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2016年02月08日

国際私法 平成22年度第1問

問題文
 Aは現在15歳であり、日本と甲国の国籍を有している。日本国籍を有する母Mは甲国籍を有する父Fと20年前に日本において婚姻し、両者の間にAが出生した。Aの出生後に勤務地が甲国となったFは、A及びMと共に甲国において家族生活を開始したが、しばらくしてFは急死した。甲国において生計を立てることができなかったMはAを伴い日本に帰国し、日本においてAを養育していたところ、Aが13歳の時、Mもまた死亡した。現在Mの母Xが日本においてAを看護養育している。
 甲国国際私法からの反致はないものとして、以下の設問に答えなさい。
〔設問〕
1.現在、XはAの後見人となることを望んでいる。
(1)日本の裁判所は、Aの後見人としてXを選任するための国際裁判管轄権を有しているか。
(2)日本の裁判所が国際裁判管轄権を有すると仮定した場合に、XをAの後見人に選任するために日本の裁判所はいかなる国の法を適用すべきか。
2.日本の裁判所がXをAの後見人に選任したとする。
(1)Mが甲国において生前親しくしていた甲国人Bは現在日本に居住している。Aを幼児のころから知っていたBは、Xが高齢であることもあり、Aを日本において自己の養子にしたいと望んでいる。AとBとの間の養子縁組についてXの承諾は必要か。
 なお、甲国法によると、「養子となる者が16歳未満の未成年者であるときは、その法定代理人が縁組に承諾しなければならない。」とされている。
(2)AとBとの間の養子縁組が日本において有効に成立した場合、Xの後見は終了するか。

回答
設問1(1)
 未成年後見の国際裁判管轄については明文や判例がないため、条理による。条理の内容として、未成年者の保護の観点が重要である。未成年の保護のためにどのような連結点を定めるべきか。
 準拠法と管轄の並行性を重視すると、通則法35条1項が本国法主義を採っているのに合わせて被後見人の本国の裁判所に管轄権を認めるべきとも思える。しかし、被後見人の保護は生活の本拠である居住地国において最も効果的に行われる。また、後見制度は被後見人と交渉を持つ一般社会の公益維持に奉仕するものである。したがって、被後見人の常居所地国の裁判所に管轄を認めるべきである(家事事件手続法176条参照)。常居所とは、人が居所よりは長期にわたり居住する場所である。
 Aの常居所は日本である。
 したがって、日本の裁判所が管轄権を有する。
設問1(2)
1 まずAが後見人を必要とする未成年か否かをどこの法律で判断するかが問題となる。後述の後見の準拠法に依拠させる考えもあるが、人の行為能力の問題と性質決定されるから4条による。同条1項は人の行為能力について本国法主義をとる。住所に比べて国籍は確認しやすいからである。
 そうすると、日本と甲国の国籍を有するAの本国法はいずれかが問題となるが、38条但書により、片方が日本の国籍なので日本法が本国法となる。日本法上、13歳のAは未成年者なので未成年後見人が必要である。
2 では、いずれの法で後見人を選任すべきか。後見人の選任は「後見、補佐又は補助」(35条1項)と性質決定されるから35条1項による。同条は後見等につき本国法主義をとる。後見は人の身分及び地位に関わるため4条と同じく属人法によるべきだからである。
 本件では前述のとおりAの本国法は日本法である。
3 したがって、日本法を適用すべきである。
設問2(1)
 養子縁組についての未成年後見人の承諾の必要性は養子縁組の問題と性質決定されるから31条によるべきである。同条1項は縁組の当時における養親の本国法に依拠し、さらに部分的に養子の本国法を累積的に適用する。子の福祉の観点から養子の国籍に連結させるべきとも思えるが、縁組成立後は養親の本国で生活するのが一般的であること、養子縁組により国籍を付与する国も多いこと、比較法的にも養親の国籍への連結が多いことから、養親の本国法主義が採用された。1項後段はセーフガード条項である。養子縁組が養子にとっても大きな影響を及ぼすものだから、養子の本国法も一部累積的に適用させ、子の保護に欠けることのないようにしたのである。
 本件は31条1項前段により養親Bの本国法たる甲国法が適用される。そして、Xの承諾の要否については養子Aの本国法たる日本法による。日本の民法上、養子が15歳未満の場合は法定代理人が縁組の承諾をする(民法797条1項)。そして、同857条、820条は未成年後見人に被後見人の監護権を付与しているから、XはAの「法定代理人」(797条1項)に当たる。Aは13歳である。そのため、31条1項後段の「養子となるべき者の本国法によれば…第三者の承諾…があることが養子縁組の成立の要件であるとき」に当たる。
 したがって、Xの承諾が必要である。
設問2(2)
 養子縁組が成立した場合に後見が終了するかどうかは養子縁組の効果の問題とも思えるが、より広い問題であるから後見の終了と性質決定し、35条1項によるべきである。そのため、被後見人Aの本国法である日本法による。
 日本法では未成年後見は未成年者に対して親権を行うものがないときに開始する(838条1号)から、親権を行うものがあるときに終了すると解される。本問では養親であるBに親権があれば、後見が終了することになる。そうすると、養親の親権の有無は親子関係の問題と性質決定されるが、これが後見の終了の先決問題ということになる。
 先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地の準拠法による(判例)。通則法32条は子の本国法と親の本国法が同一である場合には子の本国法により、そうでない場合は子の常居所地法によるとしている。親子という複数の当事者間の法律関係だから、段階的連結が採用されている。
 本件では養子Aの本国法は日本法であるが、養親Bの本国法は甲国法であるから、本国法が異なる場合に当たる。そのため32条後段によりAの常居所地法たる日本法が適用される。
 日本法上、前述のように親権を行うものがあるときに未成年後見は終了する。
 したがって、Xの後見は終了する。  以上

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