アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2017年04月09日

刑法 予備試験平成28年度

回答
1 保険会社に対して自作自演の放火により保険金請求しようとして請求しなかった点に詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)の成否を検討するに、詐欺罪は保険金の請求の時点で保険会社の財産の詐取に対する現実的危険が生じるため実行の着手時期は保険金請求時と解すべきところ、甲及び乙は請求していないので、未遂にすらならない。したがって、詐欺未遂罪は成立しない。
2 甲宅及び乙宅を放火した点について、放火罪の共同正犯(60条、108条ないし109条)の成否を検討する。
(1) 甲宅内にX発火装置を置き、9月8日午後9時に発火するように設定した行為について
ア 「放火」と言えるか。放火罪の実行着手時点は「放火」したときであるが、実行の着手というのは法益侵害の現実的危険性を惹起した時点で認められるところ、108条の保護法益は公共の危険であり、そうするとX発火装置のような時限装置を一定時間後に発火するようにセットした時点で公共の危険に対する現実的危険性が惹起されたと言えるから、「放火」と言えると解する。
イ 「焼損」と言えるか。放火罪の保護法益は公共の危険であり、火が独立して燃焼するに至れば公共の危険は発生するから、「焼損」すなわち放火罪の既遂時期は火が独立して燃焼するに至った時点と解する。本件では、X発火装置から出た火は甲宅の木製の床板に燃え移ったから、独立燃焼するに至っている。したがって、「焼損」と言える。
ウ 甲と乙は、甲宅内にBがいることに気づいていないから、108条の故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)があるか問題となる。108条が109条よりも重い刑を定めているのは犯人以外の者の生命に対する危険を特に保護しているためと解されるから、「人」とは犯人以外のものを指す。甲宅は甲が一人で住んでいたのだから現住性はない。しかし、放火当時、甲宅にはBがいたのであるから、「現に人がいる」(現在性)と言える。しかし、甲及び乙は、いずれも甲宅には甲しか住んでおらず、放火の際に人はいないと認識していたのだから、現住性・現在性いずれの認識もない。そのため、甲及び乙には108条の故意がない。
 異なる構成要件間の錯誤の場合は、構成要件が実質的に重なり合う範囲で軽い犯罪が成立すると解されている。108条と109条は構成要件が形式的にも実質的にも重なり合っているから、軽い109条の放火罪が成立する。
エ 甲宅は、甲にとっては自己所有物(109条2項)であり、乙にとっては他人所有物(109条1項)であるところ、乙については109条1項の共同正犯が成立する。甲について、共同正犯は二人以上が共同して特定の犯罪を実現する場合に単独犯の構成要件を拡張したものであるところ、構成要件が重なり合う範囲で軽い共同正犯が成立すると解するから、甲には109条2項の共同正犯が成立する。
(2) 乙物置にY発火装置を置き、9月8日午後9時30分に発火するように設定した行為について
ア 乙建物は、たしかに現在Aがいないが、乙の内妻Aが起臥寝食に使用しているので現住性がある。そのため、甲乙両者にとって108条の建造物に当たる。
イ 「放火」と言えるかについて、建造物放火罪の公共の危険は建造物そのものに対して放火されなくても建造物と物理的一体となっている延焼可能性のあるものに放火されれば発生するところ、乙物置は乙宅とは屋根付きの長さ約3メートルの木造の渡り廊下でつながっている木造の小屋だから、乙宅と物理的一体となっている延焼可能性のあるものに当たる。そのため、乙物置に対する放火は建造物放火罪の「放火」に当たる。
ウ 「焼損」と言えるかについて、本件で独立燃焼したのはY発火装置と段ボール箱及び同は庫内の洋服の一部のみであって、乙物置自体は独立燃焼するに至っていないから、「焼損」とは言えず、未遂罪(112条)が成立するにとどまる。
エ 乙は発火時刻頃に翻意して消火活動を行ったから、共犯からの離脱が認められないか。共同正犯を含む共犯の処罰根拠は特定の構成要件的結果に因果性を及ぼすことにあるから、物理的因果性及び心理的因果性の双方を除去した場合に共犯からの離脱が認められると解する。本件では、乙は消火活動をして結果ジャッキの物理的因果性を除去したが、甲に対して何ら連絡を取っておらず心理的因果性を除去していないから、共犯からの離脱は認められない。
オ では、乙の消火活動が中止未遂となって犯罪が必要的に減免されないか(43条但書)。中止未遂の趣旨は未遂の段階にまで至った行為者に刑の必要的減免という特別の効果を与えることによって結果惹起防止を最後まで図ることである。要件は@「自己の意思により」、A「犯罪を中止した」(意識的危険消滅)であり、違法減少を前提とした責任減少が根拠と解する。@は行為者の認識した事情が経験上一般に犯罪の障害となるようなものか否かを基準として判断し、Aは実行中止の場合には危険消滅のための「真摯な努力」をしたか否かを判断すべきと解する。本件では、乙は「Aには迷惑を掛けたくない」こと及び「近所にも迷惑を掛けたくない」ことを認識しており、これは経験上一般に犯罪の障害とはならないから@を満たす。また、消火活動を最期まで遂げて危険を消滅させているので、Aも満たす。したがって、乙には43条但書が適用される。
3 甲宅に侵入した行為について、乙は甲の黙示の同意を得ていると解されるから住居侵入罪(130条)は成立しない。乙宅に侵入した甲は、Aの同意を得ていないから住居侵入罪が成立する(130条)。
4 罪数
 前提として、甲宅と乙宅は直線距離で2キロメートルという遠い距離があるから、それぞれに対する放火は別々の公共の危険を発生させるとみるべきである。そうすると、すでに検討したように、甲には@甲宅の放火について109条2項の共同正犯、A乙宅への侵入について住居侵入罪の単独犯(130条)。B乙宅の放火について115条・108条の共同正犯が成立し、AとBは牽連犯(54条1項後段)となり、@とBは併合罪(45条)となる。乙には、甲宅の放火について109条1項の共同正犯、乙宅の放火について115条・108条の共同正犯が成立し、後者については45条但書が適用されて刑が必要的に減免される。両者は併合罪となる。                              以上

posted by izanagi0420new at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/6148302
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
ファン
検索
<< 2018年04月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。