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2017年04月27日

民法 平成18年度第2問

設問1
 AはCに対し、自らが94条2項の「第三者」に当たることを主張することが考えられる。この主張は、AB間の売買の抗弁、Cの虚偽表示の再抗弁を前提とした予備的抗弁と位置付けられる。この主張が認められるか。
 94条2項は本来意思表示の規定であるが、虚偽の外観につき真の権利者に帰責性がある場合には、真の権利者はその外観を信頼した第三者に対して外観通りの責任を負うこと(表見法理)を定めた規定と解釈できる。本件でも、Cは本件建物のB所有権登記という虚偽の外観を1年間も放置したという帰責性があるから、その外観を信頼したAに対して外観通りの責任を負い、その結果CはAに対し、自分が本件建物の所有者であることを主張できないとAは主張したい。この場合、「善意」とは文字通り善意で足り、「第三者」とは虚偽の外観を前提として新たな取引をした者を指す。
 しかし、94条はもともと通謀虚偽表示という真の権利者が外観作出に積極的に関与した場合の規定だから、本件のような故意放置の場合も通謀と同視できるだけの帰責性が必要と解するところ、登記というのは通常人は1年間くらい見ないことはありうること、BはCの夫であり特に登記簿を確認しなければならないほどの不信事由がないことから、本件のCにはでは通謀と同視できるだけの帰責性は認められない。
 したがって、Aの主張は認められない。
設問2(1)
 他人物賃貸借は債権的には有効だが(559条、560条)、所有者には対抗できず、所有者が賃貸借目的物について所有権に基づく返還請求をした時点で、賃貸人の継続的な貸す債務は履行不能となり終了する。本件では、CがAB間の賃貸借契約を有効と認めてほしいというAの申入れを拒絶した時点で、AB間の賃貸借契約は終了した。そのため、AはBに対し、本件建物の返還義務を負うはずである(616条、597条)。
 しかし、Bは他人物賃貸人だから、本人Cの意思に沿って本件建物の明渡請求をするのは信義則(禁反言、1条2項)に反するように思える。そこで、他人物賃貸人が本人を相続した場合に、本人の地位で意思表示ができるかが問題となる。
 この問題は無権代理人が本人を相続した場合と利益状況が異ならないから、同様に考えるべきである。判例は、本人が追認拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合について、追認拒絶によって本人への効果不帰属が確定した以上は、無権代理人が本人を相続しても無権代理人に効果帰属しないとしている。そこで、本人の追認拒絶後に他人物賃貸人が本人を相続しても、他人物賃貸借は有効にならないと解する。
 本件でも、Cは追認を拒絶しているから、BがCを相続しても他人物賃貸借は物権的に有効にならない。
 したがって、AはBに対し、BがCを単独相続したことを理由に本件建物の明渡しを拒絶することができない。
設問2(2)
1 敷金返還との同時履行
 敷金とは、建物賃借契約から生じる一切の債務を担保するために支払われる金銭である。建物賃借契約に従たる契約として敷金設定契約という要物契約が締結される。定義からわかるように、敷金は一切の賃借人の債務を担保するものであり、修補義務等は建物明渡後に初めて発覚する場合も多い。そのため、建物明渡が敷金返還よりも先履行である。したがって、敷金返還を受けるまで明渡を拒絶するという主張は認められない。
2 債務不履行に基づく損害賠償請求
 BはCの地位に基づいてAに対し本件建物の明渡しを請求しているが、本人BはAに対し、賃貸借契約における貸す債務(601条)の不履行及び他人物賃貸借で権利を移転する義務(560条、559条)の不履行があるから、AはBに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求ができる(415条)。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)を主張して建物明渡を拒絶することができる。
3 不法行為に基づく損害賠償請求
 他人物賃貸借をしながら権利を移転できなかったことを「過失」(709条)ととらえ、不法行為に基づく損害賠償請求もできる。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)も主張できる。                   以上
posted by izanagi0420new at 19:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法

2017年04月26日

民法 平成22年度第2問

設問1(1)
1 DはCに対し、本件パイプの所有権に基づく本件パイプの返還請求はできない。なぜなら、本件パイプは建物に付合し、本件パイプの所有権はCに移ったからである(242条本文)。
2 DはCに対し、本件パイプの譲渡担保権に基づく物上代位により300万円を支払わせることができるか。
譲渡担保権につき明文はないが、動産の占有を設定者にとどめたままその交換価値を把握する担保権として判例上認められている(非典型契約)。また、不動産の交換価値を把握する権利である抵当権に物上代位が認められているから(372条、304条)、譲渡担保権に基づく物上代位も認められると解する。要件は、@譲渡担保権設定契約、A売却等による交換価値の現実化(304条参照)、B弁済期の到来と解する。Bについて、仮に譲渡担保権の清算方法を帰属清算と解すれば弁済期到来後にも清算金が支払われるまでは受戻権を行使できるようにも思えるが、判例は弁済期到来後に譲渡されたらもはや受戻権を行使できないとしているから、要件と解するのが正しいと考える。
 本件につき見るに、@DB間で本件パイプについて譲渡担保権設定契約が締結されている。Aについて、請負は「売却」(304条)等には当たらないから請負代金債権には原則として物上代位できないが、例外的に売却と同視できる特段の事情がある場合には物上代位できると解するところ、本件パイプの価格はBがCから受け取った金額の8割以上を占めるから、特段の事情があると言え、物上代位できると考える。Bについては、Bは請負の仕事を完成しているから、弁済期は到来している(633条但書、624条)。
 したがって、DはCに対し、300万円を支払わせることができる。
設問1(2)
 Cに対して請負代金を支払わせることができるのはDかEか。
 Dが請求できる根拠は物上代位だから、Dは「払渡し」(304条但書)の前に差押えをしなければならない。Dは差押えをしていないから、債権譲渡が「払渡し」に当たるならばEが優先することになる。では、債権譲渡が「払渡し」に当たるか。
そもそも法が「払渡し」の前に差押えを要求した趣旨は、債権の特定性を維持することでも担保権者の優先弁済権を確保することでもなく、第三債務者を二重弁済の危険から保護することである。そして、譲渡担保の場合は抵当権と異なり、ある金銭債権が物上代位の対象となることが登記によって公示されていないから、差押えは第三債務者に対する公示機能を果たす。したがって、譲渡担保権の対象物権の価値が金銭債権に転化した場合、その金銭債権の譲渡は「払渡し」に当たると解する。
本件では、Dは「払渡し」たる債権譲渡の前に差押えをしていない。
したがって、Cに対して請負代金を支払わせることができるのはEである。
設問2
1 CF間
(1) FはCに対し、所有権に基づく返還請求として本件パイプの引渡しを求めることはできない。前述のように、Cは付合により本件パイプの所有権を取得しているからである。
(2)占有回収の訴え(200条1項)をすることもできない。Cは特定承継人(200条2項本文)に当たるからである。FはCの悪意を証明することによって占有回収の訴えを提起できるが(200条2項但書)、Cは、Bが専門の建築業者であることを評価障害事実として悪意を否定できるから、結論は異ならない。
(3)FはCに対し、本件パイプから得ている利益を不当利得(703条)として返還請求することはできない。CB間の請負契約という「法律上の原因」(703条)があるからである。
2 BF間
(1) FはBに対し、本件パイプの所有権に基づく返還請求をすることはできない。Bは本件パイプを占有していないからである。
(2) Fは占有回収の訴え(200条1項)をすることができるか。
BはAからの特定承継人(200条2項本文)に当たるが、Aは400万円の本件鋼材を4分の3の300万円という安値で慌てて売却していることから、Bの悪意(200条2項但書)を証明したい。しかし、占有回収の訴えは所持の外観に反し取引安全を害する可能性があるから「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」の要件は厳格に解すべきである。そこで、「承継人が侵奪の事実を知っていたとき」とは承継人が何らかの形で侵奪があったことの認識を有していたことが必要であり、占有の侵奪の可能性についての認識にとどまる限りはこれに当たらないと解する。
本件につき見ると、4分の3程度の値引きは通常の売買でも行われうるから、上記のような事情からはBに侵奪の可能性の認識があったことを認定できるが、侵奪があったことの認識までは認定できない。
したがって、Fは占有回収の訴えを提起することはできない。
(3)FはBがAから本件鋼材を買ったことを不法行為(709条)として損害賠償請求することはできない。Bが前述のように侵奪の可能性の認識をもってAと取引したことは、709条の過失とまでは言い切れないからである。
(4)FはBに対し、不当利得に基づく返還請求(703条)もできない。Bは本件パイプの加工と取付けにより300万円の利益を得ているが、AB間の売買契約及びBC間の請負契約という「法律上の原因」(703条)があるからである。
3 以上のように解しても、FはAに対して不法行為に基づく損害賠償請求ができるから酷ではない。  以上

・最後の設問では法律構成が複数考えられることが多い。
posted by izanagi0420new at 18:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法

2017年04月19日

刑法 平成19年度第2問

第1 甲の罪責
1 Xに対して噓を言って事故現場に急行させた行為に偽計業務妨害罪(233条)の成否を検討する。
(1) Xをその場から移動させるために嘘を言った行為は、Xを欺罔する行為だから「偽
計」に当たる。
(2)「業務」(233条)とは社会生活上の地位に基づき継続して行うものをいうところ、警察官のような公務もこれに当たるかが問題となる。なぜなら、公務執行妨害罪(95条1項)は、公務を暴行・脅迫に対してのみ保護しているとも考えられるからである。この問題については、強制力を行使する権力的公務は偽計や威力に対する自力排除力があるから「業務」として保護する必要はない。したがって、強制力を行使する権力的公務以外が「業務」に当たると解する。
 本件の警察官は強制力を行使する権力的公務に当たるから、「業務」には含まれない。
(3)したがって、偽計業務妨害罪は成立しない。
2 Xの制帽と業務日誌を持ち出した行為に窃盗罪(235条)の成否を検討する。
(1) 制帽も業務日誌もXが所有権を有する有体物だから「他人の財物」に当たる。
(2) 「窃取」とは意思に反する占有の移転を言うところ、Xはその場にいないが、制帽
も業務日誌も交番というXの支配領域内にあるから、Xに占有が認められる。そしてそれらを甲の自宅に持ち帰る行為は占有の移転に当たるから、「窃取」の要件を満たす。
(3) 窃盗罪が成立するためには、以上の故意(犯罪事実の認識・予見、38条1項本文
のほかに不法領得の意思が必要と解する。その内容は、使用窃盗との区別のための所有者として振舞う意思と、毀棄罪との区別のための経済的利用処分意思と解する。
 甲は、翌日まで自宅に隠した後で返還するつもりがあるから、経済的利用処分意思がない。
(4) したがって、不法領得の意思を欠き、窃盗罪は成立しない。
(5) もっとも、制帽を隠す行為は制帽の効用を害する行為だから「損壊」(261条)にあた
り、器物損壊罪が成立する。また、業務日誌は交番という「公務所」(7条)が使用する文書だから「公務所の用に供する文書」(258条)に当たり、隠す行為は効用を害する行為だから「毀棄」(258条)にあたるため、同行為に公用文書毀棄罪が成立する。
3 制帽をXに返すのをやめ、後に売るために保管した行為は、不法領得の意思が発現しているから占有離脱物横領罪(254条)が成立する。
4 罪数
 甲には@制帽の器物損壊罪、A制帽の占有離脱物横領罪、B業務日誌の公用文書毀棄罪が成立し、@Aは併合罪(45条)、@とBは一つの行為として行われたから観念的競合(54条1項前段)である。
第2 乙の罪責
1 甲に対し、制帽を売ることを唆した行為に占有離脱物横領罪の教唆犯が成立する(254条、61条1項)。
2 本件業務日誌を交番まで運んだ行為に盗品運搬罪(256条2項)の成否を検討する。
(1) 本件業務日誌を領得した行為には公文書毀棄罪が成立しているから、本件業務日誌
は「財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」(256条1項)に当たる。
(2) 被害者のもとに運ぶ行為も「運搬」に当たるのかについて、盗品運搬罪の保護法益
は被害者が財物に対して有する追求権であり、犯人の利益のために被害者のもとへ運ぶ行為は被害者の正常な回復を困難にして追求権を侵害しているため、「運搬」に当たると解する。
 本件では、乙は犯人甲に頼まれて運んでいるから、犯人の利益のために被害者のもとへ運んでいると言える。
(3) したがって、「運搬」に当たり、盗品運搬罪が成立する。
3 Xに対し業務日誌と引き換えに10万円を要求して領得できなかった行為に恐喝未遂罪(250条、249条1項)が成立する。
4 罪数
 乙には@占有離脱物横領罪の教唆犯、A盗品運搬罪、B恐喝未遂罪が成立し、それぞれ併合罪である。    以上
posted by izanagi0420new at 20:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2017年04月16日

刑事訴訟法 予備試験平成28年度

設問1
再逮捕再勾留は原則として許されないと解する。なぜなら、法が逮捕勾留について厳格な時間制限(202条以下)を設けた趣旨を没却し、身体拘束の不当な蒸返しになるからである(人身の自由、憲法33、34条)。
もっとも、逮捕して釈放後に逮捕の必要が生じる場合もあり、199条3項は再逮捕がありうることを前提にしているから、いかなる要件で再逮捕を認めるかが問題になる。上記再逮捕再勾留の原則禁止の趣旨から、新証拠発見等を理由とする再逮捕の高度の必要性と、身体拘束の不当な蒸返しとならないことに着目した相当性が要件となると解する。再勾留については、確かに、20日経過前に新証拠が見つかった場合には勾留延長ができないにもかかわらず20日経過後に再勾留するのは不当とも思えるが、逮捕は勾留の判断を慎重にするために行われるプレ勾留としての性格を有するから、再逮捕と同一の要件で判断すべきと解する。
 本件被疑事実は窃盗及び放火であるところ、甲が窃盗犯人であることの証拠がないまま20日間を経過した。しかし、甲の釈放後、甲が本件の盗品を売却していた新事実が発見された。その売却は事件発生から4日後に行われているが、このように短い期間に盗品が犯人以外の者の手に渡るのは考えにくいから、この新事実は、甲による「窃取」(刑法235条)を推認させる有力な間接事実と言える。このような有力な新証拠の発見によって、再逮捕の高度の必要性があると言える。相当性については、上記新証拠をもとにした取調べには10日も要さないと考えられるから、5日間の勾留状を発布することによって、相当性の要件を満たすと考える。
 したがって、勾留期間を5日以内とする限り、@の再逮捕再勾留は適法である。
設問2
 犯人性の証明のために類似行為を立証することは原則として許されないと解する。なぜなら、類似行為という推認力の弱い事実を立証することは事実認定を誤らせるおそれがあり、また、争点拡散の危険があるため、法律的関連性を欠くからである。もっとも、犯行態様に顕著な特徴があり、かつ、それが起訴にかかる犯罪事実と相当程度類似することから、それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものである場合には、事実認定を誤らせるおそれも争点拡散のおそれもいずれも存在しないと言えるから、例外的に類似行為を被告人と犯人の同一性の証明に用いることができると解する。
 本件では、確かに美術品の彫刻を盗みウイスキー瓶にガソリンを入れた手製の火炎瓶を使用して放火したという犯行態様は相当程度類似するが、窃盗ののちに証拠隠滅のため放火に及ぶということ及び放火に手製の火炎瓶を使うということはそれほど特殊なこととは言い難い。また、かかる類似行為が行われたのは7年前という昔に1回だけであって、甲が特にその犯行態様を固着させていたと評価することもできない。このような前科を本件の立証に用いることは、結局、前科の事実から被告人に対して放火に及びやすいという人格的評価を与え、その人格的評価をもとに被告人が本件放火を行ったという合理的根拠に乏しい推論をすることになる。
 したがって、Aの判決書謄本を本件の証拠として用いることは許されない。  以上

民事訴訟法 予備試験平成28年度

設問1(1)
 弁論主義とは裁判における事実の主張と証拠の提出を当事者の権能かつ責任とする建前であり、私的自治の手続的反映がその根拠である。弁論主義の内容の一つに、裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の基礎とすることができないという原則がある。弁論主義の対象は「事実」であるが、その範囲は主要事実(要件事実に該当する事実)と解されている。      
 本件で証拠調べの結果明らかになった事実によると、甲土地の所有権はX→Y1→X→Y2と推移しており、最後のX→Y2の部分はY1らに主張責任のある抗弁事実に当たる(所有権喪失の抗弁)。具体的には、@XY2間で甲土地譲渡担保契約が締結された事実、およびAXが受戻権を喪失した事実が主要事実である。これはXからもY1らからも主張がない。したがって、裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎とした弁論主義違反がある。
設問1(2)
 本件を弁論主義違反ではないという立場からは、以下のように立論できる。Y1らの主張は甲土地の所有権がX→Y1→Y2と推移するものだが、Y1→Y2の売買の際に、XY2間において、甲土地の将来売買の予約(民法556条1項)がなされたとする。このように構成するか、裁判所が心証を抱いた事実のように譲渡担保契約の受戻権喪失と構成するかは、事実ではなく法律構成の違いに過ぎない。なぜなら、どちらもXがY2に対して1000万円支払うことを条件としており、その支払いがなされなかったために最終的にY2に甲土地所有権が帰着した事実は共通しているからである。
 しかし、このような構成には、Xに対して不意打ちとなるという問題点がある。具体的には、Xの主張による所有権の推移はX→Y1→Xであり、Y1らの主張はX→Y1→Y2であるから、本件訴訟における争点はY1から所有権を譲り受けたのはXなのかY2なのかという点だと考えられ、Xもその点に主張を尽くせば勝訴するのに必要十分と判断していると考えられる。にもかかわらず、X→Y1→XというXの主張通りの所有権の推移を認めながら、その後にX→Y2という推移を追加して認定することは、Xに対して、X→Y2という推移を否認する手続きを与えていないことになり、Xの弁論権を侵害していると言える。
 したがって、裁判所には、譲渡担保という法律構成を当事者に指摘する、法的観点指摘義務があるというべきである。
設問2
 既判力(114条)とは、確定判決の後訴での通用力ないし拘束力を言い、訴訟法上の効力である。紛争の蒸返し防止の必要性ゆえに認められ、当事者に手続保障がなされていることにより正当化される。既判力の主観的範囲は、当事者の口頭弁論終結後の承継人に及ぶ(115条1項3号)。そうしないと紛争が蒸し返されるからである。このような紛争蒸し返し防止の観点から、「承継人」とは、紛争の主体たる地位を承継した者を言うと解する。
 本件では、訴訟物はX→Y1、Y1→Y2の各甲土地所有権移転登記の抹消登記請求権であるが、甲土地について所有権を主張する者が紛争主体である。よって、Y2から甲土地所有権を承継したZは、本件紛争の主体たる地位を承継したと言え、「承継人」に当たる。したがって、Zに対して既判力が及ぶ。               以上
 

2017年04月09日

刑法 予備試験平成28年度

回答
1 保険会社に対して自作自演の放火により保険金請求しようとして請求しなかった点に詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)の成否を検討するに、詐欺罪は保険金の請求の時点で保険会社の財産の詐取に対する現実的危険が生じるため実行の着手時期は保険金請求時と解すべきところ、甲及び乙は請求していないので、未遂にすらならない。したがって、詐欺未遂罪は成立しない。
2 甲宅及び乙宅を放火した点について、放火罪の共同正犯(60条、108条ないし109条)の成否を検討する。
(1) 甲宅内にX発火装置を置き、9月8日午後9時に発火するように設定した行為について
ア 「放火」と言えるか。放火罪の実行着手時点は「放火」したときであるが、実行の着手というのは法益侵害の現実的危険性を惹起した時点で認められるところ、108条の保護法益は公共の危険であり、そうするとX発火装置のような時限装置を一定時間後に発火するようにセットした時点で公共の危険に対する現実的危険性が惹起されたと言えるから、「放火」と言えると解する。
イ 「焼損」と言えるか。放火罪の保護法益は公共の危険であり、火が独立して燃焼するに至れば公共の危険は発生するから、「焼損」すなわち放火罪の既遂時期は火が独立して燃焼するに至った時点と解する。本件では、X発火装置から出た火は甲宅の木製の床板に燃え移ったから、独立燃焼するに至っている。したがって、「焼損」と言える。
ウ 甲と乙は、甲宅内にBがいることに気づいていないから、108条の故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)があるか問題となる。108条が109条よりも重い刑を定めているのは犯人以外の者の生命に対する危険を特に保護しているためと解されるから、「人」とは犯人以外のものを指す。甲宅は甲が一人で住んでいたのだから現住性はない。しかし、放火当時、甲宅にはBがいたのであるから、「現に人がいる」(現在性)と言える。しかし、甲及び乙は、いずれも甲宅には甲しか住んでおらず、放火の際に人はいないと認識していたのだから、現住性・現在性いずれの認識もない。そのため、甲及び乙には108条の故意がない。
 異なる構成要件間の錯誤の場合は、構成要件が実質的に重なり合う範囲で軽い犯罪が成立すると解されている。108条と109条は構成要件が形式的にも実質的にも重なり合っているから、軽い109条の放火罪が成立する。
エ 甲宅は、甲にとっては自己所有物(109条2項)であり、乙にとっては他人所有物(109条1項)であるところ、乙については109条1項の共同正犯が成立する。甲について、共同正犯は二人以上が共同して特定の犯罪を実現する場合に単独犯の構成要件を拡張したものであるところ、構成要件が重なり合う範囲で軽い共同正犯が成立すると解するから、甲には109条2項の共同正犯が成立する。
(2) 乙物置にY発火装置を置き、9月8日午後9時30分に発火するように設定した行為について
ア 乙建物は、たしかに現在Aがいないが、乙の内妻Aが起臥寝食に使用しているので現住性がある。そのため、甲乙両者にとって108条の建造物に当たる。
イ 「放火」と言えるかについて、建造物放火罪の公共の危険は建造物そのものに対して放火されなくても建造物と物理的一体となっている延焼可能性のあるものに放火されれば発生するところ、乙物置は乙宅とは屋根付きの長さ約3メートルの木造の渡り廊下でつながっている木造の小屋だから、乙宅と物理的一体となっている延焼可能性のあるものに当たる。そのため、乙物置に対する放火は建造物放火罪の「放火」に当たる。
ウ 「焼損」と言えるかについて、本件で独立燃焼したのはY発火装置と段ボール箱及び同は庫内の洋服の一部のみであって、乙物置自体は独立燃焼するに至っていないから、「焼損」とは言えず、未遂罪(112条)が成立するにとどまる。
エ 乙は発火時刻頃に翻意して消火活動を行ったから、共犯からの離脱が認められないか。共同正犯を含む共犯の処罰根拠は特定の構成要件的結果に因果性を及ぼすことにあるから、物理的因果性及び心理的因果性の双方を除去した場合に共犯からの離脱が認められると解する。本件では、乙は消火活動をして結果ジャッキの物理的因果性を除去したが、甲に対して何ら連絡を取っておらず心理的因果性を除去していないから、共犯からの離脱は認められない。
オ では、乙の消火活動が中止未遂となって犯罪が必要的に減免されないか(43条但書)。中止未遂の趣旨は未遂の段階にまで至った行為者に刑の必要的減免という特別の効果を与えることによって結果惹起防止を最後まで図ることである。要件は@「自己の意思により」、A「犯罪を中止した」(意識的危険消滅)であり、違法減少を前提とした責任減少が根拠と解する。@は行為者の認識した事情が経験上一般に犯罪の障害となるようなものか否かを基準として判断し、Aは実行中止の場合には危険消滅のための「真摯な努力」をしたか否かを判断すべきと解する。本件では、乙は「Aには迷惑を掛けたくない」こと及び「近所にも迷惑を掛けたくない」ことを認識しており、これは経験上一般に犯罪の障害とはならないから@を満たす。また、消火活動を最期まで遂げて危険を消滅させているので、Aも満たす。したがって、乙には43条但書が適用される。
3 甲宅に侵入した行為について、乙は甲の黙示の同意を得ていると解されるから住居侵入罪(130条)は成立しない。乙宅に侵入した甲は、Aの同意を得ていないから住居侵入罪が成立する(130条)。
4 罪数
 前提として、甲宅と乙宅は直線距離で2キロメートルという遠い距離があるから、それぞれに対する放火は別々の公共の危険を発生させるとみるべきである。そうすると、すでに検討したように、甲には@甲宅の放火について109条2項の共同正犯、A乙宅への侵入について住居侵入罪の単独犯(130条)。B乙宅の放火について115条・108条の共同正犯が成立し、AとBは牽連犯(54条1項後段)となり、@とBは併合罪(45条)となる。乙には、甲宅の放火について109条1項の共同正犯、乙宅の放火について115条・108条の共同正犯が成立し、後者については45条但書が適用されて刑が必要的に減免される。両者は併合罪となる。                              以上

posted by izanagi0420new at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法

2017年04月07日

民法 予備試験平成28年度

回答
1 DのBに対する請求
(1)  支払済みの代金500万円の返還請求は、売買契約解除により発生した原状回復請求権に基づくものである(民法561条前段)。
要件は、@売買契約締結、A権利移転不能(取引通念上権利移転が期待できない場合を意味すると解する。)、B解除の意思表示と解される(以上561条前段)。本件では、@平成27年5月22日に、BD間でC所有の甲機械の売買契約が締結されており、A同年9月22日にCがDに対し甲機械の返還請求をしたことにより取引通念上権利移転が期待できなくなっており、B同月30日にDはBに対し契約解除の意思表示をしている。
   解除の効果について明文はないが、契約関係の遡及的消滅と解する(545条1項本文参照)。そうすると、Bは法律上の原因なく500万円を所持していることになるから、Dは前記500万円について不当利得返還請求権(703条)を有する。
(2)  乙機械購入のための40万円をDが請求するとしたら、根拠は債務不履行に基づく損害賠償請求権が考えられる(民法415条)。確かに、561条後段は、契約時において権利が売主に属さないことを知っていた時の損害賠償請求権を認めていないが、履行不能が売主の帰責事由によるときは、561条後段の規定にかかわらず、要件を満たす限り415条に基づく損害賠償ができると解する。
   要件は、@契約締結、A本旨不履行、B帰責事由である(以上415条)。本件では、以上に述べたところからいずれも@Aは認められる。B帰責事由について、所有権移転という結果債務(560条)の不履行は、不可抗力の場合を除き、帰責事由が認められる。本件では、BがDに所有権を移転できなかったことは不可抗力によるものではないから、Bに帰責事由が認められる。
   損害の範囲についての416条は相当因果関係を定めたものというのが従来の通説だが、契約時に両当事者が予見可能な損害を賠償させる規定と解する。本件では、契約締結時に、Bが権利を移転できないならばDは代替物を取得することは契約時にBD両者が予見可能だから、損害の範囲に含まれる。
したがって、Dは415条に基づき40万円の損害賠償請求権を有する。
(3)  甲機械の価値増加分50万円を請求するとしたら根拠条文は196条だが、同条は「回復者」に対する請求権であり、本件で甲機械の回復者はCであるから、Bに対する請求には理由がない。
   703条によることも考えられなくないが、Bには利得がないから、要件を満たさない。
2 DのCに対する請求
 修理による甲機械の価値増加分(50万円)は、占有者による有益費の償還請求権(196条2項)によるものである。Dが主張すべき要件は@「有益費」であること、A価格の増加が現存する場合であることである(196条1項本文前段)。「有益費」(196条2項)とは物の価値を増加させる費用をいうが、物の扱い方は本来所有者が決めるべき事柄であるし、賃借人が目的物の原状回復義務を有することと(616条、598条)のバランスから、必要な改良がおこなわれた結果としての価値増加額に限ると解する。本件では、@甲機械を「稼働させるためには修理が必要」であったから、Dの請求する50万円は必要な改良がおこなわれた結果としての価値増加と認められる。また、Aも認められる。
 もっとも、Cは「回復者」(196条2項本文後段)であるから、「支出した金額または増加額」を選択できる。Cはこの規定に基づき、増加額の50万円ではなく、Dが実際に支出した金額である30万円を選択することができる。
 したがって、Dの請求は30万円分に限り認められる。
3 【事実】5におけるBおよびCの主張
(1)  Bが乙機械を購入するための増加費用40万円を理由がないと主張する理由は、561条後段が、契約時に権利が売主に属さないことを知っていた他人物の買受人による損害賠償請求権を否定している点にあると考えられる。本件でBはDに対し、甲機械の所有権がCにあることを伝えているから、Dは561条後段の悪意である。しかし、判例は前述のように、415条の要件を満たす限りで415条に基づく損害賠償請求権を認めており、Dは415条に基づく損害賠償を主張しているのであるから、この主張は認められない。このように解すると561条1項後段が空文化するが、仕方がない。
(2)  Bが甲機械の価値増加分50万円を理由がないとする主張は、前述のように認められる。
(3)  Cが甲機械の価値増加分50万円を理由がないとする主張は、前述のように認められないが、Cは「回復者」として支出額を選択できる。
(4)  B及びCが、Dに対し、甲機械の使用相当額25万円を求める根拠は何か。使用相当額は「果実」であるから190条1項によるべきとも思える。しかし、189条や190条は物権の帰属状態の正常化を想定した条文であり、本件のような契約関係の巻き戻しの場合に適用すべきでない。575条によるべきとも思えるが、同条は両当事者の給付が均衡していることを前提としているから、本件のように不均衡の場合に適用するのは妥当でない。契約解除の場合には、互いに契約関係がなかった状態に戻すことを重視すべきであるから、公平を趣旨とする不当利得法の規定によるべきである。
   主張権者はBかCか。Bは甲機械の所有権を有していないから、甲機械の使用利益が帰属せず、したがって甲機械が生み出した利益はBの損失とはならない。そのため、主張権者はCである。
   Cが主張すべき704条の要件は、本件のような侵害利得の場合には@Dの利得とAその利得がCの権利に基づくこと(以上703条)、並びにBDの悪意(704条)である。ABは明らかに認められるから、Cは@が25万円であることを証明すれば、Bに対する25万円の不当利得請求権を有する。
(5)  そうすると、DはCに対して30万円の費用償還請求権を有し、CはDに対して25万円の不当利得請求権を有しており、これらは同じ金銭債権であって弁済期にあるから、相殺できる(505条1項)。
    したがって、CはDに対し、5万円を支払えば足りる。    以上


posted by izanagi0420new at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法

2017年04月06日

憲法 予備試験平成28年度

回答
1 Xからの主張としては、助成の要件として本件誓約書を提出させることの憲法19条違反が考えられる。
(1) 19条は、日本が明治憲法下で治安維持法の運用に見られるように特定の思想そのものを弾圧したことから、諸外国の憲法に内心の自由そのものを規定した条文がないのに、あえて規定されたものである。「思想」(「良心」も同義と解する。)とは、世界観・人生観・主義・主張など個人の人格的な内面的精神作用を広く含むと解する。Xが法律婚のみならず事実婚も支援しているのは、結婚に関する価値観は多様であるというXの世界観に基づくものであり、これは「思想」に該当する。
(2) 「犯してはならない」とは、保持強制の禁止・表明強制の禁止・不利益取扱いの禁止を意味すると解する。
 Xとしては、本件誓約書の内容が、法律婚のみを評価し、法律婚のみを推進する内容であることが、前述のXの「思想」に反する思想の表明強制であり、また、補助を打ち切ることが、特定の思想に対する不利益取扱いに当たると主張したい。
これに対してAは、誓約書に事実婚を否定する文言がないことから表明強制にあたらず、また、補助金を受ける地位という有利な法的地位を否定するだけであるから不利益取扱いに当たらないと主張したい。
(3) 私見は以下の通りである。
ア 表明強制の点
たしかに「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するにとどまる程度」であれば、思想表明の強制に当たらないとした判例があるが、本件誓約書は陳謝の意を表することさえなく、ただ法律婚の評価を述べているに過ぎないのであって、事実婚を評価するXの思想と両立しうるものとも思える。
 しかし、本件誓約書は「法律婚が、経済的安定をもたらし、子どもを生みやすく、育てやすい環境の形成に資する」という法律婚の評価のみならず、「自らの活動を通じ、法律婚を積極的に推進し、成婚数を上げるよう力を尽くします。」という宣誓も含んでおり、この宣誓部分は、事実婚をも尊重するというXの活動方針とは非両立である。そのため、単に形式的に陳謝の意を表明させることを合憲とした先の判例を前提としても 本件誓約書を提出させることは、Xの思想と異なる外部的行為を求めることになるため、その限りで、Xの思想に対する間接的制約となる。
イ 不利益取扱いの点
 Aの言う通り、補助金を打ち切ることそれ自体は一般人よりも有利な法的地位の否定に過ぎず、制約に当たらない。
 しかし、助成の申請に対し本件誓約書を提出させるという運用は、助成を手段として上記Xの思想と異なる外部的行為を求めるものと評価できるから、その限りで、やはりXの思想に対する間接的制約となる。
(4)ア もっとも、間接的制約であっても政策との関係で必要かつ合理的なものである場合には許されるべきところ、政策目的や制限の程度は様々だから、政策の目的及び内容並びに制約態様を総合的に較量して、当該政策に当該制約を許容しうる程度の必要性及び合理性があるかを判断すべきである。
イ これを本件についてみるに、A市は10年前に本件条例を制定して少子化対策を進め、その一つとして結婚支援事業があり、Xは本件条例の制定当初から結婚支援事業の事業者として助成を受けていた。しかし、A市では少子化が急速に進行したため、本件条例が未婚化等の克服を目指す内容に改正され、女性についても成婚数を上げることを重視する方向転換がなされた。本件誓約書は、この方針転換に伴い、要項によって義務付けられたものだから、本件誓約書は、少子化克服が主たる目的をなし、未婚化等の克服は、あくまで少子化克服の手段にすぎないから、副次的補充的目的と解される。この政策目的自体は、人口がGDPに比例するという顕著な事実にかんがみ、合理性が認められる。
 しかしながら、少子化克服を達成するための手段として未婚化克服をすることは、非嫡出子の相続分を嫡出子の半分とする民法の規定が違憲とされた現在では、合理性が認められない。また、未婚化克服を目的として、誓約書を提出させるという手段も、たとえば従来の成婚数に応じて補助金の額を変えるという、より制約的でない方法をもって必要十分と考えられるから、必要性が認められない。
 これを要するに、本件誓約書を提出させることはXの思想の自由に対する間接的制約になるに過ぎないが、政策内容にかかる間接的制約を許容しうる程度の必要性・合理性が認められない。
2 したがって、Xに本件誓約書を提出させることは、Xの思想の自由を侵害し、憲法19条に違反する。                               以上
 
posted by izanagi0420new at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法
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