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2018年04月21日

民法 ポイント

従物 87条
従物(87条1項)とは、@物として独立性があり、A主物に付属しており、B主物の効用を高め、C主物と同一の所有者に属するものをいうが、本件庭石はこれらの要件を満たすから甲土地の従物に当たる。
 そして、従物は主物の処分に従う(87条2項)ところ、抵当権の設定は「処分」に当たる。 

意思能力を欠く状態での意思表示
意思能力(自己の行為の利害損得を把握する能力)のない状態で行われた意思表示は無効である。なぜなら、表示に対応する内心的効果意思が不存在だからである。錯誤に関する規定はこのことを前提にしている。

意思無能力の契約の巻き戻しと一方の履行不能 536条1項
1 Aの請求に対し、Bは反対給付である甲絵画の返還請求権の履行不能による消滅を理由に、500万円の返還を拒絶することが考えられる。法的根拠は536条1項である。
2 これに対してAは、@536条は双方の債務が未履行の段階での対価危険や給付危険の分配を定めたルールであり、債権の巻き戻しの場面には適用できないこと、A債権の巻き戻しの場面では契約がなかった段階に戻すことが最優先され、その時に適用可能なルールは548条であること、B548条の趣旨から、甲絵画の滅失がAの責めに帰すものでない本件では、Aが反対給付を受ける権利は失われていないことを主張できる。

94条2項類推適用
1 94条2項の趣旨
 信頼原理と(故意責任原理としての)帰責原理
2 本件で94条2項を類推適用すべきこと(類似性の論証)
@勝手に登記を移した 外観作出型 →94条2項類推
A愛人が勝手に登記したのを咎めたが、便利なのでそのまま利用した 存続承認型
 →94条2項類推
B頼まれて仮登記をしたら勝手に本登記にさせられた 一部承認型
 →94条2項類推+110条の法意により無過失を要求
C言われるままに実印等を交付し、押すのを漫然と見ていた 重過失型
 →94条2項類推+110条類推
 本件登記手続きができたのはXの余りにも不注意な行為によるのであり、Aによって虚偽の外観が作出されたことについてのXの帰責性の程度は、自ら外観の作出に積極的に関与した場合やこれを知りながらあえて放置した場合と同視しうるほど重いというべきである。そして、YはAが所有者であるとの外観を信じ、またそのように信じるにつき過失はなかったから、94条2項、110条の類推適用により、Xは、Aが本件不動産の所有権を取得していないことをYに対して主張することができない。

処分授権と代理権の法的性質
Bとしては、Aに対して「売却についての委任状」を交付したのは甲絵画の処分を授権する趣旨であり、処分の代理権を与える趣旨ではないから、109条ないし112条の「代理権」がなく、表見代理は成立しないと主張しうる。
 しかし、代理権授与は事務処理契約であって、事務処理契約から直接に代理権が生じると解する。仮に処分に関する代理権でなく処分の授権がされたにすぎない場合でも、利益状況は異ならないから、109条や112条は類推適用されると考える。

親権者による代理権濫用
(1)前提として、824条は子の財産管理の代理権を親権者に与えた規定であり、この規定により親権者は子の財産の法定代理人となっている。
(2)もっとも「利益が相反する行為」(826条1項、以下単に「利益相反行為」という。)に当たる行為を親権者自らが行うと無権代理行為となり、追認(116条1項)のない限り本人に効果帰属しない。そこで利益相反行為の意義が問題となる。
 利益相反行為とは@親権者にとって利益となりかつA子にとって不利益となる行為を言う。利益相反行為か否かは外形的・客観的に判断すべきである。
 本問では、…利益相反行為にあたらない。
(3)そうだとしても、法定代理権の濫用として子への効果帰属が否定されないか。
代理権濫用とは、本人のためでなく自己に経済的利益を帰属させる目的で、代理権の範囲内の行為をすることである。効果は93条但書類推適用により無効である。
 しかし、親権者の財産管理権(824条)に基づく行為はそれが利益相反行為(826条)に当たらないかぎり広範な裁量があるから、824条の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がない限り代理権濫用に当たらないと解する。
 
代理権授与表示による表見代理
 109条の表見代理の成立要件は、@代理行為、A顕名、B本人から相手方に代理権授与表示があったことである。
 これに対し、代理行為者は、相手方の代理権がないことに対する悪意有過失を抗弁として主張立証することになる(109条但書)。

例)  Cは@Bの代理人としてのAの行為(甲絵画の売買契約)、A@に先立つ代理権授与行為(委任状)を主張立証し、Bは@代理権消滅(「甲絵画を売るのはやめた。委任状は破棄しておくように。」と言ったこと)、ACの悪意・過失(109条但書)を主張立証するが、Cに悪意・過失は認められない。

・@について、代理権授与の表示を受けた者の行為である必要がある。白紙委任状による授権の場合は、白紙委任状が転々譲渡されることが予定されていない場合であって行使者に制限がないときに限り、109条が適用される。
・Bについて、本人から表示を受けた者が代理行為を受ける必要がある。

権限逸脱の表見代理 110条
 要件は、@基本代理権の存在、A代理人の権限逸脱行為、Bその権限があると信ずべき正当な理由である(110条)。Bは善意無過失を意味するが、110条の趣旨は表見法理だから、無過失か否かは本人側の事情も含めて判断する。また、実印と印鑑証明を示した場合には特段の事情がない限り正当な理由が肯定されると解する。

・特段の事情 山本
@徴憑の疑わしさ(書類の不備、改竄)
A代理行為の疑わしさ(実印の所持者が家族)
B利益相反行為
C本人の多大な不利益

代理権消滅後の表見代理 112条 潮見90頁
要件は、@代理行為、A顕名、B過去の代理権の存在、C代理権が代理行為前に消滅していたこと、D代理行為時に代理権が消滅していたことについて善意であることと解する。代理権消滅前に取引したことは不要である。有過失については抗弁となる。

112条の表見代理への適用
 112条が法定代理に適用されるか。
 112条も表見代理の規定である。表見代理の趣旨は表見法理だから、表見代理の成立には本人の帰責性が要件となる。
 しかし、法定代理権の場合には、それは本人に授与されたものではなく、本人に帰責性がない。
 したがって、112条は法定代理に適用されないと解する。
 したがって、AはDから乙自動車を取り戻すことができる。このように解してもDはBに追奪担保責任(561条)を問えるので不当ではない。

116条但書の第三者
116条但書の趣旨は追認の遡及効により害される者を保護することと解されるから、「第三者」とは追認前に追認がない状態を前提として新たな法的利害関係を有するに至った者を言うと解する。

・94条2項の第三者には法文上善意が要求されており、学説では無過失も要求することが有力であることとの均衡から、116条但書の第三者として保護するための要件として善意無過失が必要という見解がある。

無効行為の追認 119条
追認とは、取消し得る行為が当初から有効だったことを認める意思表示である。したがって、本件のような無効の行為は追認によっても有効とはならない(119条本文)。追認時に新たな行為をしたものとみなされる(119条但書)。
 もっとも、119条但書は追認権者の通常の意思を推定した規定であるから、任意規定であり、追認権者が法律行為を当初から有効なものとすることは差支えないと解する。

時効援用
判例は時効援用権者を時効により直接の利益を受ける者とする。そして後順位抵当権者にとって、先順位抵当権が時効消滅することによる配当額増加に対する期待は反射的利益に過ぎないから、後順位抵当権者は直接受益者に当たらないという。この判例に従うと、後順位抵当権者Eには時効援用権が認められないということになる。ここで反射的利益とされたことの意味は、後順位抵当権者は先順位抵当権の登記を抹消しなくても自己の債権が無価値になるわけではないこと。また、時効援用は他の抵当権者にも影響することを考慮されてのことだと考えられる。
 しかし、時効を援用しうる債務者が無資力である場合には、後順位抵当権者は時効を援用しないと被保全債権が無価値となる。また、無価値となる債権の保全という理由があれば、他の抵当権者に影響がでることも正当化されうる。したがって、債務者が無資力である場合には、後順位抵当権者も直接受益者といえ、時効援用権者になると解すべきである。

177条の第三者
 自由競争の建前より単なる悪意者は第三者に含まれるが、背信的悪意者は自由競争の枠外の問題だから信義則(1条2項)上第三者に当たらないと解する。
 
即時取得 192条
 192条から要件となり得るものを挙げると⑴取引行為、⑵⑴による占有取得、⑶平穏、公然、善意、⑷無過失、⑸前主の占有である。このうち⑶は186条1項(暫定真実の規定と解する)によって立証責任が転換されているためCが主張立証する必要はない。また、⑷は188条(法律上の権利推定の規定と解する)で推定されるため、やはりCが主張立証する必要はない。⑸は⑵の内容に含まれるから改めて検討する必要はない。したがってCが主張立証すべき要件は⑴⑵である。

善意占有者の使用収益権 百選T66
 194条は抗弁権ではなく請求権を定めた規定と解するから、占有者は物の返還後でも同条に基づき被害者に対して代価を請求しうる
 
 使用料相当額との相殺を主張したいが認められるか。194条の善意占有者に使用収益権が認められるかが問題となる。
 被害者が回復を選択した場合には物とともに使用料相当額を返却しなければならず、被害者が回復をあきらめた場合には物とともに使用料相当額も享受しうるとすると占有者の立場が不安定である。また、弁償される代価に利息は含まれないこととの均衡を図るべきである。そのため、194条の善意占有者には使用収益権が認められると解する。
 従って、使用相当額との相殺は認められない。

占有者による費用償還請求 196条
 修理による甲機械の価値増加分(50万円)は、占有者による有益費の償還請求権(196条2項)によるものである。Dが主張すべき要件は@「有益費」であること、A価格の増加が現存する場合であることである(196条2項本文)。「有益費」(196条2項)とは物の価値を増加させる費用をいうが、物の扱い方は本来所有者が決めるべき事柄であるし、賃借人が目的物の原状回復義務を有することと(616条、598条)のバランスから、必要な改良がおこなわれた結果としての価値増加額に限ると解する。

共有の性質
 共有とは一つの物を複数の者で共同して所有することであり、各共有者は物に対し持分権を有する。持分権の法的性質は所有権であるが、同様の権利を持つ者がいることによる制約を受ける

物上保証人の検索の抗弁権 453条類推
 453条は保証債務についての規定であるが、物上保証人にも適用されるか。
 検索の抗弁権が認められる根拠は、保証債務の補充性である。つまり、保証契約に基づく保証人の責任は主債務者が主債務を履行しない場合に二次的に負うものであるところに検索の抗弁権の根拠がある。そして、物上保証人の責任も二次的である点で単なる保証人と異ならない。したがって、物上保証人にも453条に基づく検索の抗弁権が認められると解する。

物上保証人の事後求償権 351条  459条→650条
 そもそも委託を受けた保証人は、主債務者との間に、主債務者が弁済できない場合に代わって弁済することを内容とする委任契約が成立していると解すべきであり、そうすると、保証人は、弁済した場合には主債務者に対して費用償還請求権(650条)を有する。そのため、委託を受けた保証人の事後求償権(459条)の法的性質は、受任者の費用償還請求権である。 
 そう考えると、債権者に対して何ら債務を負っていない物上保証人は、なすべき委任事務がない以上、債務者に対して費用償還請求権は発生しないとも思える。しかし、保証というのは債務者に代わって自己の一般財産を減少させる責任である以上、自己の一般財産の減少があれば、債務の有無にかかわらず、債務者に対して減少した一般財産を補てんする請求権を認めるべきである。351条はそういう趣旨の規定と解する。

物上保証人に事前求償権が認められるか   460条→649条
 そもそも、委託を受けた保証人は主債務者との間に委任契約が成立しているという前述の解釈からすると、保証人の事前求償権(460条)の法的性質は、受任者の費用前払請求権(649条)である。そして、保証債務の内容が債務者の代わりに自己の一般財産を減少させることという前述の考察からすると、事後と事前で異なる扱いをする理由がないとも思える。
 しかし、物上保証人が事前に求償しようと思っても、競売を申し立てるのは債権者であり、債権者が競売を申し立てるか否かは物上保証人には判断できないのであるから、「事前」の求償は不可能である(通常の保証で「事前の求償」という概念が成立するのは、その後に自ら保証債務を履行することが同一人物により予定されているからと言える)。また、物上保証人は自己の一般財産ではなく、特定物を担保に供している。その特定物を換価した結果、債務者の債務が消滅するに足りるか否かは、競売を実行するまで不明である。そのため、仮に求償を許しても換価の結果と求償額との間に齟齬が生じるのは確実であり、その場合に齟齬の清算をめぐって債務者と物上保証人との間に無用の債権債務関係を生じさせることになる。したがって、物上保証の性質上、事前求償は認められないというべきである。

譲渡担保の認定 百選T95
 買戻特約付売買契約の形式が採られていても、目的不動産の占有の移転を伴わない契約は、特段の事情のない限り、譲渡担保契約と考える。なぜなら、真に買戻特約付売買であれば占有の移転を伴うのが通常だからである。

譲渡担保
 譲渡担保権につき明文はないが、占有を設定者にとどめたまま物の交換価値を把握する担保権として判例上認められている(非典型契約)。
 また、不動産の交換価値を把握する抵当権に物上代位が認められているから(372条、304条)、譲渡担保権に基づく物上代位にも認められると解する。要件は、@譲渡担保権設定契約、A売却等による交換価値の現実化(304条参照)、B弁済期の到来と解する。
 Aについて、請負は「売却」(304条)等には当たらないから請負代金債権には原則として物上代位できないが、例外的に売却と同視できる特段の事情がある場合には物上代位できると解する

・Bについて、仮に譲渡担保権の清算方法を帰属清算と解すれば弁済期到来後にも清算金が支払われるまでは受戻権を行使できるようにも思えるが、判例は弁済期到来後に譲渡されたらもはや受戻権を行使できないとしているから、弁済期到来は要件と解する。
 
譲渡担保権に基づく物上代位と債権譲受人との優劣
 Dが請求できる根拠は物上代位だから、Dは「払渡し」(304条但書)の前に差押えをしなければならない。Dは差押えをしていないから、債権譲渡が「払渡し」に当たるならばEが優先することになる。では、債権譲渡が「払渡し」に当たるか。
 そもそも法が「払渡し」の前に差押えを要求した趣旨は、債権の特定性を維持することでも担保権者の優先弁済権を確保することでもなく、第三債務者を二重弁済の危険から保護することである。そして、譲渡担保の場合は抵当権と異なり、ある金銭債権が物上代位の対象となることが登記によって公示されていないから、差押えは第三債務者に対する公示機能を果たす。したがって、譲渡担保権の対象物権の価値が金銭債権に転化した場合、その金銭債権の譲渡は「払渡し」に当たると解する。

契約締結上の過失
T-@ 契約交渉不当破棄型-信頼裏切り型→契約自由の原則との抵触が問題
 契約が不成立(無効)である以上、契約責任を負わないのが原則である。しかし、不法行為責任では時効期間・立証責任の点で被害者保護に欠ける。そこで、契約準備交渉段階に入った当事者間は通常より密接な関係に至るから相互に相手方に損害を被らせない信義則上の義務(契約責任)を負うと解する。損害賠償の範囲は信頼利益。
T-A 契約交渉不当破棄型-誤信惹起型→帰責の根拠が説明義務違反だから契約責任の原則とは無関係。
 契約締結前の説明義務に違反したことに対する不法行為責任
U 契約無効型 
 上の論証の後、@給付をなそうとしたものがその不能を過失により知らなかったこと、A相手方がその不能につき善意無過失であることの要件を満たす場合には、相手方は信頼利益の損害賠償請求ができる。
V 契約有効型→情報提供義務(信義則上の説明義務)
 説明義務の内容が契約の内容・趣旨から導出できるかによる。H23.4.22は不法行為とした。

債務不履行損害賠償 415条
 要件は、@契約締結、A本旨不履行、B帰責事由である(以上415条)。B帰責事由について、所有権移転という結果債務の不履行は、不可抗力の場合を除き、帰責事由が認められる。

損害の範囲 416条
 損害の範囲についての416条は相当因果関係を定めたものというのが従来の通説だが、契約時に両当事者が予見可能な損害を賠償させる規定と解する。

 416条は損害と相当因果関係のある完全賠償を定めた規定であり、1項で通常事情による通常損害、2項で予見可能な特別事情による通常損害の賠償ができることを定めていると解する。予見可能性は違法行為をした債務者の債務不履行時の予見可能性が問題になる。

債権者代位権
 423条に基づき、Bに対する修理代金支払請求権を保全するため、BのAに対する修補に代わる損害賠償請求権を代位行使できるか検討する。
(1)請求原因は、@被保全債権の存在、A保全の必要性(債務者の無資力)、B代位行使する債権の存在(以上423条1項)と解する。
(2)Aは抗弁として@代位を許す債権ではないこと(423条1項但書)、A弁済期が到来していないこと(同2項)を主張しうる。

詐害行為取消
 要件は@Aに対する被担保債権(所有権移転登記請求権)の取得、A@が詐害行為(AB間の売買契約)の前であること、BAの無資力、C財産権を目的とする法律行為であること、D詐害性を基礎づける事実である。これに対してBはEAを害することを知らなかったことを抗弁に出せる。
 このように対抗要件で劣後する債権者も詐害行為取消権を行使できるのは177条の趣旨に反するようにも思えるが、両制度は趣旨が異なり、要件効果も異なるので問題ない。

・Cについて、移転登記請求権も債務不履行があれば損害賠償請求権という金銭債権に変化するため、詐害行為取消権行使時に損害賠償請求権に転化していればこれを満たす。
・Dについて、詐害性の判断は行為の客観面と主観面の総合判断であるが、贈与は客観的に詐害性が強いため、主観的害意が認定できない本件でも詐害行為に当たると解する。

免責的債務引受
 免責的債務引受について明文はないが、引受人に対する債務引受の合意と債務者に対する債務免除(519条)の混合契約であり、免除は債権者の一方的意思表示で行うことができるから、免責的債務引受は債権者と引受人の合意で行うことができると解する。明文はないが、免責的債務引受は責任財産の変更を伴い債権者を害するから債権者の同意が必要と解する。

 免責的債務引受契約は一般的に債権者、債務者、引受人の三者間の合意で締結される場合には有効と考えられている一方、債務者と引受人との間で締結される場合には、債権者にとって責任財産の変更を伴い債権者の利益に大きく影響するため、債権者の同意が要件と解されている。
 では、本件のように債権者と引受人との間で締結される場合には、債務者の同意が要件となるだろうか。利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない(474条2項)から、債務者の同意が要件となるとも思える。しかし、債務者は、債権者と引受人との契約で債務を免除されるという利益を受けることはあっても、不利益を受けることはない474条2項は、自己の債務を他人に処理されたくないという、それ自体さほど重要でない債務者の気骨ある意思を推定して明文化したものに過ぎないから、免責的債務引受の場面にその趣旨を及ぼす必要はない。したがって、債務者の同意は要件とならないと解する。

将来債権譲渡担保契約の有効要件
 下線部の契約は非典型契約の、いわば将来債権譲渡担保契約というべきものである。その契約が有効か。有効要件が明文なく問題となる。
 まず、まだ発生していない債権の譲渡であることから、債権の発生可能性が要件となるとも思える。しかし、債権が発生しないリスクは契約時に当然に考慮されるべき性質のリスクであるから、譲渡の代金に反映させるなどして、譲渡当事者間でリスク分担をすべき問題であるし、法解釈としては、譲渡当事者間でリスク分担がされているものと解すべきである。したがって、債権の発生可能性は要件とならない。
 次に、債権債務の確定のため、譲渡債権の特定性が要件となると解すべきであるが、その程度としては債権の種類と期間が示されていれば足りると解する。本件ではパネルの製造および販売に関する代金債権として債権の種類が特定され、現在有しているもの及び今後1年間に有することになるものとして期間が示されているから、特定性の要件を満たす。
 最後に、契約が債務者の自由を過度に拘束するものは公序良俗に違反し無効というべきであるが、本件ではそのような事情はない。
 したがって、下線部の契約は有効である。

将来債権譲渡担保契約の債権移転時
 甲債権はいつの時点で譲渡されたか。@AC間の譲渡契約時、A甲債権発生時、BAからDに対する債権譲渡の通知時という3つの可能性が考えられる。
 このうち、Bは譲渡担保のいわゆる担保的構成を徹底した考え方の応用であるが、債権を「譲渡」したという債権譲渡契約当事者間の通常の意思に反する解釈であり採用できない。
 発生していない債権を譲渡することはありえないからAが正当とも思える。しかし、Aと解すると甲債権が未発生のまま二重譲渡された場合に、対抗要件によって優劣を決することができなくなり(存在しない債権についての対抗要件は無効であるため)、妥当でない。 
 したがって、@と解釈すべきである。発生していない債権を譲渡することはないという理論的問題点は、債権者となり得る地位が移転したと解釈すれば解決できる。判例も同じ結論である。

譲渡禁止特約
 譲渡禁止特約(466条2項本文)は、債権が財貨として自由に譲渡できると解されている今日、過酷な取立をする債権者に譲渡されることを防ぐという債務者保護の趣旨で設けられたと解されている規定である。しかし、実際には銀行などの強い債権者が事務処理手続の複雑化防止のために利用している。このように譲渡禁止特約は本来の制度趣旨から外れた使われ方をしていることに加え、債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在に悪意重過失であれば債権譲渡の効力を否定されてしまうことから、将来債権譲渡担保という便利な金融手段が阻害されてしまってさえいる。したがって、譲渡禁止特約の有効性は厳格に解すべきである。

解除
 契約の要素をなす債務の履行がないために契約の目的を達することができない場合には、例外的にある契約に基づく債務の履行遅滞を別の契約の解除原因としうる。

追奪担保責任 560,561条
 取消の効果が遡及すると考えるか否かに関わらず、BはAの物をCに売ったということになるから、CはAに対し、追奪担保責任を追及することができる(560条、561条)。
 まず、「売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないとき」にあたる事実としてCが甲をAに返還しなければならなかったことを主張立証することにより、解除ができる(561条前段)。解除によりBC間の売買契約は遡及的に無効となると解されるから、CはBに対し、原状回復請求権(545条本文)の行使として300万円と受領時からの利息(545条2項)の返還請求ができる。
 損害賠償請求ができる(561条後段)。損害賠償の範囲は信頼利益である。
 これに対してBは、CがAB間の売買契約が取消されたことについて悪意だったことを主張立証することにより、561条後段を根拠とする損害賠償を免れることができる。
 もっとも、売主の帰責事由によって権利移転ができない場合は561条後段で損害賠償できない場合でも415条により損害賠償できると解されているから、415条に基づく損害賠償をも免れるためにはBは帰責事由がないことをも主張立証する必要がある。415条による損害賠償が認められた場合、損害賠償の範囲は履行利益である。

履行不能解除 561条
@要件
 支払済みの代金500万円の返還請求は、売買契約解除により発生した原状回復請求権に基づくものである(民法561条前段)。
要件は、@売買契約締結、A権利移転不能(取引通念上権利移転が期待できない場合を意味すると解す る。)、B解除の意思表示と解される(以上561条前段)。

A後段は空文
 乙機械購入のための40万円をDが請求するとしたら、根拠は債務不履行に基づく損害賠償請求権が考えられる(民法415条)。確かに561条後段は契約時において権利が売主に属さないことを知っていた時の損害賠償請求権を認めていないが、履行不能が売主の帰責事由によるときは、561条後段の規定にかかわらず、要件を満たす限り415条に基づく損害賠償ができると解する。

解除の効果
 解除の効果について明文はないが、契約関係の遡及的消滅と解する(545条1項本文参照)。そうすると、Bは法律上の原因なく500万円を所持していることになるから、Dは前記500万円について不当利得返還請求権(703条)を有する。 

他人物賃貸借
 他人物賃貸借は債権的には有効だが(559条、560条)、所有者には対抗できず、所有者が賃貸借目的物について所有権に基づく返還請求をした時点で、賃貸人の継続的な貸す債務は履行不能となり終了する。

敷金
 敷金とは、建物賃借契約から生じる一切の債務を担保するために支払われる金銭である。不動産賃借契約に従たる契約として敷金設定契約という要物契約が締結される。定義からわかるように、敷金は一切の賃借人の債務を担保するものだから、建物明渡が敷金返還よりも先履行である。したがって、敷金返還を受けるまで明渡を拒絶するという主張(533条)は認められない。

賃料債務の性質
 賃料債務は目的物全体の使用収益に対応して生じるものであるため、不可分債務(430条)である。

合意解除と転借人
 賃貸借の合意解除は、398条の趣旨より、特段の事情のない限り、転借人に対抗できないと解する。
 そして、賃貸人が合意解除を対抗できない結果、転貸人の貸主たる地位が賃貸人に移転し、賃貸人と転借人との間で賃貸借契約関係が生じると解する。なぜなら、貸す債務は没個性的で誰でも履行でき、また、そのように解することが転借人によって有利であり、さらに法律関係が簡明だからである。
※賃貸人たる地位移転の論点の応用

賃貸人たる地位移転があった場合の敷金の継承
 賃貸人たる地位が変更された場合、賃借人が旧賃貸人に支払った敷金が承継されるかが問題となる。
 確かに、敷金が承継されるということは敷金返還義務の免責的債務引受となるから、債権者たる賃借人の同意がない限り承継されないとも思える。しかし、敷金は賃借人が債務を負担した場合に差引計算することが予定されており、この差引計算に対する賃借人の期待を保護する必要がある。したがって、賃借人の同意がなくても、旧賃貸人に対する債務を差し引いた残額が当然に新賃貸人に承継されると解する。

請負の担保責任の法的性質
 634条は請負の担保責任を定めた規定である。請負の担保責任の法的性質について、560条以下と同じ法定責任とする説は、特定物の性状は契約内容にならないという特定物ドグマに依拠しているため妥当でない。請負の担保責任は、完成物の引渡後に請負人の給付危険を消滅させる債務不履行の特則と解する。

634条1項の瑕疵修補請求権の法的性質
 634条1項の瑕疵修補請求権は、債務不履行に基づき発生する追完請求権の一種と解する。

634条1項の要件
 請求原因は@請負契約締結の事実とA仕事の目的物に「瑕疵」があることと解される(634条1項)。Aについて、請負の担保責任の法的性質は債務不履行責任であるから、「瑕疵」とは主観的に債務者が契約目的を実現していないことすなわち債務不履行のことと解すべきである。物が通常有すべき性質を有さないことというように客観的にとらえるのは妥当でない。そうすると瑕疵の有無を判断するためには契約内容を確定することが必要である。

634条1項の主張に対する抗弁
 これに対してCはまず、@修補不能の抗弁が出せる。履行不能であれば牽連性により修補義務も消滅すると解されるからである。また、A瑕疵が重要でなく、かつ修補に過分の費用を要することを主張立証することができる(修補困難、634条1項但書)。さらに、請負の担保責任が債務不履行責任の特則であることから、B帰責事由がないことを主張立証することもできると解する。
 Aについては、「重要」か否かは主観的にではなく、契約した目的・目的物の性質等により客観的に判断すべきである。「過分」の費用か否かは修補に必要な費用と修補によって生じる利益を比較して判断すべきである。
 Bについて、帰責事由は不可抗力及び債権者の圧倒的過失がある場合に求められると解する。

634条2項により請求できる損害賠償の内容
 634条2項は、@修補に代える損害賠償(選択的損害賠償)およびA修補とともにする損害賠償(併存的損害賠償)を選択的に認めている。@として請求できるのは修補費用である。Aの内容は、減価分、逸失利益と解される。この他に、請負の担保責任が債務不履行責任の特則であることから契約関係における保護義務違反として瑕疵から生じた損害(瑕疵結果損害)の賠償も認められうる。

数量指示売買 565条
 土地の売買契約において、土地の面積が表示された場合でも、その表示が代金額決定の基礎としてなされたにとどまり、契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、履行利益の賠償責任を負わない。

不当利得の適用場面 契約関係の巻き戻し 
 B及びCが、Dに対し、甲機械の使用相当額25万円を求める根拠は何か。使用相当額は「果実」であるから190条1項によるべきとも思える。しかし、189条や190条は物権の帰属状態の正常化を想定した条文であり、本件のような契約関係の巻き戻しの場合に適用すべきでない。575条によるべきとも思えるが、同条は両当事者の給付が均衡していることを前提としているから、本件のように不均衡の場合に適用するのは妥当でない。契約解除の場合には、互いに契約関係がなかった状態に戻すことを重視すべきであるから、公平を趣旨とする不当利得法の規定によるべきである。

不当利得の主張権者
 主張権者はBかCか。Bは甲機械の所有権を有していないから、甲機械の使用利益が帰属せず、したがって甲機械が生み出した利益はBの損失とはならない。そのため、主張権者はCである。

相続財産の共有の性質
 相続開始(882条)によって3000万円の債務は相続人の「共有」(898条)となる。この「共有」とは原則として249条以下の共有と同義と解する。そのため、金銭債務のような分割債務は当然分割され、各共同相続人が法定相続分に応じて承継する

遺産分割
 遺産分割(906条以下)は相続開始によって遺産共有状態となった財産の帰属を確定させる行為であり、協議分割(907条1項)でどのように遺産分割を行うかは相続人の自由である。

遺産分割と第三者
 遺産分割は遡及効を有するが(909条本文)、「第三者」の権利を害することはできない(同但書)。この規定は遺産分割の遡及効により害されるものを保護する趣旨と解されるから、「第三者」とは遺産分割前に相続財産について法的利害関係を有するに至った者を言うと解する。
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2017年05月03日

民法 平成19年度第2問

1 BC間の法律関係
(1)賃貸人について
Cは、Bが引き続き賃貸人であることを次のような法律構成で主張することが考えられる。
平成19年7月1日のAB間の合意は貸す債務の免責的債務引受である。免責的債務引受について明文はないが、一般的に責任財産の変更を伴い債権者を害するから債権者の同意が必要と解釈されている。したがって、貸す債務の債権者である本件建物の転借人Cの同意がない本件では、賃貸人の地位は移転しない。
(2)敷金返還請求権について
賃貸人の地位が移転しない以上、Bが負担する。
(3)しかし、賃貸人についても敷金返還請求権についても、Bは以下に述べるような反論をすることができる。結論として、BはCに対して、賃貸人としての義務も敷金返還義務も負わない。
2 AC間の法律関係
(1)賃貸人について
平成19年7月1日のAB間の合意は、単に賃貸借の権利義務の移転にとどまらず、解除権や敷金返還請求権等、賃貸借契約に付随する一切の権利義務の移転を内容としているから、単に免責的債務引受と解するのではなく、賃貸人たる地位の移転と解すべきである。
 そして、確かに賃貸人たる地位移転には免責的債務引受の側面はあるが、貸す債務は責任財産の多寡にかかわらず履行可能な性質の債務である。また、旧転貸人が転貸対象物について権限を失った場合に本来なら転貸借契約は転貸人の貸す債務の履行不能により終了するところ、原賃貸人に賃貸人たる地位が移ることは、転貸借対象物の使用継続を希望する転借人にとってむしろ利益になる。(本件ではBC間の転貸借契約は貸す債務の履行不能によって終了するはずであるところ、賃貸人たる地位がAに移転すれば、本件建物の使用継続を望むCにとってむしろ利益になる。)そのため、貸す債務の引受けには賃借人の同意は不要と解する。
したがって、転借人Cの同意がない本問でも賃貸人の地位はAに移転する。
(2)敷金返還請求権について
 敷金について明文はないが、敷金とは、賃貸借契約から生じる一切の債務の担保のため借主が支払う金銭を言う。この金銭は敷金設定契約という要物契約に基づき支払われ、また、この敷金設定契約は不動産賃貸借契約に従たる契約である。そこで、賃貸人たる地位が変更された場合、賃借人が旧賃貸人に支払った敷金が承継されるかが問題となる。
 確かに、敷金が承継されるということは敷金返還義務の免責的債務引受となるから、債権者たる賃借人の同意がない限り承継されないとも思える。しかし、敷金は賃借人が債務を負担した場合に差引計算することが予定されており、この差引計算に対する賃借人の期待を保護する必要がある。したがって、賃借人の同意がなくても、旧賃貸人に対する債務を差し引いた残額が当然に新賃貸人に承継されると解する。
 したがって、Cに対して敷金返還債務を負担するのはAである。  以上

・賃貸人たる地位移転も敷金返還請求権の承継も、ポイントは免責的債務引受ってところなんだろうと思う。
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2017年05月01日

民法 平成21年度第2問

設問1
1 相続開始(882条)によって3000万円の債務は相続人の「共有」(898条)となる。この「共有」とは原則として249条以下の共有と同義と解する。そのため、金銭債務のような分割債務は各相続人に等しい割合で分割される(427条)。したがって、遺産分割前であれば、BはCDEに対して1000万円ずつの債権を有していたことになる。
2 遺産分割(906条以下)は相続開始によって遺産共有状態となった財産の帰属を確定させる行為であり、協議分割(907条1項)でどのように遺産分割を行うかは相続人の自由である。そして、債権者は遺産分割が詐害行為となる場合を除き、遺産分割の結果通りに債権を行使しなければならない。
 本問でも、遺産分割協議の結果として債務をCが単独で追うことになった結果、Bは、Cに対して3000万円の債務を有する。
したがって、BはCに対してのみ、残りの2000万円を請求できる。
3 条文はないが、免責的債務引受は債権者の与り知らないところで責任財産の変更を伴うから債権者の同意が必要と解釈されている。免責的債務引受と利益状況が異ならない本問では、BはDEにそれぞれ1000万円請求できると解すべきとも思える。しかし、不当な遺産分割は詐害行為として取り消すことができるので、解釈は変えない。
設問2
1 遺産分割は遡及効を有するが(909条本文)、「第三者」の権利を害することはできない(同但書)。この規定は遺産分割の遡及効により害されるものを保護する趣旨と解されるから、「第三者」とは遺産分割前に相続財産について法的利害関係を有するに至った者を言うと解する。本件のGは「第三者」に当たる。したがって、GはDに対し、所有権に基づき乙マンションの明渡しと移転登記を請求できる。
2 (1)この場合、DはCEに対し、遺産分割の任意のやり直しを請求することができる。
(2)CEが応じない場合、遺産分割の錯誤無効(95条本文)をCEに対して主張することができると解する。「要素の錯誤」とは、その点について錯誤がなければ意思表示をしなかったであろうし(因果関係)、だれもが意思表示をしないであろうもの(重要性)をいうが、遺産分割の対象となる財産の3分の1を占める乙マンションが分割対象ではなかったことはこれに当たる。また、遺産分割は利害関係者が多いから重過失(95条但書)は広く解すべきだが、本問ではDの重過失に当たる事実はない。したがって、DはCEに対し、錯誤無効を主張することができる。  以上
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2017年04月27日

民法 平成18年度第2問

設問1
 AはCに対し、自らが94条2項の「第三者」に当たることを主張することが考えられる。この主張は、AB間の売買の抗弁、Cの虚偽表示の再抗弁を前提とした予備的抗弁と位置付けられる。この主張が認められるか。
 94条2項は本来意思表示の規定であるが、虚偽の外観につき真の権利者に帰責性がある場合には、真の権利者はその外観を信頼した第三者に対して外観通りの責任を負うこと(表見法理)を定めた規定と解釈できる。本件でも、Cは本件建物のB所有権登記という虚偽の外観を1年間も放置したという帰責性があるから、その外観を信頼したAに対して外観通りの責任を負い、その結果CはAに対し、自分が本件建物の所有者であることを主張できないとAは主張したい。この場合、「善意」とは文字通り善意で足り、「第三者」とは虚偽の外観を前提として新たな取引をした者を指す。
 しかし、94条はもともと通謀虚偽表示という真の権利者が外観作出に積極的に関与した場合の規定だから、本件のような故意放置の場合も通謀と同視できるだけの帰責性が必要と解するところ、登記というのは通常人は1年間くらい見ないことはありうること、BはCの夫であり特に登記簿を確認しなければならないほどの不信事由がないことから、本件のCにはでは通謀と同視できるだけの帰責性は認められない。
 したがって、Aの主張は認められない。
設問2(1)
 他人物賃貸借は債権的には有効だが(559条、560条)、所有者には対抗できず、所有者が賃貸借目的物について所有権に基づく返還請求をした時点で、賃貸人の継続的な貸す債務は履行不能となり終了する。本件では、CがAB間の賃貸借契約を有効と認めてほしいというAの申入れを拒絶した時点で、AB間の賃貸借契約は終了した。そのため、AはBに対し、本件建物の返還義務を負うはずである(616条、597条)。
 しかし、Bは他人物賃貸人だから、本人Cの意思に沿って本件建物の明渡請求をするのは信義則(禁反言、1条2項)に反するように思える。そこで、他人物賃貸人が本人を相続した場合に、本人の地位で意思表示ができるかが問題となる。
 この問題は無権代理人が本人を相続した場合と利益状況が異ならないから、同様に考えるべきである。判例は、本人が追認拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合について、追認拒絶によって本人への効果不帰属が確定した以上は、無権代理人が本人を相続しても無権代理人に効果帰属しないとしている。そこで、本人の追認拒絶後に他人物賃貸人が本人を相続しても、他人物賃貸借は有効にならないと解する。
 本件でも、Cは追認を拒絶しているから、BがCを相続しても他人物賃貸借は物権的に有効にならない。
 したがって、AはBに対し、BがCを単独相続したことを理由に本件建物の明渡しを拒絶することができない。
設問2(2)
1 敷金返還との同時履行
 敷金とは、建物賃借契約から生じる一切の債務を担保するために支払われる金銭である。建物賃借契約に従たる契約として敷金設定契約という要物契約が締結される。定義からわかるように、敷金は一切の賃借人の債務を担保するものであり、修補義務等は建物明渡後に初めて発覚する場合も多い。そのため、建物明渡が敷金返還よりも先履行である。したがって、敷金返還を受けるまで明渡を拒絶するという主張は認められない。
2 債務不履行に基づく損害賠償請求
 BはCの地位に基づいてAに対し本件建物の明渡しを請求しているが、本人BはAに対し、賃貸借契約における貸す債務(601条)の不履行及び他人物賃貸借で権利を移転する義務(560条、559条)の不履行があるから、AはBに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求ができる(415条)。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)を主張して建物明渡を拒絶することができる。
3 不法行為に基づく損害賠償請求
 他人物賃貸借をしながら権利を移転できなかったことを「過失」(709条)ととらえ、不法行為に基づく損害賠償請求もできる。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)も主張できる。                   以上
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2017年04月26日

民法 平成22年度第2問

設問1(1)
1 DはCに対し、本件パイプの所有権に基づく本件パイプの返還請求はできない。なぜなら、本件パイプは建物に付合し、本件パイプの所有権はCに移ったからである(242条本文)。
2 DはCに対し、本件パイプの譲渡担保権に基づく物上代位により300万円を支払わせることができるか。
譲渡担保権につき明文はないが、動産の占有を設定者にとどめたままその交換価値を把握する担保権として判例上認められている(非典型契約)。また、不動産の交換価値を把握する権利である抵当権に物上代位が認められているから(372条、304条)、譲渡担保権に基づく物上代位も認められると解する。要件は、@譲渡担保権設定契約、A売却等による交換価値の現実化(304条参照)、B弁済期の到来と解する。Bについて、仮に譲渡担保権の清算方法を帰属清算と解すれば弁済期到来後にも清算金が支払われるまでは受戻権を行使できるようにも思えるが、判例は弁済期到来後に譲渡されたらもはや受戻権を行使できないとしているから、要件と解するのが正しいと考える。
 本件につき見るに、@DB間で本件パイプについて譲渡担保権設定契約が締結されている。Aについて、請負は「売却」(304条)等には当たらないから請負代金債権には原則として物上代位できないが、例外的に売却と同視できる特段の事情がある場合には物上代位できると解するところ、本件パイプの価格はBがCから受け取った金額の8割以上を占めるから、特段の事情があると言え、物上代位できると考える。Bについては、Bは請負の仕事を完成しているから、弁済期は到来している(633条但書、624条)。
 したがって、DはCに対し、300万円を支払わせることができる。
設問1(2)
 Cに対して請負代金を支払わせることができるのはDかEか。
 Dが請求できる根拠は物上代位だから、Dは「払渡し」(304条但書)の前に差押えをしなければならない。Dは差押えをしていないから、債権譲渡が「払渡し」に当たるならばEが優先することになる。では、債権譲渡が「払渡し」に当たるか。
そもそも法が「払渡し」の前に差押えを要求した趣旨は、債権の特定性を維持することでも担保権者の優先弁済権を確保することでもなく、第三債務者を二重弁済の危険から保護することである。そして、譲渡担保の場合は抵当権と異なり、ある金銭債権が物上代位の対象となることが登記によって公示されていないから、差押えは第三債務者に対する公示機能を果たす。したがって、譲渡担保権の対象物権の価値が金銭債権に転化した場合、その金銭債権の譲渡は「払渡し」に当たると解する。
本件では、Dは「払渡し」たる債権譲渡の前に差押えをしていない。
したがって、Cに対して請負代金を支払わせることができるのはEである。
設問2
1 CF間
(1) FはCに対し、所有権に基づく返還請求として本件パイプの引渡しを求めることはできない。前述のように、Cは付合により本件パイプの所有権を取得しているからである。
(2)占有回収の訴え(200条1項)をすることもできない。Cは特定承継人(200条2項本文)に当たるからである。FはCの悪意を証明することによって占有回収の訴えを提起できるが(200条2項但書)、Cは、Bが専門の建築業者であることを評価障害事実として悪意を否定できるから、結論は異ならない。
(3)FはCに対し、本件パイプから得ている利益を不当利得(703条)として返還請求することはできない。CB間の請負契約という「法律上の原因」(703条)があるからである。
2 BF間
(1) FはBに対し、本件パイプの所有権に基づく返還請求をすることはできない。Bは本件パイプを占有していないからである。
(2) Fは占有回収の訴え(200条1項)をすることができるか。
BはAからの特定承継人(200条2項本文)に当たるが、Aは400万円の本件鋼材を4分の3の300万円という安値で慌てて売却していることから、Bの悪意(200条2項但書)を証明したい。しかし、占有回収の訴えは所持の外観に反し取引安全を害する可能性があるから「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」の要件は厳格に解すべきである。そこで、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」とは承継人が何らかの形で侵奪があったことの認識を有していたことが必要であり、占有の侵奪の可能性についての認識にとどまる限りはこれに当たらないと解する。
本件につき見ると、4分の3程度の値引きは通常の売買でも行われうるから、上記のような事情からはBに侵奪の可能性の認識があったことを認定できるが、侵奪があったことの認識までは認定できない。
したがって、Fは占有回収の訴えを提起することはできない。
(3)FはBがAから本件鋼材を買ったことを不法行為(709条)として損害賠償請求することはできない。Bが前述のように侵奪の可能性の認識をもってAと取引したことは、709条の過失とまでは言い切れないからである。
(4)FはBに対し、不当利得に基づく返還請求(703条)もできない。Bは本件パイプの加工と取付けにより300万円の利益を得ているが、AB間の売買契約及びBC間の請負契約という「法律上の原因」(703条)があるからである。
3 以上のように解しても、FはAに対して不法行為に基づく損害賠償請求ができるから酷ではない。  以上

・最後の設問では法律構成が複数考えられることが多い。
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2017年04月07日

民法 予備試験平成28年度

回答
1 DのBに対する請求
(1)  支払済みの代金500万円の返還請求は、売買契約解除により発生した原状回復請求権に基づくものである(民法561条前段)。
要件は、@売買契約締結、A権利移転不能(取引通念上権利移転が期待できない場合を意味すると解する。)、B解除の意思表示と解される(以上561条前段)。本件では、@平成27年5月22日に、BD間でC所有の甲機械の売買契約が締結されており、A同年9月22日にCがDに対し甲機械の返還請求をしたことにより取引通念上権利移転が期待できなくなっており、B同月30日にDはBに対し契約解除の意思表示をしている。
   解除の効果について明文はないが、契約関係の遡及的消滅と解する(545条1項本文参照)。そうすると、Bは法律上の原因なく500万円を所持していることになるから、Dは前記500万円について不当利得返還請求権(703条)を有する。
(2)  乙機械購入のための40万円をDが請求するとしたら、根拠は債務不履行に基づく損害賠償請求権が考えられる(民法415条)。確かに、561条後段は、契約時において権利が売主に属さないことを知っていた時の損害賠償請求権を認めていないが、履行不能が売主の帰責事由によるときは、561条後段の規定にかかわらず、要件を満たす限り415条に基づく損害賠償ができると解する。
   要件は、@契約締結、A本旨不履行、B帰責事由である(以上415条)。本件では、以上に述べたところからいずれも@Aは認められる。B帰責事由について、所有権移転という結果債務(560条)の不履行は、不可抗力の場合を除き、帰責事由が認められる。本件では、BがDに所有権を移転できなかったことは不可抗力によるものではないから、Bに帰責事由が認められる。
   損害の範囲についての416条は相当因果関係を定めたものというのが従来の通説だが、契約時に両当事者が予見可能な損害を賠償させる規定と解する。本件では、契約締結時に、Bが権利を移転できないならばDは代替物を取得することは契約時にBD両者が予見可能だから、損害の範囲に含まれる。
したがって、Dは415条に基づき40万円の損害賠償請求権を有する。
(3)  甲機械の価値増加分50万円を請求するとしたら根拠条文は196条だが、同条は「回復者」に対する請求権であり、本件で甲機械の回復者はCであるから、Bに対する請求には理由がない。
   703条によることも考えられなくないが、Bには利得がないから、要件を満たさない。
2 DのCに対する請求
 修理による甲機械の価値増加分(50万円)は、占有者による有益費の償還請求権(196条2項)によるものである。Dが主張すべき要件は@「有益費」であること、A価格の増加が現存する場合であることである(196条1項本文前段)。「有益費」(196条2項)とは物の価値を増加させる費用をいうが、物の扱い方は本来所有者が決めるべき事柄であるし、賃借人が目的物の原状回復義務を有することと(616条、598条)のバランスから、必要な改良がおこなわれた結果としての価値増加額に限ると解する。本件では、@甲機械を「稼働させるためには修理が必要」であったから、Dの請求する50万円は必要な改良がおこなわれた結果としての価値増加と認められる。また、Aも認められる。
 もっとも、Cは「回復者」(196条2項本文後段)であるから、「支出した金額または増加額」を選択できる。Cはこの規定に基づき、増加額の50万円ではなく、Dが実際に支出した金額である30万円を選択することができる。
 したがって、Dの請求は30万円分に限り認められる。
3 【事実】5におけるBおよびCの主張
(1)  Bが乙機械を購入するための増加費用40万円を理由がないと主張する理由は、561条後段が、契約時に権利が売主に属さないことを知っていた他人物の買受人による損害賠償請求権を否定している点にあると考えられる。本件でBはDに対し、甲機械の所有権がCにあることを伝えているから、Dは561条後段の悪意である。しかし、判例は前述のように、415条の要件を満たす限りで415条に基づく損害賠償請求権を認めており、Dは415条に基づく損害賠償を主張しているのであるから、この主張は認められない。このように解すると561条1項後段が空文化するが、仕方がない。
(2)  Bが甲機械の価値増加分50万円を理由がないとする主張は、前述のように認められる。
(3)  Cが甲機械の価値増加分50万円を理由がないとする主張は、前述のように認められないが、Cは「回復者」として支出額を選択できる。
(4)  B及びCが、Dに対し、甲機械の使用相当額25万円を求める根拠は何か。使用相当額は「果実」であるから190条1項によるべきとも思える。しかし、189条や190条は物権の帰属状態の正常化を想定した条文であり、本件のような契約関係の巻き戻しの場合に適用すべきでない。575条によるべきとも思えるが、同条は両当事者の給付が均衡していることを前提としているから、本件のように不均衡の場合に適用するのは妥当でない。契約解除の場合には、互いに契約関係がなかった状態に戻すことを重視すべきであるから、公平を趣旨とする不当利得法の規定によるべきである。
   主張権者はBかCか。Bは甲機械の所有権を有していないから、甲機械の使用利益が帰属せず、したがって甲機械が生み出した利益はBの損失とはならない。そのため、主張権者はCである。
   Cが主張すべき704条の要件は、本件のような侵害利得の場合には@Dの利得とAその利得がCの権利に基づくこと(以上703条)、並びにBDの悪意(704条)である。ABは明らかに認められるから、Cは@が25万円であることを証明すれば、Bに対する25万円の不当利得請求権を有する。
(5)  そうすると、DはCに対して30万円の費用償還請求権を有し、CはDに対して25万円の不当利得請求権を有しており、これらは同じ金銭債権であって弁済期にあるから、相殺できる(505条1項)。
    したがって、CはDに対し、5万円を支払えば足りる。    以上


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2016年02月02日

民法 予備試験平成27年度

回答
設問1
1 FはBに対し、甲建物の所有権に基づく返還請求権を行使すると考えられるが、認められるか検討する。
 要件は@Fが甲建物の所有権を有していること、ABが甲建物を占有していることである。Aは事実4の記載から認められる。@について、Fは@甲建物のA元所有、AA死亡、BC及びDはAの子であることを主張立証して、本件売買契約を権原として甲建物の所有権を取得したと主張したい。
 これに対してBは、第一に、本件贈与契約を権原として元所有者であるAが所有権を喪失したことを抗弁として主張立証する。しかし、本件贈与契約は本件売買契約以前に対抗要件を具備していないというFの再抗弁が認められるため、この抗弁は認められない。
 Bは、第二に、EがAの子であること及びEから甲建物について3分の1の持分の移転登記を受けたことを主張立証する。これは事実1及び事実5から認められる。
 そうすると、FとBは、甲建物についてそれぞれ3分の2と3分の1の共有持分を有し、それぞれ登記を具備していることになる。共有とは一つの物を複数の者で共同して所有することであり、各共有者は物に対し持分権を有するにすぎない。持分権の法的性質は所有権であるが、同様の権利を持つものがいることによる制約を受ける。その制約の一つとして、共有者相互ではどちらも所有権に基づく返還請求はできないから、FはBに対し、甲建物の所有権に基づく返還請求権を行使することはできない。
2 FはBに対し、甲建物の持分権に基づく明渡請求ができるか検討する。
(1)まず、Fが共有状態を維持したままで甲建物の全部の使用をBに求めることは、持分権は共有物の全体に及んでいるためできる(249条参照)。しかし、この方法はBが任意に協力しなければ実現できない。
(2)そこで、FはBに対し、256条1項本文に基づき、Fを単独所有とする共有物の分割請求ができる。そして、FはBとの協議の上、持分権の過半数の賛成による決定として、Bに甲建物の明渡しを請求できると解する。Bが協議に参加しない場合にも、B不参加のまま持分権の過半数の賛成による決定で同様にできると解する。なぜなら、協議に参加の機会を与えられたうえでの不参加は、持分権の行使の放棄と見得るからである。
(3)Bが協議に応じない場合は裁判所に分割を請求することができる(258条)が、任意の協議により目的を達成できるから、現実に使うまでもない。
設問2
 BはEに対し、本件贈与契約に基づく登記移転義務の不履行を理由に損害賠償請求できるか検討する(415条)。
 BはAとの間で本件贈与契約を締結し、EはAの包括承継人であるから、BはEに対し、本件売買契約に基づき、甲建物の全部の移転登記請求権を有している。しかし、Eは3分の1の持分権の移転登記しかしていない。これは本旨不履行(不完全履行)に当たる。その本旨不履行により、Bは伝統工芸品を製作していた甲建物を明け渡さざるを得なくなり、営業上の損害が発生した。
 これに対し、Eは帰責事由がないことを抗弁として主張立証すると考えられる。すなわち、本件で本旨不履行が発生したのは、C及びDが甲建物を譲渡してそれぞれの持分権の範囲で移転登記をしてしまったからであり、Eとしては、C及びDの上記行為を阻止する義務までは有していない。そのため、BがC及びDに対して損害賠償請求するならともかく、自分に損害賠償請求するのは筋違いであるという主張である。
 この抗弁は認められるか。たしかに、共有者各人はそれぞれ持分権を有し、持分権の処分は自由に行うことができる。しかし、それは共有者の内部関係でそのように言えるのであり、外部の者との契約関係においては、共有者各人は、契約に基づく全部の移転登記義務を不可分債務として負っているのである。そのため、共有者各人は、他の共有者が持分権を処分したことを債権者との関係では主張できず、そのような事情は共有者内部の求償問題になるに過ぎないと解する。
 したがって、Eの帰責事由がないことの抗弁は認められず、BのEに対する債務不履行に基づく損害賠償請求は認められる。  以上

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posted by izanagi0420new at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法

民法 予備試験平成26年度

設問1
1 Aの請求は634条1項に基づく瑕疵修補請求である。この成否を検討する。
(1)ア 請負の担保責任の法的性質
 634条は請負の担保責任を定めた規定である。請負の担保責任の法的性質について、560条以下と同じ法定責任とする説は、特定物の性状は契約内容にならないという特定物ドグマに依拠しているため妥当でない。請負の担保責任は、完成物の引渡後に請負人の給付危険を消滅させる債務不履行の特則と解すべきである。
イ 634条1項の瑕疵修補請求権の法的性質
 そして、634条1項の瑕疵修補請求権は、債務不履行に基づき発生する追完請求権の一種と解する。
(2)では、Aの請求が634条1項の瑕疵修補請求権に基づくものと言えるか。
ア 請求原因
 請求原因は@AC間の請負契約締結の事実とA仕事の目的物に「瑕疵」があることと解される(634条1項)。@は事実4から証明できる。
イ 「瑕疵」の有無
 Aについて、請負の担保責任の法的性質は債務不履行責任であるから、「瑕疵」とは主観的に債務者が契約目的を実現していないことすなわち債務不履行のことと解すべきである。物が通常有すべき性質を有さないことというように客観的にとらえるのは妥当でない。そうすると瑕疵の有無を判断するためには契約内容を確定することが必要である。
 そこでAC間の請負契約の内容を検討するに、AはB邸の外壁を気に入り、Cに対して実際にB邸の外壁を見せて同じ仕様にしてほしい旨を伝えており、Cはそうすることが可能である旨返事をして契約締結に至っているのだから、「A邸の外壁をB邸と同じ仕様に改修すること」が契約内容である。しかし、完成物はB邸と同じ商品名ではあるものの原料の違うタイルで改修されたというのであるから、仕事内容は債務の本旨に基づくものではない、すなわち瑕疵があると言える。
ウ 手段選択の適切性
 請負の瑕疵修補請求権は追完請求権の一種であり、追完請求権は債務不履行を原因として債権者が債権を実現させるために認められる権利であるから、追完請求の内容は債権者が決めることができるというべきである。本件でAは特注品であるタイルの納入と改修工事のやり直しを求めている。外壁のタイルの材料が違ったという本件の事情の下では、Aの手段選択は追完請求としてありうるものである。
エ したがって、Aの請求は634条1項の瑕疵修補請求権に基づくものと言える。
2 予想されるCからの反論
 これに対してCはまず、@修補不能の抗弁が出せる。履行不能であれば牽連性により修補義務も消滅すると解されるからである。また、A瑕疵が重要でなく、かつ修補に過分の費用を要することを主張立証することができる(修補困難、634条1項但書)。さらに、請負の担保責任が債務不履行責任の特則であることから、B帰責事由がないことを主張立証することもできると解する。
 本件では@は明らかに認められない。
 Aについては、「重要」か否かは主観的にではなく、契約した目的・目的物の性質等により客観的に判断すべきである。本件では、建物の外壁の改修工事において、外壁の見た目は客観的に重要と言える。過分の費用か否かは修補に必要な費用と修補によって生じる利益を比較して判断すべきところ、本件では必要な費用は特注するタイル費用、外壁を除去する費用および労力、新しく張りなおす費用および労力であり、少なくないと言える一方、得られる利益はAの主観的満足のみであり、少ないと言える(耐火性、防火性等の性能は同一である)。したがって、Cの抗弁が認められ、Aの請求は認められない。
 Bについて、帰責事由は不可抗力及び債権者の圧倒的過失がある場合に求められると考えるところ、本件はCが遅くとも契約当日にAから指摘を受けた際(事実5)にE社に確認することができたと認められるから、不可抗力とは言えない。また、Aは契約当日に指摘をした際にCから光の具合で違って見える云々の説明に一応納得しているが、それはCが「E社に問い合わせて確認したから間違いない」という強引な虚言に対ししぶしぶ引き下がったに過ぎないから、圧倒的過失とは言えない。したがって、Bの抗弁は認められない。
3 結論
 以上より、Aは634条1項の瑕疵修補請求をすることができるが、Cの修補困難の抗弁が認められるため、請求は認められない。
設問2
1 Aは634条2項に基づく損害賠償請求をしていると考えられる。これが認められるか検討する。
(1)634条2項により請求できる損害賠償の内容
 634条2項は、@修補に代える損害賠償(選択的損害賠償)およびA修補とともにする損害賠償(併存的損害賠償)を選択的に認めている。@として請求できるのは修補費用である。Aの内容は、減価分、逸失利益と解される。この他に、請負の担保責任が債務不履行責任の特則であることから契約関係における保護義務違反として瑕疵から生じた損害(瑕疵結果損害)の賠償も認められうる。
(2)本件でAは上記のうちいずれかを請求できるか
ア @について
 まず、@選択的損害賠償は認められないと考えられる。なぜなら、Aは既にA邸を売却しており、新所有者がそれを「瑕疵」だと思わないかぎり修補請求権自体が消滅していると解されるからである。
 これに対して、瑕疵担保責任は請負契約に基づいて発生しているものであるから、目的物を売却した後も契約者の下に存続しているという考え方もあり得る。客観的な瑕疵の場合はその通りだろうが、契約者の主観に依存した瑕疵は目的物の所有権に付着したいわば状態的瑕疵であり、契約者が目的物の所有権を失った後に存続させる理由はないから、消滅すると解すべきである。不動産賃貸借において貸す債務が目的物の所有権に付着した状態債務と解されているのだから、状態的瑕疵というのも突飛な解釈ではない。
イ Aについて
 完成物の性能は異ならず、売却価格に影響はないのであるから、減価分は存在しない。
 また、AはA邸の客観的価値である2500万円を手にしており、それにより新しい土地を買って同じ建物を建てることができるのであるから、逸失利益も存在しない。
ウ 瑕疵結果損害も存在しない。
2 以上より、Aの請求は認められない。  以上

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A「あたしね、自分の常識力にそれほど自信があるわけじゃないけど、この問題でAの請求を認めるっていう結論は非常識だと思うわ。認める回答例が多いけど、マジで言ってるのかしら?」
B「こんなの認める裁判官はいないだろうね。」
posted by izanagi0420new at 14:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法

民法 予備試験平成25年度

設問1(1)
1 下線部の契約は非典型契約の、いわば将来債権譲渡担保契約というべきものである。その契約が有効か。有効要件が明文なく問題となる。
 まず、まだ発生していない債権の譲渡であることから、債権の発生可能性が要件となるとも思える。しかし、債権が発生しないリスクは契約時に当然に考慮されるべき性質のリスクであるから、譲渡の代金に反映させるなどして、譲渡当事者間でリスク分担をすべき問題であるし、法解釈としては、譲渡当事者間でリスク分担がされているものと解すべきである。したがって、債権の発生可能性は要件とならない。
 次に、債権債務の確定のため、譲渡債権の特定性が要件となると解すべきであるが、その程度としては債権の種類と期間が示されていれば足りると解する。本件ではパネルの製造および販売に関する代金債権として債権の種類が特定され、現在有しているもの及び今後1年間に有することになるものとして期間が示されているから、特定性の要件を満たす。
 最後に、契約が債務者の自由を過度に拘束するものは公序良俗に違反し無効というべきであるが、本件ではそのような事情はない。
 したがって、下線部の契約は有効である。
2 では、甲債権はいつの時点で譲渡されたか。@AC間の譲渡契約時、A甲債権発生時、BAからDに対する債権譲渡の通知時という3つの可能性が考えられる。
 このうち、Bは譲渡担保のいわゆる担保的構成を徹底した考え方の応用であるが、債権を「譲渡」したという債権譲渡契約当事者間の通常の意思に反する解釈であり採用できない。
 発生していない債権を譲渡することはありえないからAが正当とも思える。しかし、Aと解すると甲債権が未発生のまま二重譲渡された場合に、対抗要件によって優劣を決することができなくなり(存在しない債権についての対抗要件は無効であるため)、妥当でない。したがって、@と解釈すべきである。発生していない債権を譲渡することはないという理論的問題点は、債権者となり得る地位が移転したと解釈すれば解決できる。判例も同じ結論である。
設問1(2)
 CがFからの支払請求を拒絶する論拠として、AD間で締結された、DがCの債務を免責的に引受ける契約の効力を援用することが考えられる。この契約も非典型契約であるから、その有効性が明文なく問題となる。
 免責的債務引受契約は一般的に債権者、債務者、引受人の三者間の合意で締結される場合には有効と考えられている一方、債務者と引受人との間で締結される場合には、債権者にとって責任財産の変更を伴い債権者の利益に大きく影響するため、債権者の同意が要件と解されている。
 では、本件のように債権者と引受人との間で締結される場合には、債務者の同意が要件となるだろうか。利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない(474条2項)から、債務者の同意が要件となるとも思える。しかし、債務者は、債権者と引受人との契約で債務を免除されるという利益を受けることはあっても、不利益を受けることはない。474条2項は、自己の債務を他人に処理されたくないという、それ自体さほど重要でない債務者の気骨ある意思を推定して明文化したものに過ぎないから、免責的債務引受の場面にその趣旨を及ぼす必要はない。したがって、債務者の同意は要件とならないと解する。
 また、AD間の契約が公序良俗(90条)に反するような事情もない。
 したがって、AD間で締結されたCの債務をDが免責的に引受ける契約は有効であり、Cはその契約の効果を援用できる。
設問2
1 Eは譲渡禁止特約を対抗できるか。
2 譲渡禁止特約の意義
 譲渡禁止特約(466条2項本文)は、債権が財貨として自由に譲渡できると解されている今日、過酷な取立をする債権者に譲渡されることを防ぐという債務者保護の趣旨で設けられたと解されている規定である。しかし、実際には銀行などの強い債権者が事務処理手続の複雑化防止のために利用している。このように譲渡禁止特約は本来の制度趣旨から外れた使われ方をしていることに加え、債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在に悪意重過失であれば債権譲渡の効力を否定されてしまうことから、将来債権譲渡担保という便利な金融手段が阻害されてしまってさえいる。したがって、譲渡禁止特約の有効性は厳格に解すべきである。
3 Bが債権を取得した時期
 設問1(1)で検討したように、将来債権譲渡担保契約において債権の譲受人が債権者となるべき地位を取得するのは債権譲渡契約時であるから、Bは債権譲渡契約時に乙債権(正確には甲債権を取得すべき地位)を取得している。
4 結論
 そうすると、Eが譲渡禁止特約を締結すべき主体はBだったのであり、EがAと締結した譲渡禁止特約は、Aが債権者ではなく、譲渡禁止特約を締結する主体ではない以上、無効である。このように解しても、前述のように今日では譲渡禁止特約が債権者の利益のために締結されていることから、不当ではない。
 したがって、Eは譲渡禁止特約をBに対抗できない。  以上

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posted by izanagi0420new at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法

民法 予備試験平成24年度

設問1(1)
 主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産についての執行を要求するのは検索の抗弁(453条)である。453条は保証債務についての規定であるが、物上保証人にも適用されるかが問題となる。
 保証人に検索の抗弁が認められるのは、保証人の責任が二次的なものだからである。すなわち、保証とは主たる債務者の弁済を担保する行為であり、保証債務とは保証のために保証人が債権者と締結する契約に基づく債務である。保障のおかげで債権者は債務者のみならず保証人の一般財産も責任財産として把握でき、金融が円滑化する。保証債務は主たる債務とは別の債務であるが、保証があくまで主たる債務の担保であることから、保証人は主債務者が弁済しない場合のみ保証債務を履行する責任を負う(保証債務の補充性)。そのため、債権者が主債務者の資力を過小評価して保証人に弁済を求めてきた場合には、保証人に催告の抗弁が認められる。
 以上の趣旨は、物上保証人にも妥当する。すなわち、物上保障とは物上保証人が自らの一般財産ではなく、その所有する特定物を責任財産として提供する保証形態であり、債権者は、債務者が債務を履行しない場合に、提供された特定物を換価して債権回収する仕組みである。ここからわかるように、物上保証人は債権者に対して何ら行為責任を負わないから、物上保証人は債務者に対して何か債務を負っているわけではない(ここが通常の保証と異なる)。しかし、先にみたように、保証人に検索の抗弁が認められる理由は、保証人が債務を負っているからではなく、二次的責任を負っているからである。そして、物上保証人も、債務者が履行しない場合に担保に供した特定物を競売されてしまうという点で二次的な責任を負っている。したがって、物上保証人にも453条が適用されると解する。
 したがって、Bは設問の主張をすることができる。
設問1(2)
1 Cが抵当権を実行した場合
 この場合は351条に基づき、BはAに求償することができる。
 そもそも委託を受けた保証人は、主債務者との間に、主債務者が弁済できない場合に代わって弁済することを内容とする委任契約が成立していると解すべきであり、そうすると、保証人は、弁済した場合には主債務者に対して費用償還請求権(650条)を有する。そのため、委託を受けた保証人の事後求償権(459条)の法的性質は、受任者の費用償還請求権である。 
 そう考えると、債権者に対して何ら債務を負っていない物上保証人は、なすべき委任事務がない以上、債務者に対して費用償還請求権は発生しないとも思える。しかし、保証というのは債務者に代わって自己の一般財産を減少させる責任である以上、自己の一般財産の減少があれば、債務の有無にかかわらず、債務者に対して減少した一般財産を補てんする請求権を認めるべきである。351条はそういう趣旨の規定と解する。
2 Cが抵当権を実行する以前の場合
 この場合は、BはAに求償することができない。
 そもそも、委託を受けた保証人は主債務者との間に委任契約が成立しているという前述の解釈からすると、保証人の事前求償権(460条)の法的性質は、受任者の費用前払請求権(649条)である。そして、保証債務の内容が債務者の代わりに自己の一般財産を減少させることという前述の考察からすると、事後と事前で異なる扱いをする理由がないとも思える。
 しかし、物上保証人が事前に求償しようと思っても、競売を申し立てるのは債権者であり、債権者が競売を申し立てるか否かは物上保証人には判断できないのであるから、「事前」の求償は不可能である(通常の保証で「事前の求償」という概念が成立するのは、その後に自ら保証債務を履行することが同一人物により予定されているからと言える)。また、物上保証人は自己の一般財産ではなく、特定物を担保に供している。その特定物を換価した結果、債務者の債務が消滅するに足りるか否かは、競売を実行するまで不明である。そのため、仮に求償を許しても換価の結果と求償額との間に齟齬が生じるのは確実であり、その場合に齟齬の清算をめぐって債務者と物上保証人との間に無用の債権債務関係を生じさせることになる。したがって、物上保証の性質上、事前求償は認められないというべきである。
設問2
1 EはBに対し遺留分減殺請求(1031条)ができるか検討する。
 そもそも戦後の遺留分制度は、遺贈や生前贈与によって特定の者に財産を集中させようとする被相続人の意思を制限し、兄弟姉妹以外の法定相続人に相続権を確保させる制度である。要件は@行使者が「遺留分権利者及びその承継人」であること、A減殺の対象が遺贈及び1030条の贈与であることである。
 本件では、BはAの子であり、「兄弟姉妹以外の相続人」(1028条、887条1項)であるから、「遺留分権利者」(1031条)である。また、AのBに対する生前贈与がなされたのは平成24年1月18日であり、相続開始は同年3月25日であるから(882条参照)、本件生前贈与は1030条の贈与に当たる。
 したがって、EはBに対し、遺留分減殺請求ができる。
 この点、Bは高齢(昭和27年生)であってその生活利益を確保する必要性がある一方、Eは就労可能年齢にあるから(昭和62年生)、Eの遺留分減殺請求権を制限的に解釈すべきではないかという議論がありうるが、明文や前述の遺留分制度の趣旨に反するから採用しない。
2 Eが遺留分減殺請求権を行使した結果、甲土地をめぐるBEの権利関係はどうなるか。遺留分減殺請求権は形成権であり、行使と同時に物権的効力を生じると解されている。また、裁判外でも行使できる。
 1028条2号は2分の1の割合に相当する額を受けると定めているが、これは相互句財産が金銭であることを予定した規定であり、本件のような不動産のみが相続財産である場合にはそのままでは適用できない。しかし、1028条の趣旨は2分の1に相当する財産を遺留分として減殺の対象にする点にあり、また、不動産を競売するか否かは遺産分割協議で定めるのが適当である。そうすると、不動産のみが相続財産である場合に遺留分減殺請求権が行使されたときは、不動産の共有(898条)関係になると解する。
 したがって、BEは甲土地を2分の1ずつ共有する。  以上

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posted by izanagi0420new at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法
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