アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2016年05月06日

憲法 平成21年度第1問

問題文
 自動車の多重衝突により多数の死傷者が出た交通事故の発生前後の状況を、たまたまその付近でドラマを収録していたテレビ局のカメラマンがデジタルビデオカメラで撮影しており、テレビ局がこれを編集の上ニュース番組で放映した後、撮影時の生データが記録されたディスクを保管していたところ、同事故を自動車運転過失致死傷事件として捜査中の司法警察員が、令状に基づき同ディスクを差し押さえた。
 この事例に含まれる憲法上の問題点について、その交通事故を取材していたテレビ局が、一般人が撮影したデジタルデータの記録されたディスクを入手し、それを編集の上ニュース番組で放映したところ、同事故に関する自動車運転過失致死傷被告事件の継続する裁判所が、テレビ局に対し、同ディスクの提出命令を発した場合と比較しつつ、論ぜよ。

回答
1 本件の差押えがテレビ局の取材の自由を侵害し違憲ではないかを検討する。
2 報道機関の事実の報道は意見の表明ではないが、編集という知的過程を経ており、また、国民の知る権利に資するから、報道機関の事実の報道の自由は21条1項で保障される。報道のための取材の自由も21条1項の精神に照らし尊重に値する。
 しかし、報道機関の事実の報道の自由は主に国民の知る権利という公共の利益のために保証される憲法上の権利だから、それに優越する公共の利益のために制約を受ける。公共の利益の内容は多岐にわたるが、本件との関連では公正な裁判の実現(憲法37条1項)や、事件・事故の真相解明(刑訴法1条)がその制約根拠となる。
 もっとも、それらの制約根拠があれば直ちに制約が許されるわけではなく、具体的事例で当該制約により得られる利益と失われる利益を比較衡量し、前者が上回る場合にのみ制約が許される。
 では、本件で得られる利益は失われる利益を上回るか。得られる利益としては事件の重大性、失われる利益としては取材の自由や国民の知る権利に及ぼす影響を考慮すべきである。本件は多数の死傷者が出た交通事故という重大事件であり、真相解明への社会の期待が大きい。一方、テレビ局はこのディスクを取材目的で取材して獲得したものではなく、ドラマの撮影中に偶然得たものだから、これを差し押さえても取材の自由に及ぼす影響は小さい。テレビ局はこれを既にニュース番組で放映しており、これを差し押さえてもテレビ局に与える影響や国民の知る権利に及ぼす影響が少ない。これらを考慮すると、確かに本件の取材の自由の制約根拠は事件の真相解明という刑訴法上の利益に過ぎないものであるとしても、得られる利益が失われる利益を上回るといえる。
3 設問後段との違いについて
設問後段との違いは@テレビ局が取材して獲得したディスクであること、A編集前の動画は一般人が撮影したものであること、B裁判所の提出命令であることである。
(1)@について原告は、偶然に獲得された映像よりも取材目的で獲得した映像のほうが要保護性が高いと主張することが考えられる。
 しかし、前述のように取材の自由は主に国民の知る権利に奉仕するがゆえに認められる権利であるところ、偶然に得られた映像か狙って獲得したものかは視聴者国民にとっての重要性は異ならない。そのため、@が権利の要保護性を強めることはないと考える。
(2)Aについて、一般人は捜査機関を信頼して情報提供したと考えられ、その情報を公権力が当然に取得してよいということになると、今後捜査機関に対し情報提供する一般人がいなくなり、その意味で取材の自由が制約されうるから、取材源の秘匿も21条1項の精神に照らして尊重に値する。ただ、取材源の秘匿は取材の自由に奉仕するために認められる権限だから、それも取材の自由と同様により大きな公共の利益のために制約を受けることは、設問前段と異ならない。
(3)Bについて原告は、裁判所の提出命令は公正な裁判という憲法上の利益(37条1項)に資する点で捜査機関の令状よりも公共の利益が大きいと言える。もっとも、捜査は公訴の提起のために行われる準司法作用という側面があり、また、捜査機関の命令であっても裁判所が発する令状(憲法35条1項)に基づくものだから、裁判所の提出命令であることが提出命令によって失われる利益の増加に与える影響は限定的と考える。
(4)以上により、設問後段の場合、失われる利益の大きさはほとんど変化がなく、得られる利益は公正な裁判の実現であってやや大きい。したがって、設問後段の提出命令であっても取材の自由を制約せず合憲である。
4 したがって、設問前段の差押えはなおさら取材の自由を制約せず、合憲である。 以上

posted by izanagi0420new at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/5034889
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
ファン
検索
<< 2018年04月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。