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2016年02月08日

国際私法 平成24年度第1問

問題文
 甲国人夫A及び甲国人妻Bは、20年前に来日し、以後、日本において生活をしていた。Aは、来日後しばらくして知り合った甲国人女性との間に子Xを設けたが、Xを認知していなかった。Xが出生以来日本において生活をしている甲国人であるとして、以下の設問に答えなさい。
 なお、甲国法は、日本の後見及び補佐に相当する制度を有するほか、次の@からBの趣旨の規定を有している。
@子は、父の死亡を知った日から2年以内に限り、検察官を被告として認知の訴えを提起することができる。
A認知をするには、父が被後見人であるときであっても、その後見人の同意を要しない。
B夫婦の一方が被後見人となったときは、他の一方はその後見人となる。
〔設問〕
1.Aは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況に陥った。本設問1との関係では甲国の国際私法からの反致はないものとして、次の問いに答えなさい。
(1)Bの請求により、日本の裁判所がAにつき後見開始の審判をする場合、いかなる国の法を準拠法とすべきか。
(2)Aにつき後見開始の審判をした場合、日本の裁判所は、いかなる国の法を準拠法としてBを後見人として選任することができるか。
(3)日本の裁判所がAの後見人としてBを選任した場合、AによるXの任意認知につき後見人Bの同意は必要か。
2.Aは、その後、Xを認知することなく死亡し、Xは、Aの死亡を直ちに知った。Xは、Aの死亡後2年6月を経過した時に、検察官を被告として日本の裁判所に認知の訴えを提起した。甲国の国際私法P条が、「父による子の認知は、出征当時の父の本国法、認知の当時における父の本国法又は子の本国法若しくはその常居所地法による。父が認知前に死亡したときは、その死亡の当時におけるその本国法を父の本国法とする。」と規定しているとすると、この訴えは適法か。

回答
設問1(1)
 後見開始の審判の準拠法は5条により、日本法となる。5条は、事理弁識能力を欠く要保護者が@日本に住所又は居所を有するとき、およびA日本国籍を有するときには、後見開始の審判等につき日本の裁判所が管轄を有することを定めている。5条により日本の裁判所に管轄が認められた場合には、法定地法として日本法が適用される。この趣旨は、非訟事件特有の実体法と手続法の密接な関係を考慮し、的確な保護措置が行われるようにすることである。
 本件は、5条により日本の裁判所に管轄権が認められたと考えられるから、法定地法たる日本法が準拠法となる。
設問1(2)
 後見人の選任は後見等がいかに実現されるかの問題と性質決定されるから35条による。そもそも5条に基づき日本で後見開始の審判が行われる場合、その後に誰を後見人とするか等も日本法を適用するほうが円滑である。そのため、35条2項2号は日本において後見開始の審判等があったときには、後見人の選任等の審判にも日本法を準拠法としている。
 本件はAについて日本法で後見開始の審判があったのだから、35条2項2号によりBを後見人として選任する審判は日本法による。
設問1(3)
1 被後見人Aが認知するにつき後見人Bの同意が必要か否かは非嫡出親子関係の成立の問題だから29条による。同条は1項は父との間の親子関係の成立について、子の出生当時の父の本国法(1項前段)、認知当時における父の本国法、及び認知当時における子の本国法(以上2項前段)を定めている。これは、できるだけ親子関係を成立させることが子の保護に資するから、選択的連結と解する。
 もっとも、29条1項後段や2項後段は認知当時の子の本国法によれば第三者の同意が必要なときはその要件も備えなければならないとしている。これは、いわゆるセーフガード条項であり、将来扶養してもらうことを期待して認知するような子にとって望ましくない認知から子を保護するための規定と解する。
2 本件では、Xの出生当時のAの本国法は甲国法であり、認知当時のXの本国法及び認知当時のAの本国法のいずれも甲国法であるから、1項前段、2項前段のいずれによっても準拠法は甲国法となる。甲国法Aによれば、認知をするのに後見人の同意は不要である。
3 したがって、Bの同意は不要である。
設問2
1 認知の訴えの国際裁判管轄については明文がなく(人事訴訟法29条1項)判例もないから条理による。条理の内容は、認知は主に子の保護のための制度だから、子の保護に資するように解釈すべきである。そうすると、本件のような死後認知は被告の住所を考慮する必要がないため、原告Xの住所地の裁判所すなわち日本の裁判所が管轄権を有する。
2 認知の訴えの準拠法は、前述のように甲国法である。もっとも、甲国の国際私法P条は認知当時の子の常居所地法をも選択的に準拠法と認めており、この規定を反致(通則法41条)の規定とみて日本法が適用されないか。
 反致の実質的根拠として内国適用拡大と国際的判決調和がいわれるが、前者は国際主義に矛盾し、後者は相手国も反致の規定を設けていれば調和しないから、根拠づけは難しい。41条後段が段階的連結の場合に反致の適用を排除しているのもそのためと考えられる。そこでさらに進んで、本件の29条のように選択的連結の規定で相手国の法が準拠法とされた場合は反致されないと解すべきである。なぜなら、選択的連結の規定により相手国に送致された場合は、日本の国際私法上、最密接関係地法の最終的決定と解されるからである。
 本件では、反知がされない結果、甲国法が準拠法となり、甲国法@は死後2年以内でないと認知の訴えを認めないから、訴えは不適法である。
3 この適用結果は日本の公序(42条)に反しないか。42条は適用結果の異質性と内国関連性の強さを考慮して外国法の特定の適用結果を排除する規定であるが、死後2年間で認知の訴えを提起させるのはその限りで法的安定性と子の保護の調和を図ったのであり、その適用結果は異質とは言えないし、内国関連性も大きいとは言えない。
 したがって、42条も適用されない。
4 以上より、この訴えは不適法である。  以上



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