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2018年03月31日

刑法ポイント

クレカ詐欺
・他人名義のカード使用と自己名義のカード使用で論点が異なる。
(1)他人名義
欺罔行為は名義の偽りかシステムにより決済される状況の偽りか
 クレジットカードは名義人への個別的信用を基礎とした決済の仕組みだから、名義の偽りが欺罔行為に当たると解する。
(2)自己名義
被害者は加盟店かカード会社か
 Xの行為に詐欺罪が成立するか。詐欺罪は個別財産に対する犯罪だから交付自体が財産上の損害となる。そのため、加盟店を被害者とする1項詐欺罪の成否を検討する(246条1項)。

重過失致死罪(211条後段)
・死んでいると誤信して死体遺棄(190条)の故意で殺した場合
※死体遺棄罪の否定(抽象的事実の錯誤)⇒重過失致死罪の成立の流れになる

権利行使と恐喝
・すべての要件の検討が終わった後に違法性阻却(35条)の有無の枠組みで検討する。「恐喝」の要件の問題ではない。
 違法性の本質は社会的相当性を逸脱した法益侵害と考えるから、@権利の範囲内であり、A権利行使方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えない場合には、違法性が阻却される。

過失
 過失とは、一般人を基準とした予見可能性・結果回避可能性を前提とした結果回避義務違反であると解する。

逮捕と監禁
 逮捕罪及び監禁罪が成立し、これらは包括して逮捕・監禁罪となる。

間接正犯
・@正犯意思とA道具のように支配利用を認定する。

加害目的略取罪(225条)
・暴行脅迫を手段とするのが略取、欺罔誘惑を手段とするのが誘拐
・「略取」「誘拐」とは、人をその生活環境から離脱させ、自己または第三者の実力支配下に移すこと
・連れ去りなど、逮捕・監禁罪(220条)と同時に行われることが多い。観念的競合にする場合が多い(54条1項前段)。

共同正犯と単独犯が混ざっている場合の書き方
第1 甲の罪責
1 甲及び乙が○○した行為に××罪の共同正犯の成否を検討する。

2 ○○した行為に××罪の成否を検討する。


事後強盗殺人未遂罪(243条、240条後段、238条

強制的に姦通ないしわいせつ行為をして故意で殺した場合
強制わいせつ殺人罪、強姦殺人罪、集団強姦殺人罪は存在しない!
強姦(強制わいせつ)致死罪と殺人(未遂)罪の観念的競合⇦死の二重評価という批判あり

強制的に姦通ないしわいせつ行為をして故意で傷害した場合
強姦(強制わいせつ)致傷罪一罪とすべきである。なぜなら、強姦(強制わいせつ)罪と傷害罪の観念的競合では、法定刑の下限が強姦(強制わいせつ)致傷罪よりも軽くなり妥当でないからである。

中止犯
・実行共同正犯が中止未遂となる場合、中止犯の根拠は責任減少でもあるから、中止犯の効果は共謀共同正犯に及ばない。
・43条但書の趣旨は、未遂の段階まで至った行為者に後戻りの機会を与えることにより結果惹起防止を図ることであり、違法減少と責任減少が必要的減免の根拠である。要件は@「中止」行為、A任意性(「自己の意思により」)である。@は実行中止の場合は結果発生防止に向けた真摯な努力が必要である。
↑これは実際には書けないので以下のようになる。

3 さらに中止未遂(43条但書)が成立し、違法・責任減少のため刑が必要的に減免されるか。
(1)中止行為
 〇〇という行為は結果惹起に向けた真摯な努力といえるから「中止した」といえる。
(2)任意性
 〇〇という事情は経験上一般に犯行の障害とならないから、「自己の意思により」といえる。

共謀共同正犯と実行共同正犯の書き分け
・共謀共同正犯は実行者の犯罪をまず認定して(「甲の罪責 〇〇の行為に〇〇罪の共同正犯(←共同正犯と決め打ちしてよい。)の成否を検討する。」)、共謀者は後から共謀共同正犯の成否のみを論じる(「乙の罪責 前述の行為について〇〇罪の共同正犯の成否を検討する。」)。
・両方実行行為者である実行共同正犯の場合は「甲及び乙の罪責」で論じてもいける。

中立的行為と幇助犯
 幇助犯は、他人の犯罪を容易ならしめる行為を、それと認識認容しつつ行い、実際に正犯行為が行われることによって成立する。
 ソフトの使い道は利用者が決めることであること、及びソフト開発に伴う委縮効果を防ぐべきことから、ソフト提供者に幇助犯が成立するのは、ソフト利用者のうち例外的とは言えない範囲の者が当該ソフトを正犯行為に利用する蓋然性がある場合で、それを認識しつつ提供した場合に限られると解する。

幇助の故意
 幇助とは、正犯に物理的心理的因果性を与えて実行行為遂行と結果惹起を促進することであり、幇助犯が成立するには実行行為遂行のみならず結果惹起の認識認容が必要である。

正当防衛状況
2 正当防衛(36条1項)が成立するか。
(1)「急迫不正の侵害」
(2)「自己または他人の権利」「防衛するため」
(3)「やむを得ずにした」
(4)正当防衛状況の有無
 @先行行為の不正性、A侵害行為の時間的場所的近接性、B侵害行為の程度が先行行為を大きく超えるなどの特段の事情がないことの要件を満たす場合には、法確証の利益があるとはいえないから、正当防衛状況になく正当防衛は成立しないと解する。
 本件では、…

放火罪の建造物、住居
・「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物をいい、屋根があり、壁又は柱で支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることができるものをいう。
・「住居」とは、人の起臥寝食の場所として日常使用される建造物をいう。

延焼罪(111条)
・自己所有物に対する放火罪の結果的加重犯だから、認定するときは109条(110条)2項の罪の成立を認定し、そのあとで111条の成否を検討する。そして、延焼罪成立の場合は、延焼罪が結果的加重犯だから、延焼罪のみが成立する。

109条2項
・本人の依頼を受けて放火したなら自己所有(2項)で検討してよい。
1 自己所有非現住建造物放火罪(109条2項)が成立するか。
(1)非現住性、非現在性
(2)「放火」
(3)「焼損」
(4)「自己の所有に係る」
(5)「公共の危険」

放火罪の条文操作
・建造物の一体性が延焼罪の検討の際に問題になることがある。

犯人隠避罪(103条)
・「蔵匿」とは官憲の発見・逮捕を免れるべき蔵匿場を供給して匿うこと
・「隠避」とは、蔵匿以外の方法により官憲の発見・逮捕を免れさせる一切の行為


脅迫罪・強要罪(222、223)
・強要罪の保護法益は意思決定意思活動の自由である。
・脅迫罪の保護法益について、強要罪と同様に意思決定意思活動の自由と解する見解と、私生活の平穏・安全感と解する見解がある。後説は特定の決意・行動を左右することが要件とされていないことから主張される。

名誉棄損罪
・公然とは、不特定又は多数人が認識しうる状態をいう。

財物窃取後の暴行・脅迫 s61.11.18百選U39
暴行脅迫が財物奪取の手段になっていないから「強取」といえず、1項強盗は成立しない。
窃盗罪と2項強盗罪が成立し、両者は包括一罪となり、重い2項強盗罪で処断される。

不法原因給付と詐欺(被害者の交付行為が不法原因給付に当たる場合)
交付する物・利益には何らの不法性も存在しないから、詐欺罪が成立すると解する。(争いは少ない)

不法原因給付と横領
 不法原因給付物は、給付者に民法上の返還請求権がないから、委託物横領罪は成立しない。
 もっとも、不法原因寄託物の場合は、給付者のもとに所有権が残り、給付者は所有権に基づく返還請求ができるから、受寄者が不法に処分する行為には委託物横領罪が成立する。

適正給付と詐欺 百選49
 請負人が本来受領する権利を有する請負代金を欺罔手段を用いて不当に早く受領した場合には、その代金全額について246条1項の詐欺罪が成立することがあるが、本来受領する権利を有する請負代金を不当に早く受領したことをもって詐欺罪が成立するというためには、欺罔手段を用いなかった場合に得られたであろう請負代金の支払とは社会通念上別個の支払に当たると言いうる程度の期間支払時期を早めたものであることを要する

背任共同正犯
 融資担当者による融資が背任罪を構成するとき、借り手はどのような要件があれば共同正犯になるのか。
@融資担当者の任務違背と銀行の財産上の損害について高度の認識を有していること(客観面に対する高度の認識)
A融資担当者が図利加害目的を有していることを認識し、本件融資に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ本件融資の実現に加担していること(主観面の利用)

電子計算機使用詐欺 246条の2
 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

前段(作成型)
架空入金データを入力したりプログラムを改変することにより自己の預金口座に不実の入金・債務免脱を行わせる場合(窃取したカードで自己口座に振替=銀行の元帳ファイルに不正な指令→財産上不法の利益)

後段(供用型)
偽造したプリペイドカードを使用して有償のサービスを取得する場合

・財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録とは、その作出により直接得喪変更が生じるものをいう。ex)銀行の顧客元帳ファイルの預金残高記録、プリペイドカードの残度数
※キャッシュカードの磁気記録は含まない

公務執行妨害罪
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は...

1 執行官に向かって石を投げつけた行為に公務執行妨害罪が成立するか(95条1項)。
(1)「公務員」
 〇〇は法令により公務に従事する職員(7条1項参照)であるから「公務員」に当たる。
(2)「職務を執行するにあたり」
ア 職務は権力的なものに限らないから〇〇も職務に当たる。
イ 〇〇は職務と時間的に接着しているからなお「執行するに当たり」に該当する。
ウ 明文はないが、公務執行妨害罪の保護法益は公務員の職務であるから、職務の適法性が要件となる。適法といえるためには@抽象的職務権限に属し、A具体的職務権限に属し、B重要な方式を履践していることが必要である。適法か否かは行為時の事情を前提として客観的に判断する。

・Aに関して地方議会議長の議事運営措置が会議規則に違反していても、具体的事実関係の下で刑法上は暴行等による妨害から保護するに値する職務行為と認められるときはこれを満たす。
・Bに関して検査証をたまたま携帯していなくてもこれを満たす。

エ 適法性の錯誤は違法性を基礎づける事実の錯誤と単なる法律の錯誤を区別し、前者の場合のみが事実の錯誤となって故意を阻却する。
(3)暴行・脅迫
 人に対するものである必要はなく、人に向けられた物理力行使で足り、間接暴行も含む。








































































posted by izanagi0420new at 15:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2018年03月29日

刑事訴訟法ポイント

当事者主義的訴訟構造(256条6項、298条1項、312条1項

必要な処分(222条1項本文前段、111条1項前段)
 必要な処分は捜査比例の原則(197条1項本文)が捜索処分にも適用されることから@捜索差し押さえの実効性を確保するために必要であり、かつA社会通念上相当な態様で行われるものをいうと解する。

222条1項本文前段、102条2項
被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

職務質問における有形力行使
1 下線部@
(1)前提として、甲への職務質問開始が警職法2条1項の要件を満たすか検討する。(事実)という不審事由があるから「何らかの犯罪を犯し…たと疑うに足りる相当な理由」があると言える。よって甲への職務質問開始は適法である。
・職務質問開始要件の「理由」には犯罪の特定は不要であり、何らかの不審事由があれば足りる。
(2)「停止させて」に準じる行為としてなされたと考えられるが、職務質問に伴う有形力行使として適法か。
ア 強制手段を用いることはできない(警職法2条3項参照)。本件では…
イ 警察比例の原則(警職法1条2項)から、職務質問の必要性、緊急性を考慮し、具体的状況の下で相当と言
える場合には、職務質問における有形力行使が許されると考える。
本件では…
(3)以上より、適法である。

職務質問における所持品検査→米子(職務質問における有形力行使と区別
 所持品検査は、口頭による質問と密接に関連し、職務質問の効果を上げるうえで必要性、有用性が認められる行為だから、警職法2条1項に基づく職務質問に付随して行うことができる。もっとも、職務質問に付随する行為だから所持人の承諾を得て行うのが原則である。しかし、承諾のない所持品検査も捜索に至らない行為は強制にわたらない限り、必要性、緊急性、これにより害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡を考慮して具体的状況の下で相当と認められる限り許される。

違法収集証拠排除
設問〇
1 事実認定は証拠能力ある証拠に基づき適式に行わなければならない(317条)。
2 では、本件尿鑑定書は違法収集証拠排除法則により証拠能力が否定されないか。
(1)適正手続(憲法31条)、司法の廉潔性維持、将来の違法捜査抑止の観点から、@令状主義の精神を没却する違法の重大性、A将来の違法捜査抑止の観点からの排除相当性がいずれも認められる場合に証拠排除されると解する。そして、直接の証拠収集手続に違法がない場合であっても、先行手続と収集した証拠の間に密接関連性が認められる場合には、先行手続の違法性を考慮できると解する。
(2)ア(本件は直接の手続に違法はない。)
イ(以前の手続について、違法がある。)
(3)では、違法な以前の手続をもとに作成された本件尿鑑定書に証拠能力が認められるか。
ア(以前の手続と直接の手続の密接関連性の検討)
イ((3)の手続の証拠排除を検討)
(4)従って、本件尿鑑定書の証拠能力は否定される。
3 本件覚せい剤の証拠能力は否定されるか。
 確かに、甲宅の捜索は違法に収集された本件尿鑑定書に基づき行われているが、本件覚せい剤の差押えは司法審査を経て発布された捜索差押許可状によってなされているから、先行する違法性は希釈化されているといえる。また、別件の捜索差押許可状があわせて執行されていることから、別件の令状のみの捜索によっても覚せい剤が発見される可能性が高かったといえる。
 したがって、違法な先行手続との密接関連性は認められず、証拠能力が認められる。

訴因変更の可否
 訴因変更は「公訴事実の同一性」(312条)の範囲内で可能である。312条の趣旨は被告人の防御の利益保護であるから、「公訴事実の同一性」とは被告人の防御の利益を害さない範囲、すなわち基本的事実関係の同一性の認められる範囲を意味すると解する。基本的事実関係の同一性は、日時・場所等の事実的共通性を検討し、補充的に非両立性を考慮すべきと解する。

強制処分の論証
設問〇
1 甲の行為が「強制の処分」(198条1項但書)に当たるならば、強制処分法定主義に反し違法である。
 多様な捜査手法から可及的に人権保障を図るため、「強制の処分」か否かは被侵害利益に着目して判断すべきである。もっとも、程度を考慮しないと真実発見(1条)が害される。そこで、「強制の処分」とは意思に反し重要な権利利益の制約を伴う処分を言うと解する。なお、「身体、住居、財産等」という判例の文言は憲法上不可侵が保障された類型だから「重要な権利利益」と置換え可能と解する。

二重の危険 窃盗⇒常習窃盗
設問〇
1 「確定判決を得たとき」(337条1号)に当たり、免訴判決をすべきではないか。
2(1)一事不再理効の客観的範囲は公訴事実の単一性の範囲
 (2)公訴事実の単一性は基本的に訴因に従って判断すべき。
    本件では、常習性の発露は訴因として訴訟手続に上程されておらず、実体的に一罪を構成するかどうかにつき検討すべき契機が存在しないから、公訴事実の単一性を欠く。
3 従って、(結論)。

科学的証拠
 科学的証拠は判断過程が不透明であり、にもかかわらず結論を過大評価しがちであるから、証拠能力(法律的関連性)を慎重に吟味する必要がある。以前の判例は
@検査者の適格性、A検査機器の正確性、B対象資料採取・保管の適切性
のみを審査する傾向があったが、これらだけでは判断過程の不透明さを除去できないので、C基礎となる科学的原理の適切性、D用いた技術の適合性も審査すべきと解する。

自白法則
1 「任意にされたものでない」(319条1項)として証拠能力が否定されないか。
 自白法則(憲法38条2項、刑訴法319条1項)の趣旨は、虚偽の自白を排除すること及び被疑者の人権に配慮することである。そのため、「任意にされたものでない」とは、虚偽の自白を誘発するような類型的状況又は供述の自由を侵害する不当な圧迫の下でなされた自白を言うと解する。

逮捕の現場
・逃走経路は逮捕の現場に当たる。
・逃走経路でもなく、被逮捕者が掴んで投げ込んだ場所は逮捕の現場に当たらない⇒「必要な処分」を検討する。令状のない逮捕に伴う必要な処分

百選8
公道は、通常、人が他人から容貌等を観察されること自体は受忍せざるを得ない場所だから

接見交通権論証
@ノーマル
1 Pのした接見指定は「捜査のため必要があるとき」(39条3項)に当たらず違法ではないか。
 接見交通権は憲法34条前段に由来する重要な権利だから、「捜査のため必要があるとき」とは捜査の中断による支障が顕著な場合をいう。捜査の中断による支障が顕著な場合とは、現に取調べ中である場合のほか、間近いときに取調べをする確実な予定があって、接見を認めたのでは予定通りの取調べができない場合も含む。
 そのような場合である限り、被告人の防御の権利を不当に制限するとは言えない(39条3項)。

A初回接見
2 Pの措置は「被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限」(39条3項但書)するものとして違法ではないか。
 初回接見は憲法34条前段の保障の出発点だから、被疑者の防御の準備のため特に重要である。そこで、捜査機関は初回接見に関して接見指定をする際に、弁護人と協議して即時又は近接した時点での接見を認める義務があり、これを怠った場合には39条3項違反となると解する。

取調受忍義務
 取調受忍義務を認めると黙秘権(憲法38条3項)行使が困難になるから、取調受忍義務はないと解する。198条1項但書は、出頭拒否・取調室からの退去を認めることが逮捕勾留の効力を否定するものではないことを注意的に規定したものと解する。
 したがって、身体拘束中の被疑者取調べは任意処分である。
 
余罪取調べの可否
(取調受忍義務否定)
 したがって、本罪の取調べも余罪取調べもともに任意処分であり、余罪取調べを行うこと自体に特別の制約はない。
 しかし、任意処分と言っても無制限ではなく、余罪取調べを行うことで本罪についての起訴不起訴の決定を不当に遅延させた場合には、余罪取調べは原則として違法と解する。

逮捕勾留の諸問題
1.逮捕前置主義
(1)趣旨
 逮捕前置主義の趣旨は、身体拘束の当初は逮捕の必要性の判断が流動的であるため、先に短期の身体拘束を先行させ、もって不必要に長期な身体拘束を避け、被疑者の利益を図ることである。
(2)逮捕に違法があった場合の勾留請求の却下
 法が逮捕を準抗告の対象に含めていないのは勾留請求に対する審査において逮捕の適否を判断すべきとされているからだと解されるから、逮捕に重大な違法がある場合にはそれを考慮して勾留請求を却下すべきである。

2.事件単位の原則
 逮捕・勾留は人単位ではなく事件単位で行われる。逮捕・勾留に関する刑事訴訟法の規定は被疑事実を単位としているからである。
(1)帰結@
 二重逮捕二重勾留は許される。
(2)帰結A
 逮捕・勾留の理由とされた被疑事実以外の犯罪事実を、当該逮捕勾留に関する手続上考慮することは許されない。 
 
3.一罪一逮捕一勾留の原則(分割禁止原則)
(1)原則 
 一罪について複数の逮捕・勾留を行うことは原則として許されない。ここで一罪とは実体法上の一罪である。そのため、上記原則は実体法上の一罪を分割することの原則禁止を意味している。理由は、実体法上の一罪の範囲で複数の逮捕・勾留を認めると身体拘束の不当な長期化につながる可能性があるからである。
(2)例外
・起訴後保釈中に実体法上一罪となる罪を犯した場合∵同時処理が論理的に不可能
・保釈後に以前の新事実が発見された場合は争いあり

4.再逮捕・再勾留の禁止
(1)原則と例外
 再逮捕・再勾留は、法が定めた時間制限(203条以下)を無意味にするから原則として違法である。もっとも、再逮捕・再勾留の必要性がある場合はあり、199条3項は再逮捕がありうることを前提にしているから、必要かつ相当な場合は例外的に再逮捕・再勾留が認められると解する。必要性の要件は厳格に解し、@事情変更が生じたこと、A必要やむを得ないという程度に加重されたものであること、B不当な蒸返しに当たらないと評価できることという条件を満たすものでなければならない。
・再逮捕再勾留を禁止した規定はない、勾留は逮捕と密接な関係にある、等も理由として使える。

(2)違法逮捕のため勾留請求が却下された場合の再逮捕
 前の逮捕の違法が著しい場合には再逮捕が認められないとして再逮捕を認める場合を想定する見解があるが、違法の著しさは既に勾留請求を却下する段階で考慮済みであるから、この場合の再逮捕は常に認められないと解する。

5.別件逮捕勾留
(1)逮捕・勾留の要件判断は別件を基準として行う。
(2)そうすると逮捕中の本件取調べは余罪取調べということになるが、余罪取調べは適法か。取調受忍義務を否定するならば適法と解する余地があるので取調受忍義務の有無が問題となる。
 …(取調受忍義務否定)…
 従って逮捕中の取調べは任意捜査だから本件と別件の区別はなく、どちらの取調べも行うことができる。
(3)もっとも、逮捕・勾留は、その理由(199条1項)とされた被疑事実(別件)についての捜査(起訴不起訴の判断)のために用いるものだから、取調べの時間等から判断して既に別件についての捜査が終了していると認められる場合には、その余の逮捕・勾留は違法となる。

2018年03月27日

刑事訴訟法判例フレーズ集

百選87
 刑訴法328条は、公判準備又は公判期日における被告人、証人、その他の者の供述が、別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に、矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより、公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり、別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については、刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。

百選72
 確かに、黙秘権の告知がなかったからといって、そのことから直ちに、その後の被疑者の供述のすべての任意性が否定されることにはならないが、被疑者の黙秘権は、憲法38条1項に由来する刑事訴訟法上の基本的かつ重要な権利だから(198条2項)、これを無視するような取り調べが許されないことも当然である。
 198条2項の趣旨は被疑者の心理的圧迫を解放し、また、取調官を自戒させることである。本件のように黙秘権告知が一度もされなかった事案においては、黙秘権不告知の事実は取り調べにあたる警察官に被疑者の黙秘権を尊重しようとする基本的態度がなかったことを象徴するものとして、また、黙秘権告知を受けることによる被疑者の心理的圧迫の解放がなかったことを推認させる事情として、供述の任意性判断に重大な影響を及ぼす。

百選62
 前科証拠は自然的関連性を有する。しかし、同種前科証拠は事実認定を誤らせるおそれや争点拡散のおそれがあるから、実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許される。
 特に前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合には、前科の犯罪事実が顕著な特徴を有し、かつ、それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって、初めて証拠として採用できる。

百選83
 本件両書証は、捜査官が、被害者や被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして、これらの者に被害・犯行状況について再現させた結果を記録したものと認められ、立証趣旨が『被害再現状況』、『犯行再現状況』とされていても、実質においては、再現されたとおりの犯罪事実の存在が要証事実になると解される。
 写真は撮影、現像等が機械的過程を経て証拠化されるため非供述証拠であり、再現者の署名・押印は不要である。

百選30
 強制の処分とは、個人の意思に反し重要な権利利益の制約を伴う処分を言う。
 憲法35条1項は列挙事由に準ずる私的領域に侵入されない権利も保障しているところ、個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な権利利益を侵害するものだから、強制の処分に当たる。

百選29
 本件エックス線検査は、荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができるうえ、内容物によってはその品目等を相当程度具体的に特定することも可能であって、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たる。

百選28
 身柄を拘束されていない被疑者を採尿場所へ任意に同行することが事実上不可能と認められる場合には、強制採尿令嬢の効力として、採尿に適する最寄りの場所まで被疑者を連行することができ、その際、必要最小限度の有形力行使ができると解する。なぜなら、@そのように解しないと捜査の目的を達成できないし、A裁判官は連行の当否を含めて審査したうえで令状を発布していると解されるからである。

百選25
 被疑者の名誉等を害し、被疑者らの抵抗による混乱を生じ、または現場付近の交通を妨げるおそれがあるといった事情のため、その場で直ちに捜索、差押えを実施することが適当でないときには、速やかに被疑者を捜索、差押えの実施に適する最寄りの場所まで連行した上、これらの処分を実施することも、同号にいう『逮捕の現場』における捜索、差押えと同視することができ、適法な処分と解する。

百選22
 令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合において、そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるときは、内容を確認することなしに右パソコン、フロッピーディスク等を差し押さえることができると解する。

百選10
 おとり捜査は、捜査機関又はその協力者が、身分や意図を秘して犯罪を実行するよう働きかけ、相手方がこれに応じて犯罪の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するものであるが、少なくとも、直接の被害者がいない薬物犯罪等の捜査において、通常の捜査方法のみでは当該犯罪の摘発が困難である場合に、機会があれば犯罪を行う意思があると疑われるものを対象におとり捜査を行うことは、刑訴法197条1項に基づく任意捜査として許容される。

百選9
 捜査機関が対話の相手方の知らないうちにその会話を録音することは、原則として違法であり、ただ録音の経緯、内容、目的、必要性、侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度においてのみ、許容される。

百選6
 任意捜査においては、強制手段を用いることが許されないのはいうまでもないが、任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、右のような強制手段によることができないというだけでなく、さらに、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において許容される。

百選4 S53.6.20 米子強盗事件 所持品検査判例@ 凶器を用いた銀行強盗事件
 所持品検査は口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項による職務質問に付随してこれを行うことができる場合があると解するのが相当である。
  所持品検査は、任意手段である職務質問の付随行為として許容されるのであるから、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であるしかし、職務質問ないし所持品検査は、犯罪の予防、鎮圧等を目的とする行政警察上の作用であって、流動する各般の警察事象に対応して迅速適正にこれを処理すべき行政警察の責務にかんがみるときは、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があると解すべきである。
 もっとも、所持品検査には種々の態様のものがあるので、その許容限度を一般的に定めることは困難であるが、所持品について捜索及び押収を受けることのない権利は憲法35条の保障するところであり、捜索に至らない程度の行為であってもこれを受ける者の権利を害するものであるから、状況のいかんを問わず常にかかる行為が許容されるものと解すべきでないことはもちろんであって、かかる行為は、限定的な場合において、所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当と認められる限度においてのみ、許容される

S53.9.7 所持品検査判例A 単なる覚せい剤事件
 不審車を停止させて職質開始したところ覚せい剤使用の兆候があった。ポケットを外側から触ったところ「刃物ではないが何か堅い物」が入っているようだったので出せと言ったが応じなかった。「出してみるぞ」といってポケット内手を入れて取り出した
 Pの行為は一般にプライバシー侵害の程度の高い行為であり、かつ、その態様において捜索に類するものであるから、上記のような本件の具体的な状況のもとにおいては、相当な行為とは認めがたいところであって、職務質問に付随する所持品検査の許容限度を逸脱したものと解するのが相当である。

百選2
 職務質問を開始した当時、被告人には覚せい剤使用の嫌疑があったほか、厳格の存在や周囲の状況を正しく認識する能力の減退など覚せい剤中毒をうかがわせる異常な言動が見受けられ、かつ、道路が積雪により滑りやすい状態にあったのに、被告人が自動車を発進させるおそれがあったから、前期の被告人運転車両のエンジンキーを取り上げた行為は、警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問を行うため停止させる方法として必要かつ相当な行為であるのみならず、道路交通法67条3項に基づき交通の危険を防止するため取った必要な応急の措置に当たるということができる。
 これに対し、その後被告人の身体に対する捜索差押許可状の執行が開始されるまでの間、警察官が被告人による運転を阻止し、約6時間半以上も被告人を本件現場に留め置いた措置は、当初は前記の通り適法性を有しており、被告人の覚せい剤使用の嫌疑が濃厚になっていたことを考慮しても、被告人に対する任意同行を求めるための説得行為としてはその限度を超え、被告人の移動の自由を長時間にわたり奪った点において、任意捜査として許容される範囲を逸脱したものとして違法である。

百選27
 事件の重大性、嫌疑の存在、証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続きを経てこれを行うことも許される。

2018年03月25日

民事訴訟法論証集

間接事実の自白 
 判例は、間接事実の自白は裁判所拘束力も当事者拘束力もないとの立場であるが、重要な間接事実の自白には証明不要効が認められるべきである。

・重要な間接事実の自白に不要証効が認められることにほとんど異議はない。それに加えて裁判所拘束力や当事者拘束力を認めてよいかが問われる。

補助事実の自白
 判例は補助事実の自白に裁判所拘束力と当事者拘束力をともに否定する立場とみられる。しかし、文書の成立の真正はそもそも証拠の採否の問題である点でほかの補助事実と異なるし、成立の真正(形式的証拠力)が認められれば実質的証拠力を否定する余地は少ない。そのため、文書の成立の真正についての自白は主要事実の自白と同様に裁判所拘束力及び当事者拘束力のいずれも肯定すべきと解する。 

時機に後れた攻撃防御方法 157条1項
 要件は@「時機に後れた」提出であること、A「故意又は重大な過失」によること、B訴訟の完結が遅延することである。@はより早期の適切な時期に提出できたことを指す。Bはその攻撃防御方法を却下した時に想定される訴訟完結時と、却下しなかった場合の訴訟完結時を比較して判断する。

・@について、争点整理手続が行われたときは、その後の提出は特段の事情のない限り時機に後れたものと判断される。
・@について、控訴審での提出は、続審制が採られているため(296条2項、298条1項、301条1項)、第1審からの手続経過を通じて判断すべきである。
・Aについて、争点整理手続の後に提出されて説明義務(174条or/and167条)を果たさないときは重過失が推定されると解する。
・Aは既判力の時的限界で問題になる。

新併存説(条件説)→訴訟上の形成権行使は訴訟行為としての意味を失った場合には実体法上の効果も生じないとする解除条件付きの法律行為と解する、

訴訟要件
 訴訟要件の調査は裁判所が自ら開始するのが原則である(職権調査事項)。しかし、公益性の低いものについては例外的に当事者の主張があってから調査を開始する(抗弁事項)。そして、訴訟要件調査時の判断資料についても原則は裁判所自ら収集する(職権探知主義)。もっとも、公益性の低いものや公益性があっても本案審理と密接に関連するものについては例外的に当事者の提出した訴訟資料をを基に判断すれば足りる(弁論主義)。

抗弁事項→仲裁合意、不起訴の合意
職権調査事項だが弁論主義→任意管轄、当事者適格

確認の利益
 確認の訴えとは法律関係の存否等の確認判決を求める訴えであるが、確認対象は論理的には無限定であり、また、確認判決には執行力がなく紛争解決の実効性に乏しい場合があることから、(被告の応訴の煩を回避することや訴訟経済を考慮して)確認判決の必要性・実効性を特に吟味する必要がある。その際には、@確認対象の適否、A即時確定の利益の存否、B方法選択の適否を考慮する。
 
 A即時確定の利益の要件を満たすためには、㋐原告が保護を求める法的地位が十分に具体化・現実化しており、㋑被告の態度等から原告の法的地位に危険または不安が生じていることが必要である。
Ex)不法行為の加害者が損害額が流動的な状態で先制攻撃的に債務不存在確認を提起した場合
 給付訴訟の提起によって債権者の地位に対する危険が現実化する可能性は低いから、このような債務不存在確認の訴えは㋑原告の法的地位に対する危険がなく即時確定の利益を欠く。

既判力
 既判力とは確定判決の後袖の通用力ないし拘束力(114条1項)をいい、訴訟法上の効力である。紛争解決の実効性確保のため必要であり、手続保障が確保されたことにより正当化される。後訴裁判所は既判力の生じた前訴判決の訴訟物についての判断を前提として判断しなければならないという積極的作用と、当事者は後訴において既判力の生じた前訴判決の判断に反する主張・立証が許されず、裁判所もまたそうした主張・立証を排斥しなければならないという消極的作用がある。既判力は、@訴訟物が同一である場合、A前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の先決問題となっている場合、B前訴の訴訟物と後訴の訴訟物とが矛盾関係に立つ場合に認められる。

独立当事者参加
 独立当事者参加とは、第三者が、当事者の一方又は双方に対して請求を定立し、その請求と既存の請求とを併合審理に付すための参加形態である(47条)。詐害防止参加と権利主張参加に分類される。いずれにも40条が準用されており(47条4項)、合一確定が保障されている。

 詐害防止参加とは、第三者が、訴訟の結果によって権利が害されることを主張して他人間の訴訟に参加する参加形態である。制度趣旨は参加人の利益保護である。要件は@他人間の訴訟係属、A他人の一方又は双方に対する請求定立、B「訴訟の結果によって権利が害される」ことである。Bは詐害意思があれば足り、判決効が拡張される必要はないと解する(詐害意思説)。

 権利主張参加とは、第三者が訴訟の目的の全部または一部が事故の権利であることを主張して参加する参加形態である。権利主張参加に40条を準用させた趣旨は、三当事者間の牽制を通じて事実上矛盾のない判決を保障する点にあると解する。
 参加を認める要件は、@他人間の訴訟係属、A他人の一方又は双方に対する請求定立、B参加人の請求が原告の請求と請求の趣旨レベルで非両立であることと解する。
※三者間の紛争を統一的に解決するという説は、原告被告の一方に対してのみ請求を定立する参加も認められたため成立しなくなった。

補助参加
 補助参加とは、当事者の一方の勝訴について法律上の利害関係を有する第三者が、その当事者を補助して訴訟追行するために訴訟に参加することをいう。
 参加の要件は、@他人間の訴訟係属、A「訴訟の結果について利害関係を有する」(42条)ことである。Aは当事者の意義があった場合にのみ問題となる(44条1項)。「訴訟の結果」とは、訴訟物限定説が伝統的通説だったが、そもそも既判力に服するわけではない第三者にとっては区別の実益が乏しいため、訴訟物に限定せず判決の理由中の判断も含むと解する(訴訟物非限定説)。「利害関係」とは法律上の利害関係である。影響は事実上のもので足りる。
 「効力」(46条柱書)とは参加的効力を意味する。これは既判力とは異なり、被参加人敗訴の場合に参加人と被参加人の間に生じる。参加的効力の客観的範囲は訴訟物に限らず理由中の判断にも及ぶが、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断についてのみ生じる。
Ex)被告がAである場合、「売買契約をしたのはAでない」という判断に参加的効力が生じるが、「売買契約をしたのはBである」という判断には参加的効力が生じない。

訴訟告知
 訴訟告知とは、法律上の形式に従って、当事者の一方が、訴訟係属を第三者に知らせ、参加を促す行為である。
 要件は@訴訟係属中であること(53条1項)、A参加することができる第三者であること(43条1項、独立当事者参加、補助参加、共同訴訟参加を含む)、B告知者は当事者に限らず、被告知者である補助参加人等でもよい(53条2項)。
 効果として参加的効力が生じる(53条4項、46条)ためには、補助参加の利益があれば足りるとする見解もあるが、被告知者が参加しないことがやむを得ない場合もあるから、被告知者による協力が正当に期待できることが必要であると解する。正当に期待できる場合とは、告知者が敗訴した場合、それを直接の原因として告知者が被告知者に求償ないし賠償を求めうるような実体関係がある場合をいう。

・被告知者が実際に補助参加した場合には、原則として現実の補助参加を基準に参加的効力の発生の有無を考えれば足りる。

訴訟承継
 訴訟承継とは、当事者の一方の相続人や係争物の譲受人などに従前の訴訟追行の結果を引継がせるための制度である。訴訟係属中に当事者が死亡したり係争物が譲渡された場合に新訴提起するのは非効率であること及び詐害的な係争物譲渡を防ぐことが制度趣旨である。

 参加承継とは、承継人の側から積極的に従前の訴訟の結果を引継ぐために利用される手続である(49条)。独立当事者参加の形式でなされる(49条1項、47条)ため、必要的共同訴訟に関する審理の規律が準用される(47条、40条)。
※訴訟状態承認義務により、被承継人の自白に拘束される。

 引受承継とは、相手方当事者の側で承継人に従前の訴訟の結果を引継がせるための手続である。同時審判申出訴訟の形式でなされる(50条3項、41条1項、41条3項)。

 訴訟承継の効果は、49条・51条が規定するもののほか、明文はないが承継人に訴訟状態承認義務が生じると解する。承継原因が生じるまでは被承継人が訴訟に最も密接な利害関係を有していたのであり、この者に対する手続保障によって承継人に対する手続保障もある程度代替されたと言いうるからである。

・引受承継は相手方の既得的地位を保護するための制度だから、被承継人からの申立ては認められない。

2018年03月23日

商法論述枠組

設問〇
株主総会決議取消の訴えを提起することが考えられる(831条1項)。
1 訴訟要件
(1)Cは甲社の株主であるから、「株主等」(831条1項本文、828条2項1号参照)に含まれ、原告適格を有する。
(2)〇〇時点では決議の日である〇〇から3カ月以内なので、出訴期間内である。
(3)以上より訴訟要件を満たす。
2 取消事由
(1)
(2)
3 裁量棄却(831条2項)の有無
 〇〇の違法は△△であり重大だから裁量棄却されない。
4 結論

設問〇
 新株発行無効の訴えを提起することが考えられる(828条1項2号)。
1 無効原因
 法的安定の観点から募集株式発行の無効主張は訴えによってのみ可能である。無効事由は明文がないが、募集株式発行を前提として多数の法律関係が形成されるため重大な法令・定款違反の場合に限り無効事由となると解する。
2 本件における無効事由
(1)
(2)
3 結論

設問〇
1 Xは433条1項1号に基づき会計帳簿の閲覧請求をすると考えられる。
(1)Xは甲社の発行済株式1000万株のうち30万株を保有しているから「発行済株式の百分の三…以上の数の株式を有する株主」(433条1項柱書前段)に当たり、請求権を有する。
(2)「請求の理由」(433条1項柱書後段)は、拒絶事由の有無や開示の範囲を会社に判断させるため具体的に明らかにする必要がある。本件では,,,
2 これに対して甲社は、Xが甲社の業務と実質的に競争関係のある事業を営んでいること(433条2項3号)を理由に請求を拒むことが考えられる。競業の客観的事実があれば足り、競業者に競業に利用する主観的意図があることは不要である。本件では,,,
3 結論

請求の理由を基礎づける事実が客観的に存在することまで立証する必要はない
・単に「予定されている新株発行その他会社財産が適正妥当に運用されているか調査する」というのはダメだが、取締役が行ったとされる具体的な行為を挙げているものは具体性に欠けない。
・非公開会社において株主が株式を譲渡するため適正な価格を算定する目的で閲覧等請求を行う場合は1号の拒絶事由に該当しない。

設問〇
1 乙社は募集株式発行差止請求(210条)及び同請求権を被保全債権とする仮処分申立て(民保23条2項)をすることが考えられる。
2 本案請求の可否
(1)乙社は「株主」(210条柱書)であり、本件募集株式発行により甲社株式の保有割合が〇%から△%に減少するため、「不利益を受けるおそれ」(210条柱書)が認められる。
(2)法令又は定款違反(1号)
(3)「著しく不公正な方法」(2号)
(4)結論
3 仮処分の可否
 以上より差止請求権が認められるから「保全すべき権利」が認められ、募集株式発行が切迫しているから「保全の必要性」が認められる。従って、仮処分申立も認められる。
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2018年03月02日

国際私法論証集

T総論

反致
 反致とは、法定地の国際私法によって指定された準拠法が所属する国の国際私法が、法定地法又は第三国法を準拠法として指定しているときに、その外国の国際私法の立場を考慮して、法定地法又は第三国法を準拠法とするのを認めることである。

 反致の理論的根拠として、抵触規則も含めて指定するという総括指定説は、無限の循環が生じるため妥当でない。また、当該国が管轄を放棄しているという棄権説も主権理論を前提とするため妥当でない。実質的根拠として、内国適用拡大という見解は国際主義に矛盾するため妥当でなく、国際的判決調和という見解は反致で指定された国も反致を定めていれば調和しないから妥当でない。結局反致の理論的正当化は難しい。
 
 通則法41条の反致は、本国法として外国法を指定した場合に限定し(「当事者の本国法によるべき場合」)、狭義の反致のみを認めている(「日本法によるべきとき」)点に特徴がある。

論点@ 選択的連結の場合に反致が認められるか。
論点A セーフガード条項の場合に反致が認められるか。

公序
 甲国法の適用が公序に反する場合は、甲国法の適用を排除することができる(42条)。要件は、@適用結果の異質性及びA内国関連性である。@はあくまでも適用結果が日本の私法秩序を現実に害するおそれがあることを意味し、適用する法自体の善悪を意味しない。国際主義の観点から、日本の裁判所は外国法自体の良し悪しを判断できないからである。

先決問題
 先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地たる日本の国際私法が指定する準拠法による。

U管轄と承認

@管轄
民訴法3条の3第3号後段
・外国裁判所の確定判決が日本で承認されない可能性に配慮した規定
・日本との関連性は不十分であり、疑問がある→3条の9で調節?

民訴法3条の3第8号
・「不法行為」とは国際私法上の概念であり、違法な行為によって他人に損害を与えた者が被害者に対してそれを賠償すべき債務を負う法律関係をいう。
・「不法行為があった地」とは、加害行為地だけでなく結果発生地も含む。この趣旨は、不法行為地には証拠が存在する蓋然性が大きく、被害者保護に資する場合が多いからである。もっとも、不法行為が偶発的出来事であることから、加害者の予測可能性も考慮すべきであり、この趣旨で8号カッコ書きが定められている。

民訴法3条の3第11号
証拠調べの便宜(登記簿や不動産自体が存在するから)

民訴法3条の4
 事業者と消費者の訴訟追行能力の差を考慮して、3条の2以下の他の規定と重ねて特に消費者を保護するために設けられた規定である。

民訴法3条の6
客観的併合
 民訴法7条は客観的併合について管轄を認めるが、国際裁判管轄の場合7条に従うと被告の不利益が著しいから、請求間に密接関連性を要求している。146条3項も同趣旨。
主観的併合も同じ要件。

民訴法3条の7 合意管轄 百選99
実質的要件→当事者間の一定の法律関係に基づく訴え
形式的要件→書面
 少なくとも当事者の一方が作成した書面に特定国の裁判所が明示的に指定されていて当事者間における合意の存在と内容が明白であれば足り、双方の署名は必要ない。

A外国判決の承認執行
 そもそも外国の主権の行使である司法権の作用の結果は、当然には日本で効力を有さない。しかし、日本において再び裁判するのは当事者にとって迂遠であり、訴訟不経済でもある。そこで、日本は民訴法118条の要件を満たした場合には特段の手続を経ず外国の確定判決が日本においても効力を持つと定めた(自動承認の原則)。
※外国判決の執行の場合は執行判決が必要(民事執行法22条6号、24条)。
※実質的再審査の禁止(民事執行法24条2項)
 
 118条1号は判決国の裁判所の適格性を求める要件であり、裁判権が認められるとは、日本の国際民訴法の原則から見て、判決国がその事件につき国際裁判管轄を有すると積極的に認められることを言う。積極的に認められるかどうかは、民訴法3条に照らして判断する(鏡像理論)。
※視点
@判決国から見るか日本から見るか
A日本から見るとして日本の直接管轄の基準と同じでよいか

 2号は被告の手続保障を要求した要件であるから、「受けた」と言えるためには@被告が現実に訴訟手続きの開始を了知することができ、A被告の防御権行使に支障がないものであることが必要である。さらに、司法共助に関する条約があれば、条約不遵守の送達はそれだけで2号の要件を満たさない。


 3号は手続的公序と実体的公序を内容とする。

 4号は政策的な要件である。相互の保障があるとは、判決国において日本の裁判所がしたこれと同種類の判決が同条各号所定の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力を有するとされていることを言う。

V各論

@財産法

法人
法人の従属法は本拠地法という説もあるが、設立準拠法である。

代理(本人と相手方)
代理行為地法による。本人は代理行為地を知るべき立場にあるから。

契約
7条の当事者自治の原則の根拠
@債権関係には類型的な最密接関係地を観念しにくい
A私的自治の抵触法への反映

9条
変更が遡及効を持つかどうかは当事者の意思解釈による

10条
形式的成立要件において契約をできるだけ成立しやすくしたもの

分割指定
 XY夫婦は1つの契約で異なる準拠法を選択しているが、このような分割指定が許されるか問題となる。そもそも、当事者自治の原則をできる限り尊重すべきだから、分割指定を否定する理由はない。しかし、相互的な権利義務関係を切り離すような指定を認めるべきではない。そこで、契約の現実的な実現可能性を要件として、分割指定を認めるべきと解する。

不法行為
17条
・原則として結果発生地法を準拠法としている。これは不法行為地と定めていた法令の規定が加害行為地を意味するのか結果発生地を意味するのかを明確にし、加害行為地の公序の維持よりは損害の公平な分担を重視する趣旨である。
・「結果が発生した地」(17条)とは、現実に法益侵害結果が発生した地または加害行為によって直接に侵害された権利が侵害発生時に所在した地のことをいう。

18条
 生産物は性質上転々流通するから、17条によれば結果発生地が過度に広がるとともにそれが偶然に決定される可能性があり不都合である。そこで通則法は、生産者と被害者の接点であり、双方の利益のバランスをとることができるという観点から、生産物責任の準拠法を「市場地」法とする考え方を採用している。「市場地」の具体的内容は、本文では被害者保護の観点から引渡地とし、但書では生産業者と被害者の利益のバランス等の要請から主たる事業所所在地法としている。
※適用範囲 バイスタンダーは17条が適用されるべき
      ∵本文の連結点は被害者が生産物や生産業者と直接接触したことを前提としている

 20条(例外条項)は明らかにより密接な関係がある地がある場合に例外的に当該地の法律を適用するとしている。

 22条(特別留保条項)は日本法の重畳適用を定めている。同条は不法行為が日本の公序に関わることがあるため定められているが、不法行為は公益よりも私人間の利益調整の観点から把握されるのが最近の傾向だから、その合理性には疑問がある。

事務管理・不当利得 14条
 隔地的に生じることは考えにくいから改正されなかった。

債権譲渡 23条
@債権譲渡の成立・譲渡当事者間での効力(23条の問題ではない。)
 →当該債権の運命の問題だから譲渡対象債権の準拠法
A債権譲渡の債務者に対する効力(23条)
→もともと譲渡対象債権の準拠法で規律されていたので譲渡によって変更されるべきではなく、規定に合理性がある。
B債権譲渡の第三者に対する効力(23条)
 →譲渡人の常居所地法に連結させる案もあったが、現時点では集合債権や将来債権を包括的に譲渡する実務上のニーズは少なく、また、対債務者と同一の準拠法で処理できて便宜であるから、譲渡対象債権の準拠法とされた。

代位(法律による移転)
 23条を準用する説もあるが、本件の債権の移転は原因たる事実の効果だから、移転の原因たる事実の準拠法によるべきである。前提として債権の移転可能性については債権自体の準拠法による。

債権者代位
 債権者代位が問題となる状況の重心は、経済的価値の希薄化した代位債権者の債権ではなく、代位対象債権にあるから、代位対象債権の準拠法によるべきである。

詐害行為取消権
 詐害行為取消権が債権の効力であるから債権の準拠法によるべきである。一方で詐害行為の相手方の利益を保護するため、詐害行為の準拠法累積適用する。

相殺
 相殺は反対債権の利用による債務者の免責行為であるから受働債権の準拠法によるべきである。

消滅時効
 時効は債権の運命に関することだから当該債権の準拠法によるべきである。

物権
・物権とは物を直接支配する権利であり、登記すべき権利とは物に関する権利であって登記することにより物権と同一または類似の効力を生じる権利である(買戻権、不動産賃借権)。
・通則法13条は同則主義を採用し、動産不動産を問わず目的物の所在地法に連結している。物権の問題が類型的に所在地と最密接関係を有するからである。
・移動中の物においては目的物の所在地法とは仕向地法を指すと解する。仕向地は物の将来の所在地だからである。
・輸送機関には「所在地」の解釈として旗国法を選択すべきである。
・13条2項の権利の得喪(物権変動)とは、売買契約や取得時効により物権が移転する場合を言う。
・原因事実の完成時とは、ある事実が物権的効果を発生させるのに必要なすべての要件を完全に備えた時点であるとする見解もある。しかし、物権的効果に必要な要件が何かという問題は各国の実質法により決められる問題である。従って、その時々の物権所在地法上、物権変動が生じているか否かが継続的に判断され、物権変動が生じたならばその時点をいうと解する。

約定担保物権(質権、抵当権)の成立および効力
 物権準拠法(=目的物所在地法)による。約定担保は当事者の約条に基づくから、被担保債権の準拠法を考慮する必要はない。

法定担保物権(留置権)
 成立に関しては物権準拠法と被担保債権の準拠法の累積適用。形式的には被担保債権の効力であると同時に物権の問題だから。実質的に見ても被担保債権の準拠法が認めない担保を成立させるのは債権者の過度の保護である。
 効力に関しては物権準拠法。

証券
 証券という紙自体の帰属は物権準拠法による。
 証券に化体する物については、証券自体の物権的効力の問題だから13条に基づき証券所在地法による。

物の所在地の変更と物権
→甲国法によって生じた担保物権の効力の問題は、乙国法(所在地法)に従い改めて13条1項で判断。

物の所在地の変更と物権変動
→甲国で占有された物が乙国へ移動すると同時に物権変動が生じる(甲国=時効30年、乙国=時効10年)。

A家族法

婚姻の成立 24条
 24条1項は両性の平等の観点から各当事者の本国法によるという配分的連結を定めている。
 婚姻の実質的成立要件には婚姻適齢のような一面的要件と近親婚禁止のような双面的要件があるが、その区別は個々の要件を抵触法の次元で解釈して決めるべきである(抵触法説)。なぜなら、実質法の次元で決めるとすると、各国の実質法が渉外関係まで想定して定められているとは限らないため、解釈が困難だからである。そして双面的要件とされた場合には、24条1項が配分的適用を命じているにもかかわらず、当事者双方の本国法を累積的に適用したのと同じ結果となる。

 24条2項は婚姻挙行地での婚姻の公知という公益的観点から婚姻の方式に関して婚姻挙行地法としているが、同3項では当事者の一方の本国法との選択的連結を定めている。

 3条但書の日本人条項は内外法平等の見地に反するように思われるが戸籍実務の便宜から定められている。

婚姻の効力 25条
・夫婦の同居協力義務 貞操義務
・両性平等の見地から段階的連結
・基準時について明文ないが変更主義

夫婦財産制 26条
 夫婦財産制は26条による。同条1項は婚姻の効力に関する25条を準用している。この規定は、旧法令が夫の国籍に連結していたのを両性平等の見地から改め、また、複数当事者間の法律関係を規律する必要から段階的連結を採用している。もっとも、夫婦財産制の場合には、量的制限の定めはあるが私的自治が認められている(26条2項)。2項の趣旨は、国際私法の国際的統一の観点及び最密接関係地の認定が困難であることへの配慮である。量的制限があるのは、夫婦財産制は夫婦共同体との関連が強いためである。また、基準時については明文がないが、26条も25条も変更主義を採用している。すなわち、準拠法変更が生じた場合、その効力は将来に向かってのみ生じ、変更前までの夫婦財産関係についての規律については変更前の準拠法による。

 26条3項の趣旨は内国取引保護である。「外国法を適用すべき夫婦財産制」とは、外国法による法定夫婦財産制のみならず、外国法上認められる夫婦財産契約を締結した場合も含む。「善意」とは、連結点に関する事実を知らないことを指し、外国法内容の不知は含まない。

離婚
(1)管轄
 離婚の国際裁判管轄については明文がなく慣習もないので当事者間の公平、裁判の適正・迅速の観点から条理による。条理の内容は以下二つの判例で具体化されている。昭和39年判決(@)は、被告の住所地の裁判所に管轄が認められるのが原則だが、原告が遺棄した場合、被告が行方不明の場合、その他これに準じる場合には日本の裁判所にも管轄が認められるとした。一方、平成8年判決は、日本に管轄が認められる場合は上記の3つの場合に限られず、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の要請から判断するとした(A)。@とAの関係をいかに解すべきかが問題となる。@は外国人間の事件、Aは日本人と外国人の事件とする見解は理論的正当化ができず妥当でない。あくまで@が原則であり、Aは事案の特殊性から認められた判断基準と解する。したがって、特段の事情のない限り、@の基準を用いる。
 
(2)承認
 118条1号は判決国の裁判所の適格性を求める要件であり、裁判権が認められるとは、日本の国際民訴法の原則から見て、判決国がその事件につき国際裁判管轄を有すると積極的に認められることを言う。積極的に認められるかどうかは、日本の直接管轄の基準に照らして判断する(鏡像理論)。
 日本の直接管轄の判断基準といっても、本件のような人事訴訟には民訴法3条が適用されないから(人事訴訟法29条1項)、日本の判断基準そのものを解釈する必要がある。
 離婚の国際裁判管轄についての昭和39年判決(@)は、被告の住所地の裁判所に管轄が認められるのが原則だが、原告が遺棄した場合、被告が行方不明の場合、その他これに準じる場合には日本の裁判所にも管轄が認められるとした。一方、平成8年判決は、日本に管轄が認められる場合は上記の3つの場合に限られず、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の要請から判断するとした(A)。@とAの関係をいかに解すべきかが問題となる。@は外国人間の事件、Aは日本人と外国人の事件とする見解は理論的正当化ができず妥当でない。あくまで@が原則であり、Aは事案の特殊性から認められた判断基準と解する。したがって、特段の事情のない限り、@の基準を用いる。
 
(3)準拠法
 日本の国際私法27条本文は25条を準用しており、25条は夫の本国法に連結していた法令の規定を両性平等の見地から改め、また夫婦に共通の準拠法を定める必要から段階的連結を定めている。但書は戸籍管掌者の便宜から日本法に連結している(日本人条項)。すなわち、戸籍管掌者には形式的審査権限しかないところ、第3段階の最密接関係地の認定は戸籍管掌者には難しいからである。そのため、但書の文言上はすべてに優先するように読めるが、但書は最密接関係地に優先するに過ぎない

 離婚の方式は34条による。34条は離婚準拠法と行為地法を選択的に適用している。

親子関係
(1)管轄 
@親子関係の存否(嫡出否認、認知、父の確定等) 
A親権者指定・変更 
B養子縁組
 親子関係(親権者指定、養子縁組)に関して直接規定する法規はなく、条約や慣習もないから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定する。条理の内容は、被告の住所が日本にある場合には原則として管轄を認めるべきだが、親子関係(親権者指定、養子縁組)の目的が子の福祉であることから、ある裁判所が真に子の福祉に資するか否かをチェックしえない特段の事情がある場合には、例外的に管轄を否定すべきである。

(2)承認
ア 争訟的非訟事件
 民訴法118条は家事事件手続法で準用されていないが、同条の「外国裁判所の確定判決」とは私法上の法律関係について当事者双方の手続保障のもとに終局的にした裁判であるから争訟的非訟裁判は同条の外国裁判に含まれると解する。

イ 争訟的でない非訟事件、養子縁組
 外国非訟裁判も裁判であるから承認の問題とすべきであり、明文はないが条理により民訴法118条を準用し、間接管轄(1号)と公序(3号)を要件とすべきと解する。
※養子の実務は準拠法選択のアプローチ

(3)準拠法
嫡出親子関係 28条
・父母それぞれの本国法で嫡出推定を受けていれば、両方で否認できなければ嫡出否認できない。

 28条1項は子の福祉の観点から嫡出親子関係の成立を容易にするため選択的連結を採用している。

非嫡出親子関係 29条
・嫡出親子関係の場合と異なり29条が問題となる場面では子の両親が必ずしも夫婦共同体を構成しているわけではないから、父子関係と母子関係を別々に判断する。
・1項前段は事実主義(血縁関係から当然に親子関係を認めること)にも認知主義(親子関係に一定の方式の具備を要求すること)にも適用される。
・2項前段は認知に関する特則で、1項と選択的連結になる。
・任意認知の方式については34条。
・父の本国法が事実主義をとる場合に日本法により認知を求めるのは訴えの利益を欠くとも思えるが、事実主義をとる法制が積極的に認知を否認しているわけではないので訴えの利益はあると考える。
・複数の法で認知が認められる場合は複数の法で否定されないと認知が無効にならない。

 29条は認知による父との間の親子関係の成立について、子の出生当時の父の本国法(1項前段)、認知当時における父の本国法、及び認知当時における子の本国法(以上2項前段)の選択的連結を定めている。できる限り認知を成立させ子を保護する趣旨である。
 もっとも、29条1項後段や2項後段は認知当時の子の本国法によれば第三者の同意が必要なときはその要件も備えなければならないとしている。これは、いわゆるセーフガード条項であり、将来扶養してもらうことを期待して認知するような子にとって望ましくない認知から子を保護する趣旨である。

準正 30条
・準正とは非嫡出子から嫡出子へと身分を変更する制度。
・父母両方の非嫡出子となっていることが30条を適用する前提となる。例えば父の本国法が認知主義をとる場合で認知していないときは、たとえ母との関係で非嫡出親子関係が成立していても、準正は成立しない。
 
 30条は嫡出親子関係の成立が子の利益に資するから選択的連結を採用している。嫡出親子関係の準拠法と整合性を保つために父または母の本国法を準拠法とし、子の本国法により認知された子の利益を考慮して子の本国法も選択肢に加えている。

28条以下の適用順序
・親子関係不存在確認
→嫡出親子関係の成立に関する規定および非嫡出親子関係の成立に関する規定を段階的または同時的に適用。
・親子関係存在確認
→まず嫡出親子関係の成立、それが否定された場合に非嫡出親子関係の成立を検討。
・実質法が嫡出非嫡出を区別していない場合は29条のみを適用。

養子縁組
・外国法が法的機関の介入を必要としている契約型の場合は家庭裁判所の許可審判(手続は法定地法)。決定型の場合は特別養子縁組規定。
・夫婦共同養子縁組の場合は、父子関係母子関係それぞれ父母の本国法により養子縁組の成否を判断する。
・「第三者の承諾」(31条1項後段)には特に限定がなく、利害調節を目的とする同意等も含まれると解する。不都合であれば公序規定で調節可能だから問題ない。
・「公的機関の許可」(31条1項後段)も子の同意に変わるものというように限定する必要はなく、広く裁判所の決定や命令も含むと解する。

 31条1項前段は養子縁組を養親の国籍に連結している。養子縁組で考慮すべきは子の利益だから子の本国法とすることも考えられるが、養親子関係は養親の本国で営まれることが多いこと及び養子縁組により養子に養親の国籍を付与する国が多いことから、養親の本国法主義が採用された。後段が子の本国法を一部累積適用させている趣旨は、子の保護である(セーフガード条項)。

 31条1項は「養子縁組の要件は」ではなく「養子縁組は」と規定しているから、同条は養子縁組の効力についても定めていると解される。

養子と実親との親子関係の終了 31条2項
養子縁組によって実親子関係が終了するかという問題
 31条2項は、断絶型の養子縁組の規定が養子と実親との関係も含めて制度設計されているため、養子縁組と同一の法に寄らしめている。

離縁(養親子関係の終了) 31条2項
離縁の許否、要件、効果
 養子縁組については成立と解消が密接に関連するものとして制度設計されていることが多いため、養親子関係の成立の準拠法が適用される。

その他の親子関係 32条
 32条は法令が父の本国法としていたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間で同じ法律を適用する必要から、段階的連結を定めている。但書は子の常居所に連結している。この規定の趣旨は、両親が離婚した場合の戸籍事務の便宜である。

親族関係の方式 34条
 34条1項は、方式が実質的成立要件と密接に関連するから、成立について適用すべき法によるとしている。同条2項は、養親が異なる国籍を有している場合、片方の方式を履践することが困難なことにより養子縁組が成立しにくくなり、結果として子の利益に反することを防ぐため、行為地法に適合する方式を有効としている。

未成年後見
(1)管轄
 未成年後見の国際裁判管轄については明文や条約・慣習がないため、条理による。条理の内容は、未成年者の保護の観点が重要である。準拠法と管轄の並行性を重視すると、通則法35条1項が本国法主義を採っているのに合わせて被後見人の本国の裁判所に管轄権を認めるべきとも思える。しかし、未成年者の保護は住所地で最も効果的に行われる。また、後見制度は被後見人と交渉を持つ一般社会の公益維持に奉仕するものである。したがって、被後見人の住所地の裁判所に管轄を認めるべきである(家事事件手続法176条参照)。

(2)承認
 外国非訟裁判も裁判であるから承認の問題とすべきであり、明文はないが条理により民訴法118条を準用し、間接管轄(1号)と公序(3号)を要件とすべきと解する。

(3)抵触法
 35条1項は後見等が人の身分や能力に関するものだから被後見人の国籍に連結させている。35条2項は、日本において裁判所による保護措置が必要な場合に日本の手続法に則って効果的に保護措置を行うため、日本法を準拠法としている。未成年後見では2項2号は問題とならない。

・35条2項の「審判」とは日本の家事事件手続法上の審判を指す。具体的には後見人等の選任・解任、後見人の権限やその行使方法。
・親権(32条)の準拠法上親権者を欠き後見が開始する場合には、35条により後見が開始しなくても後見を開始すべき。
・前提として本人が未成年か否かの判断は4条で行う。

成年後見
(1)管轄
ア 後見等開始の審判(5条)
 5条は、要保護者が@日本に住所又は居所を有するとき、およびA日本国籍を有するときには、後見開始の審判等につき日本の裁判所が管轄を有することを定めている。5条により日本の裁判所に管轄が認められた場合には、法定地法として日本法が適用される。この趣旨は、非訟事件特有の実体法と手続法の密接な関係を考慮し、的確な保護措置が行われるようにすることである。

イ その他(後見人・後見監督人の選任、辞任、解任等)
 5条により成年後見等が開始した場合には、日本法上要求される後見人等の選任等の国際裁判管轄も日本の裁判所に認められると解する。

(2)承認
 外国非訟裁判も裁判であるから承認の問題とすべきであり、明文はないが条理により民訴法118条を準用し、間接管轄(1号)と公序(3号)を要件とすべきと解する。

(3)準拠法
ア 35条1項
 35条1項は後見等が人の身分や能力に関するものだから被後見人の国籍に連結させている。

イ 35条2項1号
 35条2項1号は、日本において裁判所による保護措置が必要な場合に日本の手続法に則って効果的に保護措置を行うため、日本法を準拠法としている。

ウ 35条2項2号
 そもそも5条に基づき日本で後見開始の審判が行われる場合、その後に誰を後見人とするか等も日本法を適用するほうが円滑である。そのため、35条2項2号は日本において後見開始の審判等があったときには、後見人の選任等の審判にも日本法を準拠法としている。

失踪宣告
 失踪宣告は国家機関の宣告が必要であるから、準拠法だけでなく管轄も通則法に定められている。
 6条1項は、失踪宣告の原則的管轄原因を、不在者が生存していたと認められる最後の時点において日本に住所を有していたとき又は日本の国籍を有していたときに認めている。これは、不在者に関する不確実な法律関係の解決に利害を有する住所地と、戸籍の整理等に関わる国籍を基準にしたものと理解できる。
 もっとも、6条2項は例外的に、不在者の財産が日本にあるときにその財産について、また、不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他の事情に照らして日本に関係があるときにその法律関係について、日本の管轄権を認めている。これは、不在者をめぐる法律関係の不安定をできるだけ解消しようとして管轄原因を広げたものと解される。

 6条は、非訟事件における実体法と手続法の関連を考慮して、法定地法である日本法が失踪宣告の要件及び効力に関して適用されることを定めている。

相続
(1)管轄
ア 訴訟事件
 民訴法3条の3第12号第13号

イ 非訟事件(相続財産管理人や遺言執行者の選任、相続放棄、限定承認の受理等)
 相続に関して直接規定する法規はなく、条約や慣習もないから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定する。
※最後の住所地および相続財産所在地が多数説

(2)準拠法
 36条は動産相続と不動産相続を区別しない相続統一主義を採用したうえで、死亡当時の被相続人の本国法を準拠法としている。被相続人の住所地法とするよりも法律関係が安定する利点がある。

遺言
(1)管轄 相続と同じ
(2)準拠法
 Aは日本に常居所を有し、遺言作成時に甲国人であったから、Aの遺言能力の有無は渉外性を有する。遺言能力は人の行為能力と性質決定できるから、4条でその有無を決めるべきとも思えるが、4条は財産的行為能力に限って適用されると解されている(4条3項参照)。渉外性を有する遺言は、意思表示としての遺言自体の問題と遺言の内容となる法律行為の問題に分けられ、前者には37条が適用されると解されている。そこで、Aの遺言能力も37条で決める。

 遺言の方式に関する準拠法は、遺言の方式の準拠法(以下「遺言準拠法」という。)に関する法律で決める。Aの遺言が方式に関して有効に成立しているかどうかもこの法律を用いる。同法は、2条各号に掲げるいずれかに適合するときは、遺言の方式に関し有効としている(選択的連結)。このように広い要件を定めているのは、遺言が方式の点で無効となるのをできるだけ防ぐことである(遺言保護)。

扶養
(1)管轄
 扶養に関して直接規定する法規はなく、条約や慣習もないから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定する。条理の内容は扶養が扶養権利者の保護のための制度であることを考慮すべきである。したがって、扶養義務者と扶養権利者の住所地に管轄を認めるべきである。

(2)承認
 「外国裁判所の確定判決」(民訴法118条)とは私法上の法律関係について当事者双方の手続保障のもとに終局的にした裁判を言う。扶養料の支払いは争訟的性格が強いからそのような裁判に当たる。したがって、扶養料の支払いを命じる外国裁判所の判決が日本で効力を有するかは外国裁判の承認の問題そのものであり、民訴法118条に従って判断すべきである。

例)
1 A州の裁判所の判決はA州の司法権の作用の結果だから、当然には日本で効力を持たない。しかし、日本法は一定の要件を満たした場合に外国判決を承認する制度を設けている(民事訴訟法118条)。扶養事件は非訟事件だから118条は適用されないとも思えるが、金銭給付を求める扶養事件は争訟的性格が強いから118条が直接適用されると解する。そして、「外国裁判所の裁判権」(118条1号)には国際裁判管轄も含むから、本問で問われているのは1号の要件該当性である。
2 まず、「外国裁判所の裁判権」の有無を判決国から見て判断するのか、承認国から見て判断するのかが問題となる。判決国から見て判断すると仮定すると、同じ要件該当性の判断を繰り返すことになるから1号要件が無意味となるし、外国裁判所を日本の裁判所の下級審のように扱うことになり実質的再審査禁止原則(民事執行法24条2項参照)に反する。そこで、承認国から見て判断すべきである(最判平成10年4月28日)。
3 次に、承認国つまり日本の基準から見て判断する場合の判断基準は民訴法の直接管轄の規定と同じか否かが問題となる。
 既に出された判断をできるだけ尊重して国際私法秩序の安定を図ることを重視すると、間接管轄は直接管轄より広く認めるべきとも思える。しかし、いずれも公権的判断を当事者に強制することを正当化するものだから、同一の基準で判断すべきと考える(鏡像理論)。上記判例およびそれを踏襲した最判平成26年4月24日は、基本的に日本の民訴法の定める国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、外国裁判所の判決を日本が承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判断すべきとしているが、鏡像理論を述べたものと解する。
4 そのように解しても、本件は扶養料の支払いに関する訴えであり、民訴法に規定がないから条理によるしかない。扶養料は扶養権利者のために使われるから、扶養権利者の住所地とするのが条理上適切と考える。
 本件の扶養権利者ZはA州に居住しているから、扶養権利者の住所地はA州である。

(3)準拠法
 扶養準拠法2条は、原則として扶養権利者の常居所地法を準拠法とする。この趣旨は、それによってこそ扶養権利者の需要に応じることができること、私的扶養と同一の準拠法に依拠させることで制度間の調和が図れることである。2条1項但書と同2項では、扶養権利者保護のためさらに2段階の補正的連結を定めている。したがって、「扶養を受けることできないとき」(1項但書、2項)とは、法律上扶養義務が課せられていない場合や個別的に裁判により義務を果しえない場合をいい、事実上扶養を受けられない場合を含まない

 本件の扶養料減額請求は、離婚をした当事者間の扶養義務に関するものだから、扶養義務に関するハーグ条約を国内法化した扶養準拠法4条による。同条は、離婚について適用された法を準拠法とする。これは、離婚後の扶養が各国の法制上離婚自体と密接に関連していることを理由とすると考えられる。離婚準拠法とはされていないので、離婚準拠法が公序により適用されなかった場合でも、離婚について適用された法が適用される。

2018年03月01日

会社法論証集

財産引き受けの無効主張と信義則 最判昭和61年9月11日 百選6
 本件営業譲渡契約は無効であって、契約の当事者であるY会社は、特段の事情のない限り、右の無効をいつでも主張することができる

百選10
 権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しない

百選12
 共有に属する株式についての議決権の行使は、当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し、または株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り、株式の管理に関する行為として、民法252条本文により、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられる

百選14 蛇の目ミシン事件
 会社から見て好ましくないと判断される株主が議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的で、当該株主から株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は、120条1項に言う「株主の権利の行使に関し」利益を供与する行為と言える。

百選21
 甲株式会社が同社のすべての発行済み株式を有する乙株式会社の株式を取得することは、会社法155条の定める除外事由のある場合又はそれが無償によるものであるなど特段の事情のある場合を除き、同条により許されない。

百選23
 非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたと言える場合には、その発行価額は、特段の事情のない限り、「特に有利な金額」には当たらない。

百選30
 299条の趣旨は株主に出席の機会と準備の機会を与えることであるから、招集通知を欠いても全員出席総会において株主総会の権限に属する事項について決議をしたときは当該決議は有効に成立する。
 代理人が出席することによる全員出席総会となるときは、代理人を選任した株主が会議の目的たる事項を了知して委任状を作成し、かつ、当該決議が会議の目的たる事項の範囲内のものである限り、その決議は有効に成立する。

百選38
 役員選任の総会決議取消の訴えが係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によって取締役ら役員が新たに選任され、その結果、取消しを求める選任決議に基づく取締役ら役員がもはや現存しなくなったときは、特段の事情のない限り、訴えの利益を欠く。

百選41
 このような取締役会の招集決定に基づき、このような代表取締役が招集した株主総会において新たに取締役を選任する旨の決議がなされたとしても、その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り、法律上存在しない。

百選54 MBOに関する取締役の責任 429条1項
・取締役は会社と委任契約上の善管注意義務(330条、民法644条)・忠実義務(355条)を負う。
・MBOは会社と取締役の利害が相反しうるが、経営再建に資するため、その実行が経営判断として著しく不合理と認められるなどの事情がない限り許容される。
・ただし、取締役は株主の共同の利益を図ることに対して善管注意義務を負うから、善管注意義務の内容として、MBOに際し公正価値移転義務及び適正情報開示義務を負う。

百選62
 株主総会で総額が定められ取締役会で個々の取締役につき具体的に定められた報酬額は会社と取締役との契約内容となり双方を拘束するから、事後的にある取締役の報酬額を変更しても当該取締役の同意がない限り当該取締役は従来の報酬額の報酬請求権を有する。

百選70
 429条は、株式会社が経済社会で重要な地位を占めており、また株式会社の活動は取締役の職務執行に依存することを考慮し、第三者保護の趣旨で、取締役が悪意重過失で任務懈怠を行い、その結果第三者に損害が生じた場合には、任務懈怠と損害の間に因果関係がある限り、直接損害であるか間接損害であるかを問わず、取締役が損害賠償責任を負う規定である。民法709条とは請求権競合となる。

百選72
 取締役を辞任した者は、積極的に取締役としての行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて取引した者に対しても429条1項の責任を負わないが、不実の登記を残存させることを明示的に承諾していたなどの特段の事情がある場合には、商法14条・会社法9条の類推適用により善意の第三者に対して取締役でないことを対抗できない結果、429条1項の責任を負う。

百選100 ブルドックソース事件
 公開買付けの公告に対し、急きょ定款を変更して差別的行使条件付新株予約権無償割り当てを行った。
訴訟提起
 原告としては、247条2号の「著しく不公正な方法」に当たるとして新株予約権発行差止請求と発行差止の仮処分(民保23条2項)を求める。
論点
1)株主平等原則に反しないか。
前提
 前提として差別的な内容の新株予約権の無償割り当てに対しても109条1項の趣旨が及ぶ。
規範1(相当性)
 特定の株主による経営支配権の取得に伴い会社の企業価値が毀損され、会社の利益引いては株主の共同の利益が害される場合には、その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても、当該取り扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、株主平等原則の趣旨に反しない。
規範2
 そして、企業価値を毀損するか否かの判断は最終的には株主自身により行われるべきであり、(適正手続を欠くとか判断の前提となる事実が虚偽・不存在であると言った)重大な瑕疵がない限り株主の判断は尊重されるべきである。
あてはめ1(必要性)
 本件は〇〇%というほとんどの株主が企業価値を毀損するものと判断しており、また本件の手続にも適正であるから重大な瑕疵があるとは言えない。
あてはめ2
 また、〇〇であり原告に経済的保障がなされているから、本件取り扱いが相当性を欠くとも言えない。
結論
 従って、本件新株予約権無償割り当ては109条1項に反しない。
2)109条に反しない以上、「著しく不公正な方法」による発行とも言えず、247条2号にも反しない。

102頁
 会社の承認を得ない譲渡制限株式の譲渡は、譲渡の当事者間では有効だが、会社に対する関係では無効であり、会社は譲渡人を株主として扱う義務がある。

113頁
 名義書換えは譲渡の対抗要件に過ぎないから、会社のほうから名義書換え未了の譲受人を株主として扱うことはできる。

125頁
 権利行使者は自己の判断で株主権を行使することができ、たとえ共有者内部における合意に反していたとしても、その権利行使は有効である。

 106条但書の趣旨は、株式の共有者が民法251条・252条の規定に従って株主権を行使する限り、106条本文の定める方法によらなくても会社が同意すれば当該株主権の行使を有効とすることである。そのため、共有者の株主権行使が民法の共有の規定に従わずにされた場合は、会社が同意しても当該株主権行使は有効とならない。

126頁
 106条1項但書による会社の同意がない場合であっても、(権利行使者の指定・通知がないことを理由に)会社が権利行使を拒否することが信義則に反すると言えるような特段の事情があるときは、共有者の1名による権利行使が認められる。

132頁
 株式の分割については、株式併合の場合(182条の3)と異なり、株主の差し止め請求権を認める旨の明文規定は存在しない。裁判例は210条も類推適用されないとしている。しかし、株式の分割も「著しく不公正」なものとなる場合があるから、210条を類推適用すべきである。

株主総会
163頁
 適法な株主提案を会社が取り上げようとしない場合には。株主は、会社を被告として、株主提案を取り上げることを求める訴訟をすることができ(民法414条、民執172条)、仮の地位を定める仮処分もできる(民保23条2項)。

171頁
 書面投票された議決権の会場提案議案の賛否をどうするか。@会場提案議案が原案と対立し、原案の修正を求めるものなら、合理的意思解釈により開錠提案議案に反対と扱うべきであり、Aその他の場合は棄権と扱うべきである。
 

173頁
 代理人の資格を株主に制限する旨の定款規定は、株主総会が株主以外の第三者によってかく乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨と認められ、合理的理由による相当程度の制限と言える。

181頁
 取締役等による説明は、平均的な株主が、議題について合理的な理解及び判断をするために客観的に必要と認められる程度に行えばよい。

取締役会
219頁
「重要な」財産の処分に当たるか否かは、当該財産の価額や会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様、会社における従来の取扱い等の事情を総合考慮する。

225頁
 取締役の一部の者に対する招集通知を欠く場合でも、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、(その瑕疵は決議の効力に影響がないものとして)決議は有効になる。
※招集通知の欠缺以外の手続上の瑕疵も同様 学説は反対

230頁
 362条4項の取締役会決議を欠いた対外的行為は、内部的意思決定を書くにとどまるから原則として有効である。ただし相手方が決議を経ていないことについて悪意重過失の場合は無効である。

 362条4項が重要な業務執行について取締役会の決議を要求するのは会社の利益保護のためだから、当該決議を欠くことを理由に取引の無効を主張できるのは原則として会社のみである。

248頁 退職慰労金
 @内規や慣行によって一定の支給基準が確立しており、A当該基準が株主にも推知しうるものになっている場合には、単に一定の支給基準に従って退職慰労金を支給し、具体的な金額、支給期日及び支給方法は取締役会の決定に一任する旨の決議をすることが許される。

249頁 使用人兼務取締役
 使用人として受ける給与の体系が明確に確立している場合には、株主総会において別に使用人として給与を受けることを予定しつつ取締役報酬のみを決議することは許される

259頁 経営判断
 取締役の経営判断には善管注意義務がある(330条、民644条、355条)。もっとも、経営はリスクを伴うから、結果責任を問うと経営が委縮し結果として会社株主の利益にならない。そこで経営判断については取締役に広い裁量が認められ、その判断の過程、内容に著しく不合理な点がない限り善管注意義務違反にならない。

 「法令」(355条)とは、取締役を名宛人としてその義務を定める規定に限らず、株式会社を名宛人とし株式会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定を含む。

263頁
 取締役会は会社の業務執行を監督するから(362条2項)、取締役会を構成する取締役は代表取締役の業務執行一般につき監視義務がある。

264頁 信頼の原則
 各取締役は、他の取締役または使用人が担当する職務については、その内容につき疑念をさしはさむべき特段の事情がない限り、適正に行われていると信頼することが許される。

265頁
 取締役は善管注意義務・忠実義務の一内容として内部統制システム整備義務を負う(362条4項6号)。もっとも、その整備には費用や知見が必要だから、体制の内容決定には取締役の広い裁量が認められ、当該体制を整備しなかった取締役の判断が著しく不合理な場合にのみ義務違反となる。

資金調達
466頁
 非上場会社において、取締役が客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって払込金額を決定したと言える場合は、特段の事情がない限り、有利発行には当たらない。

募集株式の発行等の差止め
486頁 法令・定款違反
 「特に有利」な払込金額とは、株式の公正な価額に比べて特に低い金額を言う。市場株価があるときは市場株価に近接していることが必要である。

買占め事例
 買占めがある場合であっても原則として市場株価を基準として払込金額を決すべきであり、ただ、その市場株価が「異常な投機」による一時的なものと認められる場合に限り、払込金額の算定基礎から排除できる。

買収・提携事例
 高騰前の市場株価を基礎にしても有利発行には当たらない。

489頁 著しく不公正な方法
 支配権争いがあるなかでも特に@当該経営支配権争いの帰趨が近く株主により決せられると見込まれ、かつAその際には現経営陣が敗れる可能性も相当程度あると言える場合に、取締役会が現経営陣を支持すると見込まれる第三者に対して募集株式を発行することは特段の事情(そうしないと会社が倒産するなど)のない限り不公正発行になると解すべき。

@Aに当たらない場合→主要目的ルール
 公開会社に経営支配権争いがある場合において、現経営陣の支配権維持・確保を主要な目的として新株発行が行われる場合は、原則として不公正発行となる。その判断は、@募集株式発行が支配権争いに及ぼす影響A資金調達の必要性、相当性を考慮して行う。
 もっとも、株主全体の利益保護の観点から当該新株発行を正当化する特段の事情がある場合、具体的には買収者による経営権取得が会社に回復しがたい損害をもたらす事情があることを会社が疎明した場合には、不公正発行に当たらない。

募集株式発行が支配権維持目的であることをうかがわせるその他の事情を考慮することもある。

495頁 新株発行無効の訴え(828条1項2号)
 公開会社に要求されている募集事項の公示を欠くことは、仮に株主が差止請求をしたとしても(公示を欠くことを別にすると)差止めの事由がないためこれが許容されないと認められる場合でない限り、無効原因となる。

 公開会社では会社の承認を欠くというだけでは無効原因にならないのと対照的に、非公開会社が株主総会特別決議を経ずに新株発行を行った場合は、新株発行の無効原因となる。非公開会社では持ち株比率の維持に対する既存株主の利益を尊重するのが会社法の趣旨と解されるからである。

574頁 設立中の会社
@会社の設立自体に必要な行為(発起人が行える)
A設立のために事実上必要な行為
B開業準備行為
C事業行為そのもの(発起人はできない)

576頁 Bについて
 発起人は原則として開業準備行為を行うことができず、原始定款に記載された財産引受のみが例外的に許される。
 取引の相手方は民法117条1項類推適用により発起人に対して支払請求できる。

Aについて
(ア)発起人が自己の名で行った費用は設立費用(28条4号)として定款記載および検査役の検査を受ければ成立後の会社に求償できることは当然可能。
(イ)発起人が設立中の会社のためにそれを行い、行為の効果を成立後の会社に直接帰属させることができるか。
古い判例 設立費用として変態設立事項の規制を満たした額の限度で可能

買収・結合・再編
626頁 反対株主の株式買取請求権
 組織再編に反対する株主は、株式会社に対し、自己の保有株式を公正な価額で買い取ることを請求することができる(反対株主の株式買取請求権、785条、797条、806条)。組織再編という会社の基礎に本質的変更をもたらす行為を株主の多数決で行う場合に、反対株主に会社から退出する機会を保障する趣旨である。

 反対株主とは、当該組織再編のために株主総会の承認を要する場合、当該株主総会に先立って組織再編に反対する旨を会社に対して通知し、かつ、当該株主総会で実際に反対の議決権を行使した株主を言う。

「公正な価格」の基準日
 組織再編における反対株主の株式買取請求の場合は、買取請求によって売買契約が成立したのと同様の法律関係が生じるから、買取請求の日である。(182条の4の場合も同じ)
全部取得条項付種類株式の取得の場合は、取得日をいう。

 「公正な価格」とは、@組織再編によって企業価値の増加が生じる場合は基準日において株式が有する価値(公正分配価格)をいい、A組織再編によって企業価値の増加が生じない場合は、基準日におけるナカリセバ価格をいう。

652頁 組織再編の無効の訴え
 無効原因の明文はないが、重大な瑕疵が無効原因となる。
 組織再編の条件が不公正であってもそれ自体は無効原因とはならないという判例がある。
 しかし、特別利害関係人の議決権行使によって著しく不当な組織再編条件が決定されている場合には、組織再編の効力発生後は無効原因になると解すべきである。

・株主総会決議取消事由がある場合には当該取消事由が無効事由となる。∵株主総会決議による承認は合併に不可欠な手続(783条1項、309条2項12号

658頁 事業譲渡
 事業譲渡とは@一定の事業目的のため組織化され有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む)の全部または重要な一部の譲渡であって、A譲渡会社がその財産によって営んでいた事業活動を譲受人に受け継がせ、Bそれによって譲り受け会社が法律上当然に競業避止義務を負担するものをいうとする判例があるが、条文の適用関係の循環が生じるためBは要件ではないと解する。

posted by izanagi0420new at 15:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 商法
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