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2018年04月01日

憲法ポイント

個人記者の取材の事由
 博多駅事件では、報道機関の報道の自由が個人の知る権利に奉仕するがゆえに21条1項で保障され、報道のための取材の事由も、21条1項の精神に照らし、十分尊重に値すると判示された。この判決が出された当時は情報の送りてたるマスメディアとそれの受け手である一般市民の分離が顕著だったため、報道の自由の主体は報道機関であることが自明のものと考えられた、
 しかし、インターネットの普及により、個人であってもブログ等により情報を容易に発信できる現代においては、報道の自由の主体を個人にも広げる必要があり、そうすることが、より多くの個人の知る権利に資するから21条1項の趣旨に沿う。
 したがって、個人の報道の自由は21条1項により保障されると解する。

・立論(判例以上の権利が保障される)
 反論(判例の権利しか認められない)
 私見(判例の権利にとどまるが、配慮義務がある)

平等
 平等の観念は自由と不可分に関連して発達してきたから、14条1項は個人の事実上の差異を前提とし、不合理な差別を禁止する趣旨と解する。
 また、「社会的身分」とは、人が社会において一時的で話に占める地位をいう。14条後段列挙事由は例示に過ぎないが、歴史的に不合理な差別が行われてきた事由であるから、列挙事由を理由とする区別は原則として不合理であり、その合憲性は厳格に判断すべきと解する。

選挙権侵害
 選挙権は国民主権(前文1段、1条)を具体化する重要な権利だがら、原則として選挙権の行使の制約は許されない。しかし、選挙の公正もまた重要だから、選挙の公正を確保するための制約は、選挙権の公務としての性質にかんがみ、やむを得ない事由がある場合にのみ例外的に許される。しかし、やむを得ない事由とは、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められる場合をいう。

プライバシー権
(1)憲法13条後段の幸福追求権は個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体である。私生活をみだりに公開されない法的保障ないし権利は人格的生存に不可欠であるから、プライバシー権として13条後段によって保障される。
 本件では、〇〇は私生活上の事実であり、一般人の感受性を基準として公開を欲しないものであり、一般人に未だ知られていないことだから、プライバシー権に該当する。
(2)そして、プライバシー侵害と言えるためには不特定多数人が推知しうる状態に置くことが必要であるところ、〇〇を××すれば不特定多数人が推知しうるから侵害に当たる。

政教分離
 20条1項後段の「宗教団体」、89条前段の「宗教上の組織若しくは団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝、普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体を指す。

公の支配(89条後段)
 89条後段の趣旨は、私的事業の独立性確保ではなく、公費の濫用防止と私的事業の国家への依存性排除と解する。そのため、「公の支配」に属するといえるには国家が予算の定立など事業の執行に関与することは必要なく、一定の監督が及んでいることで足りる。
 本件の私学助成は、業務や会計の状況に関し報告を徴したり予算について必要な変更をすべき旨を勧告する程度の監督権を持っているので、一定の監督が及んでいるといえ、即ち当該私学は「公の支配」に属しているといえる。
 従って、本件の私学助成は89条後段に反しない。

posted by izanagi0420new at 16:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

2017年12月25日

憲法判例フレーズ集

東京都管理職受験資格事件
 地方公共団体が、公務員制度を構築するにあたって、公権力行使等地方公務員の職とこれに承認するのに必要な職務経験を積むために減るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができる

謝罪広告事件
単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するにとどまる程度

拘禁者喫煙事件
個人の嗜好の一つとしても、あらゆる時と場所で認められなければならないものとはいえない

博多駅事件
 報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由と並んで、事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにある。また、取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する。

昭和女子大事件(私人間効力)
 自由権的基本権の保障規定は、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない。

百里基地事件
 私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである。

被拘禁者喫煙事件
 これらの自由に対する制限必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである。

堀越事件
 国家公務員法102条1項は公務員の職務の政治的中立性を保持することによって行政の中立的運営を確保し、これに対する国民の信頼を維持することを目的とするが、国民は表現の自由(21条1項)としての政治活動の自由を保障されており、政治活動の事由は民主主義を基礎づける重要な権利だから、公務員に対する政治的行為の禁止は、国民としての政治活動の自由に対する必要やむを得ない限度にその範囲が画されるべきである。
 国家公務員法102条1項の「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こりうるものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。そのようなおそれが認められるか否かは、当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である。
 Xによる配布行為は、管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり、公務員による活動と認識しうる態様で行われたものでもないから、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえない。

君が代不起立事件
 …このような考えは、X自身の歴史観ないし世界観から生ずる社会生活上ないし教育上の信念ということができる。
 しかし、公立学校における式典において、日の丸の掲揚及び君が代の斉唱が広く行われていたことは周知の事実であって、起立行為は一般的、客観的に見てこれらの式典における慣例上の儀礼的所作である。したがって、起立斉唱はXの有する歴史観ないし世界観を否定するものではない。また、特定の思想を保持することを強制したり、これに反する思想を禁止したりするものではなく、信仰告白を強要するものでもない。
 もっとも、起立斉唱行為は一般的、客観的に見ても国旗国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であるから、敬意を表明し難いと考える者にとっては、個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなり、その限りにおいて、その者の思想良心の自由についての間接的な制約となる。
 このような間接的制約は職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量して必要性及び合理性が認められる場合にのみ許容される。

→不服従教諭のあぶり出しを企図して職務命令が出された場合は職務命令の「目的」の正当性が欠ける。実際に歌うことを強要した場合は職務命令の「内容」が「慣例上の儀礼的な所作」を超えて相当性に欠ける。なお、職務命令の拒否が私的な考えの発露か教師としての職務上の良心に由来するかの区別は読み取れない。

よど号事件
 閲読の自由の保障は、19条の規定や21条の規定の趣旨・目的からその派生原理として当然に導かれ、また、13条の規定の趣旨に沿う。

 一般的抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、具体的事情のもとにおいて放置することのできない障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、その制限の程度は障害発生防止のため必要かつ合理的な範囲にとどまると解するのが相当である。

京都府学連事件
 13条は、国民の私生活上の自由が、国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定している。

指紋押捺事件
 指紋は、指先の紋様であり、そっれ自体では個人の私生活や人格、思想、信条等個人の内心に関する情報となるものではないが、性質上万人不同性、終生不変性をもつので、採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが侵害される危険性がある。

早稲田大学講演会事件
 学籍番号、氏名、住所及び電話番号は、早稲田大学が個人識別等を行うための単純な情報であって、その限りにおいては、秘匿されるべき必要性が必ずしも高いものではない。また、本件講演会に参加を申し込んだ学生であることも同断である。しかし、このような個人情報についても、本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものであるから、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきである。

住基ネット訴訟
 氏名、生年月日、性別及び住所からなる4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、…いずれも個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない住基コードも同様である。
 また、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令の根拠に基づき、正当な行政目的の範囲内でいこなわれている。そして、住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに、又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない

国籍法事件
 憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨である。

 立法目的に合理的根拠が認められない場合、又はその区別と立法目的の間に合理的関連性が認められない場合には、当該区別は合理的な理由のない差別として14条1項に違反すると解する。

投票価値平等51年判決
 選挙区割と議員定数配分の決定には、多種多様で複雑微妙な政策的及び技術的考慮要素が含まれており、それらの諸要素のそれぞれをどの程度考慮し、これを具体的決定にどこまで反映させることができるかについては客観的基準があるわけではないから、国会の裁量権の合理的な行使として是認されるかを判断するほかはない。しかし、このような見地に立っても、国会において通常考慮しうる諸般の要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきであり、これを正当化する特段の理由がない限り14条1項に違反すると解する。

徳島市公安条例事件
 通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによる。

税関検査事件
 表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また、(徳島県公安条例事件と同じ)。

北方ジャーナル事件
 表現行為の事前差止めは原則として許されない。しかし、その表現内容が真実でなく、又はそれがもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に事前差止めが許される。

テレビ番組の名誉棄損
 テレビ放送がされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の視聴者の普通の注意と市長の仕方とを基準として判断すべきである。

箕面忠魂碑事件
 政教分離規定はいわゆる制度的保障の規定であって、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。そして政教分離原則は、宗教とかかわる行為の目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いが信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとするものである。そうすると20条3項の宗教的活動とは、国と宗教とのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為を言う。ある行為がその宗教的活動に該当するか否かは、行為の外形のみにとらわれることなく、当該行為の行われる場所、当該行為に対する一般人の宗教的評価、当該行為者が当該行為を行うについての意図、目的及び宗教的意識の有無、程度、当該行為の一般人に与える効果、影響等、諸般の事情を考慮し、社会通念に従って、客観的に判断しなければならない。

空知太事件
 憲法89条の趣旨は、政教分離の原則を財政的側面において徹底させることにより、20条1項後段の特権付与禁止を財政的側面からも確保し、信教の自由の保障を一層確実なものにすることである。しかし、国家と宗教とのかかわり合いには種種の形態があるから、89条も、そのかかわり合いが信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係相当とされる限度を超える場合にこれを許さないとするものと解される。
 国公有地を無償で宗教的施設の敷地としての用に供する行為は、一般的には89条との抵触が問題となる行為ではあるが、前述の相当限度を超えるか否かは、当該宗教的施設の性格、当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきである。

防衛庁宿舎ビラ事件
 政治的意見を記載したビラの配布は、表現の自由の行使ということができる。しかしながら、21条1項は必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない。
 …たとえ表現の自由の行使のためとはいっても、このような場所に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権者の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害する。

薬事法事件
 職業は分業社会においては個人の人格的価値と不可分であるから、22条1項は職業選択の自由のみならず職業活動の自由も保障している。もっとも、職業は社会的相互関連性が大きく、多種多様だから、その規制目的も千差万別で、制限も各種各様ありうる。それゆえ、ある規制措置の22条1項適合性は規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較衡量したうえで慎重に決定されなければならない。ところで、一般に許可制は、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的でなければならず、また、それが消極的、警察的措置である場合には、職業活動の内容及び態様に対する規制によることができないと認められることを要する。

証券取引法事件
 財産権は、それ自体に内在する制約があるほか、その性質上社会全体の利益を図るために立法府によって加えられる規制により制約を受けるものである。財産権の種類、性質等は多種多様であり、また、財産権に対する規制を必要とする目的も多岐にわたるため、財産権に対する規制は種種のものがありうる。このことからすれば、財産権に対する規制が29条2項に言う公共の福祉に適合するか否かは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較衡量して判断すべきである。

国有農地売払特措法事件
 29条1項2項の文言から、財産権の内容を事後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するようにされたものである限り、違憲の立法ということはできない。公共の福祉に適合するようにされたか否かは、財産権の性質、変更の程度、及びこれを変更することにより保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきかどうかによって判断する。

在外国民選挙権事件
 選挙権の制限は原則として許されず、制限するためにはやむを得ない事由がなければならない。そして、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合でない限り上記のやむを得ない事由があるとはいえず、このような事由なしに国民の選挙権行使を制限することは、15条1項及び3項、43条1項並びに44条但書に違反する。立法不作為により選挙権行使ができない場合も同様である。

 立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上違法となる。

堀木訴訟
 25条1項は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものであり、また、25条2項は同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものである。

同条1項は、国が個々の国民に対して具体的現実的に生存権を保障する義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的現実的な生存権が設定充実されてゆくものである。

また、「健康的で文化的な最低限度の生活」は抽象的相対的概念であり、25条の規定を現実の立法として実現するには国の財政事情を無視できず、また専門技術的な政策的判断が必要である。したがって、25条の趣旨に答えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合をのぞき、裁判所が審査判断するのに適しない。

堀木訴訟控訴審判決
 25条2項は国の事前の積極的防貧施策をなすべき努力義務のあることを、同1項は第2項の防貧施策の実施にもかかわらずなお落ちこぼれた者に対し、国は事後的、補足的かつ個別的な救貧施策をなすべき責務があることを各宣言したものと解すべきである。

川崎民商事件
 検査が実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めることにはならない。


posted by izanagi0420new at 22:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

2017年10月09日

憲法 平成17年度第1問

問題文 
 酒類が致酔性・依存性を有する飲料であり、飲酒者自身の健康面に与える影響が大きく、酩酊者の行動が周囲のものに迷惑を及ぼすことが多いほか、種々の社会的費用(医療費の増大による公的医療保険制度への影響等)も生じることにかんがみて、次の内容の法律が制定されたとする。

1 飲食店で客に酒類を提供するには、都道府県知事から酒類提供免許を取得することを要する。酩酊者(アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者)に酒類を提供することは当該免許の取消事由となる。
2 道路、公園、駅その他の公共の場所において管理者の許可なく飲酒することを禁止し、これに違反したものは拘留又は科料に処する。

 この法律に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。

回答
設問1
1 飲食店に酒類提供免許の取得を義務付けることは、酒類の提供を許可制にすることを意味する。これは飲食店の職業遂行の自由を侵害し、違憲ではないか。
2 憲法22条1項は職業選択の自由を保障しているが、職業は社会的機能分担の性質があり人格的価値があるから、同条項は職業遂行の自由も保障していると解する。
  職業遂行の自由は「公共の福祉」(22条1項)によって制約されるところ、職業の内容は千差万別でそれに対する制約も各種各様のものがありうるから、どのような制約が「公共の福祉」に基づくものかを一般的に決めることはできず、具体的規制について規制の目的・必要性・内容、これにより制約される職業の自由の性質・内容・制限の程度を比較衡量して慎重に決めるべきである。しかし、一般に許可制は職業の自由に対する強い制約であるから、許可制が公共の福祉によるものと言えるためには重要な公共の利益のために必要かつ合理的なものであることを要し、また、許可制の目的が消極的・警察的なものである場合には、職業活動の内容及び態様に対する制約では目的を達成できないと認められることを要する。
3 本件では許可制が採用されている。その目的として@酒類が飲酒者の健康面に及ぼす悪影響の排除、A酩酊者の行動が周囲の者に及ぼす迷惑の防止、B社会的費用の抑制が挙げられているところ、@は飲酒者の健康が害された結果医療費が増えるという因果関係にあるから、Bが主目的であり、@はBの手段としての副次的目的に過ぎないと認められる。そうすると本件の規制目的はA及びBである。
  そこで、A及びBが重要な公共の利益か否かを検討するに、Aは単なる迷惑であって重要とは言えず、Bも医療費削減が直ちに重要とは言えない。仮にそれらが重要な公共の利益であるとしてみても、消費者は飲食店ではなく小売店で酒類を購入して飲酒することが可能である以上、飲食店での酒類提供を規制してもそれらの目的を達することができるかは疑わしく、規制の合理性が認められない。
4 したがって、本件の許可制は飲食店の職業遂行の自由を侵害し、違憲である。
設問2
1 公共の場所の管理者の許可なく飲酒することを禁止した法律は、個人の飲酒の自由を制約し、違憲ではないか。
2(1) 飲酒の自由は憲法に明文がないが、憲法13条に規定されている幸福追求権は憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる包括的権利であり、幸福追求権によって基礎づけられる個々の権利は裁判上の救済を受けることのできる具体的権利であると解する。もっとも、幸福追求権として認められる権利は個人の人格的生存に不可欠な利益に限られると解する。
 (2) 飲酒は個人の嗜好の一つとしても、あらゆる時と場所で認められなければならないものとはいえないから、飲酒の自由は人格的生存に不可欠とまでは言えない。
 (3) したがって、飲酒の自由は憲法13条によっては保障されていない。
3(1) もっとも、憲法13条は客観法として個人の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているから、幸福追求権に含まれない個人の一般的行為であっても、それを規制する法律は比例原則に照らして合理的なものでなければならないと解する。
 (2) 本件法律の規制目的は設問1で検討したA及びBであるところ、Bを達成するためには公共の場所以外での飲酒も規制する必要があり、公共の場所のみを制限するのは合理性がない。しかしAに限ると、周囲のものに迷惑を及ぼすことを防ぐために公共の場所の管理者の許可を要求するのは一定の合理性が認められる。
4 したがって、本件法律は憲法13条に反しておらず、合憲である。     
                                               以上
 
posted by izanagi0420new at 17:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

2017年04月06日

憲法 予備試験平成28年度

回答
1 Xからの主張としては、助成の要件として本件誓約書を提出させることの憲法19条違反が考えられる。
(1) 19条は、日本が明治憲法下で治安維持法の運用に見られるように特定の思想そのものを弾圧したことから、諸外国の憲法に内心の自由そのものを規定した条文がないのに、あえて規定されたものである。「思想」(「良心」も同義と解する。)とは、世界観・人生観・主義・主張など個人の人格的な内面的精神作用を広く含むと解する。Xが法律婚のみならず事実婚も支援しているのは、結婚に関する価値観は多様であるというXの世界観に基づくものであり、これは「思想」に該当する。
(2) 「犯してはならない」とは、保持強制の禁止・表明強制の禁止・不利益取扱いの禁止を意味すると解する。
 Xとしては、本件誓約書の内容が、法律婚のみを評価し、法律婚のみを推進する内容であることが、前述のXの「思想」に反する思想の表明強制であり、また、補助を打ち切ることが、特定の思想に対する不利益取扱いに当たると主張したい。
これに対してAは、誓約書に事実婚を否定する文言がないことから表明強制にあたらず、また、補助金を受ける地位という有利な法的地位を否定するだけであるから不利益取扱いに当たらないと主張したい。
(3) 私見は以下の通りである。
ア 表明強制の点
たしかに「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するにとどまる程度」であれば、思想表明の強制に当たらないとした判例があるが、本件誓約書は陳謝の意を表することさえなく、ただ法律婚の評価を述べているに過ぎないのであって、事実婚を評価するXの思想と両立しうるものとも思える。
 しかし、本件誓約書は「法律婚が、経済的安定をもたらし、子どもを生みやすく、育てやすい環境の形成に資する」という法律婚の評価のみならず、「自らの活動を通じ、法律婚を積極的に推進し、成婚数を上げるよう力を尽くします。」という宣誓も含んでおり、この宣誓部分は、事実婚をも尊重するというXの活動方針とは非両立である。そのため、単に形式的に陳謝の意を表明させることを合憲とした先の判例を前提としても 本件誓約書を提出させることは、Xの思想と異なる外部的行為を求めることになるため、その限りで、Xの思想に対する間接的制約となる。
イ 不利益取扱いの点
 Aの言う通り、補助金を打ち切ることそれ自体は一般人よりも有利な法的地位の否定に過ぎず、制約に当たらない。
 しかし、助成の申請に対し本件誓約書を提出させるという運用は、助成を手段として上記Xの思想と異なる外部的行為を求めるものと評価できるから、その限りで、やはりXの思想に対する間接的制約となる。
(4)ア もっとも、間接的制約であっても政策との関係で必要かつ合理的なものである場合には許されるべきところ、政策目的や制限の程度は様々だから、政策の目的及び内容並びに制約態様を総合的に較量して、当該政策に当該制約を許容しうる程度の必要性及び合理性があるかを判断すべきである。
イ これを本件についてみるに、A市は10年前に本件条例を制定して少子化対策を進め、その一つとして結婚支援事業があり、Xは本件条例の制定当初から結婚支援事業の事業者として助成を受けていた。しかし、A市では少子化が急速に進行したため、本件条例が未婚化等の克服を目指す内容に改正され、女性についても成婚数を上げることを重視する方向転換がなされた。本件誓約書は、この方針転換に伴い、要項によって義務付けられたものだから、本件誓約書は、少子化克服が主たる目的をなし、未婚化等の克服は、あくまで少子化克服の手段にすぎないから、副次的補充的目的と解される。この政策目的自体は、人口がGDPに比例するという顕著な事実にかんがみ、合理性が認められる。
 しかしながら、少子化克服を達成するための手段として未婚化克服をすることは、非嫡出子の相続分を嫡出子の半分とする民法の規定が違憲とされた現在では、合理性が認められない。また、未婚化克服を目的として、誓約書を提出させるという手段も、たとえば従来の成婚数に応じて補助金の額を変えるという、より制約的でない方法をもって必要十分と考えられるから、必要性が認められない。
 これを要するに、本件誓約書を提出させることはXの思想の自由に対する間接的制約になるに過ぎないが、政策内容にかかる間接的制約を許容しうる程度の必要性・合理性が認められない。
2 したがって、Xに本件誓約書を提出させることは、Xの思想の自由を侵害し、憲法19条に違反する。                               以上
 
posted by izanagi0420new at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

2016年05月06日

国会法

第1章 国会の召集など
・常会は1月中に召集するのが常例。
・総選挙があれば任期が始まる日から30日以内に臨時会。参議院の通常選挙の時も同じ。
第2章 会期など
・常会の会期は150日。ただし、議員の任期満限の場合は満限時に会期終了。
・臨時会及び特別階の会期は両議院一致の議決で決める。
・会期延長は両議院一致の議決。
・延長回数は常会1回、特別会及び臨時会2回。
・会期延長は衆議院優越。
・会期の起算点は招集の当日。
・休会は両議院一致の議決。
・休会は10日以内。
第4章 議員
・各議院の議員は、院外における現行犯逮捕の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
第5章 委員会及び委員
・各議院の委員会は、常任委員会及び特別委員会の二種とする。
・議員は、少なくとも一箇の常任委員となる。
・委員会の定足数は半数以上の出席。
・委員会の評決数は出席議員の過半数。
・委員会は非公開。ただし報道する者で委員長の許可を得たものはこの限りでない。
第6章 会議
・議員が議案を発議するには、衆議院は20人以上、参議院は10二院以上の賛成が必要。予算を伴う法律案を発議するには、衆議院は50人以上、参議院は20人以上。
・一の地方公共団体のみに適用される特別法は、住民投票で過半数の同意を得た時に確定して法律となる。
・会議不継続の原則。ただし各議院の議決で特に付託された案件で閉会中に審査した議案と懲罰事犯は後会に継続する。
第6章の2 憲法改正の発議
・議員が日本国憲法の改正案を発議するには、衆議院は100人以上、参議院は50人以上。修正の動議を議題とする場合も同じ。
・憲法改正原案について国会で最後の可決があった場合はその可決をもって、発議をし国民に提案したものとする。
第7章 国務大臣の出席等
・委員会は、内閣総理大臣の出席を求めることができる。
第10章 両議院関係
・衆議院は、不一致があれば両院協議会を求めることができる。参議院は、衆議院の回付案に同意しなかったときに限り両院協議会を求めることができる。ただし衆議院はそれを拒める。
・条約は参議院が先議しても良い。
・内閣総理大臣の指名について、両議院の議決が一致しないときは、参議院は、両院協議会を求めなければならない。
・両院協議会は、各議院において占拠された各々10人の委員で組織する。
・定足数は3分の2の出席。評決数は出席協議委員の3分の2以上。
第13章 辞職など
・衆議院の比例代表選出議員が議員となった日以後において、当該議員が他の政党に所属するものとなったときは退職者となる。
posted by izanagi0420new at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 予備試験平成24年度

設問1
 次の2点を主張する。
 @罷免を可とする裁判官に×をつけさせるのみであり、信任する裁判官に○をつけるのを認めない国民審査法15条は、「審査に付」すことを定めた憲法79条2項に違反する。
 A国民審査法に罷免を可とする裁判官が実際に罷免される手続規定がないことは、「罷免される」ことを定めた憲法79条3項に違反する。
設問2
1 @について
 憲法79条2項は、最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。と定めている。
 この規定は裁判官のリコール制を定めたものとするのが1952年の判例である。そうすると、解職のための制度であるから、解職する裁判官に×印をつけるだけで十分だということになり、現行の法15条は適法ということになりそうである。
 しかし、そもそも憲法79条2項の趣旨は、最高裁判所の裁判官の任命等に民主的コントロールを及ぼすことである。
 この司法に対する民主的コントロールについて詳述する。憲法は国民主権(前文1項、1条)を定めているが、憲法が定める三権(第4章国会、第5章内閣、第6章司法)のうちの司法は、具体的争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用であるから、多数決の方法を用いる政治部門の民主的コントロールには性質上なじみにくい。しかし、国民主権原理からは、司法権に対しても国民の意思が全く反映されないというのも適切でないし、国民から遊離した司法権(議員内閣制を採用する我が憲法の下では、内閣の構成員ですら国民は間接的にしか決められないため、その内閣によって任命される最高裁判所の裁判官は国民から遠すぎると言える)が行う法の適用・宣言に正当性を付与する必要性もある。そのため、司法に対する民主的コントロールの目的で79条2項が規定されたと考える。
 以上の意味での民主的コントロールという趣旨からは、憲法79条2項をリコール制を定めたものと結論するのは必然ではない。また、同条前段は任命後間もない段階での審査でありリコールするか否かの判断材料に乏しいため、リコール制と解するのは適切でもない。
 したがって、同条の趣旨は、内閣及び天皇がした最高裁判所の裁判官の任命(79条1項、6条2項)を国民が確認することと解する。
 そうすると、確認のためには不適切な裁判官に×をするだけでは足りず、適切な裁判官に○をつけさせるべきである。
 さらに、仮に同条がリコール制を定めたものであるとしても、不適切な裁判官に×をつけるだけで足りるとの帰結は必然ではない。解職に反対する裁判官に○をつけることを認めることもリコール制の帰結として考えられ、また、そうするほうが民主的コントロールという趣旨に適合的である。
 したがって、現行の15条は憲法79条2項に違反し、無効である。
2 Aについて
 憲法76条3項の「罷免される」という文言からは、実際に国民審査で解職される裁判官がいるというのが憲法の想定である。しかし、法にはその手続規定がない。
 この結論は憲法76条3項の趣旨をリコール制とみた場合はもちろん、任命の確認とみた場合も導ける。国民によって直接に不適切だと確認された裁判官には、在職する正当性がないからである。
 罷免の手続規定は他の規定とは可分だから、この規定がないことによって現行の国民審査法すべてが違憲無効となることはないが、この規定がないことは憲法79条3項に違反する。  以上


posted by izanagi0420new at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成22年度第1問

 A県の条例は洗髪設備なしの理容所の営業の自由を侵害し違憲無効である。以下に理由を述べる。
1 22条1項は公共の福祉に反しないかぎり職業選択の自由を保障しているが、職業は継続的活動であるとともに分業社会においては社会的機能分担の活動たる性質を有するから人格的価値と不可欠である。このような職業の意義に照らすと選択のみならず遂行(営業)の自由も同条で保障されていると解すべきである。
 もっとも職業は社会的相互関連性が大きいため公共の福祉による制約を精神的自由におけるよりも強く受ける(二重の基準の理論)。ここで公共の福祉とは人権相互の矛盾衝突を解消するための実質的公平の原理とする(一元的内在制約説)が通説的だが、人権を制限できるのが他の人権だけであると解するのは狭すぎて妥当でなく、それぞれの権利を制約するに足りる質を持つ限り様々な制約根拠はあり得ると解する。そして職業は千差万別だからそれに対する制約も各種各様である。そのため、ある規制が22条1項の公共の福祉によるものか否かは、規制の合理性があるか否かによるべきであり(合理性の基準)、国民の生命・自由の保護という消極目的の場合は規制の目的が公共の福祉に適合するものであり、規制の手段が目的と関連性を有し、合理性、必要性が認められるか否かによって判断すべきである(厳格な合理性の基準)。一方、経済の調和的発展のための積極目的の場合は、目的が正当で手段が著しく不合理でないかを検討すべきである(明白性の原則)。
2 理容所の営業も一般的に営業の自由の一環として21条の保護の下にある。理容師法は理容師の資格を定めているがこれは一定の技術をもつ者のみに営業させる趣旨であり公共の福祉に適合する。本件条例は、このような資格制に加えて洗髪設備の設置を義務付けるものであり、これは従来適法とされてきた洗髪設備なしの理容所の営業の自由を直接的に制約する効果がある。そのため、まず本件条例の目的が公共の福祉意に適合しているかどうかの検討が必要になる。
 本件条例の目的は@理容師が洗髪を必要と認めた場合や利用者が洗髪を要望した場合等に適切な施術ができるようにすることで利用業務が適正に行われるようにすること及びA理容所における一層の衛生確保により公衆衛生の向上を図ることである。まず@の目的について、現に洗髪設備のない理容所が存在する立法事実の下では、洗髪設備のない理容所の理容師が洗髪を必要と認めることはありえず、また、洗髪設備のない理容所を選んでサービスを受けに来た利用者は洗髪を希望するはずがない。これらは結局洗髪設備の設置や洗髪設備ありの理容所を選ぶ利用者の意思を後見的に定めるもので、洗髪が人格の破壊をもたらすものでない以上、公共の福祉によるものとは言えない。
 一方、Aについては、公衆衛生の向上という究極目的及び衛生確保という二次的目的はいずれも国民の生命・健康を警察目的で保護するものであり公共の福祉に適合する。
3 そうすると次にAの目的について手段審査することになるが、本件条例独自の目的は衛生確保であるから、これについて検討するのが適切である。衛生確保という目的と洗髪設備の設置を義務付けという手段は抽象的には関連性を有するが、洗髪設備のない理容所の衛生状態が洗髪設備のないことによって特に悪いことを示す立法事実はない。抽象的には洗髪設備自体が雑菌の温床になるなどかえって衛生状態が悪化することも考えられる。そのため具体的な関連性に欠けるというべきである。関連性の乏しい手段に合理性は乏しく、それらを埋め合わせるだけの必要性の大きさも見いだせない。
 なお、このように洗髪設備の設置義務付けが関連性・合理性・必要性に乏しい手段であること、及びA県では洗髪設備なしの理容所が多く開設され、その利用者が増加した結果、従来から存在していた利用者が激減しているという立法事実を合わせて考えると、衛生確保というのは表向きの目的に過ぎず、本件条例の本当の動機は従来の理容所の保護にあると推測される。法の目的を含めて立法府による再検討が必要である。
4 したがって、表記の結論となる。
posted by izanagi0420new at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成21年度第1問

問題文
 自動車の多重衝突により多数の死傷者が出た交通事故の発生前後の状況を、たまたまその付近でドラマを収録していたテレビ局のカメラマンがデジタルビデオカメラで撮影しており、テレビ局がこれを編集の上ニュース番組で放映した後、撮影時の生データが記録されたディスクを保管していたところ、同事故を自動車運転過失致死傷事件として捜査中の司法警察員が、令状に基づき同ディスクを差し押さえた。
 この事例に含まれる憲法上の問題点について、その交通事故を取材していたテレビ局が、一般人が撮影したデジタルデータの記録されたディスクを入手し、それを編集の上ニュース番組で放映したところ、同事故に関する自動車運転過失致死傷被告事件の継続する裁判所が、テレビ局に対し、同ディスクの提出命令を発した場合と比較しつつ、論ぜよ。

回答
1 本件の差押えがテレビ局の取材の自由を侵害し違憲ではないかを検討する。
2 報道機関の事実の報道は意見の表明ではないが、編集という知的過程を経ており、また、国民の知る権利に資するから、報道機関の事実の報道の自由は21条1項で保障される。報道のための取材の自由も21条1項の精神に照らし尊重に値する。
 しかし、報道機関の事実の報道の自由は主に国民の知る権利という公共の利益のために保証される憲法上の権利だから、それに優越する公共の利益のために制約を受ける。公共の利益の内容は多岐にわたるが、本件との関連では公正な裁判の実現(憲法37条1項)や、事件・事故の真相解明(刑訴法1条)がその制約根拠となる。
 もっとも、それらの制約根拠があれば直ちに制約が許されるわけではなく、具体的事例で当該制約により得られる利益と失われる利益を比較衡量し、前者が上回る場合にのみ制約が許される。
 では、本件で得られる利益は失われる利益を上回るか。得られる利益としては事件の重大性、失われる利益としては取材の自由や国民の知る権利に及ぼす影響を考慮すべきである。本件は多数の死傷者が出た交通事故という重大事件であり、真相解明への社会の期待が大きい。一方、テレビ局はこのディスクを取材目的で取材して獲得したものではなく、ドラマの撮影中に偶然得たものだから、これを差し押さえても取材の自由に及ぼす影響は小さい。テレビ局はこれを既にニュース番組で放映しており、これを差し押さえてもテレビ局に与える影響や国民の知る権利に及ぼす影響が少ない。これらを考慮すると、確かに本件の取材の自由の制約根拠は事件の真相解明という刑訴法上の利益に過ぎないものであるとしても、得られる利益が失われる利益を上回るといえる。
3 設問後段との違いについて
設問後段との違いは@テレビ局が取材して獲得したディスクであること、A編集前の動画は一般人が撮影したものであること、B裁判所の提出命令であることである。
(1)@について原告は、偶然に獲得された映像よりも取材目的で獲得した映像のほうが要保護性が高いと主張することが考えられる。
 しかし、前述のように取材の自由は主に国民の知る権利に奉仕するがゆえに認められる権利であるところ、偶然に得られた映像か狙って獲得したものかは視聴者国民にとっての重要性は異ならない。そのため、@が権利の要保護性を強めることはないと考える。
(2)Aについて、一般人は捜査機関を信頼して情報提供したと考えられ、その情報を公権力が当然に取得してよいということになると、今後捜査機関に対し情報提供する一般人がいなくなり、その意味で取材の自由が制約されうるから、取材源の秘匿も21条1項の精神に照らして尊重に値する。ただ、取材源の秘匿は取材の自由に奉仕するために認められる権限だから、それも取材の自由と同様により大きな公共の利益のために制約を受けることは、設問前段と異ならない。
(3)Bについて原告は、裁判所の提出命令は公正な裁判という憲法上の利益(37条1項)に資する点で捜査機関の令状よりも公共の利益が大きいと言える。もっとも、捜査は公訴の提起のために行われる準司法作用という側面があり、また、捜査機関の命令であっても裁判所が発する令状(憲法35条1項)に基づくものだから、裁判所の提出命令であることが提出命令によって失われる利益の増加に与える影響は限定的と考える。
(4)以上により、設問後段の場合、失われる利益の大きさはほとんど変化がなく、得られる利益は公正な裁判の実現であってやや大きい。したがって、設問後段の提出命令であっても取材の自由を制約せず合憲である。
4 したがって、設問前段の差押えはなおさら取材の自由を制約せず、合憲である。 以上

posted by izanagi0420new at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成20年度第1問

問題文
 A自治会は「地縁による団体」(地方自治法第260条の2)の認可を受けて地域住民への利便を提供している団体であるが、長年、地域環境の向上と緑化の促進を目的とする団体から寄付の要請を受けて班長らが集金に当たっていたものの、集金に応じる会員は必ずしも多くなかった。
 そこで、A自治会は、班長らの負担を解消するため、定期総会において、自治会費を年5000円から6000円に増額し、その増額分を前記寄付に充てる決議を行った。
 この決議に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。

回答
第1 原告の主張
1 この決議(以下「本件決議」という。)がA自治会員の地域環境の向上と緑化の推進を目的とする団体(以下「本件団体」という。)への寄付(以下「本件寄付」という。)をしない自由を侵害するという立論をする。
 本件決議は、従来寄付によって賄われてきた本件団体への資金提供を、A自治会の名で行うことを決め、その財源の負担を会員に強制するものである。寄付という行為はその寄付の相手方の活動に賛意を示す象徴的行為という性質を有するから、それをする・しないの意思決定は世界観、人生観、主義、主張などの個人の内面的精神作用と言えるため「思想及び良心」(19条、「思想」と「良心」は同義と解する。)として同条の保護を受けると解する。本件寄付についても、地域環境の向上をどのように行うか、緑化を促進すべきか、どのように促進するか等に対する意見は様々あり得るから、本件寄付をしない自由は19条で保障される。
2 (1)もっとも、団体の構成員は団体が社会の構成要素として活動することに付随して一般的自由が制約されうる。ある団体の活動は厳密に言えばすべて構成員の何らかの自由を制約するのであり、それを逐一問題にしていたら団体の活動自体が成り立たなくなるからである。
 では、いかなる団体の活動が許されるか。これについては原則として団体の「目的の範囲」を基準とすべきである。本件では、「地縁による団体」(地方自治法260条の2)であるA自治会の「目的」(260条の2第3項1号)が260条の2第2項1号の目的の範囲に含まれることを前提として、本件決議の内容が「目的の範囲」(260条の2第1項)に含まれるかどうかが検討される。目的の範囲内である場合には、公序良俗(民法90条)に反する等特段の事情がない限り、会員の一般的自由の制約は許されると解すべきである。
(2)「目的の範囲」は社会の構成要素である団体の活動の幅を狭めないために広く解すべきである。A自治会の目的は明らかでないが、地域住民への利便の提供と解される。本件団体は長年地域環境の向上と緑化を目的としてきたから、本件団体への寄付は、抽象的には地域住民への利便の提供に資すると考えられ、「目的の範囲」に含まれる。
(3)しかし、本件決議は自治会費を年5000円から6000円に2割引き上げるものであり、会員の負担が大きいため、公序良俗に反する。
3 したがって、本件決議は本件寄付をしない自由を侵害し、違憲無効である。
第2 反論と私見
1 「地縁による団体」は脱会の自由があり、嫌なら脱会すればよいから公序良俗に反しないという反論があり得る。
 しかし、私見は以下の理由で公序良俗に反すると解する。本件団体への資金提供はA自治会の「目的の範囲」に含まれるとしても、その本来的活動ではなく付随的活動にとどまるというべきである。というのは、A団体はたしかに地域住民への利便の向上であり、抽象的には本件団体と目的を共通にするが、別団体である以上、具体的な目的達成手段は独自のものであることが本来予定され、その具体的な目的達成手段こそが団体の本来的活動と言えるからである。したがって、付随的活動に過ぎないものに対して従来の会費の2割に相当する費用を徴収することを決定する本件決議は、本来的活動に賛同して会員となっている者であって本件決議に反対する者に対して過重な負担を強いるものである。
2 本件決議はA自治体の定期総会においてなされたものであるから、本件決議に含まれる負担を会員は承諾したのであり、公序良俗に反しないという反論があり得る。
 しかし、一般的に決議があったから公序良俗違反にならないわけではなく、年会費の2割に相当する額を一団体への寄付に使うという決議内容が相当性を欠くため公序良俗に反する。加えて、本件決議の過程は明らかではないが、本件決議が他の案件と合わせて包括的になされたものである場合や、十分な説明がなかった場合には、そのような決議を経たからと言って正当化されるものではない。付言すると、本件団体への資金提供が個人の寄付にゆだねられていた際には寄付に応じる者が多くなかったという事実からして、決議手続に何らかの問題があった可能性が高いと考えられる。  以上
posted by izanagi0420new at 20:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成19年度第1問

 A市の条例は、日本国籍を有さない者(以下「外国人」という)の公務就任権を侵害するものであり、違憲無効ではないか。
 公務就任権の法的性格について、国民は主権者(前文1項、1条)として参政権(15条)を有しており、参政権の一環として認められるという説がある。また、幸福追求権(13条)の一環とする見解もある。しかし、公務と言っても継続的に行われ社会的機能分担の性質を有するので憲法上の職業に該当すると解せるから、22条1項によって保障されると解するのが正当と考える。
 もっとも、公務は通常の職業と異なり、その就任権は参政権的性質を有するから、職業選択の自由が一般的に服する公共の福祉(22条1項)による制約以前に、公務の特殊性に基づく保障範囲の制限があると解する。そして、公務の特殊性の内容として、国の政治的意思決定権が国民に存するという国民主権原理(前文1項、1条)より、国の政治的意思決定に関わる公務には国民(すなわち日本国籍を有する者。10条、国籍法参照)が就任することが憲法上要請されていると言える。したがって、外国人には国の政治的意思決定に関わる公務への就任権は保障されていないと解される。
 そうすると次に問題となるのは、市職員が国の政治的意思決定に関わる公務を担うかである。市職員は地方公共団体の行政の執行(94条)を担う者である。その職務内容は、多岐にわたるが、「地方自治の本旨」(92条)として地方公共団体は独自の事務を行うという団体自治権限が憲法上保障されていることから、自治事務(地方自治法2条2項)が原則である。もっとも、地方公共団体はそもそもその組織及び運営に関する事項が法律事項(92条)であるから、法定受託事務として国の事務も担う。また、事実上国の職員との人事交流もある。したがって、多岐にわたる公務をあえて分類すれば、市職員の多岐にわたる職務内容のなかには、国の意思決定に関わる公務と、そうでない公務の二種類がある。ただし、それらは市職員の業務の中で混然としており、確固たる線引きが困難なものである。
 そうすると、憲法上の規範たる国民主権からは、日本国籍を有さない市職員に国の政治的意思決定に関わる公務をさせることの禁止にとどまるから、日本国籍を有さない者を市職員として採用しても、国の政治的意思決定に関わる業務をさせなければ許されるし、そうすることが職業選択の自由の観点からも望ましいと言える。しかし、前述のように国の意思決定に関わる公務とそうでない公務は混然一体としているから、採用の段階で日本国籍を有することを条件とすることも、いちいちそのものに担当させる業務が政治的意思決定の性質を有するかどうかを確認する判断を省略して市行政の円滑な運用をするために合理的な措置であるから、それが条例の根拠に基づくものである限り、許されると解する。
 したがって、A市の条例は合憲である。
 これに対して、市議会は憲法上の機関であり(93条)、市議会議員の選挙権は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項」であるから、法律事項である(92条)。そして、市議会議員の仕事は条例を制定することであるが、条例には自治条例と委任条例があり(地方自治法14条1項、同2条2項)、委任条例は国の意思決定の結果制定された法律に基づくものであるから、当然に国の政治的意思決定に関わる内容を含む。市議会議員の選挙権は、このように政治的意思決定に関わる条例を必然的に制定する代表者を選ぶ行為であり、市職員のように、国の意思決定に関わらない業務のみを担うという柔軟な態様ができない性質のものである。そのため、国民主権原理より、その権利を行使するのは国民すなわち日本国籍を有する者に限られる。したがって、市議会議員の選挙権に国籍要件を貸している法律は合憲である。
 このように、A市の条例と市議会議員の選挙権に国籍要件を定めた法律の違いは、国民主権原理に抵触する業務とそうでない業務を分割できるか否かにある。前者は分割可能だが、業務の円滑という要請から採用段階で国籍要件を貸すことも条例に根拠を有する限り許され、後者は分割不可能であるから当然に合憲だと私は考える。  以上
posted by izanagi0420new at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法
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