されないか問題となる。
 甲には、乙に傷害結果を生じさせる故意はあるのであるから、Aに傷害結果を生じさせた点は事実の錯誤のうち方法の錯誤の事例ととらえることができる。
 方法の錯誤が故意を阻却するかについて、故意責任の本質は犯罪事実を認識して規範に直面し、反対動機の形成が可能であるのにあえて実行行為に出た点への非難である。そして、規範は構成要件として与えられているから、同一の構成要件該当事実を認識・予見している限り故意は阻却されないと解すべきである。
 そして、故意の内容を上記のように抽象化する以上、故意の個数は問題とならず、一人に対する傷害の認識しかなくても複数の故意犯は成立しうると解する。このように解しても罪数処理で観念的競合(54条1項前段)とすればよいから刑が重すぎることにはならない
 そうすると、本件では甲にはAに対する傷害罪の故意も認められるという結論になる。この点、甲側は、大阪高裁の裁判例に倣って、後述のように保険金詐欺を共謀し傷害について同意のあるいわば味方である乙と見ず知らずのAとでは「人」(204条)として同価値とは言えず、故意の付合を認める根拠に欠けると主張しうるが、故意を構成要件レベルで抽象化する以上、人としての同価値性は故意の付合を認める要件ではないと解する。
(4)したがって、甲にAに対する傷害罪が成立する。
3 甲、乙及び丙が、共謀の上、保険会社の担当者Bに対し、保険金をだまし取ろうとした行為に詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)の成否を検討する。
(1)甲、乙及び丙は、問題文1のように、詐欺罪を共謀している(前述のように、傷害罪の共謀はしていない。)。
(2)甲及び乙が保険金支払いを請求した行為が詐欺罪の実行行為たる「欺いて」に当たるが、Bは錯誤に陥らなかったのであるから既遂にならない。
(3)丙は自動車同士を衝突させる以前から「俺は抜ける。」と申し向けて以後の犯行に関与していないから、丙は「共同して」(60条)とはいえないのではないか。丙に共犯からの離脱が認められるか問題となる。
 60条が実行行為者以外も正犯とする根拠は、結果に対する因果性を及ぼした点にある。そのため、因果性を除去したことが離脱の要件であり、具体的には物理的因果性と心理的因果性の双方を除去することが必要であって、心理的因果性の有無の判断には離脱の意思表明と了承の事実や離脱者と共犯者の関係等を考慮すべきと解する。
 本件では、丙は犯行時刻に犯行現場に現れず、「俺は抜ける。」と離脱の意思を表明している。甲と乙からの明示の了承はないものの、甲及び乙は、丙が離脱したものとして丙抜きで当初の計画を実行しているから、黙示の了承があったと認められる。また、本件の犯罪の主謀者は甲である。これらの事情から、心理的因果性は除去されているといえる。また、丙はX車を運転するという役割を担う予定だったものの、それは甲が代替できるものであったし実際に甲が代替している。そして、それ以外に丙が犯行の道具を供給していた事情もない。そうすると、物理的因果性も除去されていたといえる。
 したがって、丙は犯罪を「共同して」行ったとはいえず、共犯からの離脱が認められる。
(4)したがって、甲及び乙に詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。  以上

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posted by izanagi0420new at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 予備試験平成23年度

1 腹部に果物ナイフが刺さった乙に「早く楽にして」と言われ、殺意をもって乙の首を両手で絞めつけて意識を喪失させ、家を燃やして乙を一酸化炭素中毒死させた行為に嘱託殺人罪の成否を検討する(202条後段)。
(1)首という身体の枢要部を両手で絞めつける行為は殺人の現実的危険を伴うから嘱託殺人罪の実行行為に当たる。
(2)死の結果との間に因果関係があるか問題となる。
 因果関係は法的評価の問題だから自然的な条件関係のみを判断する条件説は妥当でない。相当因果関係説のうち折衷説は客観的構成要件である因果関係に行為者の主観を持ち込む点で妥当でなく、客観説は事後的に検証して因果経過の通常性が認められない場合が想定できず妥当でない。因果関係の判断は行為の危険が現実化したかを基準に行うべきであり、介在事情が結果の主因になった場合には、介在事情が起こる蓋然性が要件に加わると考える。
 本件は、介在事情である甲の放火行為によって生じた煙による一酸化炭素中毒が死因であるから、介在事情が結果の主因になった場合である。嘱託殺人の実行行為者が証拠を消すために建物の放火行為に及ぶことはありえないことではないから、介在事情が起こる蓋然性は認められる。そして。実行行為により意識喪失状態にならなければ木造2階建て家屋である甲宅から脱出することは可能かつ容易であったといえるから、実行行為の危険は現実化したと言える。
 したがって、因果関係はある。
(3)もっとも、甲は首を絞める行為により既に乙が死亡していると認識して放火行為に及んでいるから、因果関係の錯誤が故意(38条1項)を阻却しないか問題となる。
ア 因果関係が故意の対象か
 故意とは犯罪事実の認識・予見であり、犯罪事実は構成要件として示されている。そして因果関係は構成要件要素である。したがって、因果関係も故意の対象である。
イ 因果関係の錯誤の有無
 因果関係はあるかないかが重要で、因果経過の錯誤は故意を阻却しないという解釈もあるが、それだと因果関係を故意の対象とする意味がないから妥当でない。行為者の認識した因果経過と実際の因果経過の齟齬が相当因果関係の範囲内か否かを基準にする解釈もあるが、相当性の判断基底をどうするかの問題があることに加え、因果関係の判断で相当因果関係説を採らない自説からは採用できない。
 因果関係の錯誤は故意という主観的構成要件要素の問題であるから、行為者の認識を基準として、行為者の認識した因果経過と実際の因果経過との齟齬が結果発生態様のバリエーションの問題と言えるか否かを判断すべきと考える。
 本件は、甲は実行行為の当時に甲宅に放火する計画はなかったのであるから、そのような甲の認識を基準とすると、首を絞める行為からではなく、放火した後の一酸化炭素中毒で死亡するという結果はまったくの偶然であり、結果発生態様のバリエーションの問題とは言えない。
 したがって、甲の因果関係の錯誤は故意を阻却し、嘱託殺人既遂罪は成立しない。
(4)同行為に嘱託殺人未遂罪(203条、202条後段)および乙が生きているということを確認しなかった注意義務違反に「過失」(210条)が認められるため、過失致死罪が成立する。
2 乙がいる甲宅に放火した行為に現住建造物放火罪(108条)の成否を検討する。
(1)灯油をまきライターで点火する行為は放火により公共の危険を生じさせる現実的危険を有する行為だから108条の実行行為たる「放火」に当たる。
(2)甲宅は全焼し、効用を喪失しているから「焼損」に当たる。
(3)甲宅には乙がいたから「現に人がいる建造物」(現住性)を満たす。
(4)もっとも、甲は乙が死亡していると認識しているから現住性に錯誤があり、109条の故意しかない。このような異なる構成要件間の錯誤(抽象的事実の錯誤)が故意を阻却するかが問題となる。
 故意責任の本質は構成要件該当事実を認識しつつあえて実行行為に及んだことに対する非難であるから、構成要件が重なり合う範囲で軽い罪が成立すると解する。
 本件は、109条の故意は108条の故意と重なり合う関係にあるから、甲には軽い109条の故意が認められる。そして、甲建物は自己所有であるが抵当権の実行を通告されており、甲はそれを認識しているから、109条1項の故意が認められる(115条)。
(5)したがって、甲の行為に他人所有非現住建造物放火罪(109条1項)が成立する。
3 乙の殺人罪の証拠である丙の死体を燃やした行為に証拠隠滅罪(104条)が成立する。
4 丙の死体を燃やした行為に死体損壊罪(190条)が成立する。
5 罪数
 甲には@嘱託殺人未遂罪、A過失致死罪、B他人所有非現住建造物放火罪、C証拠隠滅罪、D死体損壊罪が成立する。ABCDは1個の行為によるが、すべて保護法益が異なるから併合罪(45条)となる。@とも併合罪である。  以上

posted by izanagi0420new at 14:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 平成22年度第2問

1 Bに対して、オーダースーツを製作するように装い、内金として現金7万円を交付させた行為に詐欺罪(246条1項)の成否を検討する。
(1)「欺いて」とは、人の錯誤を惹起する行為である。詐欺罪の保護法益は財産及びその交付目的と解されるから、「欺いて」といえるためには交付の基礎となる重要な事実を偽ることが必要である。甲は、実際には製作するつもりがないにもかかわらず、「オーダースーツをお作りいたします。」と申し出、さらにBの身体の寸法を測るなどしているから、甲B間では外形的にオーダースーツを製作して供給する契約が成立している。そのため、Bの主観に関わらず、既製品でなくオーダースーツであることが交付の基礎となる重要な事実に当たる。したがって甲の上記行為は「欺いて」に当たる。
(2)Bはそれにより錯誤に陥り、錯誤に基づく処分行為として現金7万円を交付している。
(3)問題は財産的損害およびその額である。詐欺罪も財産罪であるから財産上の損害は書かれざる構成要件として必要と解するが、詐欺罪は個別財産に対する罪であり、同罪の保護法益は財物の交付目的でもあるから、交付目的に錯誤がある交付は、その交付自体が財産的損害を構成すると解する。本問ではBはオーダースーツ政策供給契約の内金として7万円を交付しているから、Bに7万円の財産的損害がある。交付自体が損害である以上、内金であって変換の可能性があることは要件の充足に影響しない。また、残りの13万円に対してはまだ交付がないから、この時点では損害に含まれない。
(4)したがって、甲の行為に7万円の詐欺罪が成立する。
2 A社の倉庫から既製品のスーツ1着を持ち出した行為に窃盗罪(235条1項)の成否を検討する。
(1)問擬する犯罪について、委託物横領罪(252条1項)ではないかとも思えるが、甲はA社の営業担当者であり、倉庫内のスーツの管理責任者ではないため、「占有」の要件を満たさない。
(2)詐欺罪(246条1項)を検討すべきとも思えるが、窃盗罪との区別のために交付行為の要件は意思に基づく占有移転が必要と解されるところ、甲はチラシの写真撮影用と申し出ていること、Cはすぐ返してくださいと言っていること、甲とCは同じA社の社員であることから、Cには占有弛緩の認識しかないため、交付行為を欠き、詐欺罪は成立しない。
(3)甲の行為はA社の20万円のスーツという「他人の財物」の占有を自ら自分に移した行為すなわち「窃取」した行為であり、窃盗罪が成立する。
3 Bに対し、既製品のスーツと引き換えに現金13万円を支払わせた行為に詐欺罪の成否を検討する。
(1)甲は販売価格20万円のスーツを提供しているため、価格相当物を提供しており財産上の損害の要件を満たさないとも思える。しかし、前述のように詐欺罪の保護法益は交付目的でもあるところ、Bはオーダースーツを購入する目的で13万円を支払ったのであるから、交付目的が害されている。そして、オーダースーか既製品のスーツかは、甲B間にオーダースーツの供給契約が成立していた本件では、客観的に交付の基礎となる重要な事実であるから、このような交付目的によって交付された財産は、交付自体が財産上の損害を構成する。
(2)したがって、甲の行為に詐欺罪が成立する。
4 甲には、@7万円の詐欺罪、A20万円相当のスーツの窃盗罪、B13万円の詐欺罪が成立し、それぞれ別個の行為によるものだから併合罪(45条)となる。  以上

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posted by izanagi0420new at 14:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 平成22年度第1問

問題文
 甲は、かつて働いていたA社に忍び込んで金品を盗もうと考え、親友であるA社の従業員乙にこの計画を打ち明けて、その援助を依頼した。以下省略

回答
1 甲の罪責
(1)窃盗目的でB社建物という「建造物」(130条)内に入った行為はB社管理権者の意思に反する立ち入りだから「侵入」(同)に当たり、建造物侵入罪が成立する。
(2)バールでB社の金庫という「他人の物」(261条)をこじ開けて金庫の効用を喪失させた行為は「損壊」(同)に当たり、器物損壊罪が成立する。
(3)現金という「他人の財物」(235条)を盗み占有を移転させた行為は「窃取」(同)に当たり、窃盗罪が成立する。
(4)書類の束に手が触れ書類の束を石油ストーブの上に落とし、石油ストーブの火を燃え移らせて煙を上げ、すなわち独立に燃焼させた行為は「焼損」(116条1項)に当たり、失火罪が成立する。
(5)甲が、消火をせずに立ち去り、B社の建物を全焼させた行為に他人所有非現住建造物放火罪(109条)の成否を検討する。
ア B社は住居(人の起臥寝食の場所として日常使用されるもの)ではなく、また、放火当時に人はいなかった。また、B社は住居、邸宅以外の建造物だから「建造物」の要件は満たす。
イ 同罪は「放火」が実行の着手に当たる行為であるが、甲は消火をしないという不作為を行っているのみなので、不作為が「放火」にあたるか問題となる。
 実行行為とは構成要件的結果発生の現実的危険性を有する行為を言い、不作為であってもその危険を生じさせることはできるから、不作為も実行行為となり得る。しかし、処罰範囲の限定のため@法的作為義務がありA作為の可能性・容易性が認められることが作為犯との構成要件的同価値性を認める要件となると考える。そして、@を認めるためには、保障者的地位にあることが必要である。保障者的地位にあると言えるためには、自らが構成要件的結果発生の因果の流れを設定し、その流れが結果発生に至る過程を支配していたことが必要と考えられるから、@危険の創出とA排他的支配が必要と解する。
 本件では、甲は、(4)の失火罪が成立した行為によりB社建物が焼失する危険を創出している(@)。そして当時B社建物内には誰もおらず、甲がストーブの上から燃え落ちた火が床にも燃え移りそうになったのを認識した時点で消火できるのは甲のみであったと認められるから、排他的支配がある(A)。そのため@法的作為義務が認められる。また、近くに消火器があり消火はA可能かつ容易であった。
 したがって、甲の不作為は109条の罪の実行行為に当たる。
ウ B社建物は全焼しているが、丙の行為が介在しているため因果関係が認められるかが問題となる。
(ア)不作為犯の因果関係は観念できないという見解もあり得るが、不作為に実行行為性が認められる場合には、その実行行為の危険が現実化したと言えるかを判断すべき点は作為犯と異ならない。そのため不作為犯にも因果関係を観念できると考える。そして、因果関係を認める要件は、作為がなされていれば結果防止が合理的な疑いを超える程度に確実であることと解する。判例もそう解している。
(イ)しかし、本件が判例と違うのは、甲が消火をしないという不作為により結果発生に向けた因果の流れを設定した後の過程で、丙の不作為が介在している点である。不作為犯に第三者の故意行為の介在があった場合の因果関係の判断基準が問題となる。
 この点は判例がないが、作為犯も期待された不作為がなされなかったから結果発生に至ったという点で、不作為犯と本質的な違いはない。そこで、作為犯の第三者の故意行為介在の事例と同様に考えれば足りると解する。そして、作為犯で第三者の故意行為が介在した場合には、結果発生の直接的原因が実行行為なのか介在行為なのかで要件を以下のように異にすべきである。すなわち、実行行為が結果の直接的原因となった場合には、介在行為いかんにかかわらず因果関係が認められる。介在行為が結果の直接的原因となった場合には、実行行為から当該故意行為が介在する可能性がなければ実行行為の危険が結果に現実化したとは言えないため、実行行為から介在事情が生じる可能性が要件に加わる。
(ウ)本件についてみると、近くにあった消火器で消火をすれば結果発生防止は合理的な疑いを超える程度に確実と言える。そして、第三者丙の介在行為は消化をしないという不作為であるから、結果発生の直接的原因は甲の実行行為であり、介在行為の起こる可能性の要件は不要である。そうすると、本件では甲の不作為が丙の不作為を経由して結果を発生させたと認められ、甲の不作為と結果との因果関係が認められる。
エ 放火罪の不作為の故意(犯罪事実の認識・予見)の内容として、既存の火を利用する意思を要求する古い判例があるが、不要と解する。本件でも、甲には火を放置すれば建物全体に燃え広がる認識はあったから、故意は認められる。
オ 以上より、甲に他人所有非現住建造物放火罪が成立する。
(6)失火罪は他人所有非現住建造物放火罪の危険創出行為として評価したから、同罪に吸収される。建造物侵入罪は窃盗罪と牽連犯(54条1項後段)となる。窃盗罪と放火罪は併合罪(45条)である。
2 乙の罪責
 甲に窃盗の援助を依頼され、A社の通用口の施錠を外した行為に建造物侵入罪及び窃盗罪の共同正犯(60条、130条、235条)あるいは同罪の幇助犯(62条)の成否を検討する。
(1)客観的要件
 共同正犯を含む共犯の処罰根拠は結果に因果性を与えた点にあるから、因果性が共同正犯幇助犯共通の要件となる。
 本件では甲はA社に侵入しなかったのであるから乙の行為は物理的因果性を及ぼしていない。しかし、乙は甲の親友であり、甲は乙に犯行を打ち明けることによって少なからず犯行の決意を固め、窃盗罪を犯しやすくなったと評価できるから、心理的因果性は認められる。
 続いて、共同正犯と幇助犯のいずれが成立するのかの区別については、自己の犯罪か否かによるのが判例である。自己の犯罪か否かについては@動機、A人間関係、B意思形成過程の積極性、C加担行為の内容、D犯行後の行為状況、E犯罪の性質を考慮する。
 本件では、確かにB乙は甲のためにA社の通用口の鍵を開けておくことを提案しており、意思形成過程の積極性が認められる。しかし、B甲乙間に乙が分け前をもらう約束はなく、D実際にもらっていない。また、C乙が施錠を外した行為は前述のように実際に役に立つことはなかった。
 以上のことから、乙は自己の犯罪として関与したとはいえず、住居侵入罪及び窃盗罪の幇助犯が成立しうるにとどまる。なお、器物損壊罪、失火罪及び放火罪については故意がないから成立しない。
(2)主観的要件
 もっとも、乙はA社に侵入・窃盗する認識でいたところ、甲はB社への侵入・窃盗を実現したから、乙の事実の錯誤(方法の錯誤)が故意を阻却しないか問題となる。
 故意(38条1項)とは犯罪事実の認識・予見であり、故意犯が過失犯よりも重く処罰されるのは犯罪事実を認識して反対動機を形成せずに実行行為に及んだ点にあると解する。そして犯罪事実は構成要件として与えられているから、幇助者が認識した事実と実行行為者が実現した事実が構成要件の範囲内で符合していれば故意は阻却されないと解する。
 本件は、A社であってもB社であっても構成要件は変わらない。
 したがって、故意は阻却されない。
(3)結論
 以上より、乙に住居侵入罪、窃盗罪の幇助犯が成立する。両者は牽連犯である。
3 丙の罪責
 消化しない不作為によりB社を全焼させた行為に非現住建造物放火罪(109条)の成否を検討する。
(1)実行行為性の有無を、前述の基準に当てはめる。
 危険創出の有無が問題となる。たしかに、危険を創出したのは甲の過失行為という見方もできるが、丙はストーブを消し忘れるという過失行為があるので、これを危険創出行為とみることができる(@)。そして、丙は事務所に戻って床が燃えているのを目撃し、この時点ではB社建物内にいるのは丙のみであるから、排他的支配を有した(A)。よって@法的作為義務たる保障者的地位が認められる。そして、A近くにあった消火器で消火するのは可能かつ容易であった。
 したがって、丙が消火しなかった行為は109条の実行行為に当たる。
(2)丙が消火していればB社建物は全焼しなかったことは合理的な疑いを超える程度に確実だから、因果関係もある。
(3)既存の火を利用する意思は故意の内容として不要であり、本件も故意は認められる。
(4)したがって、丙に他人所有非現住建造物放火罪が成立する。 以上

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posted by izanagi0420new at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

刑法 平成21年度第2問

1 甲がAIT名義で正規の国際運転免許証に酷似した文書を作成した行為に私文書偽造罪が成立するか(159条1項)。
(1)国際運転免許証は「権利…に関する文書」であり、甲は顧客に販売して真正な文書として行使する目的があるから「行使の目的」がある。
(2)「偽造」の意義について、文書偽造罪の保護法益は人の意思・観念の表示の証拠としての文書に対する関係者の信用であるから、文書に表示された意思・観念の帰属先としての作成者と、文書上作成者と認識される名義人の同一性を偽ること(有形偽造)が「偽造」に当たると解する。そして、そのような人格の同一性を偽っている限り文書の信用は害されるから、名義人は実在する必要はないと解する。
 本問につきみると、文書の作成者は正規の国際運転免許証を発行する権限のないAITであり、名義人はそのような権限のある実在しないAITであるから、人格の同一性がなく、「偽造」に当たる。
(3)したがって、甲の行為に私文書偽造罪が成立する。
2 甲が、乙に対し、上記文書を正規の国際運転免許証として販売して真正な文書として行使した行為に偽造私文書行使罪(161条1項)が成立する。
3 甲が、乙に対し、上記文書を正規の国際運転免許証と欺いて販売し、乙をしてA信販会社とクレジット契約を締結させた行為に2項詐欺罪の成否を検討する(246条2項)。
(1)有効な国際運転免許証を欲しがっている乙に対して、無効な文書を有効だと偽ることは、交付の基礎となる重要な事実を偽っており、交付に向けられているから、「欺いて」に当たる。乙はこれにより錯誤に陥っており、錯誤に基づく処分行為として信販会社とクレジット契約を結んでいる。
(2)詐欺罪も財産罪であるから明文はないが財産上の損害が要件となると解されるところ、乙はAに対してクレジット契約による20万円の債務を負担しており、これが財産上の損害に当たる。そして、2項の財産上の利益とは債権など有体物以外の財産的権利・利益をいうから、本件の債務の負担は2項の問題である。
(3)したがって、甲の行為に2項詐欺罪が成立する。
4 甲及び乙が、A信販会社に対し、宝石の購入を仮装してクレジット契約を締結させた行為にA信販会社に対する詐欺罪の共同正犯(60条、246条1項)の成否を検討する。
(1)商品の購入を仮装したクレジット契約はAの約款において禁止されているから、仮装か否かはA信販会社にとって立替払に応じるか否かの基礎となる重要な事実であり、これを偽る行為は「欺いて」に当たる。
(2)Aはそれにより錯誤に陥り、錯誤に基づく処分行為として甲に対して20万円を振り込んでいる。
(3)もっとも、Aは後に乙から20万円を回収しているから、財産上の損害がないのではないかとも思える。しかし、詐欺罪は個別財産に対する罪であり、また、交付目的も保護法益と解されることから、正規の売買があったものとして交付された20万円自体が財産上の損害と評価できる。
(4)したがって、甲の行為に詐欺罪の共同正犯が成立する。
5 罪数
 甲には@私文書偽造罪、A同行使罪、B乙に対する2項詐欺罪、CAに対する詐欺罪が成立するが、Aは@の牽連犯(54条1項後段)であり、@はBの牽連犯である。そして@とBは別の主体に対する犯罪だから併合罪(45条)である。

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