2016年02月14日
国際私法 平成26年度第1問
設問1
1(1)離婚の届出は方式の問題だから34条によるところ、同条は方式を「当該法律行為の成立について準拠すべき法」によらしめているから、先決問題として離婚準拠法が問題となる。先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地たる日本の国際私法が指定する準拠法による。
(2)日本の国際私法27条本文は25条を準用しており、25条は夫の本国法に連結していた法令の規定を両性平等の見地から改め、また夫婦に共通の準拠法を定める必要から段階的連結を定めている。但書は戸籍管掌者の便宜から日本法に連結している。すなわち、戸籍管掌者には形式的審査権限しかないところ、第3段階の最密接関係地の認定は戸籍管掌者には難しいからである。そのため、但書の文言上はすべてに優先するように読めるが、但書は最密接関係地に優先するに過ぎない。
(3)本件では、Pの本国法は甲国法であり、Qの本国法は日本法だから、共通本国法では連結しない。共通常居所地法(常居所とは、人が居所よりも長期間生活する地)は、PQは婚姻後5年間甲国で生活していたから、甲国と考えられる。そのため、離婚準拠法は甲国法である。
(4)そうすると、34条1項に基づき、離婚の方式の準拠法も甲国法となる。そのため、Qの届出を受けた日本の戸籍管掌者は、原則として受理しなければならない。
2 しかし、甲国法の適用が公序に反する場合は、甲国法の適用を排除することができる(42条)。要件は、@適用結果の異質性及びA内国関連性である。ここで@はあくまでも適用結果の異質性であって、適用する法自体の異質性を考慮する要件である。国際主義の観点から、日本の裁判所は外国法自体の良し悪しを判断できないからである。
本件では、PとQは離婚に合意しているから、PとQを離婚するという甲国法の適用結果が異質であるということはない(@不充足)。
したがって、Aを検討するまでもなく、適用結果は日本の公序に反しない。
3 したがって、PとQの離婚は日本において効力を有する。
設問2(1)ア
1 協議離婚の可否は離婚の問題と性質決定されるから27条による。同条の連結点と趣旨は前述のとおりである。
2 本件では、PとRに同一本国法は存在しない。同一常居所地は日本と解されるから、日本法による。日本の民法763条は協議離婚を認めている。
3 したがって、PとRは協議離婚をすることができる。
設問2(1)イ
1 面会交流の可否をどのように性質決定すべきか。離婚の効力とすることが考えられる。しかし、面会交流は子の利益にも資するから、夫婦間の利益だけを考慮した離婚の規定を使うのは妥当でない。親子間の法律関係とみて、32条によるべきである。
2 32条は法令が父の本国法としていたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間で同じ法律を適用する必要から、段階的連結を定めている。但書は子の常居所に連結している。この規定の趣旨は、両親が離婚した場合の戸籍事務の便宜である。
3 本件では、Cの本国法は甲国法であり、Pと同一だから、甲国法による。甲国法Cは、子は常に父の親権に服するとするから、本件でCの親権はPにあり、したがって、Pは常に面会交流できる。
設問2(2)
1 親権の有無は32条による。前述のように、同条を適用した結果、本件ではCの親権はPにある。
2 しかし、Pは服役中であるから、この適用結果は異質であり、内国関連性も大きいから、公序(42条)に反すると判断できる。
3(1)そうすると、42条で甲国法の適用を排除した効果が問題となる。この点について、法の欠缺が存在すると解し、内国の適用を拡大する見解がある。しかし、公序則を発動した時点ですでに結論は出ているから、法の欠缺は生じていないと解する。
(2)本件では、Pの親権を否定した場合、Rに親権があると考えるほかない。
4 したがって、日本の裁判所はRを親権者として指定することができる。 以上
1(1)離婚の届出は方式の問題だから34条によるところ、同条は方式を「当該法律行為の成立について準拠すべき法」によらしめているから、先決問題として離婚準拠法が問題となる。先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地たる日本の国際私法が指定する準拠法による。
(2)日本の国際私法27条本文は25条を準用しており、25条は夫の本国法に連結していた法令の規定を両性平等の見地から改め、また夫婦に共通の準拠法を定める必要から段階的連結を定めている。但書は戸籍管掌者の便宜から日本法に連結している。すなわち、戸籍管掌者には形式的審査権限しかないところ、第3段階の最密接関係地の認定は戸籍管掌者には難しいからである。そのため、但書の文言上はすべてに優先するように読めるが、但書は最密接関係地に優先するに過ぎない。
(3)本件では、Pの本国法は甲国法であり、Qの本国法は日本法だから、共通本国法では連結しない。共通常居所地法(常居所とは、人が居所よりも長期間生活する地)は、PQは婚姻後5年間甲国で生活していたから、甲国と考えられる。そのため、離婚準拠法は甲国法である。
(4)そうすると、34条1項に基づき、離婚の方式の準拠法も甲国法となる。そのため、Qの届出を受けた日本の戸籍管掌者は、原則として受理しなければならない。
2 しかし、甲国法の適用が公序に反する場合は、甲国法の適用を排除することができる(42条)。要件は、@適用結果の異質性及びA内国関連性である。ここで@はあくまでも適用結果の異質性であって、適用する法自体の異質性を考慮する要件である。国際主義の観点から、日本の裁判所は外国法自体の良し悪しを判断できないからである。
本件では、PとQは離婚に合意しているから、PとQを離婚するという甲国法の適用結果が異質であるということはない(@不充足)。
したがって、Aを検討するまでもなく、適用結果は日本の公序に反しない。
3 したがって、PとQの離婚は日本において効力を有する。
設問2(1)ア
1 協議離婚の可否は離婚の問題と性質決定されるから27条による。同条の連結点と趣旨は前述のとおりである。
2 本件では、PとRに同一本国法は存在しない。同一常居所地は日本と解されるから、日本法による。日本の民法763条は協議離婚を認めている。
3 したがって、PとRは協議離婚をすることができる。
設問2(1)イ
1 面会交流の可否をどのように性質決定すべきか。離婚の効力とすることが考えられる。しかし、面会交流は子の利益にも資するから、夫婦間の利益だけを考慮した離婚の規定を使うのは妥当でない。親子間の法律関係とみて、32条によるべきである。
2 32条は法令が父の本国法としていたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間で同じ法律を適用する必要から、段階的連結を定めている。但書は子の常居所に連結している。この規定の趣旨は、両親が離婚した場合の戸籍事務の便宜である。
3 本件では、Cの本国法は甲国法であり、Pと同一だから、甲国法による。甲国法Cは、子は常に父の親権に服するとするから、本件でCの親権はPにあり、したがって、Pは常に面会交流できる。
設問2(2)
1 親権の有無は32条による。前述のように、同条を適用した結果、本件ではCの親権はPにある。
2 しかし、Pは服役中であるから、この適用結果は異質であり、内国関連性も大きいから、公序(42条)に反すると判断できる。
3(1)そうすると、42条で甲国法の適用を排除した効果が問題となる。この点について、法の欠缺が存在すると解し、内国の適用を拡大する見解がある。しかし、公序則を発動した時点ですでに結論は出ているから、法の欠缺は生じていないと解する。
(2)本件では、Pの親権を否定した場合、Rに親権があると考えるほかない。
4 したがって、日本の裁判所はRを親権者として指定することができる。 以上
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