アフィリエイト広告を利用しています

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2017年12月25日

憲法判例フレーズ集

東京都管理職受験資格事件
 地方公共団体が、公務員制度を構築するにあたって、公権力行使等地方公務員の職とこれに承認するのに必要な職務経験を積むために減るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができる

謝罪広告事件
単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するにとどまる程度

拘禁者喫煙事件
個人の嗜好の一つとしても、あらゆる時と場所で認められなければならないものとはいえない

博多駅事件
 報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由と並んで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにある。また、取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する。

昭和女子大事件(私人間効力)
 自由権的基本権の保障規定は、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない。

百里基地事件
 私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである。

被拘禁者喫煙事件
 これらの自由に対する制限必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。

堀越事件
 国家公務員法102条1項は公務員の職務の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することを目的とするが、国民は表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており、政治活動の事由は民主主義を基礎づける重要な権利だから、公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきである。
 国家公務員法102条1項の「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こりうるものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。そのようなおそれが認められるか否かは、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。
 Xによる配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による活動と認識しうる態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。

君が代不起立事件
 …このような考えは、X自身の歴史観ないし世界観から生ずる社会生活上ないし教育上の信念ということができる。
 しかし、公立学校における式典において、日の丸の掲揚及び君が代の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であって、起立行為は一般的、客観的に見てこれらの式典における慣例上の儀礼的所作である。したがって、起立斉唱はXの有する歴史観ないし世界観を否定するものではない。また、特定の思想を保持することを強制したり、これに反する思想を禁止したりするものではなく、信仰告白を強要するものでもない。
 もっとも、起立斉唱行為は一般的、客観的に見ても国旗国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるから、敬意を表明し難いと考える者にとっては、個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなり、その限りにおいて、その者の思想良心の自由についての間接的な制約となる。
 このような間接的制約は職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量して必要性及び合理性が認められる場合にのみ許容される。

→不服従教諭のあぶり出しを企図して職務命令が出された場合は職務命令の「目的」の正当性が欠ける。実際に歌うことを強要した場合は職務命令の「内容」が「慣例上の儀礼的な所作」を超えて相当性に欠ける。なお、職務命令の拒否が私的な考えの発露か教師としての職務上の良心に由来するかの区別は読み取れない。

よど号事件
 閲読の自由の保障は、19条の規定や21条の規定の趣旨・目的からその派生原理として当然に導かれ、また、13条の規定の趣旨に沿う。

 一般的抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、具体的事情のもとにおいて放置することのできない障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、その制限の程度は障害発生防止のため必要かつ合理的な範囲にとどまると解するのが相当である。

京都府学連事件
 13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定している。

指紋押捺事件
 指紋は、指先の紋様であり、そっれ自体では個人の私生活や人格、思想、信条等個人の内心に関する情報となるものではないが、性質上万人不同性、終生不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性がある。

早稲田大学講演会事件
 学籍番号、氏名、住所及び電話番号は、早稲田大学が個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない。また、本件講演会に参加を申し込んだ学生であることも同断である。しかし、このような個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものであるから、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきである。

住基ネット訴訟
 氏名、生年月日、性別及び住所からなる4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、…いずれも個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない住基コードも同様である。
 また、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令の根拠に基づき、正当な行政目的の範囲内でいこなわれている。そして、住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに、又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない

国籍法事件
 憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨である。

 立法目的に合理的根拠が認められない場合、又はその区別と立法目的の間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は合理的な理由のない差別として14条1項に違反すると解する。

投票価値平等51年判決
 選挙区割と議員定数配分の決定には、多種多様で複雑微妙な政策的及び技術的考慮要素が含まれており、それらの諸要素のそれぞれをどの程度考慮し、これを具体的決定にどこまで反映させることができるかについては客観的基準があるわけではないから、国会の裁量権の合理的な行使として是認されるかを判断するほかはない。しかし、このような見地に立っても、国会において通常考慮しうる諸般の要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきであり、これを正当化する特段の理由がない限り14条1項に違反すると解する。

徳島市公安条例事件
 通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによる。

税関検査事件
 表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また、(徳島県公安条例事件と同じ)。

北方ジャーナル事件
 表現行為の事前差止めは原則として許されない。しかし、その表現内容が真実でなく、又はそれがもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に事前差止めが許される。

テレビ番組の名誉棄損
 テレビ放送がされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の視聴者の普通の注意と市長の仕方とを基準として判断すべきである。

箕面忠魂碑事件
 政教分離規定はいわゆる制度的保障の規定であって、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。そして政教分離原則は、宗教とかかわる行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである。そうすると20条3項の宗教的活動とは、国と宗教とのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為を言う。ある行為がその宗教的活動に該当するか否かは、行為の外形のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。

空知太事件
 憲法89条の趣旨は、政教分離の原則を財政的側面において徹底させることにより、20条1項後段の特権付与禁止を財政的側面からも確保し、信教の自由の保障を一層確実なものにすることである。しかし、国家と宗教とのかかわり合いには種種の形態があるから、89条も、そのかかわり合いが信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係相当とされる限度を超える場合にこれを許さないとするものと解される。
 国公有地を無償で宗教的施設の敷地としての用に供する行為は、一般的には89条との抵触が問題となる行為ではあるが、前述の相当限度を超えるか否かは、当該宗教的施設の性格、当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきである。

防衛庁宿舎ビラ事件
 政治的意見を記載したビラの配布は、表現の自由の行使ということができる。しかしながら、21条1項は必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない。
 …たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害する。

薬事法事件
 職業は分業社会においては個人の人格的価値と不可分であるから、22条1項は職業選択の自由のみならず職業活動の自由も保障している。もっとも、職業は社会的相互関連性が大きく、多種多様だから、その規制目的も千差万別で、制限も各種各様ありうる。それゆえ、ある規制措置の22条1項適合性は規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較衡量したうえで慎重に決定されなければならない。ところで、一般に許可制は、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的でなければならず、また、それが消極的、警察的措置である場合には、職業活動の内容及び態様に対する規制によることができないと認められることを要する。

証券取引法事件
 財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、その性質上社会全体の利益を図るために立法府によって加えられる規制により制約を受けるものである。財産権の種類、性質等は多種多様であり、また、財産権に対する規制を必要とする目的も多岐にわたるため、財産権に対する規制は種種のものがありうる。このことからすれば、財産権に対する規制が29条2項に言う公共の福祉に適合するか否かは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較衡量して判断すべきである。

国有農地売払特措法事件
 29条1項2項の文言から、財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、違憲の立法ということはできない。公共の福祉に適合するようにされたか否かは、財産権の性質、変更の程度、及びこれを変更することにより保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきかどうかによって判断する。

在外国民選挙権事件
 選挙権の制限は原則として許されず、制限するためにはやむを得ない事由がなければならない。そして、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り上記のやむを得ない事由があるとはいえず、このような事由なしに国民の選挙権行使を制限することは、15条1項及び3項、43条1項並びに44条但書に違反する。立法不作為により選挙権行使ができない場合も同様である。

 立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上違法となる。

堀木訴訟
 25条1項は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであり、また、25条2項は同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものである。

同条1項は、国が個々の国民に対して具体的現実的に生存権を保障する義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的現実的な生存権が設定充実されてゆくものである。

また、「健康的で文化的な最低限度の生活」は抽象的相対的概念であり、25条の規定を現実の立法として実現するには国の財政事情を無視できず、また専門技術的な政策的判断が必要である。したがって、25条の趣旨に答えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合をのぞき、裁判所が審査判断するのに適しない。

堀木訴訟控訴審判決
 25条2項は国の事前の積極的防貧施策をなすべき努力義務のあることを、同1項は第2項の防貧施策の実施にもかかわらずなお落ちこぼれた者に対し、国は事後的、補足的かつ個別的な救貧施策をなすべき責務があることを各宣言したものと解すべきである。

川崎民商事件
 検査が実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めることにはならない。


posted by izanagi0420new at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

2017年12月24日

会社法単純設例集1

設例1
Y会社の株主であるABCDXは、ABとCDXの間で内紛状態にあった。代表取締役Aは、新たに発行する株式を買い取るための資金として、自己の経営方針に賛同するEに対し、1億円を提供した。

回答指針
 B会社がAに1億円を支払った行為は、株主に対する利益供与に当たり違法ではないか(120条1項)。Eは株主ではないから「株主の権利の行使に関し」された者とは言えないのではないかが問題となる。
 そもそも株式の譲渡は株主たる地位の移転であり、それ自体が株主の権利の行使とは言えないから、会社が特定の株主に対して株式取得費用を提供することは、原則として利益供与に当たらない。しかし、会社から見て好ましくないと判断される株主が株主権を行使することを回避する目的で当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は、「株主の権利の行使に関し」利益を供与する行為に当たる。そのため、B会社の行為は120条1項に違反する。


設例2
 Y会社の株主はA会社、代表取締役B、取締役C、監査役Xであり、BとCX間で内紛状態にあった。A会社は、Cにほのめかされ、Cの経営方針に賛成するDに対し、株式を譲渡し、Y会社に対して名義書換え請求を行った。しかしBは名義書き換えを行わず、株主総会の招集通知をAに発送した。


設例3
 Y会社の株主Aは保有する株式をBに譲渡し、名義書換え請求を行ったが、Y会社の担当者のミスで名義書換えは行われず、Y会社の株主名簿には依然としてAが株主と記載されていた。Y会社の製造する製品の売行きが好調となり、Y会社は事業拡張のための新株発行を決議し、Aに対して新株割り当て通知を行った(202条4項)。Aは、自己に対する通知が来たことを怪訝に思ったものの、Y会社の株価は今後も上昇すると考えたため、何事もなかったかのように1000株の引受を申込んだ(203条2項)。その後、行われていなかった名義書き換えが行われ、申し込みをしていないBがY会社から割当てを受け(204条1項)、払込金額の全額を払い込み(208条1項)、株主となった。
 Aは会社に対して自己が株主であることを主張できるか。


設例4
 公開会社であるY会社の代表取締役Aは、取締役Bと経営方針をめぐって対立していたが、自己の経営方針に賛同するCに対し、特に有利な金額で募集株式を発行した。なお、当該募集株式の発行に際して取締役会決議は行われず、募集事項の公示もなかった。
 Bは本件募集株式発行の無効を主張できるか。

回答指針
Bは新株発行無効の訴え(828条1項2号)を提起することが考えられる。Bは株主であるから原告適格を満たす(828条2項2号)。
無効原因について明文はないが、重大な瑕疵のみ無効となると解する。新株発行が無効になると法律関係の安定や取引の安全が著しく害されるからである。
では本件で重大な瑕疵はあるか。まず、取締役会決議を経ていない点は重大な瑕疵とは言えない。なぜなら、授権資本制度(199条1項、2項、201条1項)のもと、新株発行は業務執行に準ずるものであり、取締役会決議を欠くことは内部的瑕疵に過ぎないからである。
次に、募集事項の公示がないことは、新株発行差止め請求をしたとしても差止の事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる(最判平成9年1月28日)。本件は、Cに対して特に有利な金額で発行されているため、新株発行差止め請求がなされれば差止事由がある(199条3項、201条1項)。したがって、本件で募集事項の公示がないことは重大な瑕疵であり、無効原因となる。


設例5
 非公開会社であるY会社の代表取締役はAであり、株主はABCXである。AはBCX全員が居合わせた席上で、株主総会を開催する旨宣言し、Bを取締役に選任する決議をした。この決議は有効か。


設例6
 非公開会社であるY会社の代表取締役はAであり、株主はABCXである。Y会社には株主総会の議決権を行使しうる代理人は株主に限る旨の定款の定めがある。AはBを取締役に選任するため、BCXに対し、取締役会決議を経ずに株主総会予定日の3日前に招集通知を発した。Cは所用により出席できないため、弁護士Lを自己の代理人として出席させた。Lは、適法に委任状を示して出席した(310条1項後段、3項)。株主総会の目的事項はBの取締役選任の件であることはABCXいずれも了知していた。しかし、Xは株主総会の席上でBのほかにEをも取締役に推挙したところ、B、L、Xの賛成を得て可決された。
 Cは本件株主総会決議の無効を主張できるか。

回答指針
 310条1項は合理的理由による相当程度の制限を禁止するものではないと解されるから、議決権を行使しうる代理人を株主に限る旨の定款の定めは同条に反するものではない(最判昭和43年11月1日)。
 非公開会社では株主総会の招集通知は1週間前までに発しなければならないところ(299条1項)、本件では3日前に発せられているから、299条1項違反がある。しかし、同条の趣旨は株主に出席の機会と準備の機会を与えることにあるから、全員出席総会において株主総会の権限に属する事項につき決議がなされたときは、その決議は有効に成立する(300条本文)。本件においても、全員が出席しているから決議は有効とも思える。
 しかし、代理人が出席することにより株主全員が出席したこととなる株主総会においては、代理人を選任する株主が会議の目的事項を了知して委任状を作成しており、かつ、当該決議がその会議の目的事項の範囲内のものである場合に限り、決議は有効と解すべきである(最判昭和60年12月20日)。
 本件ではCはEが取締役に選任されることを了知していなかったから、決議は無効である。よって831条1項1号の違法がある。
 これに対してYは831条2項による裁量棄却を主張するであろうが、決議方法に重大な瑕疵がある場合にはその瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認められるときであっても裁量棄却されないところ(最判昭和46年3月18日)、本件の瑕疵は重大だから、裁量棄却されない。
 
posted by izanagi0420new at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 商法
ファン
検索
<< 2017年12月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。