2016年05月06日
憲法 予備試験平成24年度
設問1
次の2点を主張する。
@罷免を可とする裁判官に×をつけさせるのみであり、信任する裁判官に○をつけるのを認めない国民審査法15条は、「審査に付」すことを定めた憲法79条2項に違反する。
A国民審査法に罷免を可とする裁判官が実際に罷免される手続規定がないことは、「罷免される」ことを定めた憲法79条3項に違反する。
設問2
1 @について
憲法79条2項は、最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。と定めている。
この規定は裁判官のリコール制を定めたものとするのが1952年の判例である。そうすると、解職のための制度であるから、解職する裁判官に×印をつけるだけで十分だということになり、現行の法15条は適法ということになりそうである。
しかし、そもそも憲法79条2項の趣旨は、最高裁判所の裁判官の任命等に民主的コントロールを及ぼすことである。
この司法に対する民主的コントロールについて詳述する。憲法は国民主権(前文1項、1条)を定めているが、憲法が定める三権(第4章国会、第5章内閣、第6章司法)のうちの司法は、具体的争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用であるから、多数決の方法を用いる政治部門の民主的コントロールには性質上なじみにくい。しかし、国民主権原理からは、司法権に対しても国民の意思が全く反映されないというのも適切でないし、国民から遊離した司法権(議員内閣制を採用する我が憲法の下では、内閣の構成員ですら国民は間接的にしか決められないため、その内閣によって任命される最高裁判所の裁判官は国民から遠すぎると言える)が行う法の適用・宣言に正当性を付与する必要性もある。そのため、司法に対する民主的コントロールの目的で79条2項が規定されたと考える。
以上の意味での民主的コントロールという趣旨からは、憲法79条2項をリコール制を定めたものと結論するのは必然ではない。また、同条前段は任命後間もない段階での審査でありリコールするか否かの判断材料に乏しいため、リコール制と解するのは適切でもない。
したがって、同条の趣旨は、内閣及び天皇がした最高裁判所の裁判官の任命(79条1項、6条2項)を国民が確認することと解する。
そうすると、確認のためには不適切な裁判官に×をするだけでは足りず、適切な裁判官に○をつけさせるべきである。
さらに、仮に同条がリコール制を定めたものであるとしても、不適切な裁判官に×をつけるだけで足りるとの帰結は必然ではない。解職に反対する裁判官に○をつけることを認めることもリコール制の帰結として考えられ、また、そうするほうが民主的コントロールという趣旨に適合的である。
したがって、現行の15条は憲法79条2項に違反し、無効である。
2 Aについて
憲法76条3項の「罷免される」という文言からは、実際に国民審査で解職される裁判官がいるというのが憲法の想定である。しかし、法にはその手続規定がない。
この結論は憲法76条3項の趣旨をリコール制とみた場合はもちろん、任命の確認とみた場合も導ける。国民によって直接に不適切だと確認された裁判官には、在職する正当性がないからである。
罷免の手続規定は他の規定とは可分だから、この規定がないことによって現行の国民審査法すべてが違憲無効となることはないが、この規定がないことは憲法79条3項に違反する。 以上
次の2点を主張する。
@罷免を可とする裁判官に×をつけさせるのみであり、信任する裁判官に○をつけるのを認めない国民審査法15条は、「審査に付」すことを定めた憲法79条2項に違反する。
A国民審査法に罷免を可とする裁判官が実際に罷免される手続規定がないことは、「罷免される」ことを定めた憲法79条3項に違反する。
設問2
1 @について
憲法79条2項は、最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。と定めている。
この規定は裁判官のリコール制を定めたものとするのが1952年の判例である。そうすると、解職のための制度であるから、解職する裁判官に×印をつけるだけで十分だということになり、現行の法15条は適法ということになりそうである。
しかし、そもそも憲法79条2項の趣旨は、最高裁判所の裁判官の任命等に民主的コントロールを及ぼすことである。
この司法に対する民主的コントロールについて詳述する。憲法は国民主権(前文1項、1条)を定めているが、憲法が定める三権(第4章国会、第5章内閣、第6章司法)のうちの司法は、具体的争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用であるから、多数決の方法を用いる政治部門の民主的コントロールには性質上なじみにくい。しかし、国民主権原理からは、司法権に対しても国民の意思が全く反映されないというのも適切でないし、国民から遊離した司法権(議員内閣制を採用する我が憲法の下では、内閣の構成員ですら国民は間接的にしか決められないため、その内閣によって任命される最高裁判所の裁判官は国民から遠すぎると言える)が行う法の適用・宣言に正当性を付与する必要性もある。そのため、司法に対する民主的コントロールの目的で79条2項が規定されたと考える。
以上の意味での民主的コントロールという趣旨からは、憲法79条2項をリコール制を定めたものと結論するのは必然ではない。また、同条前段は任命後間もない段階での審査でありリコールするか否かの判断材料に乏しいため、リコール制と解するのは適切でもない。
したがって、同条の趣旨は、内閣及び天皇がした最高裁判所の裁判官の任命(79条1項、6条2項)を国民が確認することと解する。
そうすると、確認のためには不適切な裁判官に×をするだけでは足りず、適切な裁判官に○をつけさせるべきである。
さらに、仮に同条がリコール制を定めたものであるとしても、不適切な裁判官に×をつけるだけで足りるとの帰結は必然ではない。解職に反対する裁判官に○をつけることを認めることもリコール制の帰結として考えられ、また、そうするほうが民主的コントロールという趣旨に適合的である。
したがって、現行の15条は憲法79条2項に違反し、無効である。
2 Aについて
憲法76条3項の「罷免される」という文言からは、実際に国民審査で解職される裁判官がいるというのが憲法の想定である。しかし、法にはその手続規定がない。
この結論は憲法76条3項の趣旨をリコール制とみた場合はもちろん、任命の確認とみた場合も導ける。国民によって直接に不適切だと確認された裁判官には、在職する正当性がないからである。
罷免の手続規定は他の規定とは可分だから、この規定がないことによって現行の国民審査法すべてが違憲無効となることはないが、この規定がないことは憲法79条3項に違反する。 以上
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