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2016年02月08日

国際私法 平成23年度第1問

問題文
 共に甲国人である夫Aと妻Bは、出生以来甲国のP地域に居住していたが、観光のために来日した。来日した翌日、滞在しているホテルの前の横断歩道を横断中、日本に居住する日本人Yの運転する自動車が、信号が赤であるにもかかわらず交差点に進入し、AとBはYの車にはねられて死亡した。両者の死亡の戦後は明らかでない。後日、事故当時甲国のP地域に居住していたAの父Xが来日し、Yに対して損害賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。
 AとBの婚姻及びXとAの父子関係は有効に成立しているものとし、かつ、甲国は法を異にするP地域、Q地域、及びR地域からなる国であるが、これらの地域の間で生ずる方の抵触を解決するための規則は同国にはないものとして、以下の設問に答えなさい。
 なお、P地域の法(以下「P法」という。)は次の趣旨の規定を有している。
@債権の法定相続については、死亡当時における被相続人の常居所地法による。
A夫婦のうちの一人がその配偶者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、夫婦は双方とも同時に死亡したものと推定する。
B他人の生命を侵害した者は、被害者の近親者に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、その損害の賠償をしなければならない。
C慰謝料請求権を譲渡又は相続することはできない。
D配偶者、子及び直系尊属が第1順位の相続人になる。
〔設問〕
1.Xは、AがYに対して有する損害賠償請求権を相続にいより取得したとして、Yに対して損害賠償を求めている。
(1)Xの相続権の有無を判断するための準拠法を裁判所はP法とした。裁判所がP法を準拠法とするに至った推論の過程を示しなさい。
(2)Xは、「逸失利益の算定方法には、日本法が適用されるので、Aの逸失利益は、甲国におけるAの現実の収入の多寡にかかわりなく、日本の賃金センサス(賃金構造基本統計調査)に基づいて算定されるべきである。」と主張している。この主張の当否を論じなさい。
(3)Xは、「AがYに対して有する慰謝料請求権を相続による取得した。」と主張している。Xは、当該慰謝料請求権を相続できるか。
2.Xは、Aの死亡により自ら精神的苦痛を負ったことを理由に、Aの近親者としてYに対して慰謝料を請求することができるか。
3.Xは、「BがYに対して有する損害賠償請求権を、Aは、Bの配偶者として相続により取得し、かくしてAに帰属した当該請求権を自分はAの直系尊属として相続により取得した。」と主張している。この主張に理由はあるか。Bの本国法は、P法であるとして答えなさい。

回答
設問1(1)
1 Xが本件の権利を行使するためには、@AがYに対して損害賠償請求権を有しており、AそれをXが相続したことが必要だから、それぞれに関して準拠法が問題となる。
2 @について
 AはYに対して不法行為に基づく損害賠償を請求したい。不法行為とは、違法な行為によって他人に損害を与えた者が、被害者に対してそれを賠償すべき債務を負う法律関係を言い、AY間の自動車事故はこれに当たる。この事故による債権の発生は不法行為債権の成立の問題と性質決定されるから17条による。同条は原則として結果発生地法を準拠法としている。これは不法行為地と定めていた法令の規定が加害行為地を意味するのか結果発生地を意味するのかを明確にし、加害行為地の公序の維持よりは損害の公平な分担を重視する趣旨である。
 本件では結果発生地が日本なので、日本の民法によると、709条に基づきAのYに対する損害賠償請求権が観念的に発生している。
2 Aについて
 Xの相続権の有無は相続の問題と性質決定されるから36条による。同条は動産相続と不動産相続を区別しない相続統一主義を採用したうえで、死亡当時の被相続人の本国法を準拠法としている。被相続人の住所地法とするよりも法律関係が安定する利点がある。
 被相続人Aは甲国人だから、Aの本国法は甲国法としたいところだが、甲国は不統一法国であり、かつ、法の抵触を解決するための規則がない。そこで、38条3項カッコ書きに基づき、当事者の最密接関係地法が本国法となる。本件では、AはP地域に居住していたから、P法が本国法である。
3 もっとも、P法@は反致を定めているが、Aの常居所は日本ではなくP国であるから、P法@に基づく反致は成立しない。日本の通則法が反致(41条)を定めているのは、国際判決調和と内国法適用拡大を目指してのことである。
4 したがって、Xの相続権の有無はAの本国法たるP法によって判断する。
設問1(2)
1 「逸失利益の算定方法には日本法が適用される」の部分については、逸失利益は不法行為の成立の問題と性質決定されるから前述のとおり17条により日本法が適用されるため、Xの主張は正当である。
2 「Aの逸失利益は、甲国におけるAの現実の収入の多寡にかかわりなく、日本の賃金センサスに基づいて算定されるべきである。」という部分はどうか。これは逸失利益について適用される日本の民法の解釈になると解する。
 日本の民法は抽象的に同じ属性の人が生きていたとしたらどれほどの収入を得ていたかを判断するから、Xの損害賠償額もそれに従って決める。Aは甲国人であり、甲国のP地域に居住していたのであって、日本へは観光のために来たに過ぎない。そのため、Aの属性の者が生きていたとすれば甲国で収入を得ていたと考えられる。そうすると、賃金センサスも甲国のものに基づいて算定されるべきである。
 したがって、後半部分は正当ではない。
設問1(3)
 慰謝料請求権を相続できるかは相続の範囲の問題だから相続の準拠法による。前述のように本件で相続の準拠法はP法だから、P法の解釈となる。
 P法Cは慰謝料請求権の相続を否定している。
 したがって、Xは本件の慰謝料請求権を相続できない。
設問2
 XがYに対して慰謝料請求権を有するかどうかは不法行為の成立の問題だから17条による。前述のように同条本文は結果発生地法としている。
 そうだとしても、本件で結果発生地はどこだろうか。「結果が発生した地」(17条)とは、現実に法益侵害結果が発生した地または加害行為によって直接に侵害された権利が侵害発生時に所在した地のことをいう。加害行為によって直接に侵害された権利はXの精神的利益であり、Xが精神的苦痛を受けたことを損害結果ととらえると、Xは事故当時P地域に居住していたからP法が結果発生地法となる。
 しかし、このように解すると、不法行為についての準拠法が請求原因の違いでバラバラになるし、加害者にとって被害者の近親者がどこに住んでいるかは予見できないから、加害者の予見可能性も害する。そのため、結果発生地はあくまでも被害者死亡の結果が発生した日本であると解する。したがって、準拠法は日本法である。
 本件では、民法711条に基づき、XはYに対して慰謝料請求ができる。
設問3
 BがYに対して損害賠償請求権を有するか否かは不法行為の成立の問題だから17条により日本法が準拠法となる。日本法上、不法行為が成立するから、BはYに対して慰謝料請求権を有する。
 そして、AがBの配偶者としてBを相続するかどうかは相続人の範囲の問題だから相続の問題と性質決定され、36条により、P法が準拠法となる。P法Dより、配偶者は第1順位の相続人となる。
 もっとも、P法Aは本件のように死亡の前後が不明の場合に同時死亡を推定している。P法の同時死亡の効果は不明だが、論理的に考えて相互に相続は開始しないというべきである。
 そうすると、AがBの損害賠償請求権を相続したという点は正しくない。
 したがって、Xの主張には理由がない。  以上

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