2016年02月01日
民法 予備試験平成23年度
1 請求原因は@D所有、AC占有である。
(1) @について、AB間の甲土地売買契約の意思表示は通謀虚偽表示により無効(94条1項)だから、Bは甲土地所有権を承継せず、したがってBD間の売買契約によってDは甲土地所有権を取得しないのが原則である。
しかし、Dは94条2項の第三者(当事者及びその包括承継人以外の者で、虚偽表示により作出された外観につき新たに独立した利害関係を有するに至った者)に当たるため、Aは無効をDに「対抗できない」。その結果、甲土地所有権はAからDに法定承継される。
したがって、@は認められる。
(2)Cは甲土地上に乙建物を建てて居住しているから、Aは認められる。
2 Cは占有権限の抗弁として賃借権を主張したい。具体的には@平成21年10月9日BD甲土地売買契約、A@に先立つ同年5月23日BC甲土地賃貸借契約、BBの甲土地所有権または所有者Aによる甲土地賃貸借の同意、C5月23日乙建物所有権移転登記による対抗要件具備(借地借家法10条1項)を主張立証することにより、CはBから甲土地賃借権を取得し、Dが甲土地所有権を取得したのに伴って賃貸人たる地位がBからDへ法定承継されたため、CD間に甲土地賃貸借契約が存在するという主張である。
問題はBの要件の立証である。他人物賃貸借契約も有効だが(559条、560条、601条)、他人物賃借人は所有者に賃借権を対抗できないと解されるから、この要件が立証できないかぎり、Cは所有者Dに対して賃借権を対抗できない。以下検討する。
(1)Bの甲土地所有権の立証の可否
前述のようにAB間の売買契約は無効なので、@のうちBの甲土地所有権を証明することができない。CはAB間の虚偽表示について悪意だから、94条2項の第三者にも当たらない。したがって、Bの甲土地所有権は立証できない。
(2)所有者Aによる甲土地賃貸借契約の同意の立証の可否
平成21年12月16日にA死亡によりBがAを単独で包括承継した(882条、896条)ことから、他人物賃貸借のAによる追認(116条本文)が擬制され、その結果遡及的に所有者の同意を受けた他人物賃貸借契約が行われたと主張することができる。そうすると、DはCの賃借権付の甲土地所有権を94条2項によりAから承継取得したことになる。
したがって、Cの上記抗弁は成立する。
3(1)Aの再抗弁
Aは再抗弁として、116条但書の第三者該当性を主張立証しうる。同条但書の趣旨は追認の遡及効により害される者を保護することと解されるから、「第三者」とは追認前に追認がない状態を前提として新たな法的利害関係を有するに至った者を言うと解する。DはA死亡による追認擬制前に、所有者による同意のない他人物賃貸借契約付の甲土地を前提として甲土地を買ったのであるから、「第三者」に該当する。
(2)Cの再抗弁に対する否認
Cとしては、以下のように反論したい。94条2項の第三者には法文上善意が要求されており、学説では無過失も要求することが有力であることとの均衡から、本件のDを116条但書の第三者として保護するためには善意無過失要件を要求すべきである。Dが甲土地を買い受けた時点で甲土地にはC名義の登記のある乙建物が存在し、Cが甲土地の引渡しを受けているのである。このような外観の甲土地を買い受けるDには甲土地に賃借権が設定されていないか調査する義務があったと解すべきであり、Dにはその調査義務違反の過失が認められる。したがって、Dは「第三者」に当たらない。
(3)私見
法文にない善意無過失要件を要求する解釈に無理があるため、Dは第三者に当たり、再抗弁は認められると考える。このように解しても、CはBに対してAから賃貸借契約に基づき所有権を取得する義務(559条、560条)違反の債務不履行による損害賠償請求(415条)ができるので、不当ではない。
4 以上より、Dは、Cに対し、甲土地の所有権に基づいて、甲土地の明渡しを求めることができる。 以上
(1) @について、AB間の甲土地売買契約の意思表示は通謀虚偽表示により無効(94条1項)だから、Bは甲土地所有権を承継せず、したがってBD間の売買契約によってDは甲土地所有権を取得しないのが原則である。
しかし、Dは94条2項の第三者(当事者及びその包括承継人以外の者で、虚偽表示により作出された外観につき新たに独立した利害関係を有するに至った者)に当たるため、Aは無効をDに「対抗できない」。その結果、甲土地所有権はAからDに法定承継される。
したがって、@は認められる。
(2)Cは甲土地上に乙建物を建てて居住しているから、Aは認められる。
2 Cは占有権限の抗弁として賃借権を主張したい。具体的には@平成21年10月9日BD甲土地売買契約、A@に先立つ同年5月23日BC甲土地賃貸借契約、BBの甲土地所有権または所有者Aによる甲土地賃貸借の同意、C5月23日乙建物所有権移転登記による対抗要件具備(借地借家法10条1項)を主張立証することにより、CはBから甲土地賃借権を取得し、Dが甲土地所有権を取得したのに伴って賃貸人たる地位がBからDへ法定承継されたため、CD間に甲土地賃貸借契約が存在するという主張である。
問題はBの要件の立証である。他人物賃貸借契約も有効だが(559条、560条、601条)、他人物賃借人は所有者に賃借権を対抗できないと解されるから、この要件が立証できないかぎり、Cは所有者Dに対して賃借権を対抗できない。以下検討する。
(1)Bの甲土地所有権の立証の可否
前述のようにAB間の売買契約は無効なので、@のうちBの甲土地所有権を証明することができない。CはAB間の虚偽表示について悪意だから、94条2項の第三者にも当たらない。したがって、Bの甲土地所有権は立証できない。
(2)所有者Aによる甲土地賃貸借契約の同意の立証の可否
平成21年12月16日にA死亡によりBがAを単独で包括承継した(882条、896条)ことから、他人物賃貸借のAによる追認(116条本文)が擬制され、その結果遡及的に所有者の同意を受けた他人物賃貸借契約が行われたと主張することができる。そうすると、DはCの賃借権付の甲土地所有権を94条2項によりAから承継取得したことになる。
したがって、Cの上記抗弁は成立する。
3(1)Aの再抗弁
Aは再抗弁として、116条但書の第三者該当性を主張立証しうる。同条但書の趣旨は追認の遡及効により害される者を保護することと解されるから、「第三者」とは追認前に追認がない状態を前提として新たな法的利害関係を有するに至った者を言うと解する。DはA死亡による追認擬制前に、所有者による同意のない他人物賃貸借契約付の甲土地を前提として甲土地を買ったのであるから、「第三者」に該当する。
(2)Cの再抗弁に対する否認
Cとしては、以下のように反論したい。94条2項の第三者には法文上善意が要求されており、学説では無過失も要求することが有力であることとの均衡から、本件のDを116条但書の第三者として保護するためには善意無過失要件を要求すべきである。Dが甲土地を買い受けた時点で甲土地にはC名義の登記のある乙建物が存在し、Cが甲土地の引渡しを受けているのである。このような外観の甲土地を買い受けるDには甲土地に賃借権が設定されていないか調査する義務があったと解すべきであり、Dにはその調査義務違反の過失が認められる。したがって、Dは「第三者」に当たらない。
(3)私見
法文にない善意無過失要件を要求する解釈に無理があるため、Dは第三者に当たり、再抗弁は認められると考える。このように解しても、CはBに対してAから賃貸借契約に基づき所有権を取得する義務(559条、560条)違反の債務不履行による損害賠償請求(415条)ができるので、不当ではない。
4 以上より、Dは、Cに対し、甲土地の所有権に基づいて、甲土地の明渡しを求めることができる。 以上
にほんブログ村 | にほんブログ村 |
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/4687614
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック