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2016年02月02日

民法 予備試験平成24年度

設問1(1)
 主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産についての執行を要求するのは検索の抗弁(453条)である。453条は保証債務についての規定であるが、物上保証人にも適用されるかが問題となる。
 保証人に検索の抗弁が認められるのは、保証人の責任が二次的なものだからである。すなわち、保証とは主たる債務者の弁済を担保する行為であり、保証債務とは保証のために保証人が債権者と締結する契約に基づく債務である。保障のおかげで債権者は債務者のみならず保証人の一般財産も責任財産として把握でき、金融が円滑化する。保証債務は主たる債務とは別の債務であるが、保証があくまで主たる債務の担保であることから、保証人は主債務者が弁済しない場合のみ保証債務を履行する責任を負う(保証債務の補充性)。そのため、債権者が主債務者の資力を過小評価して保証人に弁済を求めてきた場合には、保証人に催告の抗弁が認められる。
 以上の趣旨は、物上保証人にも妥当する。すなわち、物上保障とは物上保証人が自らの一般財産ではなく、その所有する特定物を責任財産として提供する保証形態であり、債権者は、債務者が債務を履行しない場合に、提供された特定物を換価して債権回収する仕組みである。ここからわかるように、物上保証人は債権者に対して何ら行為責任を負わないから、物上保証人は債務者に対して何か債務を負っているわけではない(ここが通常の保証と異なる)。しかし、先にみたように、保証人に検索の抗弁が認められる理由は、保証人が債務を負っているからではなく、二次的責任を負っているからである。そして、物上保証人も、債務者が履行しない場合に担保に供した特定物を競売されてしまうという点で二次的な責任を負っている。したがって、物上保証人にも453条が適用されると解する。
 したがって、Bは設問の主張をすることができる。
設問1(2)
1 Cが抵当権を実行した場合
 この場合は351条に基づき、BはAに求償することができる。
 そもそも委託を受けた保証人は、主債務者との間に、主債務者が弁済できない場合に代わって弁済することを内容とする委任契約が成立していると解すべきであり、そうすると、保証人は、弁済した場合には主債務者に対して費用償還請求権(650条)を有する。そのため、委託を受けた保証人の事後求償権(459条)の法的性質は、受任者の費用償還請求権である。 
 そう考えると、債権者に対して何ら債務を負っていない物上保証人は、なすべき委任事務がない以上、債務者に対して費用償還請求権は発生しないとも思える。しかし、保証というのは債務者に代わって自己の一般財産を減少させる責任である以上、自己の一般財産の減少があれば、債務の有無にかかわらず、債務者に対して減少した一般財産を補てんする請求権を認めるべきである。351条はそういう趣旨の規定と解する。
2 Cが抵当権を実行する以前の場合
 この場合は、BはAに求償することができない。
 そもそも、委託を受けた保証人は主債務者との間に委任契約が成立しているという前述の解釈からすると、保証人の事前求償権(460条)の法的性質は、受任者の費用前払請求権(649条)である。そして、保証債務の内容が債務者の代わりに自己の一般財産を減少させることという前述の考察からすると、事後と事前で異なる扱いをする理由がないとも思える。
 しかし、物上保証人が事前に求償しようと思っても、競売を申し立てるのは債権者であり、債権者が競売を申し立てるか否かは物上保証人には判断できないのであるから、「事前」の求償は不可能である(通常の保証で「事前の求償」という概念が成立するのは、その後に自ら保証債務を履行することが同一人物により予定されているからと言える)。また、物上保証人は自己の一般財産ではなく、特定物を担保に供している。その特定物を換価した結果、債務者の債務が消滅するに足りるか否かは、競売を実行するまで不明である。そのため、仮に求償を許しても換価の結果と求償額との間に齟齬が生じるのは確実であり、その場合に齟齬の清算をめぐって債務者と物上保証人との間に無用の債権債務関係を生じさせることになる。したがって、物上保証の性質上、事前求償は認められないというべきである。
設問2
1 EはBに対し遺留分減殺請求(1031条)ができるか検討する。
 そもそも戦後の遺留分制度は、遺贈や生前贈与によって特定の者に財産を集中させようとする被相続人の意思を制限し、兄弟姉妹以外の法定相続人に相続権を確保させる制度である。要件は@行使者が「遺留分権利者及びその承継人」であること、A減殺の対象が遺贈及び1030条の贈与であることである。
 本件では、BはAの子であり、「兄弟姉妹以外の相続人」(1028条、887条1項)であるから、「遺留分権利者」(1031条)である。また、AのBに対する生前贈与がなされたのは平成24年1月18日であり、相続開始は同年3月25日であるから(882条参照)、本件生前贈与は1030条の贈与に当たる。
 したがって、EはBに対し、遺留分減殺請求ができる。
 この点、Bは高齢(昭和27年生)であってその生活利益を確保する必要性がある一方、Eは就労可能年齢にあるから(昭和62年生)、Eの遺留分減殺請求権を制限的に解釈すべきではないかという議論がありうるが、明文や前述の遺留分制度の趣旨に反するから採用しない。
2 Eが遺留分減殺請求権を行使した結果、甲土地をめぐるBEの権利関係はどうなるか。遺留分減殺請求権は形成権であり、行使と同時に物権的効力を生じると解されている。また、裁判外でも行使できる。
 1028条2号は2分の1の割合に相当する額を受けると定めているが、これは相互句財産が金銭であることを予定した規定であり、本件のような不動産のみが相続財産である場合にはそのままでは適用できない。しかし、1028条の趣旨は2分の1に相当する財産を遺留分として減殺の対象にする点にあり、また、不動産を競売するか否かは遺産分割協議で定めるのが適当である。そうすると、不動産のみが相続財産である場合に遺留分減殺請求権が行使されたときは、不動産の共有(898条)関係になると解する。
 したがって、BEは甲土地を2分の1ずつ共有する。  以上

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posted by izanagi0420new at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 民法
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