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2016年02月08日

国際私法 平成21年度第1問

問題文
 日本人男Xと甲国人女Yは日本において婚姻し、甲国において婚姻生活を送っていたが、婚姻後しばらくして両者の性格上の相違からその婚姻関係は破たんした。Xは日本に戻り、現在XとYはそれぞれ日本と甲国に居住している。両者がそれぞれの本国において別居を始めて5年を経過したころ、Yは甲国において他の日本人男Aと親しくなり、甲国におけるAとの婚姻生活を望むに至った。そこで、Xとの離婚を決意したYは甲国の裁判所に離婚訴訟を提起した。訴状は、日本と甲国とが締結している司法共助の取決めに従い適法にXに送達された。Xは、急きょ、甲国の弁護士資格を有する者を代理人として選任し、甲国裁判所の国際裁判所の国際裁判管轄を争ったが、甲国裁判所はその管轄を肯定した。そして同裁判所は、12か月以上継続した別居を離婚原因とする甲国の規定を適用して、XとYとを離婚する旨の判決を言い渡した。判決確定後1か月して、YとAは婚姻しようとしている。
 XとYの間に子はない。この事例について、甲国の国際私法からの反致はないものとして、以下の設問に答えなさい。
〔設問〕
1.甲国裁判所の離婚判決の効力を日本で承認するための要件である国際裁判管轄は甲国に認められるか。
2.法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)の下におけるYとAの婚姻の実質的成立要件につき、次の問いに答えなさい。
(1)甲国裁判所の判決が日本において効力を有し、かつ、Yの本国法である甲国法は再婚禁止期間の制度を現在では廃止しているとする。離婚判決の確定後6か月を経過することなく挙行されるYとAの婚姻は有効に成立するか。
(2)甲国裁判所の判決が日本において効力を有せず、かつ、重婚を禁止する甲国の規定は「配偶者のある者が重ねてした婚姻は無効とする」と定めているとして、YとAの婚姻の成立の有効性について論じなさい。
3.婚姻の実質的成立要件が満たされていると仮定して、Aは、Yとの婚姻を挙行するにつき、@甲国の機関の関与の下に甲国法に従い婚姻を挙行した後に、甲国機関の発行する婚姻証明書を甲国に駐在する日本の領事に提出する方法又はA日本法の定める婚姻の届書を甲国に駐在する日本の領事に提出する方法のいずれを採るべきか。

回答
設問1
1 国際裁判管轄が甲国に認められるかは民訴法118条1号を満たすかという問題である。
 そもそも外国の主権の行使である司法権の作用の結果は、当然には日本で効力を有さない。しかし、そうすると日本において再び争うことになり、当事者の紛争が長引くだけでなく、日本の訴訟資源の効果的利用の点からも妥当でない。そこで、日本は民訴法118条の要件を満たした場合に外国の確定判決が日本においても効力を持つと定めた。外国判決の執行の場合は執行判決が必要だが(民事執行法22条6号、24条)、外国判決の効力そのものは118条の要件を満たすかだけを判断すれば特別の手続は不要である(自動承認の原則)。
2 では、118条1号の要件すなわち日本から見て外国裁判所の裁判権が認められるか否かはどのように判断すればよいか。
(1)第一に、判決国から見るか日本から見るかの問題については、判決国から見れば管轄があるのは当然であって118条1号が無意味になるから、日本から見るべきである。
(2)第二に、日本の直接管轄の判断基準と同じでよいか。すでに外国判決が存在する間接管轄の審査は直接管轄よりも緩やかでよいとも思えるが、基準の明確性の観点から同じにすべきと解する。
(3)第三に、日本の直接管轄の判断基準と同じだとしても、本件のような人事訴訟には民訴法3条が適用されないから(人事訴訟法29条1項)、日本の判断基準そのものを解釈する必要がある。離婚の国際裁判管轄についての昭和39年判決(@)は、被告の住所地の裁判所に管轄が認められるのが原則だが、原告が遺棄した場合、被告が行方不明の場合、その他これに準じる場合には日本の裁判所にも管轄が認められるとした。一方、平成8年判決は、日本に管轄が認められる場合は上記の3つの場合に限られず、当事者間の公平、裁判の適正・迅速の要請から判断するとした(A)。@とAの関係をいかに解すべきかが問題となる。@は外国人間の事件、Aは日本人と外国人の事件とする見解は理論的正当化ができず妥当でない。あくまで@が原則であり、Aは事案の特殊性から認められた判断基準と解する。したがって、特段の事情のない限り、@の基準を用いる。
 本件は被告Xの住所地が日本であるから日本の裁判所が管轄権を有するのが原則である。そして、例外該当性としては、5年間の別居が「遺棄」と言えるか問題となるが、本件XYは単に別居していただけであるから、「遺棄」に当たらない。特段の事情もない。
3 したがって、甲国に管轄は認められない。
設問2(1)
1 Yは甲国人でありAは日本人であるから、YとAとの婚姻は渉外性を有する。婚姻の有効性は婚姻の成立と性質決定されるから24条1項による。同条は両性の平等の観点から各当事者の本国法によるという配分的連結を定めている。もっとも、婚姻の実質的成立要件には婚姻適齢のような一面的要件と近親婚禁止のような双面的要件があるが、その区別は個々の要件を抵触法の次元で解釈して決めるべきである(抵触法説)。なぜなら、実質法の次元で決めるとすると、各国の実質法が渉外関係まで想定して定められているとは限らないため、解釈が困難だからである。そして双面的要件とされた場合には、24条1項が配分的適用を命じているにもかかわらず、当事者双方の本国法を累積的に適用したのと同じ結果となる。
2 では、再婚禁止期間は一面的要件か双面的要件か。再婚禁止期間を設ける趣旨は子の嫡出性の推定であろう。そして、嫡出子か否かは一義的に決まっていないと後に問題が生じる。したがって、再婚禁止期間は双面的要件と解する。
3 そうすると、配分的連結を命じる24条1項にもかかわらず、YとAにはそれぞれ日本法と甲国法を累積的に適用する結果となる。そして、日本法では女は離婚から6か月を経ないと再婚できない(民法733条1項)
4 したがって、YとAとの婚姻は無効である。
設問2(2)
 本問もXとAの婚姻の有効性が問題となっているから、24条1項が適用される。同条の解釈は前述のとおりである。
 甲国裁判所の判決が日本において効力を有さないということは、YとXは離婚していないということになる。そうすると、甲国および日本の重婚禁止規定が適用される。重婚禁止は明らかに双面的要件だから、24条1項が配分的適用を命じているにもかかわらず双方の法律を双方に累積的に適用したのと同じ結果となる。そして、双方を累積的に適用した結果が異なる場合には、より強力な効果を採用した法を尊重するため、有効から遠いほうの法律を適用すべきと解する(厳格法の原則)。
 本件では、日本法上重婚は無効にはならない(民法732条参照)が、甲国法上は無効となり、甲国法のほうが厳格であるため、甲国法が適用される。
 したがって、YとAとの婚姻は無効である。
設問3
 YとAとの婚姻の挙行は婚姻の方式の問題と性質決定されるから、24条2項及び3項を適用すべきである。2項は、婚姻挙行地での婚姻の公知という公益的観点から婚姻挙行地法主義を定めている。しかし、常に挙行地法が適用されるとすると宗教婚しか認めない国で非宗教者である外国人は婚姻できなくなるし、絶対的に婚姻挙行地にしなければならないほどの公益性もないと考えられるから、3項は当事者の一方の本国法の選択的連結を採用している。
 本件では2項によれば婚姻挙行地である甲国法の方式で行うことになるが、3項によりAの本国法である日本法の方式を選択することもできる。
 そうするとAの方法もできそうであるが、民法741条はいわゆる領事婚を日本人間の婚姻にしか認めていないため、YとAはこの方法を使うことはできない。
 したがって、@を採るべきである。  以上

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