2017年04月27日
民法 平成18年度第2問
設問1
AはCに対し、自らが94条2項の「第三者」に当たることを主張することが考えられる。この主張は、AB間の売買の抗弁、Cの虚偽表示の再抗弁を前提とした予備的抗弁と位置付けられる。この主張が認められるか。
94条2項は本来意思表示の規定であるが、虚偽の外観につき真の権利者に帰責性がある場合には、真の権利者はその外観を信頼した第三者に対して外観通りの責任を負うこと(表見法理)を定めた規定と解釈できる。本件でも、Cは本件建物のB所有権登記という虚偽の外観を1年間も放置したという帰責性があるから、その外観を信頼したAに対して外観通りの責任を負い、その結果CはAに対し、自分が本件建物の所有者であることを主張できないとAは主張したい。この場合、「善意」とは文字通り善意で足り、「第三者」とは虚偽の外観を前提として新たな取引をした者を指す。
しかし、94条はもともと通謀虚偽表示という真の権利者が外観作出に積極的に関与した場合の規定だから、本件のような故意放置の場合も通謀と同視できるだけの帰責性が必要と解するところ、登記というのは通常人は1年間くらい見ないことはありうること、BはCの夫であり特に登記簿を確認しなければならないほどの不信事由がないことから、本件のCにはでは通謀と同視できるだけの帰責性は認められない。
したがって、Aの主張は認められない。
設問2(1)
他人物賃貸借は債権的には有効だが(559条、560条)、所有者には対抗できず、所有者が賃貸借目的物について所有権に基づく返還請求をした時点で、賃貸人の継続的な貸す債務は履行不能となり終了する。本件では、CがAB間の賃貸借契約を有効と認めてほしいというAの申入れを拒絶した時点で、AB間の賃貸借契約は終了した。そのため、AはBに対し、本件建物の返還義務を負うはずである(616条、597条)。
しかし、Bは他人物賃貸人だから、本人Cの意思に沿って本件建物の明渡請求をするのは信義則(禁反言、1条2項)に反するように思える。そこで、他人物賃貸人が本人を相続した場合に、本人の地位で意思表示ができるかが問題となる。
この問題は無権代理人が本人を相続した場合と利益状況が異ならないから、同様に考えるべきである。判例は、本人が追認拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合について、追認拒絶によって本人への効果不帰属が確定した以上は、無権代理人が本人を相続しても無権代理人に効果帰属しないとしている。そこで、本人の追認拒絶後に他人物賃貸人が本人を相続しても、他人物賃貸借は有効にならないと解する。
本件でも、Cは追認を拒絶しているから、BがCを相続しても他人物賃貸借は物権的に有効にならない。
したがって、AはBに対し、BがCを単独相続したことを理由に本件建物の明渡しを拒絶することができない。
設問2(2)
1 敷金返還との同時履行
敷金とは、建物賃借契約から生じる一切の債務を担保するために支払われる金銭である。建物賃借契約に従たる契約として敷金設定契約という要物契約が締結される。定義からわかるように、敷金は一切の賃借人の債務を担保するものであり、修補義務等は建物明渡後に初めて発覚する場合も多い。そのため、建物明渡が敷金返還よりも先履行である。したがって、敷金返還を受けるまで明渡を拒絶するという主張は認められない。
2 債務不履行に基づく損害賠償請求
BはCの地位に基づいてAに対し本件建物の明渡しを請求しているが、本人BはAに対し、賃貸借契約における貸す債務(601条)の不履行及び他人物賃貸借で権利を移転する義務(560条、559条)の不履行があるから、AはBに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求ができる(415条)。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)を主張して建物明渡を拒絶することができる。
3 不法行為に基づく損害賠償請求
他人物賃貸借をしながら権利を移転できなかったことを「過失」(709条)ととらえ、不法行為に基づく損害賠償請求もできる。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)も主張できる。 以上
AはCに対し、自らが94条2項の「第三者」に当たることを主張することが考えられる。この主張は、AB間の売買の抗弁、Cの虚偽表示の再抗弁を前提とした予備的抗弁と位置付けられる。この主張が認められるか。
94条2項は本来意思表示の規定であるが、虚偽の外観につき真の権利者に帰責性がある場合には、真の権利者はその外観を信頼した第三者に対して外観通りの責任を負うこと(表見法理)を定めた規定と解釈できる。本件でも、Cは本件建物のB所有権登記という虚偽の外観を1年間も放置したという帰責性があるから、その外観を信頼したAに対して外観通りの責任を負い、その結果CはAに対し、自分が本件建物の所有者であることを主張できないとAは主張したい。この場合、「善意」とは文字通り善意で足り、「第三者」とは虚偽の外観を前提として新たな取引をした者を指す。
しかし、94条はもともと通謀虚偽表示という真の権利者が外観作出に積極的に関与した場合の規定だから、本件のような故意放置の場合も通謀と同視できるだけの帰責性が必要と解するところ、登記というのは通常人は1年間くらい見ないことはありうること、BはCの夫であり特に登記簿を確認しなければならないほどの不信事由がないことから、本件のCにはでは通謀と同視できるだけの帰責性は認められない。
したがって、Aの主張は認められない。
設問2(1)
他人物賃貸借は債権的には有効だが(559条、560条)、所有者には対抗できず、所有者が賃貸借目的物について所有権に基づく返還請求をした時点で、賃貸人の継続的な貸す債務は履行不能となり終了する。本件では、CがAB間の賃貸借契約を有効と認めてほしいというAの申入れを拒絶した時点で、AB間の賃貸借契約は終了した。そのため、AはBに対し、本件建物の返還義務を負うはずである(616条、597条)。
しかし、Bは他人物賃貸人だから、本人Cの意思に沿って本件建物の明渡請求をするのは信義則(禁反言、1条2項)に反するように思える。そこで、他人物賃貸人が本人を相続した場合に、本人の地位で意思表示ができるかが問題となる。
この問題は無権代理人が本人を相続した場合と利益状況が異ならないから、同様に考えるべきである。判例は、本人が追認拒絶した後に無権代理人が本人を相続した場合について、追認拒絶によって本人への効果不帰属が確定した以上は、無権代理人が本人を相続しても無権代理人に効果帰属しないとしている。そこで、本人の追認拒絶後に他人物賃貸人が本人を相続しても、他人物賃貸借は有効にならないと解する。
本件でも、Cは追認を拒絶しているから、BがCを相続しても他人物賃貸借は物権的に有効にならない。
したがって、AはBに対し、BがCを単独相続したことを理由に本件建物の明渡しを拒絶することができない。
設問2(2)
1 敷金返還との同時履行
敷金とは、建物賃借契約から生じる一切の債務を担保するために支払われる金銭である。建物賃借契約に従たる契約として敷金設定契約という要物契約が締結される。定義からわかるように、敷金は一切の賃借人の債務を担保するものであり、修補義務等は建物明渡後に初めて発覚する場合も多い。そのため、建物明渡が敷金返還よりも先履行である。したがって、敷金返還を受けるまで明渡を拒絶するという主張は認められない。
2 債務不履行に基づく損害賠償請求
BはCの地位に基づいてAに対し本件建物の明渡しを請求しているが、本人BはAに対し、賃貸借契約における貸す債務(601条)の不履行及び他人物賃貸借で権利を移転する義務(560条、559条)の不履行があるから、AはBに対し、債務不履行に基づく損害賠償請求ができる(415条)。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)を主張して建物明渡を拒絶することができる。
3 不法行為に基づく損害賠償請求
他人物賃貸借をしながら権利を移転できなかったことを「過失」(709条)ととらえ、不法行為に基づく損害賠償請求もできる。また、この損害賠償の支払いと建物明渡の同時履行(533条)も主張できる。 以上
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