2016年02月01日
民法 平成22年度第1問
設問1(1)
1 Aは以下のように主張して甲絵画をBに戻して500万円の返還を請求することができる。
(1)意思能力(自己の行為の利害損得を把握する能力)のない状態で行われた意思表示は無効である。なぜなら、表示に対応する内心的効果意思が不存在だからである。錯誤に関する規定はこのことを前提にしている。つまり、錯誤があると表示に対応する内心的効果意思を欠くため、そのような意思表示は無効なのである。
Aは甲絵画の売買契約を締結した際、意思能力を欠いていた。したがって、甲絵画の購入を申し込む意思表示が無効であり、そうすると意思表示の合致が起こらないため契約は不存在ゆえに無効である。
(2)無効な法律行為に基づき履行された給付に対しては不当利得返還請求権(703条)が発生する。既履行の給付同士の返還は同時履行(533条)となる。
したがって、Aは甲絵画をBに戻して500万円の返還を請求することができる。
2 Bは以下の理由でAに対して甲絵画の返還を請求できない。
法律行為の無効は誰からでも主張できるとも思える。しかし、意思無能力を理由とした無効は表意者保護のための法的擬制であるから、主張権者は表意者及びその法定代理人に限ると解すべきである。
Bは表意者ではないから、無効主張は認められない。
設問1(2)
1 Aの請求に対し、Bは反対給付である甲絵画の返還請求権の履行不能による消滅を理由に、500万円の返還を拒絶することが考えられる。法的根拠は536条1項である。
2 これに対してAは、@536条は双方の債務が未履行の段階での対価危険や給付危険の分配を定めたルールであり、債権の巻き戻しの場面には適用できないこと、A債権の巻き戻しの場面では契約がなかった段階に戻すことが最優先され、その時に適用可能なルールは548条であること、B548条の趣旨から、甲絵画の滅失がAの責めに帰すものでない本件では、Aが反対給付を受ける権利は失われていないことを主張できる。これらは認められる。
設問2
1 成年後見人の行為は取消すことができる(9条)。成年後見人は被後見人の代理権を有する(859条1項)から、取消権者(120条1項)である。
しかし、取消すことができるのは「成年被後見人の法律行為」(9条)である。制限行為能力者制度の趣旨は@残存能力の活用に加え、A取引の相手方の保護でもある。制限行為能力者を予め登録しておくことにより、取引の相手方に当該取引が取消されうるものであることを示すものである。そうすると、取消しうるのは取引当時の成年後見人の行為であって、後に成年後見人になったからといって行為能力制限前の行為が取消されうるものに変わるわけではない。
したがって、Cは取消すことはできない。
2 意思無能力を理由とする無効主張は、前述のとおり表意者保護のためのものであるから、表意者の代理人である成年被後見人がすることもできる。
したがって、Cは無効の主張ができる。
3 追認とは、取消し得る行為が当初から有効だったことを認める意思表示である。したがって、本件のような無効の行為は追認によっても有効とはならない(119女本文)。追認時に新たな行為をしたものとみなされる(119条但書)。
もっとも、119条但書は追認権者の通常の意思を推定した規定であるから、任意規定であり、追認権者が法律行為を当初から有効なものとすることは差支えないと解する。
そして、成年後見人は、成年被後見人の行為の追認権者である(859条1項)。
したがって、Cは追認することができる。 以上
1 Aは以下のように主張して甲絵画をBに戻して500万円の返還を請求することができる。
(1)意思能力(自己の行為の利害損得を把握する能力)のない状態で行われた意思表示は無効である。なぜなら、表示に対応する内心的効果意思が不存在だからである。錯誤に関する規定はこのことを前提にしている。つまり、錯誤があると表示に対応する内心的効果意思を欠くため、そのような意思表示は無効なのである。
Aは甲絵画の売買契約を締結した際、意思能力を欠いていた。したがって、甲絵画の購入を申し込む意思表示が無効であり、そうすると意思表示の合致が起こらないため契約は不存在ゆえに無効である。
(2)無効な法律行為に基づき履行された給付に対しては不当利得返還請求権(703条)が発生する。既履行の給付同士の返還は同時履行(533条)となる。
したがって、Aは甲絵画をBに戻して500万円の返還を請求することができる。
2 Bは以下の理由でAに対して甲絵画の返還を請求できない。
法律行為の無効は誰からでも主張できるとも思える。しかし、意思無能力を理由とした無効は表意者保護のための法的擬制であるから、主張権者は表意者及びその法定代理人に限ると解すべきである。
Bは表意者ではないから、無効主張は認められない。
設問1(2)
1 Aの請求に対し、Bは反対給付である甲絵画の返還請求権の履行不能による消滅を理由に、500万円の返還を拒絶することが考えられる。法的根拠は536条1項である。
2 これに対してAは、@536条は双方の債務が未履行の段階での対価危険や給付危険の分配を定めたルールであり、債権の巻き戻しの場面には適用できないこと、A債権の巻き戻しの場面では契約がなかった段階に戻すことが最優先され、その時に適用可能なルールは548条であること、B548条の趣旨から、甲絵画の滅失がAの責めに帰すものでない本件では、Aが反対給付を受ける権利は失われていないことを主張できる。これらは認められる。
設問2
1 成年後見人の行為は取消すことができる(9条)。成年後見人は被後見人の代理権を有する(859条1項)から、取消権者(120条1項)である。
しかし、取消すことができるのは「成年被後見人の法律行為」(9条)である。制限行為能力者制度の趣旨は@残存能力の活用に加え、A取引の相手方の保護でもある。制限行為能力者を予め登録しておくことにより、取引の相手方に当該取引が取消されうるものであることを示すものである。そうすると、取消しうるのは取引当時の成年後見人の行為であって、後に成年後見人になったからといって行為能力制限前の行為が取消されうるものに変わるわけではない。
したがって、Cは取消すことはできない。
2 意思無能力を理由とする無効主張は、前述のとおり表意者保護のためのものであるから、表意者の代理人である成年被後見人がすることもできる。
したがって、Cは無効の主張ができる。
3 追認とは、取消し得る行為が当初から有効だったことを認める意思表示である。したがって、本件のような無効の行為は追認によっても有効とはならない(119女本文)。追認時に新たな行為をしたものとみなされる(119条但書)。
もっとも、119条但書は追認権者の通常の意思を推定した規定であるから、任意規定であり、追認権者が法律行為を当初から有効なものとすることは差支えないと解する。
そして、成年後見人は、成年被後見人の行為の追認権者である(859条1項)。
したがって、Cは追認することができる。 以上
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