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2016年02月06日

刑法 予備試験平成24年度

1 甲及び乙が、甲がX車を運転して乙の乗るY車に衝突させ、よって乙に頸部捻挫の怪我を押させた行為に傷害罪の共同正犯(60条、235条)の成否を検討する。
(1)車同士を衝突させる行為は人の身体に向けられた物理力の行使ではないから「暴行」(208条)には当たらない。しかし、同行為は乙の生理的機能を害しているから「傷害」(204条)に当たる。
(2)しかし、身体という保護法益は放棄可能だから、「人」とは他人を意味し、傷害の被害者を含まないと解すべきであるから、被害者乙は傷害罪の構成要件に該当しない。そのため、以降は甲の傷害罪の単独犯として検討する。
(3)甲及び乙は保険金をだまし取ることを謀議して上記行為に及んだのであるから、乙には傷害を受けることの同意があると言える。この同意が傷害罪の違法性を阻却するかが問題となる。
 被害者の承諾が違法性を阻却するためには、単に承諾があるという事実だけではなく、承諾を得た動機、・目的、傷害の手段・方法、損傷の部位・程度など諸般の事情に照らし、承諾が社会観念上是認されることが要件となると解する。
 本件のように、過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を詐取する目的をもって、被害者の承諾を得てそのものに故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせた場合には、その承諾は保険金を詐取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであって、これによって当該傷害行為の違法性は阻却されない。
 したがって、乙の同意は違法性を阻却しない。
(4)以上より、甲に傷害罪が成立する。
2 甲がX車をY車に衝突させ、Y車が前方に押し出した結果、Aを転倒させてけがを負わせた行為に傷害罪(204条)の成否を検討する。
(1)乙も問題文1の謀議行為に加わっている以上、甲を実行行為者とするAに対する傷害罪の共謀共同正犯となり得るとも思える。しかし、「人の」(204条)を「他人の」と解した以上、甲及び乙はおよそ傷害罪の謀議をしていないと解すべきである。したがって、以下では甲の傷害罪の単独犯の成否を問題にする。
(2)前述のように甲は傷害罪の実行行為を行い、結果も発生している。因果関係があるかが問題となり得るも、Y車に接触して転倒することで生じた傷害結果は凍結した路上で甲車を乙車に衝突させる行為の危険が現実化したものと言えるから、因果関係は認められる。
(3)しかし、甲及び乙は、乙以外の者に傷害結果を生じさせる認識がなく、故意(38条1項、犯罪事実の認識・予見)が阻却されないか問題となる。
 甲には、乙に傷害結果を生じさせる故意はあるのであるから、Aに傷害結果を生じさせた点は事実の錯誤のうち方法の錯誤の事例ととらえることができる。
 方法の錯誤が故意を阻却するかについて、故意責任の本質は犯罪事実を認識して規範に直面し、反対動機の形成が可能であるのにあえて実行行為に出た点への非難である。そして、規範は構成要件として与えられているから、同一の構成要件該当事実を認識・予見している限り故意は阻却されないと解すべきである。
 そして、故意の内容を上記のように抽象化する以上、故意の個数は問題とならず、一人に対する傷害の認識しかなくても複数の故意犯は成立しうると解する。このように解しても罪数処理で観念的競合(54条1項前段)とすればよいから刑が重すぎることにはならない
 そうすると、本件では甲にはAに対する傷害罪の故意も認められるという結論になる。この点、甲側は、大阪高裁の裁判例に倣って、後述のように保険金詐欺を共謀し傷害について同意のあるいわば味方である乙と見ず知らずのAとでは「人」(204条)として同価値とは言えず、故意の付合を認める根拠に欠けると主張しうるが、故意を構成要件レベルで抽象化する以上、人としての同価値性は故意の付合を認める要件ではないと解する。
(4)したがって、甲にAに対する傷害罪が成立する。
3 甲、乙及び丙が、共謀の上、保険会社の担当者Bに対し、保険金をだまし取ろうとした行為に詐欺未遂罪の共同正犯(60条、250条、246条1項)の成否を検討する。
(1)甲、乙及び丙は、問題文1のように、詐欺罪を共謀している(前述のように、傷害罪の共謀はしていない。)。
(2)甲及び乙が保険金支払いを請求した行為が詐欺罪の実行行為たる「欺いて」に当たるが、Bは錯誤に陥らなかったのであるから既遂にならない。
(3)丙は自動車同士を衝突させる以前から「俺は抜ける。」と申し向けて以後の犯行に関与していないから、丙は「共同して」(60条)とはいえないのではないか。丙に共犯からの離脱が認められるか問題となる。
 60条が実行行為者以外も正犯とする根拠は、結果に対する因果性を及ぼした点にある。そのため、因果性を除去したことが離脱の要件であり、具体的には物理的因果性と心理的因果性の双方を除去することが必要であって、心理的因果性の有無の判断には離脱の意思表明と了承の事実や離脱者と共犯者の関係等を考慮すべきと解する。
 本件では、丙は犯行時刻に犯行現場に現れず、「俺は抜ける。」と離脱の意思を表明している。甲と乙からの明示の了承はないものの、甲及び乙は、丙が離脱したものとして丙抜きで当初の計画を実行しているから、黙示の了承があったと認められる。また、本件の犯罪の主謀者は甲である。これらの事情から、心理的因果性は除去されているといえる。また、丙はX車を運転するという役割を担う予定だったものの、それは甲が代替できるものであったし実際に甲が代替している。そして、それ以外に丙が犯行の道具を供給していた事情もない。そうすると、物理的因果性も除去されていたといえる。
 したがって、丙は犯罪を「共同して」行ったとはいえず、共犯からの離脱が認められる。
(4)したがって、甲及び乙に詐欺未遂罪の共同正犯が成立する。  以上

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posted by izanagi0420new at 15:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑法
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