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2018年03月02日

国際私法論証集

T総論

反致
 反致とは、法定地の国際私法によって指定された準拠法が所属する国の国際私法が、法定地法又は第三国法を準拠法として指定しているときに、その外国の国際私法の立場を考慮して、法定地法又は第三国法を準拠法とするのを認めることである。

 反致の理論的根拠として、抵触規則も含めて指定するという総括指定説は、無限の循環が生じるため妥当でない。また、当該国が管轄を放棄しているという棄権説も主権理論を前提とするため妥当でない。実質的根拠として、内国適用拡大という見解は国際主義に矛盾するため妥当でなく、国際的判決調和という見解は反致で指定された国も反致を定めていれば調和しないから妥当でない。結局反致の理論的正当化は難しい。
 
 通則法41条の反致は、本国法として外国法を指定した場合に限定し(「当事者の本国法によるべき場合」)、狭義の反致のみを認めている(「日本法によるべきとき」)点に特徴がある。

論点@ 選択的連結の場合に反致が認められるか。
論点A セーフガード条項の場合に反致が認められるか。

公序
 甲国法の適用が公序に反する場合は、甲国法の適用を排除することができる(42条)。要件は、@適用結果の異質性及びA内国関連性である。@はあくまでも適用結果が日本の私法秩序を現実に害するおそれがあることを意味し、適用する法自体の善悪を意味しない。国際主義の観点から、日本の裁判所は外国法自体の良し悪しを判断できないからである。

先決問題
 先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地たる日本の国際私法が指定する準拠法による。

U管轄と承認

@管轄
民訴法3条の3第3号後段
・外国裁判所の確定判決が日本で承認されない可能性に配慮した規定
・日本との関連性は不十分であり、疑問がある→3条の9で調節?

民訴法3条の3第8号
・「不法行為」とは国際私法上の概念であり、違法な行為によって他人に損害を与えた者が被害者に対してそれを賠償すべき債務を負う法律関係をいう。
・「不法行為があった地」とは、加害行為地だけでなく結果発生地も含む。この趣旨は、不法行為地には証拠が存在する蓋然性が大きく、被害者保護に資する場合が多いからである。もっとも、不法行為が偶発的出来事であることから、加害者の予測可能性も考慮すべきであり、この趣旨で8号カッコ書きが定められている。

民訴法3条の3第11号
証拠調べの便宜(登記簿や不動産自体が存在するから)

民訴法3条の4
 事業者と消費者の訴訟追行能力の差を考慮して、3条の2以下の他の規定と重ねて特に消費者を保護するために設けられた規定である。

民訴法3条の6
客観的併合
 民訴法7条は客観的併合について管轄を認めるが、国際裁判管轄の場合7条に従うと被告の不利益が著しいから、請求間に密接関連性を要求している。146条3項も同趣旨。
主観的併合も同じ要件。

民訴法3条の7 合意管轄 百選99
実質的要件→当事者間の一定の法律関係に基づく訴え
形式的要件→書面
 少なくとも当事者の一方が作成した書面に特定国の裁判所が明示的に指定されていて当事者間における合意の存在と内容が明白であれば足り、双方の署名は必要ない。

A外国判決の承認執行
 そもそも外国の主権の行使である司法権の作用の結果は、当然には日本で効力を有さない。しかし、日本において再び裁判するのは当事者にとって迂遠であり、訴訟不経済でもある。そこで、日本は民訴法118条の要件を満たした場合には特段の手続を経ず外国の確定判決が日本においても効力を持つと定めた(自動承認の原則)。
※外国判決の執行の場合は執行判決が必要(民事執行法22条6号、24条)。
※実質的再審査の禁止(民事執行法24条2項)
 
 118条1号は判決国の裁判所の適格性を求める要件であり、裁判権が認められるとは、日本の国際民訴法の原則から見て、判決国がその事件につき国際裁判管轄を有すると積極的に認められることを言う。積極的に認められるかどうかは、民訴法3条に照らして判断する(鏡像理論)。
※視点
@判決国から見るか日本から見るか
A日本から見るとして日本の直接管轄の基準と同じでよいか

 2号は被告の手続保障を要求した要件であるから、「受けた」と言えるためには@被告が現実に訴訟手続きの開始を了知することができ、A被告の防御権行使に支障がないものであることが必要である。さらに、司法共助に関する条約があれば、条約不遵守の送達はそれだけで2号の要件を満たさない。


 3号は手続的公序と実体的公序を内容とする。

 4号は政策的な要件である。相互の保障があるとは、判決国において日本の裁判所がしたこれと同種類の判決が同条各号所定の条件と重要な点で異ならない条件のもとに効力を有するとされていることを言う。

V各論

@財産法

法人
法人の従属法は本拠地法という説もあるが、設立準拠法である。

代理(本人と相手方)
代理行為地法による。本人は代理行為地を知るべき立場にあるから。

契約
7条の当事者自治の原則の根拠
@債権関係には類型的な最密接関係地を観念しにくい
A私的自治の抵触法への反映

9条
変更が遡及効を持つかどうかは当事者の意思解釈による

10条
形式的成立要件において契約をできるだけ成立しやすくしたもの

分割指定
 XY夫婦は1つの契約で異なる準拠法を選択しているが、このような分割指定が許されるか問題となる。そもそも、当事者自治の原則をできる限り尊重すべきだから、分割指定を否定する理由はない。しかし、相互的な権利義務関係を切り離すような指定を認めるべきではない。そこで、契約の現実的な実現可能性を要件として、分割指定を認めるべきと解する。

不法行為
17条
・原則として結果発生地法を準拠法としている。これは不法行為地と定めていた法令の規定が加害行為地を意味するのか結果発生地を意味するのかを明確にし、加害行為地の公序の維持よりは損害の公平な分担を重視する趣旨である。
・「結果が発生した地」(17条)とは、現実に法益侵害結果が発生した地または加害行為によって直接に侵害された権利が侵害発生時に所在した地のことをいう。

18条
 生産物は性質上転々流通するから、17条によれば結果発生地が過度に広がるとともにそれが偶然に決定される可能性があり不都合である。そこで通則法は、生産者と被害者の接点であり、双方の利益のバランスをとることができるという観点から、生産物責任の準拠法を「市場地」法とする考え方を採用している。「市場地」の具体的内容は、本文では被害者保護の観点から引渡地とし、但書では生産業者と被害者の利益のバランス等の要請から主たる事業所所在地法としている。
※適用範囲 バイスタンダーは17条が適用されるべき
      ∵本文の連結点は被害者が生産物や生産業者と直接接触したことを前提としている

 20条(例外条項)は明らかにより密接な関係がある地がある場合に例外的に当該地の法律を適用するとしている。

 22条(特別留保条項)は日本法の重畳適用を定めている。同条は不法行為が日本の公序に関わることがあるため定められているが、不法行為は公益よりも私人間の利益調整の観点から把握されるのが最近の傾向だから、その合理性には疑問がある。

事務管理・不当利得 14条
 隔地的に生じることは考えにくいから改正されなかった。

債権譲渡 23条
@債権譲渡の成立・譲渡当事者間での効力(23条の問題ではない。)
 →当該債権の運命の問題だから譲渡対象債権の準拠法
A債権譲渡の債務者に対する効力(23条)
→もともと譲渡対象債権の準拠法で規律されていたので譲渡によって変更されるべきではなく、規定に合理性がある。
B債権譲渡の第三者に対する効力(23条)
 →譲渡人の常居所地法に連結させる案もあったが、現時点では集合債権や将来債権を包括的に譲渡する実務上のニーズは少なく、また、対債務者と同一の準拠法で処理できて便宜であるから、譲渡対象債権の準拠法とされた。

代位(法律による移転)
 23条を準用する説もあるが、本件の債権の移転は原因たる事実の効果だから、移転の原因たる事実の準拠法によるべきである。前提として債権の移転可能性については債権自体の準拠法による。

債権者代位
 債権者代位が問題となる状況の重心は、経済的価値の希薄化した代位債権者の債権ではなく、代位対象債権にあるから、代位対象債権の準拠法によるべきである。

詐害行為取消権
 詐害行為取消権が債権の効力であるから債権の準拠法によるべきである。一方で詐害行為の相手方の利益を保護するため、詐害行為の準拠法累積適用する。

相殺
 相殺は反対債権の利用による債務者の免責行為であるから受働債権の準拠法によるべきである。

消滅時効
 時効は債権の運命に関することだから当該債権の準拠法によるべきである。

物権
・物権とは物を直接支配する権利であり、登記すべき権利とは物に関する権利であって登記することにより物権と同一または類似の効力を生じる権利である(買戻権、不動産賃借権)。
・通則法13条は同則主義を採用し、動産不動産を問わず目的物の所在地法に連結している。物権の問題が類型的に所在地と最密接関係を有するからである。
・移動中の物においては目的物の所在地法とは仕向地法を指すと解する。仕向地は物の将来の所在地だからである。
・輸送機関には「所在地」の解釈として旗国法を選択すべきである。
・13条2項の権利の得喪(物権変動)とは、売買契約や取得時効により物権が移転する場合を言う。
・原因事実の完成時とは、ある事実が物権的効果を発生させるのに必要なすべての要件を完全に備えた時点であるとする見解もある。しかし、物権的効果に必要な要件が何かという問題は各国の実質法により決められる問題である。従って、その時々の物権所在地法上、物権変動が生じているか否かが継続的に判断され、物権変動が生じたならばその時点をいうと解する。

約定担保物権(質権、抵当権)の成立および効力
 物権準拠法(=目的物所在地法)による。約定担保は当事者の約条に基づくから、被担保債権の準拠法を考慮する必要はない。

法定担保物権(留置権)
 成立に関しては物権準拠法と被担保債権の準拠法の累積適用。形式的には被担保債権の効力であると同時に物権の問題だから。実質的に見ても被担保債権の準拠法が認めない担保を成立させるのは債権者の過度の保護である。
 効力に関しては物権準拠法。

証券
 証券という紙自体の帰属は物権準拠法による。
 証券に化体する物については、証券自体の物権的効力の問題だから13条に基づき証券所在地法による。

物の所在地の変更と物権
→甲国法によって生じた担保物権の効力の問題は、乙国法(所在地法)に従い改めて13条1項で判断。

物の所在地の変更と物権変動
→甲国で占有された物が乙国へ移動すると同時に物権変動が生じる(甲国=時効30年、乙国=時効10年)。

A家族法

婚姻の成立 24条
 24条1項は両性の平等の観点から各当事者の本国法によるという配分的連結を定めている。
 婚姻の実質的成立要件には婚姻適齢のような一面的要件と近親婚禁止のような双面的要件があるが、その区別は個々の要件を抵触法の次元で解釈して決めるべきである(抵触法説)。なぜなら、実質法の次元で決めるとすると、各国の実質法が渉外関係まで想定して定められているとは限らないため、解釈が困難だからである。そして双面的要件とされた場合には、24条1項が配分的適用を命じているにもかかわらず、当事者双方の本国法を累積的に適用したのと同じ結果となる。

 24条2項は婚姻挙行地での婚姻の公知という公益的観点から婚姻の方式に関して婚姻挙行地法としているが、同3項では当事者の一方の本国法との選択的連結を定めている。

 3条但書の日本人条項は内外法平等の見地に反するように思われるが戸籍実務の便宜から定められている。

婚姻の効力 25条
・夫婦の同居協力義務 貞操義務
・両性平等の見地から段階的連結
・基準時について明文ないが変更主義

夫婦財産制 26条
 夫婦財産制は26条による。同条1項は婚姻の効力に関する25条を準用している。この規定は、旧法令が夫の国籍に連結していたのを両性平等の見地から改め、また、複数当事者間の法律関係を規律する必要から段階的連結を採用している。もっとも、夫婦財産制の場合には、量的制限の定めはあるが私的自治が認められている(26条2項)。2項の趣旨は、国際私法の国際的統一の観点及び最密接関係地の認定が困難であることへの配慮である。量的制限があるのは、夫婦財産制は夫婦共同体との関連が強いためである。また、基準時については明文がないが、26条も25条も変更主義を採用している。すなわち、準拠法変更が生じた場合、その効力は将来に向かってのみ生じ、変更前までの夫婦財産関係についての規律については変更前の準拠法による。

 26条3項の趣旨は内国取引保護である。「外国法を適用すべき夫婦財産制」とは、外国法による法定夫婦財産制のみならず、外国法上認められる夫婦財産契約を締結した場合も含む。「善意」とは、連結点に関する事実を知らないことを指し、外国法内容の不知は含まない。

離婚
(1)管轄
 離婚の国際裁判管轄については明文がなく慣習もないので当事者間の公平、裁判の適正・迅速の観点から条理による。条理の内容は以下二つの判例で具体化されている。昭和39年判決(@)は、被告の住所地の裁判所に管轄が認められるのが原則だが、原告が遺棄した場合、被告が行方不明の場合、その他これに準じる場合には日本の裁判所にも管轄が認められるとした。一方、平成8年判決は、日本に管轄が認められる場合は上記の3つの場合に限られず、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の要請から判断するとした(A)。@とAの関係をいかに解すべきかが問題となる。@は外国人間の事件、Aは日本人と外国人の事件とする見解は理論的正当化ができず妥当でない。あくまで@が原則であり、Aは事案の特殊性から認められた判断基準と解する。したがって、特段の事情のない限り、@の基準を用いる。
 
(2)承認
 118条1号は判決国の裁判所の適格性を求める要件であり、裁判権が認められるとは、日本の国際民訴法の原則から見て、判決国がその事件につき国際裁判管轄を有すると積極的に認められることを言う。積極的に認められるかどうかは、日本の直接管轄の基準に照らして判断する(鏡像理論)。
 日本の直接管轄の判断基準といっても、本件のような人事訴訟には民訴法3条が適用されないから(人事訴訟法29条1項)、日本の判断基準そのものを解釈する必要がある。
 離婚の国際裁判管轄についての昭和39年判決(@)は、被告の住所地の裁判所に管轄が認められるのが原則だが、原告が遺棄した場合、被告が行方不明の場合、その他これに準じる場合には日本の裁判所にも管轄が認められるとした。一方、平成8年判決は、日本に管轄が認められる場合は上記の3つの場合に限られず、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の要請から判断するとした(A)。@とAの関係をいかに解すべきかが問題となる。@は外国人間の事件、Aは日本人と外国人の事件とする見解は理論的正当化ができず妥当でない。あくまで@が原則であり、Aは事案の特殊性から認められた判断基準と解する。したがって、特段の事情のない限り、@の基準を用いる。
 
(3)準拠法
 日本の国際私法27条本文は25条を準用しており、25条は夫の本国法に連結していた法令の規定を両性平等の見地から改め、また夫婦に共通の準拠法を定める必要から段階的連結を定めている。但書は戸籍管掌者の便宜から日本法に連結している(日本人条項)。すなわち、戸籍管掌者には形式的審査権限しかないところ、第3段階の最密接関係地の認定は戸籍管掌者には難しいからである。そのため、但書の文言上はすべてに優先するように読めるが、但書は最密接関係地に優先するに過ぎない

 離婚の方式は34条による。34条は離婚準拠法と行為地法を選択的に適用している。

親子関係
(1)管轄 
@親子関係の存否(嫡出否認、認知、父の確定等) 
A親権者指定・変更 
B養子縁組
 親子関係(親権者指定、養子縁組)に関して直接規定する法規はなく、条約や慣習もないから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定する。条理の内容は、被告の住所が日本にある場合には原則として管轄を認めるべきだが、親子関係(親権者指定、養子縁組)の目的が子の福祉であることから、ある裁判所が真に子の福祉に資するか否かをチェックしえない特段の事情がある場合には、例外的に管轄を否定すべきである。

(2)承認
ア 争訟的非訟事件
 民訴法118条は家事事件手続法で準用されていないが、同条の「外国裁判所の確定判決」とは私法上の法律関係について当事者双方の手続保障のもとに終局的にした裁判であるから争訟的非訟裁判は同条の外国裁判に含まれると解する。

イ 争訟的でない非訟事件、養子縁組
 外国非訟裁判も裁判であるから承認の問題とすべきであり、明文はないが条理により民訴法118条を準用し、間接管轄(1号)と公序(3号)を要件とすべきと解する。
※養子の実務は準拠法選択のアプローチ

(3)準拠法
嫡出親子関係 28条
・父母それぞれの本国法で嫡出推定を受けていれば、両方で否認できなければ嫡出否認できない。

 28条1項は子の福祉の観点から嫡出親子関係の成立を容易にするため選択的連結を採用している。

非嫡出親子関係 29条
・嫡出親子関係の場合と異なり29条が問題となる場面では子の両親が必ずしも夫婦共同体を構成しているわけではないから、父子関係と母子関係を別々に判断する。
・1項前段は事実主義(血縁関係から当然に親子関係を認めること)にも認知主義(親子関係に一定の方式の具備を要求すること)にも適用される。
・2項前段は認知に関する特則で、1項と選択的連結になる。
・任意認知の方式については34条。
・父の本国法が事実主義をとる場合に日本法により認知を求めるのは訴えの利益を欠くとも思えるが、事実主義をとる法制が積極的に認知を否認しているわけではないので訴えの利益はあると考える。
・複数の法で認知が認められる場合は複数の法で否定されないと認知が無効にならない。

 29条は認知による父との間の親子関係の成立について、子の出生当時の父の本国法(1項前段)、認知当時における父の本国法、及び認知当時における子の本国法(以上2項前段)の選択的連結を定めている。できる限り認知を成立させ子を保護する趣旨である。
 もっとも、29条1項後段や2項後段は認知当時の子の本国法によれば第三者の同意が必要なときはその要件も備えなければならないとしている。これは、いわゆるセーフガード条項であり、将来扶養してもらうことを期待して認知するような子にとって望ましくない認知から子を保護する趣旨である。

準正 30条
・準正とは非嫡出子から嫡出子へと身分を変更する制度。
・父母両方の非嫡出子となっていることが30条を適用する前提となる。例えば父の本国法が認知主義をとる場合で認知していないときは、たとえ母との関係で非嫡出親子関係が成立していても、準正は成立しない。
 
 30条は嫡出親子関係の成立が子の利益に資するから選択的連結を採用している。嫡出親子関係の準拠法と整合性を保つために父または母の本国法を準拠法とし、子の本国法により認知された子の利益を考慮して子の本国法も選択肢に加えている。

28条以下の適用順序
・親子関係不存在確認
→嫡出親子関係の成立に関する規定および非嫡出親子関係の成立に関する規定を段階的または同時的に適用。
・親子関係存在確認
→まず嫡出親子関係の成立、それが否定された場合に非嫡出親子関係の成立を検討。
・実質法が嫡出非嫡出を区別していない場合は29条のみを適用。

養子縁組
・外国法が法的機関の介入を必要としている契約型の場合は家庭裁判所の許可審判(手続は法定地法)。決定型の場合は特別養子縁組規定。
・夫婦共同養子縁組の場合は、父子関係母子関係それぞれ父母の本国法により養子縁組の成否を判断する。
・「第三者の承諾」(31条1項後段)には特に限定がなく、利害調節を目的とする同意等も含まれると解する。不都合であれば公序規定で調節可能だから問題ない。
・「公的機関の許可」(31条1項後段)も子の同意に変わるものというように限定する必要はなく、広く裁判所の決定や命令も含むと解する。

 31条1項前段は養子縁組を養親の国籍に連結している。養子縁組で考慮すべきは子の利益だから子の本国法とすることも考えられるが、養親子関係は養親の本国で営まれることが多いこと及び養子縁組により養子に養親の国籍を付与する国が多いことから、養親の本国法主義が採用された。後段が子の本国法を一部累積適用させている趣旨は、子の保護である(セーフガード条項)。

 31条1項は「養子縁組の要件は」ではなく「養子縁組は」と規定しているから、同条は養子縁組の効力についても定めていると解される。

養子と実親との親子関係の終了 31条2項
養子縁組によって実親子関係が終了するかという問題
 31条2項は、断絶型の養子縁組の規定が養子と実親との関係も含めて制度設計されているため、養子縁組と同一の法に寄らしめている。

離縁(養親子関係の終了) 31条2項
離縁の許否、要件、効果
 養子縁組については成立と解消が密接に関連するものとして制度設計されていることが多いため、養親子関係の成立の準拠法が適用される。

その他の親子関係 32条
 32条は法令が父の本国法としていたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間で同じ法律を適用する必要から、段階的連結を定めている。但書は子の常居所に連結している。この規定の趣旨は、両親が離婚した場合の戸籍事務の便宜である。

親族関係の方式 34条
 34条1項は、方式が実質的成立要件と密接に関連するから、成立について適用すべき法によるとしている。同条2項は、養親が異なる国籍を有している場合、片方の方式を履践することが困難なことにより養子縁組が成立しにくくなり、結果として子の利益に反することを防ぐため、行為地法に適合する方式を有効としている。

未成年後見
(1)管轄
 未成年後見の国際裁判管轄については明文や条約・慣習がないため、条理による。条理の内容は、未成年者の保護の観点が重要である。準拠法と管轄の並行性を重視すると、通則法35条1項が本国法主義を採っているのに合わせて被後見人の本国の裁判所に管轄権を認めるべきとも思える。しかし、未成年者の保護は住所地で最も効果的に行われる。また、後見制度は被後見人と交渉を持つ一般社会の公益維持に奉仕するものである。したがって、被後見人の住所地の裁判所に管轄を認めるべきである(家事事件手続法176条参照)。

(2)承認
 外国非訟裁判も裁判であるから承認の問題とすべきであり、明文はないが条理により民訴法118条を準用し、間接管轄(1号)と公序(3号)を要件とすべきと解する。

(3)抵触法
 35条1項は後見等が人の身分や能力に関するものだから被後見人の国籍に連結させている。35条2項は、日本において裁判所による保護措置が必要な場合に日本の手続法に則って効果的に保護措置を行うため、日本法を準拠法としている。未成年後見では2項2号は問題とならない。

・35条2項の「審判」とは日本の家事事件手続法上の審判を指す。具体的には後見人等の選任・解任、後見人の権限やその行使方法。
・親権(32条)の準拠法上親権者を欠き後見が開始する場合には、35条により後見が開始しなくても後見を開始すべき。
・前提として本人が未成年か否かの判断は4条で行う。

成年後見
(1)管轄
ア 後見等開始の審判(5条)
 5条は、要保護者が@日本に住所又は居所を有するとき、およびA日本国籍を有するときには、後見開始の審判等につき日本の裁判所が管轄を有することを定めている。5条により日本の裁判所に管轄が認められた場合には、法定地法として日本法が適用される。この趣旨は、非訟事件特有の実体法と手続法の密接な関係を考慮し、的確な保護措置が行われるようにすることである。

イ その他(後見人・後見監督人の選任、辞任、解任等)
 5条により成年後見等が開始した場合には、日本法上要求される後見人等の選任等の国際裁判管轄も日本の裁判所に認められると解する。

(2)承認
 外国非訟裁判も裁判であるから承認の問題とすべきであり、明文はないが条理により民訴法118条を準用し、間接管轄(1号)と公序(3号)を要件とすべきと解する。

(3)準拠法
ア 35条1項
 35条1項は後見等が人の身分や能力に関するものだから被後見人の国籍に連結させている。

イ 35条2項1号
 35条2項1号は、日本において裁判所による保護措置が必要な場合に日本の手続法に則って効果的に保護措置を行うため、日本法を準拠法としている。

ウ 35条2項2号
 そもそも5条に基づき日本で後見開始の審判が行われる場合、その後に誰を後見人とするか等も日本法を適用するほうが円滑である。そのため、35条2項2号は日本において後見開始の審判等があったときには、後見人の選任等の審判にも日本法を準拠法としている。

失踪宣告
 失踪宣告は国家機関の宣告が必要であるから、準拠法だけでなく管轄も通則法に定められている。
 6条1項は、失踪宣告の原則的管轄原因を、不在者が生存していたと認められる最後の時点において日本に住所を有していたとき又は日本の国籍を有していたときに認めている。これは、不在者に関する不確実な法律関係の解決に利害を有する住所地と、戸籍の整理等に関わる国籍を基準にしたものと理解できる。
 もっとも、6条2項は例外的に、不在者の財産が日本にあるときにその財産について、また、不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他の事情に照らして日本に関係があるときにその法律関係について、日本の管轄権を認めている。これは、不在者をめぐる法律関係の不安定をできるだけ解消しようとして管轄原因を広げたものと解される。

 6条は、非訟事件における実体法と手続法の関連を考慮して、法定地法である日本法が失踪宣告の要件及び効力に関して適用されることを定めている。

相続
(1)管轄
ア 訴訟事件
 民訴法3条の3第12号第13号

イ 非訟事件(相続財産管理人や遺言執行者の選任、相続放棄、限定承認の受理等)
 相続に関して直接規定する法規はなく、条約や慣習もないから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定する。
※最後の住所地および相続財産所在地が多数説

(2)準拠法
 36条は動産相続と不動産相続を区別しない相続統一主義を採用したうえで、死亡当時の被相続人の本国法を準拠法としている。被相続人の住所地法とするよりも法律関係が安定する利点がある。

遺言
(1)管轄 相続と同じ
(2)準拠法
 Aは日本に常居所を有し、遺言作成時に甲国人であったから、Aの遺言能力の有無は渉外性を有する。遺言能力は人の行為能力と性質決定できるから、4条でその有無を決めるべきとも思えるが、4条は財産的行為能力に限って適用されると解されている(4条3項参照)。渉外性を有する遺言は、意思表示としての遺言自体の問題と遺言の内容となる法律行為の問題に分けられ、前者には37条が適用されると解されている。そこで、Aの遺言能力も37条で決める。

 遺言の方式に関する準拠法は、遺言の方式の準拠法(以下「遺言準拠法」という。)に関する法律で決める。Aの遺言が方式に関して有効に成立しているかどうかもこの法律を用いる。同法は、2条各号に掲げるいずれかに適合するときは、遺言の方式に関し有効としている(選択的連結)。このように広い要件を定めているのは、遺言が方式の点で無効となるのをできるだけ防ぐことである(遺言保護)。

扶養
(1)管轄
 扶養に関して直接規定する法規はなく、条約や慣習もないから、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定する。条理の内容は扶養が扶養権利者の保護のための制度であることを考慮すべきである。したがって、扶養義務者と扶養権利者の住所地に管轄を認めるべきである。

(2)承認
 「外国裁判所の確定判決」(民訴法118条)とは私法上の法律関係について当事者双方の手続保障のもとに終局的にした裁判を言う。扶養料の支払いは争訟的性格が強いからそのような裁判に当たる。したがって、扶養料の支払いを命じる外国裁判所の判決が日本で効力を有するかは外国裁判の承認の問題そのものであり、民訴法118条に従って判断すべきである。

例)
1 A州の裁判所の判決はA州の司法権の作用の結果だから、当然には日本で効力を持たない。しかし、日本法は一定の要件を満たした場合に外国判決を承認する制度を設けている(民事訴訟法118条)。扶養事件は非訟事件だから118条は適用されないとも思えるが、金銭給付を求める扶養事件は争訟的性格が強いから118条が直接適用されると解する。そして、「外国裁判所の裁判権」(118条1号)には国際裁判管轄も含むから、本問で問われているのは1号の要件該当性である。
2 まず、「外国裁判所の裁判権」の有無を判決国から見て判断するのか、承認国から見て判断するのかが問題となる。判決国から見て判断すると仮定すると、同じ要件該当性の判断を繰り返すことになるから1号要件が無意味となるし、外国裁判所を日本の裁判所の下級審のように扱うことになり実質的再審査禁止原則(民事執行法24条2項参照)に反する。そこで、承認国から見て判断すべきである(最判平成10年4月28日)。
3 次に、承認国つまり日本の基準から見て判断する場合の判断基準は民訴法の直接管轄の規定と同じか否かが問題となる。
 既に出された判断をできるだけ尊重して国際私法秩序の安定を図ることを重視すると、間接管轄は直接管轄より広く認めるべきとも思える。しかし、いずれも公権的判断を当事者に強制することを正当化するものだから、同一の基準で判断すべきと考える(鏡像理論)。上記判例およびそれを踏襲した最判平成26年4月24日は、基本的に日本の民訴法の定める国際裁判管轄に関する規定に準拠しつつ、個々の事案における具体的事情に即して、外国裁判所の判決を日本が承認するのが適当か否かという観点から、条理に照らして判断すべきとしているが、鏡像理論を述べたものと解する。
4 そのように解しても、本件は扶養料の支払いに関する訴えであり、民訴法に規定がないから条理によるしかない。扶養料は扶養権利者のために使われるから、扶養権利者の住所地とするのが条理上適切と考える。
 本件の扶養権利者ZはA州に居住しているから、扶養権利者の住所地はA州である。

(3)準拠法
 扶養準拠法2条は、原則として扶養権利者の常居所地法を準拠法とする。この趣旨は、それによってこそ扶養権利者の需要に応じることができること、私的扶養と同一の準拠法に依拠させることで制度間の調和が図れることである。2条1項但書と同2項では、扶養権利者保護のためさらに2段階の補正的連結を定めている。したがって、「扶養を受けることできないとき」(1項但書、2項)とは、法律上扶養義務が課せられていない場合や個別的に裁判により義務を果しえない場合をいい、事実上扶養を受けられない場合を含まない

 本件の扶養料減額請求は、離婚をした当事者間の扶養義務に関するものだから、扶養義務に関するハーグ条約を国内法化した扶養準拠法4条による。同条は、離婚について適用された法を準拠法とする。これは、離婚後の扶養が各国の法制上離婚自体と密接に関連していることを理由とすると考えられる。離婚準拠法とはされていないので、離婚準拠法が公序により適用されなかった場合でも、離婚について適用された法が適用される。

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