アフィリエイト広告を利用しています
ファン
検索
<< 2019年11月 >>
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
写真ギャラリー
最新コメント
タグクラウド
カテゴリーアーカイブ
プロフィール
ヨリちゃんさんの画像
ヨリちゃん
プロフィール

広告

この広告は30日以上更新がないブログに表示されております。
新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
posted by fanblog

2019年11月26日

悪化する日韓関係  今こそ読みたい『「歴史認識」とは何か』 故・大沼保昭先生に教えられた  歴史と向き合う「俗人」目線







 

 悪化する日韓関係  今こそ読みたい『「歴史認識」とは何か』

 故・大沼保昭先生に教えられた  歴史と向き合う「俗人」目線



              〜中央公論 11/26(火) 17:16配信〜


           11-26-32.jpg

 ◇大沼保昭氏◇ 東京大学法学部卒業 東京大学教授 パ リ大学・北京大学客員教授などを歴任 東京大学名誉教授 専門は国際法 著書に『人権、国家、文明』『東京裁 判、戦争責任、戦後責任』『「慰安婦」問題とは何だった のか』『「歴史認識」とは何か』など多数


 文 江川紹子(ジャーナリスト)

 自虐でも、独善でも無く
 
 「今、大沼先生が居て下さったら、今コソ、話を伺いたいのに」 日韓関係が抜き差し為ら無い状況に 陥って居るのを見ながらそう思う。国際法学者の大沼保昭・東京大学名誉教授は、昨年10月16日に亡く為った。
 学者として、日本の戦争責任・戦後責任の問題を掘り下げ、そ の知見を在日韓国・朝鮮人の人権に関する市民運動に惜しみ無く注ぎ込んだ。更に、戦時中に朝鮮半島出身者が日本人労働者としてサハリンの炭鉱に送り込まれ、戦後は日本国籍を失って取り残された問題では、帰還運動を支援し政治家にも働き掛け、故郷へ帰りたいと云う人の帰還を後押しした。
 
 従軍慰安婦問題では「女性の為のアジア平和国民基金」 (アジア女性基金)の設立に尽力し、 理事の一人として活動した。(詳細は 『サハリン棄民』『「慰安婦」問題とは 何だったのか』〔何れも中公新書〕 参照)
 そう云う活動や研究を通じて、国内外の幅広い層の知識人との繋がりを持った。日韓の歴史学者やメディア関係者からの信頼も篤かった。 だからだろう、取り分けメディアに対しては、日韓のドチラにも率直に苦言を呈する事が少無く無かった。

 私(江川)が聞き手と為り、大沼先生の話を伺ってマトメた『「歴史 認識」とは何か―― 対立の構図を超えて』(中公新書)が、この処 続けて版を重ねて居る。
 切っ掛けは、9月14日付の『朝日新聞』の読書面に掲載された、小倉紀蔵・京都大学教授(韓国哲学) のコラムだった様だ。小倉教授は「ここは一度冷静に為って、日韓を深層レベルで理解する必要がある」と書き、この本を薦めて下さった。 他に、既にお読みに為った方の口コミや、本屋さんの店頭で「自虐でも、独善でも無く」の帯を見て手に取ったと云う方もいらっしゃるだろう。

           11-26-31.jpg

 ◇江川紹子氏◇ 早稲田大学政治経済学部卒業 神奈川新聞記者を経てフリージャーナリ ストに 1995年一 連のオウム真理教報道で菊池寛賞を受賞 『「 歴史認識」とは何か』では聞き手・構成を務めた

 韓国の対応も「嫌韓」も可笑しい

 本書が出版されて四年経った今、 こうして新たに多くの読者を得て居る要因は、言うまでも無く、日韓の 関係悪化だ。その根っこには「歴史認識」を巡る対立がある。日本政府が韓国を輸出管理の「ホワイト国」から外したのも、元徴用工訴訟に付いて韓国側の対応に業を煮やし た結果である事は、幾ら政府 が別の理由を挙げても明らかだ。
 この日本側の対応に韓国は激しく反発。文在寅大統領は「二度と日本に負け無い」と宣言し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA) の破棄を決定した。韓国内では日本製品の不買運動が広がり日本への旅行者も激減した。政治的な対立が安全保障や経済に迄広がり、最早二進も三進も行か無い状況だ。

 双方のメディアも、夫々の国民の感情を煽る。韓国メディアは日本を「虐める強者」韓国を「虐められる弱者」と位置付け、日本 の「経済侵略」を糾弾する。更に、 来年の東京五輪を「放射能オリンピック」と呼び、東京電力福島第一原 子力発電所の事故の影響を殊更に膨らませて伝える等、国民の対日感情悪化を導いた。

 日本でも、テレビやインターネット、一部雑誌等で「嫌韓」コメントや、勇ましく「断韓」「国交断絶」を語る言説が持て囃される。 ワイドショーは、連日の様に韓国の法相のスキャンダルを取り上げ、 コメンテーターが「上から目線」で呆れて見せる。
 差別的・侮蔑的と思われる感情的な発言も飛び出した。 この様な番組作りは、韓国を叩いて置けば、それを喜ぶ視聴者が居て一定の視聴率が執れるからだろ う。しかし、そう云う情報発信を喜ぶ人達ばかりでは無い。

 日本の嫌韓には眉を潜めるが、 韓国の対応も釈然としない。静かに事態を見詰め乍ら、そう感じて居る人は、大きな声を出さ無いだけで案外多いのでは無いだろうか。そう云う方々が「歴史認識」の対立をどう理解し、解決の道を探したら好いのかを考える上で、本書を手に取って下さるのだと思う。
 そして、大沼先生の「ものの見方・考え方」 に触れ、見知らぬ土地を旅する為の地図と羅針盤を得た様に感じて居るのでは無いだろうか。私自身がそうであった様に・・・







 「やり残した事があるんです」
 
 私が、初めて大沼先生の謦咳に接したのは、2013年5月。この頃、 日本維新の会共同代表でもあった橋下徹・大阪市長(当時)が「慰安婦制度は必要だった」と述べて物議を醸して居た。それに関連して同氏は、沖縄県に駐留する在日米軍の司令官に「もっと風俗業を活用して欲しい」と勧め、批判されて居た。 (この発言は後に撤回し謝罪した)

 そんな中、私は大沼先生の『「慰安婦」問題とは何だったのか』を読み、アジア女性基金がどの様に実施され、何を成し遂げ、何を成し得無かったのかを知った。
 基金が設立されたのは1995年 7月。この年の3月には地下鉄サリン事件が発生し、私はオウム真理教問題で手一杯だった。基金に関しては、新聞やテレビの報道で知った程度。国の賠償では無く「民間基金」であり、だから「失敗」したと思い込んで居た。

 先生の本で、そうした認識の誤り が正されただけで無く、日本人の一人としてこの問題とどう向き合った ら好いのか「償い」とはどうあるべきか、基金の活動から何を教訓とするか......と云った様々な事を考 えさせられた。特に、メディアの責任に触れた部分は、ジャーナリズムの一隅に身を置いて居る者として、 心に響いた。私は、今の日本の状況 に付いて話を伺いたいと思い、当時 先生が教鞭を執って居られた明治大学の事務局を通して、インタビューを申し込んだ。
 先生の反応は素早かった。直ぐにOKの返事があり、その日の内にインタビューが実現。話の内容は、 Yahoo!ニュースに掲載した。

 この記事を読まれた作家の高橋源 一郎さんが「心を打たれた」と『朝日新聞』の論壇時評で取り上げて下さった。大沼先生の語り口に付いて、高橋さんはこう書いている。
 〈印象的なのは、静謐で、少し哀し気な喋り方だ。それは、大沼さんが、紙の資料や何等かの「正義」や証明したい「事実」では無く、生身の「慰安婦」達の姿を見て居たからだ。彼女達の呟きの一つ一つを、膝がくっ付く程の距離で聴いたからだと僕は思った〉
 この後、先生には何度かお目に掛かったが、2014年春、先生は病を得て入院された。或る日、入院中の先生から私に電話があった「一緒に食事をしましょう」

 病院に、ソコソコ美味しいレストランがあるとのこと。明るい声だった。私は、病気の深刻さも知らず、ウキウキと出掛けた。そこでご馳走に為り、私だけワインも飲んだ。 食後のお茶を頂いている時に、先生から最初の病院で癌が見逃され、症状が可なり深刻である事を聞いた。
 呆然として居る私に、先生はこう言われた。「やり残した事があるんですよ。歴史認識に付いて、一般の人達の為の本を出したい。でも、時間的 にも体力的にも可なり厳しい。江川さんに手伝って欲しいんです」

 具体的には、yahooo !ニュースに掲載したインタビューの に、先生が語る を、普通の市民に伝わる な形で て欲しいと云うご依頼だった。 こんな状況で、辞退したり判断を留保したりする訳にはいか無い。私はこう答えた。「お手伝いします。しますから、先生、絶対元気に為ってください」
 その後、抗癌剤治療が劇的に効いて、病巣は小さく為り、手術が可能に為ったと聞いた。何度かの入退院の後、少し体力を取り戻されてから、今度はランチのお誘いがあった。 そして「あの話だけど......」本音を言えば、聊か気が重か った。インタビューをするには、聞き手もそのトピックに付いて勉強して置か無ければ為ら無い。「歴史認識」と云う膨大なテーマで、大沼先生の聞き手を務める自信が無かった。

 でも、病院で約束した手前、今更辞退も出来無い。先生は、私の困り顔に気付かぬ振りで、出版社に連絡を取って企画を持ち込み、ズンズンと話を進められる。とても大病の後とは思え無いパワーに押されて、 私も覚悟を決めた。
 担当編集者のOさんが先生の論文や著書を集め届けて呉れた。その量に圧倒されながら、少しずつ読み進め、先生とも打ち合わせを重ねた。そして、一章分ずつ、先生のお宅でインタビューを行った。毎回、インタビューの日が近付くと、試験前に追い込み勉強をする学生に戻った気分であった。準備は大 変だったが、先生のお話を伺うのは、 知的な好奇心を刺激される、それはそれは濃密な時間だった。







 普通の人の視点で考える
 
 そこで先生が繰り返し述べられたのは「俗人」目線の大切さだった。

 〈歴史をどう認識・解釈するかは、「俗人」詰まり普通の人の多くがどう感じたか、と云う視点から考えるべきで、自分が出来もしない英雄的行動や高い倫理水準の観点から考えるべきでは無い〉
 〈社会と云うのは、好い事もすれば悪い事もする「俗人」と、極一握りの聖人と大悪人から為って居る(中略)ですから「歴史認識」を初めとして社会のあり方に関わる議論は、社会と云うものがこうした俗人から出来て居るのであって、聖人の行動を求めるべきでは無い、と云う認識を頭の片隅に置いて遣った方が好い〉


 韓国側の主張を全て受け入れ「無限に頭を垂れる」と云った聖人の様な振る舞いを求めるのは寧ろ偽善だ、とリベラル派を嗜める。その一方で「東京裁判」を批判する保守派に対して、欠点の多い裁判ではあるが、戦勝国も天使の集団では無く、多くの犠牲者を出した戦争の責任者を処罰無しで済ませる事は有り得ないし、遣った意議はあったと理を尽くす。
 自分の価値観や考えを「正義」と見做し、それを他者にも求める様な態度を先生は戒める。この姿勢は、日本の人々に対してのみ為らず、韓国や中国、更には欧米に向き合う時も一緒だった。対立する双方が、夫々の「正義」を貫徹しようとすれば、争いは何時までも続く。その為に人々の日常が犠牲にされ、新たな被害も出る。

 不正義を正そうとする志や努力は尊いけれど、人に取って大切なもの は「正義」だけでは無い。美味しい食事や親しい人との会話等、日常 の様々な出来事が、幸せで豊かな時 を持たらす。大沼先生は、こうした人の暮らしや人生を、心から大切に考えていらした。
 サハリンに取り残 された朝鮮半島出身者の帰郷や元慰安婦への償い等の活動でも、一人ひとりの当事者が、少しでも幸せな余生を過ごして欲しいと云う思いに突き動かされて居た様に見える。

 一人ひとりの暮らしや人生の大切さを考えれば、対立する双方のドチラもが満足せず、不満を残す様な決着が寧ろ望ましい。飽く迄 「正義」の実現を求める者には「悪」に見えるかも知れないが、大沼先生はこう語る。

大部分の人間は俗人だし、国家と云うのは「非道徳的な社会」ですから、人間よりもっと悪い行動を取る。世界で生きていく上で、私達は「よりマシな悪(lesser evil)」を求め、それを積み重ねて行くしか無いのです〉

          11-26-30.jpg

 大沼保昭著 (聞き手)江川紹子『「歴史認識」とは何か――対立の構図を超えて』(中公新書本体840円)

 立体的に物事を理解する
 
 もう一つ、先生を突き動かしていたものは、日本人としての矜持とこの国への愛だったと思う。過去の過ちを、戦後の日本国民がキチンと受け止め、誠実に対応し、次の世代に少しでも好い状態でこの国を引き継いで好きたいと云う姿勢は一貫して居た。
 だからコソ、歴 史の事実を否定する言動には「恥 ずべき態度」と厳しかった。一方、日本の対応にも誇るべき事柄はある と語り「ドイツは立派、日本はダ メ」と云った単純な見方には強く反論した。

 大沼先生の話を聞きながら、私は歴史を考える時だけで無く、社会で起きている様々な出来事を見る時にも大切な視座を学んだ。今の世の中では、兎角明確に正邪を切り分け、キッパリハッキリし た物言いが好まれる。問題の解決方法を見つけた様な、爽快な気分を味わえるからだろう。しかし、物事はそんなに単純では無い。日韓関係もそうだ。
 菅官房長官は両国の関係悪化に付いて「全て韓国に責任がある」と述べた。慰安婦問題に関する日韓合意に基づいて作られた財団を一方的に解散したり、元徴用工訴訟に関して日本が日韓請求権協定に基づく協議を要請しても応じ無かったり、確かに韓国側の対応には問題が多い。

 しかし、日本には何の責任も無いと胸を張って好いのだろうか。ソモソモは、日本の植民地支配や侵略戦争が引き起こした問題だ。日韓合意の後も、政治家が元慰安婦を「売春婦」呼ばわりする等「心からお詫びと反省の気持ち」(日韓合意) を疑われる様な事もあった。街中でヘイトスピーチが行われ、関東大震災時の朝鮮人虐殺を無かったとする言説も飛び交う等、人権や歴史を無視した言動も見られる。
 元徴用工に付いても、金銭支払いの責務は、日韓請求権協定で「解決済み」だとしても、過去のアジアに対する加害の事実は、次の世代にもっと確り伝える等、日本にも課題はあるのでは無いだろうか。

 だからと云って、鳩山由紀夫・元首相の様に「戦争被害者がもう謝罪し無くても好いと言う時迄加害者は謝罪する心を持た無ければいけ無い」と言うのはどうなのか。戦争や植民地支配に全く関与して居ない若い人達に、祖父母やその上の世代の行為についてズッと謝罪し続けろ、と言うのは、まさに聖人の振る舞いを求めるものではないか。
 こうして、どちらの問題にも目を配りながら、時にドチラからも距離を置いて物事を見詰め、考える事は「どっちもどっち」「どっちつかず」等では無い。一見、回り諄く、マドロッコシイ様に感じても、立体的に物事を理解し、私達が 「より増しな悪」に辿り着く為に、必要な作業だと思う。

 この本を通じて大沼先生から教わ った、この様な「ものの見方・考え方」を、私はこれからも大切にして行きたい。


         中央公論 2019年12月号より  以上








 【管理人のひとこと】

 何事かの発言をしたり、文章を書きそれを発表しようと云う時、人は簡単に自分の心の表層に現れた思いをツイツイ喋ったり記したりする。しかし、それを見聞きした人の事までは深く思慮したりはしない。何かの事で悲しんだり怒ったりした挙句に思ったママを表現したく為るのが素の人間だからだ。その為、時には多くの人から非難されたりバカにされたりする・・・そんな危険な状況に置かれる事もある。
 そんな思いで書いたのでも喋ったのでも無いのに・・・と言っても既に遅い。一旦表に出てしまい、それを見たり聞いた人が「何等」かの反応を受けた時、既にその次元で元々の発信者が全ての責任を取ら無くては為ら無い・・・それが、現在の世の中の掟だ。
 ・・・その意味において、この文章で考えさせられるのは、一つ一つの言葉の意味・重みを自覚し慎重に用いる事が如何に大切であるか。それを出来る人が如何に少なく貴重な人達なのかと云う・・・事を改めて思い知らされた。








◆■【信頼と安心】三井住友VISAカード キャンペーン実施中!■◆
┏………………………………………………………………………………………┓
  ●オンラインでのカード発行で、今ならオトクな特典が・・・。
    詳しくは、こちらをチェック!!
https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=2ZVXAQ+7N2A9E+1E32+6AZAR



大学入試改革、何故すべての道は「ベネッセ」に通じる? 受験産業が入試に関わる危険性




 



 

 大学入試改革 何故全ての道は「ベネッセ」に通じる? 

 受験産業が入試に関わる危険性



            〜デイリー新潮 11/26(火) 8:02配信〜


           11-26-9.jpg ベネッセホールディングス

 「大学入試改革」何故全ての道はベネッセに通じるのか? 

 大学入学共通テストに導入予定だった英語の民間試験は「身の丈」発言が波紋を拡げ、実施が見送られる事と為った。そして今度は、国語と数学の「記述式問題」にも教育界から疑問の声が上がる。採点者の質の確保や、採点の質をチェックする仕組みが無い為だ。(前回参照)
 
 今回、記述式問題の採点業務を61億円で落札したのは、ベネッセホールディングスの子会社・学力評価研究機構。衆院文科委員会では「(採点者は)アルバイトも居る。学生か社会人かは問うて居ない」(ベネッセの学校カンパニー長・山崎昌樹氏)との発言も飛び出し、採点への不安は高まって居る。

 だが、もっと心許無いのは、自己採点する受験生だろう。入試改革を考える会代表で中京大学教授の大内裕和氏が言う。「記述式問題は試験後に自己採点を正確に行うのが難しく、プレテストでは国語の自己採点と採点結果の一致率が7割程度に留まりました。受験生は採点結果が通知される前に出願する大学を決めざるを得ず、この不一致は、受験する大学の選択や合否予測に甚大な悪影響を及ぼします」
 英語民間試験は言うに及ばず、記述式問題も欠陥の塊である様な大学入試改革が、何故ロクに検証されずにここ迄進んで来たのか。改めて経緯を簡単に振り返って置きたい。

 産業界のニーズに応えて

         11-26-40.png おおたとしまさ氏

 「ソモソモ今回の大学入試改革案は、アベノミクスの第3の矢、成長戦略を議論する為に設けられた産業競争力会議から上がって来て、それに安倍総理の私的諮問機関の教育再生実行会議が、お墨付きを与えたもの。詰まり産業界のニーズに政界が応える形で進められた教育改革でした」

 教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、こう説明する。要は、子供を育てると云う教育が置き去りにされ、産業界の為の人材育成が進められて居たと云う訳である。
 教育再生実行会議は2013年10月、下村博文文科相(当時)を中心に第4次提言をマトメ、今の大学入試改革の方向性はそこで定まった。そこには

 〈センター試験を廃し、代わりに「達成度テスト(基礎レベル)(仮称)」と「達成度テスト(発展レベル)(仮称)」の2段階のテストを実施する。これ等は年間複数回実施する。これ等は1点刻みでは無く段階別の結果を出す様にする。外部検定試験の活用も検討する。コンピュータを使用した試験実施も視野に入れる〉

〈面接、論文、高等学校の推薦書、生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動、大学入学後の学修計画案を評価するなど、多様な方法による入学者選抜を実施し、これらの丁寧な選抜による入学者割合の大幅な増加を図る〉

 等と記されて居た。この内〈達成度テスト(発展レベル)〉が大学入学共通テストに当たり〈1点刻みでは無く段階別の結果を出す〉点が、記述式問題及び英語民間試験に繋がり、無論後者は〈外部検定試験〉でもある。

 では〈達成度テスト(基礎レベル)〉は消えたのかと云えば、高校の各段階で学習の達成度を測る「高校生の為の学びの基礎診断」として導入されて居る。

  「当初は大学入試センターがシステムを構築する筈だったのに、殆ど報道されずに民間に丸投げの方針に転換され、ベネッセ系の『ベネッセ総合学力テスト』やリクルート系の『スタディサプリ』等が認定されて居ます。しかも、16年3月に出された、高大接続システム改革会議の最終報告には、これが24年度以降、推薦入試やAO入試に導入される可能性が記されて居るんです」(おおた氏)

 第4次提言の〈生徒が能動的・主体的に取り組んだ多様な活動〉に付いては、どう為ったのか。

 「高校3年間の学習等の履歴を記録し、インターネットで大学に提出する為の『eポートフォリオ』として結実して居て、ベネッセとソフトバンクの合弁会社Classiもシステムを提供して居ます。今やベネッセは入試改革請負人と呼ぶべき存在です」(同)

 英語民間試験にはGTECが認定され、記述式問題の採点を請け負い、eポートフォリオを手掛け、高校生の為の学びの基礎診断にも関わるベネッセ。教育が置き去りにされた大学入試改革が、ベネッセに取って巨大なビジネスチャンスに為って居るのである。







 受験産業が入試に関わる

       11-26-41.png 安西祐一郎氏

 処で、くだんの記述式問題の導入に当たり、ベネッセ関係者は、可なり強引な発言を重ねて居た。中教審会長であった安西祐一郎氏は今年4月「正答率が低いのであれば、それは問題が不適切だからでは無く教育改革が進んで居ないからだ」「授業を変える事を目指すべきだ」等と言って居た。欠陥だらけの入試の為に教育を変えろと云う暴言である。

            11-26-42.jpg 鈴木寛氏

 又、下村文科相の下で文科省参与に就き、15年から18年まで4期に渉って文科相補佐官を務めた鈴木寛氏は2016年2月、記述式問題の採点について「人工知能研究に確り投資して、日本語処理能力を飛躍的に向上させれば、採点の手間も劇的に改善するでしょう」と述べて居た。

          11-26-43.jpg 都立西高校の萩原聡校長

 共に是が非でも記述式問題にシガミ付こうと云う発言だが、安西氏は今年3月まで、GTECを手掛ける進学基準研究機構の評議員で、鈴木氏は現在もベネッセグループの福武財団の理事なのである。英語民間試験導入に強く反対していた全国高等学校長協会の会長である、都立西高校の萩原聡校長「先日、記述式問題の採点をベネッセが落札しましたが、1社しか出来無い様な寡占的な状況はどうなのかと云う思いはあります。受験産業として遣って来たベネッセが、最近は入試そのものに深く関わる様に為って居ます。模試や教材から入試の実施に至るまで全てがベネッセ、と云う状況はどうなのかと思って居ます」 と疑義を呈する。続けておおた氏も言う。

 「ベネッセは今も全国の高校に営業して居ます。入試改革がこれだけ混乱して居る中、高校は、最も確かな情報を握って居るであろうベネッセの営業マンの言う事を聞か無い訳にはいきません。教員の方々はアラユルことがベネッセ漬けにされ、実質、ベネッセ一択だと悔しがって居ます。ベネッセが大学入試を請け負うのであれば、高校の教育現場からは手を引くべきでしょう。高校の学習と大学入試の双方に手を出して進む事は、企業倫理として許されるものでは無いと思います」
 
 しかし、改革の方向が噴飯ものでも、全てがベネッセに通じて居ても「ガバナンスの名の下に文科省の統制を受けて居るので、各大学は逆らえません。文科省は教育改善を促す為だと言って、各大学をキャリア教育やアクティブラーニング、シラバスの作り方等を通して採点し、それによって助成金の額を決めて居る。文科省のご機嫌を伺うしか無いのです」と某大学教授。

 文句を言え無い大学を尻目に、ベネッセが入試改革を請け負って居るのである。ちなみに、先に挙げた進学基準研究機構には、旧文部省と文科省から2人が天下って居る事が判って居る。今後の日本のあり方にも直結する入試改革を、何故ベネッセが一手に担う事が出来て居るのか。ベネッセホールディングスの安達保社長を直撃したが、ドンナ質問も一切無視し、記者と目も合わせずに自宅に入ってしまった。

 とまれ、揺り籠から墓場まででは無いにせよ、しまじろうから大学入試まで、日本の教育がベネッセ漬けに為るか否か。今我々は、その分水嶺に居る。


   「週刊新潮」2019年11月21日号 掲載 新潮社    以上






貴方のはじめての婚活を応援します
はじめる婚活 まじめな出逢い
*:.,.:*< スマリッジ >*:.,.:*

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=356SUZ+432376+46ZK+62ENN











なぜ今、現代財政理論なのか 意図的? 消費増税でも「カネ不足」政府にとっては好都合




 何故今 現代財政理論なのか 意図的?

 消費増税でも「カネ不足」政府に取っては好都合



         〜J-CAST会社ウォッチ 鷲尾香一  11/26(火) 7:00配信〜


      11-26-8.jpg 鷲尾香一氏


 2019年初めから、現代貨幣理論(MMT Modern Monetary Theory)と云う新たな経済理論がメディア等の盛んに取り上げられた。
 MMTの最大の特徴は「財政赤字に問題は無く、政府が財政再建を行わ無くとも、財政が破たんする事は無い」と云う考え方で、その成功例として、政府債務がGDP(国内総生産)の240%にも達しながらインフレにも陥らず、財政破たんもして居ない「日本」が取り上げられて居る為だ。

 日本は世界でも稀な「成功例」

 国内では、数年前から「政府総債務残高が家計純金融資産残高を上回無ければ、国債消化に困難が生じることは無く、財政危機が起きる事は無い」と云う考え方「現代財政理論」が、一部の学者やエコノミストの間で唱えられて居る。
 MMTでは財政に付いて、不況期には政府が借金をしても(財政赤字でも)政府支出を増加させる事で資金が民間に回り景気が回復すると考える。

 不況時の財政黒字は、民間に資金が回って居ない事を意味し、不況時に財政支出を行わ無いと不況は一段と深刻化すると云う考え方だ。そして「政府債務がどれだけ膨らんで、財政赤字と為ろうとも、財政再建を行わ無くとも、債務不履行に陥る事は無い」と理論付けて居る。
 その根拠として居るのが「政府は『通貨発行権』を持って居り、幾らでも通貨を供給出来る為、債務の期限が到来した場合には、通貨を発行して支払いを行えば好い」との考え方だ。詰まり「財政ファイナンス」を認める事を前提として居るのだ。

 現在の経済学の主流派は、財政ファイナンスを増税無しで生活が潤う事を欲する国民に対するウケの好さだけを狙う「ポピュリズム的」な政策に利用され易くインフレの加速を招き結果として国債価値の暴落によって通貨価値を毀損し、財政破綻のリスクを高めると、財政ファイナンスには否定的だ。
 又、MMTでは不況時に支出された財政資金は、好況時に徴税(税金)を通じて回収されるとして居り、景気の状況に応じて税率を変更すると云う考え方をして居る。これは、税金が物価のコントロールにも使われる事を意味する。

 例えばデフレ経済下であれば、減税を積極的に行う事で、財政出動と相まって景気を回復出来るとする。好況時にインフレ状態に為れば、増税を行う事で景気を冷え込ませ財政出動分を回収すると云う訳だ。但し、MMTには絶対条件がある。それは、自国に通貨発行権がある事や自国通貨建て国債を発行して居ることだ。

 萎むアベノミクス効果に、政府は補正予算の編成に意欲

 とは言え、現代財政理論には、幾つかの疑問がある。ソモソモ、政府総債務残高の上限が、何故、家計貯蓄なのかと云う点だ。家計が保有する国債は発行額全体の2%にも満た無い。家計からの貯蓄を受け入れて居る金融機関も資金運用の大半は国債以外のもので行って居る。詰まり、国債の消化能力を家計に置き換える根拠は見つから無い。
 寧ろ、国や自治体の方が国債で運用されて居るものが多く、更に家計の貯蓄を国債による運用の為の余剰資金と考える為らば、企業の内部留保の方が遥かに国債による運用の為の余剰資金としては妥当だろう。

 こうして見ると、MMTや現代財政理論が盛んに取り上げられる背景には、財政政策を出動させる為の「免罪符」を得ようと云う意図的な思惑がある様に見えてしまう。

 10月1日から消費税率が2%引き上げられて10%に為った。消費税率1%の引き上げは、約2兆円の税収増と為る。2%の引き上げでは約4兆円の税収が増加する筈だ。しかし、2019年度の税収は当初予想を大幅に下回る事に為ると予測されて居る。
 国民に負担を強いて消費税率を引き上げても税収は不足。その一方で、政府は2019年度の補正予算を編成して経済対策を打ちたい。アベノミクスの効果が萎んでしまったからだ。詰まり、政府に取って頼れるのは財政資金しか無い。「財政健全化」を黙殺する為にも、財政政策の規律を緩める財政理論は「勿怪の幸い」なのかも知れない。


           鷲尾香一     以上









 【関連報道】英米メディアも食い着いた! 「桜を見る会」突然中止の裏に「アノ人」の影

          
            〜J-CAST会社ウォッチ 井津川倫子 2019/11/15 07:00〜


〜首相主催で開かれる「桜を見る会」が、2020年度は取り辞めに為ると発表されました。安倍晋三首相の後援者が多数参加して「税金の私物化」との批判が殺到して居ましたが、何故、突然中止する羽目に為ったのか。早速、英米がその「真相」に注目して居ます。
海外が報じた「桜を見る会」の「注目ポイント」とは? 「桜を見る会」を語る英語フレーズも合わせてお伝えします〜



 「桜を見る会」突然の中止を英米メディアは、どう報じた

 英BBCは事実を淡々と並べ「えこひいき」と断言!

「桜を見る会」は、国の予算で毎年「新宿御苑」で開かれて居ましたが、安倍首相の後援者「招待枠」の存在や、ホテルニューオータニでの豪華前夜祭の様子等が明らかに為るに連れ、突然「中止」が発表されました。

日本国内のドメスティックな話題かと思いきや、意外にも(!) 海外のメディアがこのニュースに反応! 速報に近い形で「桜を見る会中止」を報じました。70年近く続いた行事の突然の中止は「裏に何かある筈だ」との疑念を抱かせた様です。先ずは英国BBC放送の見出しから。ストレートに、「えこひいき」と報じています。

 Japan cancels cherry blossom party amid cronyism accusations 日本は、依怙贔屓批判の真っ只中で、桜を見る会をキャンセルした (cherry blossom party桜を見る会 amid〜の真っ最中に cronyismえこひいき・身びいき accusations非難・批判)

 英BBCは「桜を見る会」を「cherry blossom party」として居ます。直訳すると「桜パーティー」ですね。それにしても「えこひいき」とは随分とストレートだなと思って記事を読むと「東京から1000キロメートルも離れた地元(山口県)から850人も招待した」と、首相が沢山の支援者をワザワザ「遠方から」呼び寄せた事を強調して居ました。
更に「花見は日本人に取って特別な文化」「桜の満開は4月の足った2週間」等「桜を見る会」が如何にスペシャルなものかを紹介して、首相の支援者が「特別に配慮された」事を仄めかして居ます。 確かに「1000キロメートルの遠方から、ワザワザ花見にご招待」とは「えこひいき」の印象を強くします。 事実を淡々と述べながら「問題点」を浮き彫りにする・・・英国人らしい、皮肉の効いた報じ方だと感心しました。

 米国では例のアノ人の為に「桜の木をブッタ切り」

米国のメディアは別の見方をして居ます。ニューヨークを拠点とする情報通信社ブルームバーグは、安倍首相が米国との貿易協定の為に「桜の木を切った」と断じました。

 Japan's Abe axes cherry blossom in bid for U.S. trade pact 日本の安倍首相は、日米貿易協定の為に桜の木を斧で切った〜桜を見る会を中止にした (axe斧で切る・終わらせる・壊す in bid for〜の為に U.S. trade pact米国貿易協定) 

 米ブルームバーグは、今国会での安倍内閣の最優先事項は米国との「貿易協定」を承認する事であり、その為の「障害」を取り除く目的で「桜を見る会」を中止にしたと断言して居ます。更に背景には、ウクライナ疑惑で窮地に立たされて居るトランプ米大統領の存在があり、喉から手が出る程「疑惑を打ち消す成果」を欲しがって居るトランプ大統領が「貿易協定の締結」を急いで居ると云うのです。と云う事は、日米貿易協定はヤッパリ「米国に有利」な内容だと云う事でしょうか?
それでは「今週のニュースな英語」は「桜を見る会」を伝える英語フレーズをご紹介します。施肥、使ってみて下さい。

 Prime Minister Shinzo Abe canceled cherry blossom party 安倍晋三総理大臣が「桜を見る会」を中止にした (publicly funded公的予算で・国の予算で The publicly funded event with a nearly 70-year history70年近い歴史を持つ・国の予算で行われるイベント) 

 The abrupt decision came after scandals in Abe's cabinet 安倍内閣のスキャンダル発覚の後、突然決断された (abrupt decision突然の決断 Abe cabinet安倍内閣

 Many of Abe's supporters were invited to the last event 多くの安倍首相支援者が昨年のイベントに招待されて居た (invite招待する supporters支援者たち)

 にしても、一向に収束する気配の 「桜を見る会」騒動。中止の判断が吉と出るか否か、 まだまだアツイ報道合戦が続きそうです。


            井津川倫子    以上






保険のコンシェルジュと言われる保険専門のFP(ファイナンシャルプランナー)が、
あなたのライフプランに合った保険をご提案。
保険ゲートは、全国で150人以上の厳選されたFPの方々と提携しています。
すでに保険に加入している方の保険見直しや、これから新しく保険に加入したい方も、
ご自身・ご家庭に合ったプランをきっと見つけられるはずです!

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=2ZVXAQ+8UIXF6+46QY+5YZ77









イギリスの完全水道民営化って成功例なの?  岸本聡子




 イギリスの完全水道民営化って成功例なのか?


             〜岸本聡子  2019/03/03 18:15〜

 この記事は2014年に労働組合に依頼されて書きました。数年経った今、英国の水道民営化事情のアップデートをして居て、この記事がオンライン上に無い事に気が付きました。既に2014年の時点で英国の民間水道の信頼は崩壊して居た事が判ります。今日の水道民営化の議論の一助にとノートで発表します。

 11-26-18.jpg


 1989年イギリスはサッチャー政権下で、電気、ガス、通信、鉄道、航空に続いて水道サービスの民営化を行いました。
 当時、河川流域毎に10に別れた国営の地域水管理会社があり、総合的な水管理、サービスを供給して居ました。これ等が完全民営化(民間売却)されたのです。正確にはイングランド、ウェールズの地域水管理会社の完全民営化で北アイルランド、スコットランドは公営を守りました。
 ウェールズはその後2000年に非営利の協同組合形式に転換して居ます。なので、この先はイングランドの完全民営化と呼びます。

 上下水道サービスは自然独占なので、サービス利用者の利益を保護する為、価格とサービス基準を規制するオフワット・OFWAT Office of Water Servicesが設立され、水質基準には他の機制機関が担当して居ます。
 イングランドの完全民営化は、官独占に競争原理が導入され、独立の機制・監視機関が機能して居る成功例と度々紹介されて居ますが、果たしてそうでしょうか?

 今日、イングランドの民間水道会社は大手メディアの批判に晒されて居るだで無く、批判的な検証が多くの研究機関から発表されて居ます。そして最近の世論調査では70%の国民が再公営化・国有化するべきだと言って居るのです。市民がそう願う理由がタップリあります。完全民営化から25年、完全民営化の現実を見て行きましょう。

 現在、イングランド民間水道会社の多くは、プライベート・エクイティー・ファンド(訳注) かアジアの多国籍企業が所有して居ます。この形態の基でイングランドの民間水道会社は、年間で約3500億円(£2 billion)の純利益を挙げて居ます。
 一方で、水道サービスへの投資は利子の低い公債を借り入れて居ます。この意味は、もし水道会社を国有化すれば、一世帯の水道料金は年間で14000円(£83)20%安く為ると云う事です。

 (訳注)プライベート・エクイティ・ファンド・ Private Equity Fund は、複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金を事業会社や金融機関に投資し、同時にその企業の経営に深く関与して「企業価値を高めた後に売却」する事で高いIRR・内部収益率を獲得する事を目的とした投資ファンドである。

 もう少し具体的に知る為に首都ロンドンに行きましょう。ここに水道会社の金融化の好例があります。テムズ・ウォーター社(以下テムズ・ウォーター)は英国最大の上下水道サービス会社でロンドンを含むテムズ川流域の1500万人(英国の人口の27%)にサービスを提供して居ます。







 複雑化するテムズ・ウォーターの所有形態と金融化

 テムズ・ウォーターは最早水道会社の体を失いロシアのマトリョーシカ人形の様に為って居ます。民営化から25年経った今、テムズ・ウォーターは億万長者銀行と揶揄されるオーストラリア投資銀行マッコーリーに率いられるコンソーシアムに所有されて居ます。
 持株会社の株式持ち合いが繰り替えされ、結果として水道サービスを供給する会社と最終的な株主との間に現在5つの中間会社が存在して居ます。その内2つが市場で資金を調達し、その内の一つは租税避難地(タックス・ヘイヴン)であるケイマン諸島に在るのです。この形態で株主利益第一、消費者が最後と云う構造が出来上がって居ます。

 過剰な借入れと株主配当

 ロンドンでは下水施設の許容量が間に合わ無い為、一部適切に処理せれ無いママ下水がテムズ川に放出される状態が続いて居て、国際基準にも抵触して居る危機的な状況です。
 テムズ・ウォーターは川下70メートルに20マイルのトンネルを作り、処理した下水を海に放出する施設投資を行う必要を長年認識して居ますが、その費用は約7000億円(£4bn)と見積もられて居ます。2012年、テムズ・ウォーターは511億円(£279.5m)を配当金として株主に配分しました。
 一方で同年テムズ・ウォーターが収めた税金は0。好く使われる手法ですが、過剰な借入れを行い利子払いで赤字を計上する事で税金を回避出来ます。

 ヨーロッパ開発銀行の専門家の試算によると、もし過去10年間テムズ・ウォーターが株主配当を行わず、代わりにその資金を積み立てて居れば、公的資金借入れも水道料金値上げも無しに下水施設近代化の為の7000億円が在った筈だと報告しました。
 健全な資金運営を行う為らば、テムズ・ウォーターの背後に居るプライベート・エクイティ・ファンドの価値は2006年から2/3に留まるべきですが、実際には価値が10倍に為って居ます。事実2007年から12年の5年間の内3年間、株主は税後の純利益よりも多い配当金を得たのです。

 これが意味する処は過剰に配分した利益は単に会社の債務に為って居るのです。5年間で債務は約2倍の1兆3500億(£7.8bn)に膨れました。
 新しく規制機関オフワットのトップに就任したジョンソン・コックスは水道会社が危険な迄の負債を抱えて居る事を危惧して居ます。1ポンドの資本に対して4ポンドの借入れをするのは、危険なだけで無くそれが税金納入回避の為に行われて居る事、結果として負の影響を受けて居るのは水道サービス利用者であると指摘しました。

 危険な迄の過剰な資金の借入れは、近い将来倒産する危険性が大いにあり、そう為れば金融危機で銀行が破錠したのと同様に公的資金での救済と云う事に為りかねません。ちなみにこの様なリスクは公営のスコットランド水道公社には全くありません。

 研究者は「巨大なレベレッジ債務は消費者が負担する水道料金の値上がりと云う犠牲によって、投資家への過剰利益還元を可能にして居る。勿論株主だけで無く、企業の管理職、夫々の中間会社の間に居る法律家、会計士、金融業者もその恩恵を多大に受けて居る。テムズ・ウォーターの最高経営責任者は2億2300万(£1.29m)の報酬を得た」と報告。テムズ・ウォーターの5年間での配当金の合計は約3118億円(£1.8bn)です。

 残念ながらテムズ・ウォーターだけで無く他の民間水道会社も似たり寄ったりの経営をして居ます。例えばイングランド南岸地域でサービスを供給するサウザンウォーターはサウザンウォーターキャピタルに所有されて居ましたが、2007年にLtd JPモルガン・チェースが率いるコンソーシアムに買収されました。Ltd JPモルガン・チェースは2012年に約4318億円の純利益を挙げました。

 この様な事実は2012年後半から2014年現在まで英ガーディアン紙等が数々の記事を発表し人々の知る処と為ったのです。この批判は大企業擁護、新自由主義で知られるフィナンシャル・タイムズ(FT)でも大きく取り上げています。有料記事でリンクが張れませんが。

 英ガーディアン紙 
 Thames Water: the drip, drip, drip of discontent Renationalise English water Thames Water – a private equity plaything that takes us for fools Water companies pay little or no tax on huge profits
 ファイナンシャルタイムズ紙 Thames Water attacked for paying not a drop of tax, June 10, 2013


 シンクタンクCentreForumが2013年に出したレポート「お金は排水口へ 水道産業から消費者を守る為に」は上記の様な現象を詳しく検証・分析します。
 このレポートは又イングランドの水道民営化において公益性を確保する為の規制機関オフワットが効果的に機能して居ると云う楽観的な認識を打ち壊すものでした。と云うのもこの政策提言レポートはオフワットの前会長イアン・バイアット(Sir Ian Byatt)の支援を受けて、民間水道会社の金融活動を痛烈に批判して居るからです。

 レポートによると株主への利益還元を最大化する為の戦術は、国外に資金を逃す構造的な税金逃れの仕組みと、意図的に過剰に借入れをしてインフラ整備の為に資金拠出が出来無いと云うレベルまで負債を膨らませると云う戦術で成り立って居ます。
 好例が上記のテムズ・ウォーターで、何年も巨額の利益を上げながら、下水施設の近代化の費用は納税者に新規の負担を求めて居るのです。

 民間水道会社の過剰な投機行為は水道利用者に負のドミノ効果を持たらしています。水道料金の値上げは過剰に借り入れた負債の利子の支払いの為に必要で規制機関はそれを容認せざるを得ません。民間水道会社に取ってオフワットに5年毎の料金値上げの上限(cap)を挙げさせるのは容易です。
 どの様にするかと云うと、民間水道会社は先5年の資本維持費用を高く申請し、実際にはその可なりを使わ無いで、利益に回すと云う事を過去25年間遣って来ました。結果ロンドンの下水処理施設は今に至って老朽したママです。

 CentreForum は水道と云う市民の生命と健康に取って重要な産業において、又市民に供給者の選択の余地の無い独占産業で、市民が過剰な料金を払わされれた上に株主が巨額の利益を持ち去ると云う状況は社会的に容認する事が出来無いと言って居ます。議会と規制機関が水道産業により厳しい規制を要求するべき時期に来て居ます。

 ソモソモ水道民営化は、経済性と管理が公営より優れて居ると云う主張に基づいて導入されます。経済性の恩恵は、投資の拡大、公的資金より高い価値があるとされる民間企業による投資、公営より優れて居るとされる民間による効率性の向上が説かれます。
 管理に付いては、規制機関が消費者を過剰料金から守り、政治から独立した規制機関が政治に左右されず長期的な視点で管理を行い、市場による適切な競争が消費者に利益を持たらすと主張されます。

 民営化大国のフランス・イギリスにおいて、これ等の前提が悉く実現して居ない実証的な研究が、様々な研究機関から発表されて居ますが、特にグリニッチ大学(ロンドン)の国際公務労連研究ユニット(PSIRU)は長年に渉ってイングランドの完全民営化を包括的に検証して来ました7。以下はPSIRU のレポートを中心に様々な論点を見て行きましょう。







 水道料金

 水道民営化と料金高騰には相関関係が無いと主張する機関は多いですが、国際公務労連研究ユニット(PSIRU)によると、フランスでは民営水道は公営水道より料金が16%高いと云う調査結果があります。民営化による水道料金高騰は全世界的な現象ですが、英国でも同様です。
 現金ベースで見ると 1989年に平均年間£120 (20800円)だった水道料金負担は2006年には£294(51000円)17年間で 245%の上昇となっています。民営化後17年間で、他の物価上昇の平均よりも水道料金は39%高く為りました。
 この上昇傾向は続き2007〜2008年の世帯平均料金(水道・下水)は£312(54000円)インフレ率を差し引いた実質値上げ率は1989年比で42%です。一方で水道運営コストは変わって居ません。これは料金高騰の結果が株主の利益に還元されて居る事を表します。

 他の統計ではこの10年間で電気料金は140%増、水道料金は74%増に為りました。この時期の世帯の収入増は20%です。又スコットランド、ウエールズ、イングランド間の興味深い比較もあります。
 2012年1月に規制機関オフワットは向こう5年間の水道料金値上げ率を発表しました。これによるとイングランドの民間会社の平均値上げ率は8.2%で、ウエールズ の非営利水道会社の Glas Cymruは3.8%、公営を保って居るスコットランドは値上げ無しです。

 この違いは水道会社の所有形態から来て居ます。公営のスコットランドは株主への配当圧力がありません。結果2009年からの5年間、価格維持を発表するに至りました。 ウエールズは2001年に民間企業 Hyderが潰れて協同組合経営に為り、2010年9月の料金は前年比で£4安く為りました。テムズ・ウォーターの値上げ率は6.7%、別の民間会社サウザンウォーターは8.2%です。

 この値上げ率を理解するもう一つの統計を紹介しましょう。シンガポールの水道公社PUBは世界でもトップクラスの水道サービスを提供する事で知られて居ます。そのPUBが最後の水道料金値上げをしたのは2000年。2000年以来、平均世帯収入は31%増加しました。水道料金は据え置きなので、実質料金は低下して居り、世帯収入に占める水道料金の割合は1%以下と為って居ます。

 水貧困

 水道料金を巡る状況は深刻です。2012年にヨーク大学の研究者がマトメた「イングランドとウェールズにおける水貧困」の研究結果によると、民営化から25年経った現在、英国で23.6%の家庭が家計の3%以上を水道料金に当てる結果に為っており、その内半分は5%以上を払う結果に為って居ます(2009〜2010年の統計)
 国連開発計画(UNDP)は水道料金が家計の3%を越えると「支払い困難」だとして居て、この数値は米環境保護庁によると2〜2.5%と為って居ます。この「水貧困 water poverty」に特に低所得世帯、単独世帯が陥って居ます。

 効率性と生産性

 民間は公営よりも効率的であると主張され多くの人がそれを信じて居ますが、学術機関による2008年の包括的な研究は「コストと効率性において民間と公営に違いは見付けられ無い」とし、2004年、2005年の国際通貨基金(IMF)と世界銀行(民営化を推進する国際機関として知られる)の包括的な研究結果も同じ結論に達して居ます。
 
 イギリスの民営化後11年の検証では「最新技術の導入にも関わらず民間による効率性は民営化以前の公営より低下した」と結論づけられました。
 水消費者協議会が定期的に行っている消費者満足度の調査の結果によると、テムズ・ウォーターは金額に見合う価値・下水処理サービスの満足で最下位に近い成績です。一方で ウェールズは2000年に非営利の協同組合形式に転換しDwr Cymruが設立されサービス供給を行って居ますが、こちらはホボ全ての項目でトップに近い結果と為って居ます。

 漏水率

 ガーディアン紙の記事によると1980年のイングランドの漏水率の平均は24%、現在の平均は22%(2013年)です。1989年の民営化後、オフワットは漏水率を3分の1にする事を目指して居たが全く実現して居ません。
 イングランド4大手の2012年の漏水率は以下の通りです。テムズ・ウォーター26%、セブントレントウォーター 27%, ユナイテッド・ユーティリティー 26%, ヨークシャーウォーター25%. 東京都水道局のが3.3%、大阪市水道局が6%代と云う値を見てもイングランドの漏水率の高さが分かります。この様に民営化の英国の民間企業の漏水率は高水準のママです。

 2006年、テムズ・ウォーターとセブントレントウォーター は両社で約345億円(£200m)を漏水率を下げる為に投資することを余儀無くされました。

 ファイナンシャルタイムズ紙 UK water companies struggle to plug leakage rates November 3, 2013

 オフワットが両社の漏水率低下への取り組みの悪さを「許容外」と判断した為です。2004-2005年当時のテムズの漏水率はロンドン地域で40%、それ以外で33%、セブントレントウォーターは26%でした。
 近年、漏水率を下げる為に更なる水道料金の値上げを要求する民間水道会社とオフワットの間で鬩ぎ合いが起きて居ます。水道利用者が漏水率削減の投資の為に今以上の料金を払うのに反対して居るからです。2012年、オフワットは21ある民間水道会社の内の半分は2015年迄漏水率をさげ無くても好いと云う結果を下しました。2011〜2012年に掛けての25年来の干ばつで水不足に悩む中のでこの決定は批判に晒されました。

 民間水道会社のロビーイストは「漏水率を低下させる為の投資と消費者の支払い能力のバランスを取ら無くては為ら無い」と最もらしい事を言って居ますが、上記した様に民間水道会社は年間3500億円(£2 billion)の純利益を挙げて居て、合計で約2600億円(£1.5bn)を株主配当して居る(2011〜2012年)事実を忘れてはいけません。
 民間水道会社に取っては漏水率を下げるインセンティブは乏しく、オフワットは「今後気候変動による異常気象で益々水の安定供給が難しく為る中で、強制され無くても水道会社が長期的視点をもって漏水率を積極的に下げて欲しい」とボヤイテ居ますが、ここに機制機関が民間会社を規制する難しさが見て取れます。







 投資

 民間企業による水道システムへの投資が期待された一方で、世界的に見てそれは実現から程遠い結果に為って居ます。上記した様に英国でも水道セクターへの投資は依然として公的資金が使われて居ます。民営化下のフランスでは「公的資金による投資が主で民間による投資は全体の僅か12%」と云う結果を省庁が2009年に出しました。
 テムズ・ウォーターの下水処理施設への過小投資だけで無く、漏水率を下げる為の適切な投資が行われて居ないのは上記した通りです。

 競争とカルテル

 水道民営化は独占的なサービスなので競争による価格低下の恩恵を持たらしません。実際 には契約獲得の際でさえ、民間企業は競争を避ける傾向が報告されて居ます。イングランドでは未だかつて競争入札は行われた試しがありません。
 フランス、スペイン、イタリアと中央ヨーロッパの国々の多くの都市で民営化の最初の契約は競争入札無しで始まって居ます。フランスに至っては、三大大手(スエズ, ヴェオリア、 SAUR )が談合の疑いで2012年にEUの監査を受けました。
 今年2014年は民営化から25年で契約終了の年ですが、契約終了するのに25年前に告知し無くて行けないと云う新しい条項の為、契約は半自動的に更新されて居ます。これに対して英国とEUの競争庁が独占禁止を問題視していないのは可笑しいな事です。

 汚職

 民間水道会社による汚職の例は幾らでもありますが、イギリスのセブントレントウォーターの不正行為もその一つです。セブントレントは規制機関に偽りの数字を提出して、料金値上げの許可を得、結果として一年間に約72億円(£42million)を消費者に過剰請求した事が発覚しました。この様な不正イングランドの他の会社も行って居ます。

 まとめ

 機制機関が利用者保護(価格、サービス)や水質管理と云った公共性を担保し、企業が競争性を発揮する事でイングランドの民営化は成功して居ると云う論調が日本の専門家の間で実しやかに話されて居る様ですが、現実がそう単純でも楽観でも無い事は明きらかです。
 イングランドの完全民営化は他に見る事の無い極端な民営化の形態です。民間水道会社の組織形態と経営が複雑化、金融化、不透明化する中で、利用者の利益が後回しに為る処ろか、利用者の負担増で株主が利潤を最大化する構造が作られて居ます。
 過剰資金借入れやタックスヘイブンを利用した租税回避は社会全体の利益の対極です。異常気象で干ばつ、洪水が頻発する今日的な環境において、長期的な視点での水源管理や投資は益々重要性を増して居ますが、民間水道会社にこの分野で活躍を期待するのは虚しいばかりです。

 官民連携を含み水道民営化は企業と公的機関の責任の範囲を巡って幅広い形式がありますが、非常に公共性の高い水道の様な社会サービスを利益追求の論理の下に置く事、社会発展、公衆衛生、環境保護、消費者保護等の公共政策が直接及ば無く為る根本的なリスクは同じです。
 イングランドの水道は完全民営化によって、水道サービスが行き着く処まで行ってしまった例として直視し、大阪の議論の批判的材料にするべきだと私は思います。



            11-26-17.jpg        

 岸本聡子  オランダ アムステルダムの政策研究NGO トランスナショナル研究所(TNI)の研究員 2001年にオランダに移住 現在ベルギー在 新自由主義に対抗する公共政策研究するPublic Alternatives プロジェクト担当 趣味はジョギング 料理 空手のトレーニング(沖縄剛柔流)

                以上






保険のコンシェルジュと言われる保険専門のFP(ファイナンシャルプランナー)が、
あなたのライフプランに合った保険をご提案。
保険ゲートは、全国で150人以上の厳選されたFPの方々と提携しています。
すでに保険に加入している方の保険見直しや、これから新しく保険に加入したい方も、
ご自身・ご家庭に合ったプランをきっと見つけられるはずです!

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=2ZVXAQ+8UIXF6+46QY+5YZ77





  







香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと




 香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人 に伝えたい大事なこと


          〜ダイヤモンド・オンライン 11/26(火) 12:15配信〜


      11-26-10.jpg

   香港区議会選挙で初の過半数獲得を果たしたことを喜び合う民主派の人々 
           Photo:Billy H.C. Kwok/gettyimages



 香港の区議会選挙で 民主派が初の過半数獲得

 11月24日、香港区議会(地方議会)選挙が実施された。デモ隊と香港警察の対立が激化し、選挙が中止に為る事が危ぶまれたが、当日は大きな混乱は起き無かった。投票率は前回(2015年)の47%を遥かに上回り、中国返還後に行われた選挙で最高の71%に達した。

 そして、民主派が452議席の約9割に達する390議席を獲得する歴史的な勝利を収めた。民主派が過半数を獲得したのは初めてで、改選前に7割の議席を占めて居た親中派との立場は完全に逆転した。
 民主派は、改めて「五大要求」の実現を要求し、抗議行動を継続すると表明した。しかし、香港政庁とその背後に居る中国共産党が容易に折れるとは考えられ無い。今後の問題は、民主派がどう要求を実現して行くかだ。

 「デモに対する支持率が低下」と語る 日本の識者の好い加減さが露呈

 日本では、テレビや新聞、雑誌、インターネット等のメディアで「識者」と称する人達が「デモによる暴力で、香港経済や市民の生活にダメージがあり、デモに対する支持率が低下して居る」と云うコメントをする事が少なく無い。しかし、それは全く現地の事を知ら無い人が、日本語で好い加減な事を言って居るだけと云う事が明らかに為った。
 香港で行われて居る世論調査では、民主主義を求める若者に対する支持は全く下がって居なかった。だが、この事実は、何故か日本のメディアで取り上げられる事が非常に少なかった。今回の選挙で、香港市民は民主派を圧倒的に支持して居る事が明らかに為った。「デモによる暴力」を批判して居た日本の識者の皆様には違和感がある結果だろう。筆者は、彼等に言いたい事がある。

      11-26-3.jpg 周庭(アグネス・チョウ)氏

 筆者は、選挙の前に香港の「民主の女神」周庭(アグネス・チョウ)さんとSNSのメッセンジャーで遣り取りをした。その際、強い印象が残ったのは、彼女が「私がこの運動が始まってから好く思うのは、民主主義と自由がある国の人達が、自由の無い生活を経験した事が無いのに『暴力はダメよ、支持しませんよ』と云うのは、一寸傲慢なのではないか。私達だって、暴力を使いたく無いですよ」と言った事だ。

 この連載では、中国共産党が「香港の中国化」を目指し、圧力を強める事で、香港市民が自由を奪われ、暴力を使う事でしか民主主義を守る手段が無い処まで追い詰められた事を、詳述して来た。(本連載第213回)
 雨傘革命後、筆者がアグネスさん等民主派の若者達に初めて会った時、彼等は「香港の選挙は『AKB48の総選挙』の様なもの。民主的に行われて居る様に見えて、実は秋元さんが全部決めて居る。香港の選挙も中国共産党が全部決めて居る」と言い、この状況下では「暴力しか無い」と訴え掛けて来た。(第116回)

 それでも彼等は「デモで選挙制度は変えられ無かったが、将来を自分達で決めたいなら若者の政党を作るべきだ」と訴えた。彼等は「活動家」から「政治家」に進化しようとした。(第141回)
 そして、2016年9月4日に行われた香港立法会選挙で、民主派の若者等が6議席を獲得した。彼等を含む「反中国派」全体で30議席を得て、法案の否決が可能に為る立法会定数70議席の3分の1(24議席)以上を占める画期的な勝利と為った。
 しかしその後、彼等は中国を侮辱する言動を行ったとして、議員資格を取り消されてしまった。アグネスさんは2018年4月の香港立法会議員の補欠選挙に弱冠21歳の現役女子大生として立候補しようとしたが、当局によって立候補を差し止められた。

 彼等の政治家に為ろうとする志は、香港政府とその背後に居た中国共産党によって踏み躙られる事に為った。そして、この件に象徴される、中国共産党・香港政庁による民主派に対する一連の「弾圧」は、民主化運動の中心メンバーだけでは無く、多くの若者を深い絶望に陥れ「暴力」を肯定せざるを得ない処にまで追い込んだのだ。

 この背景を理解する事無しに、自由と民主主義を生まれながらに謳歌して来た人が、シンプルに「暴力はいけ無い」と言うのは、浅はか過ぎると断ぜざるを得無い。勿論、筆者も「暴力」は肯定しない。しかし、香港の「暴力」に付いては、民主派の若者に全く責任は無い。彼等を徹底的に追い詰めた中国共産党・香港政庁にこそ「暴力」の全責任があると最大級の非難をして置きたい。

 香港政庁・中国共産党が 区議会選挙の実施を恐れた理由とは?

 香港区議会に付いては、地域の法律や予算を決める強い権限は持って居らず、公共サービスや福祉と云った地域の問題に付いて政府に提言する諮問機関の様な役割しか無い。従って、今回の選挙の結果は、香港の情勢に大きな影響を与え無いと云う人が居る。しかし、その見方は、正しいとは言え無い。

 香港政庁・中国共産党は、今回の区議会選挙を延期出来無いか、ズッと模索して居たとされる。デモ隊と警察の衝突の激化で、選挙の安全な実施が困難だからと報道される事が多かったが、そんな単純な理由では無い。
 香港政庁・中国共産党は、選挙当日に為れば市民は皆、デモを行わず選挙に行く事を当然、予測出来た筈だからだ。実際、衝突等全く起きる事は無く、整然と選挙が実施された。香港政庁・中国共産党が本当に恐れたのは、今回の選挙結果が「香港行政長官選挙」に与える影響だ。

 香港行政長官は、不動産や金融等35業界の代表と立法会議員・区議会議員ら1200人で構成される「選挙委員会」の投票で選出される。
 行政長官選挙に立候補するには「選挙委員」の内、150人以上の推薦が必要であり、当選するには過半数の得票を得る必要がある。これ迄、選挙委員は親中派が多数を占めて来た為、事実上民主派の候補者は立候補すら出来無い仕組みと為って来た。
 しかし、選挙委員の内区議会枠(総数117)は、区議会議員の互選で選ばれる。今回の区議会選挙で民主派が9割を占めたので、区議会枠は親中派から民主派に変わる事に為る。互選がどう云う形に為るかは不明だが、仮に117人の9割だとすると、民主派は105人云う事に為る。

 又、20年9月には「立法会選挙」が実施される。これは区議会選に比べて、民主派が躍進するには高い壁がある。定数70の内直接選挙で選ばれるのは35議席だ。残る35議席は職業別代表枠で、間接選挙によって選ばれるが、殆どが親中派である。
 その上問題なのは、直接選挙が「比例代表制」である事だ。区議会選は、勝者と為る党派が実際の得票数よりも多くの議席を獲得する傾向にある「小選挙区制」だった。実際、今回の区議会選は、民主派が9割の議席を獲得したが、得票数は6割程度だったのだ。

 「比例代表制」の場合は、シンプルに云えば6割の得票数だと6割の議席を獲得する事に為る。仮に、民主派が今回と同程度の支持を集めたとすると、立法会選挙の直接選挙35議席中21議席の獲得に留まる。定数70の内の21議席なので、区議会の過半数には遠く及ば無い事に為る。
 只、立法会議員はそのママ行政長官選挙の選挙委員と為る。21人の民主派が立法会枠から加わる事に為ると、選挙委員会1200人中、区議会枠と合わせて民主派は126人程度と為る。すると、立候補者を出す為に必要な選挙委員150人の推薦を実現するハードルが、可なり下がる事に為る。

 そして、ここ迄ハードルが下がってしまうと、中国共産党に取っての「不測の事態」が起こり兼ね無く為る。現在、親中派と見られる人達も、民主化支持の世論を気にして、中国共産党と距離を置いて居ると言われる。
 仮に2022年の次期行政長官選挙の際にその様な状況に為ったら、選挙委員会の中から、親中派・民主派双方の幅広い支持を得られる様な、開明的なリーダーが立候補して行政長官に当選し、中国共産党が香港の行政をコントロール出来無いと云う事態も起き兼ね無い。だから、中国共産党は、その切っ掛けと為る懸念がある今回の区議会選の実施を嫌がったのだと言える。

 香港の状況を劇的に変えられるのは 「財界」である

 しかし、それは飽く迄中国共産党に取っての「不測の事態」であり、民主派に取っては「希望的観測」に過ぎ無いだろう。リアリスティックに考えれば、香港の状況を劇的に変える事が出来るのは「財界」である。(第223回・P6)
 財界が民主派に寝返れば、行政長官選挙の「選挙委員」は民主派が圧倒的多数派に為る。詰まり、民主派の候補者しか当選出来無い制度に代わってしまう事に為るのだ。

 だが、アグネスさんに聞いてみたが、財界の動きは「分から無い」と云う。財界に付いて話題を振っても反応が鈍い。恐らく、現在の処民主派と財界の間に接点は無いのだろう。財界は完全に親中派と見做されて居るので、民主派が安易に接触すると、動きが筒抜けに為ってしまう恐れがある。信用出来無いのだろう。
 日本的な感覚で考えれば、民主派の若者の中に財界と交渉出来る様な「寝業師」は居ないのかと言いたく為る。恐らく、居ないのだろう。リーダー不在の「水の革命」)の難しさが露呈して居ると言えるのかも知れない。(第214回)

 香港出身のアクション映画スターであるブルース・リーが語った格言「Be Water・水の様に為れ」にちなんだ、今回の香港の民主化デモの通称。リーダー不在で臨機応変にデモ活動の形を変える事に由来する。

        11-26-4.jpg 

            ルパート・ホッグ前最高経営責任者(CEO)

 一方、財界側は民主派の抗議行動に対して、静観を貫いて居る。只、今回の抗議行動が始まって以降、中国共産党は、香港の民間企業に対する圧力を徹底的に強化して居る。
 例えば、中国政府はキャセイパシフィック航空に対して、デモに関わった従業員を職務に就かせ無い様に強く要求し、実際にデモに参加した操縦士2名が解雇された。又、同社のルパート・ホッグ前最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれ。キャセイパシフィックの元操縦士で立法会議員のジェレミー・タム氏も同社を退社した。

 英公共放送「BBC」のカリシュマ・ヴァスワニ・アジア経済担当編委員は「キャセイの話は、香港でビジネスをする企業が、中国が何を欲するかを勘案しないとどう為るかを示す教訓と言える」と指摘する(BBC NEWS JAPAN「香港デモ、苦しむキャセイ航空『会社が恐怖に包まれている』」)だが、静観を貫く財界は内心、中国共産党に対する強い不満を募らせて居ると云う。何か、起爆剤と為る事が起きれば、財界は動くかも知れない。

 香港財界を動かす可能性を感じさせる 米議会の「香港人権・民主主義法案」

 そして、財界を動かす可能性を感じさせるのが、米議会が可決した「香港人権・民主主義法案」だ。現在、米中貿易交渉が佳境を迎えて居る(第211回)。ドナルド・トランプ米大統領は法案に署名するかどうか態度を明らかにして居ない。
 だが、仮にトランプ大統領が拒否権を発動しても、上下両院の3分の2が賛成すればこれを覆す事が出来る。この法案は素でに、ホボ全会一致で可決されて居り、大統領が署名しなかった場合でも、問題無く成立すると見られる。

 香港人権・民主主義法は、米国務省が年1回、香港の「一国二制度」が保証され、香港の「非常に高度な自治」が維持されて居るかを確認し、米国が香港に通商上の優遇措置と云う「特別な地位」を付与するのが妥当かどうかを判断するものだ。
 もし、香港で人権侵害等が起きた場合、その責任者には米国の入国禁止や資産凍結等の制裁が科せられる。そして、通商上の優遇措置が撤廃されれば、香港は中国本土の都市と同じ扱いを受ける事に為る。

 これは、只でさえ不調に陥って居る中国経済に大打撃を与える事に為ると指摘されて居る。中国では、資本取引が全面的には自由化されて居ない。中国の対内・対外直接投資の6〜7割は香港経由である。
 又、2008年から2019年7月まで、中国企業が香港市場で株式新規上場し資金調達した金額は1538億ドルで、中国市場全体の3148億ドルの約半分である。更に、中国企業が2018年に海外市場で行ったドル建て起債1659億ドルの33%を香港の債券市場が占めて居る。(岡田充「米中代理戦争と化した香港デモ。アメリカの『香港人権法』は諸刃の刃になるか」Business Insider Japan )

 中国経済における香港の重要度は以前と比べると下がって居ると言われるが、未だに多くの部分を依存して居ると言える。勿論、香港への優遇措置見直しは、米国経済にもダメージを与えるものだ。
 だが、貿易戦争は双方が不利益を受けるものであり、問題はドチラにより大きな損害があるかだ。米中貿易戦争でより大きなダメージを中国が受けた様に、香港が中国本土と同じ扱いと為れば、中国がより深刻な損害を受ける事に為ると考えられる。

 区議会選が終われば、中国共産党は再び全国人民代表大会常務委員会が前面に出て香港への関与の姿勢を強めると見られて居た。デモの鎮圧には、より強硬な手段が講じられるとの懸念も出て居た。だが、米国が香港人権・民主主義法を発動するかどうかは、中国共産党に対する極めて強い牽制と為るだろう。
 そして、香港人権・民主主義法が施行されれば、香港の財界は中国共産党に従属する「親中派」のスタンスを変えざるを得無く為るかも知れない。

 香港に対する優遇措置が維持され無ければ、民間企業はビジネスを続ける事が出来無い。しかし、前述のキャセイパシフィック航空の様に、中国共産党からの圧力に屈する姿を米国に見せてしまうと、一国二制度は維持されて居ないと見做されて、米国が法律を発動する懸念が出てしまう。財界も又、従来通り「親中派」のママで言いのか、難しい判断を迫られる事に為る可能性がある。
 要するに、香港政庁・中国共産党と民主派の間で膠着状態が続く香港の抗議活動を動かせるとすれば、それは香港財界と米国と云う事に為る。

 この連載では、次の様に論じた事がある。(第223回・P6)2014年の「雨傘運動」は、行政長官選挙の選挙委員会を親中派が占めて、民主派は立候補すら出来無い制度の理不尽さに反発して起きた。
 だが、香港財界が民主派を支持すると決断すれば、雨傘運動の若者達が目指したものの大部分が、長い戦いの末に実現する事に為る。この事を改めて強く主張したい。香港財界には、一国二制度を守る為に、歴史的な決断を下して貰いたい。


             11-26-5.jpg

          立命館大学政策科学部教授 上久保誠人    以上


 



 



 








水道民営化は世界でトラブル続出 日本は英国の成功例に学べ



 水道民営化は世界でトラブル続出 日本は英国の成功例に学べ


      〜政治・経済 News&Analysis 福田晃広 清談社 2018.10.23 5:00〜


         11-27-1.jpg 

          グローバルウォータ・ジャパン代表 吉村和就氏

 〜2018年7月5日、衆議院で可決した水道法改正案。この先、水道事業も民営化を進めて行くと云う政府の方針に、ネット上では「国民の命に関わる水を民間に委ねるなんて馬鹿気て居る」との声も目立つが、実際はどうなのか。グローバルウォータ・ジャパン代表で国連環境テクニカルアドバイザーの吉村和就氏に聞いた〜


 モノ・ヒト・カネ無しの三重苦に 喘ぐ日本の水道事業

 安易な水道民営化は、深刻な副作用を持たらします。世界では民営化を進めた結果、水道料金が跳ね上がったり、水質やサービス低下によって死者が出る等、深刻な副作用が出て居る。今回の水道法改正案は、多くのメディアで水道民営化法と紹介されて居るが、それは「コンセッション方式」を導入し易くする事が盛り込まれて居る為で、法案には民営化と云う言葉は一切使われて居ない。

 コンセッション方式とは「地方公共団体が経営する原則を維持しつつも、民間企業に運営権を売却出来る仕組み」の事。詰まり公設民営であって、水道の所有権は現状と変わらず官側にあるものの、実際の水道事業(浄水場の維持管理・水質検査・料金徴収等)に関して民間会社に任せるのだ。
 しかし、何故このタイミングで水道法改正が急ピッチで進められたのか。その背景に付いて、吉村氏は以下の様に説明する。

 「以前にも一度審議未了で流れた水道法の改正案ですが、6月18日に発生した大阪北部地震で、設置してから50年以上も経っている老朽化した水道管が破裂し、約26万人以上が断水被害を受けた事により、一気に審議入りし、衆議院を通過したのです」(吉村氏 以下同) 
 更に吉村氏は「水道施設の老朽化対策が改善され無いのは、水道料金収入の減少と事業を担う人材不足によるものだ」と云う。

 「今般の水道法改正案の趣旨にも繋がりますが、既に寿命を迎えて居る水道管や浄水場を改築・更新する事すらママ為ら無い状態にあるのは、水道事業経営による料金収入が人口と共に減り続けて居て、過去10年間で2000億円も減収して居るからです。
 定年退職の増加もあって、経験とノウハウを持った水道職員数も減少傾向で、30年前と比べると3割減で現在5万人を切って居ます。官側の人材不足と技術が引き継がれて居ない為、民間の力を借りて官民連携にすべきと云う声がここに来て上がったのです」


 水メジャーによる買収で料金上昇も 世界では「再公営化」がトレンド

 吉村氏によれば、水道民営化に積極的な宮城県の村井嘉浩知事は、上下水道・工業用水を合わせて官民連携すれば、今後30年間で335〜546億円のコスト削減が見込め、現行体制と比較して「コンセッション方式」の方が総事業費をどれだけ削減出来るかを示すVFM・Value for Moneyも現在価値換算で166〜386億円と云う試算を出して居る。

 但し、水道民営化は決してメリットばかりでは無い。注意すべきなのは水メジャーと呼ばれる、上下水道事業を扱う国際的な巨大企業の存在だ。1990年代、世界銀行が途上国に対して水道インフラ事業に融資する際、水道民営化の義務付けを推し進めた。米国等先進国でも水道民営化が進んだが、その副作用は大きかった。

 「1兆円以上の売り上げと豊富な自己資金を持つ、フランスや英国等の水メジャーが参入した事で、ボリビア・フィリピンのマニラ・インドネシアのジャカルタ・米国のアトランタ等で、水道料金が2〜5倍値上げされました。その上に、水質やサービスの低下が生じて、死者が出て訴訟問題に発展した地域もあります。その為、2000年から2015年の間に世界37ヵ国で民営化されて居た水道235ヵ所が再公営化(民から官へ)に戻りました」

 水道料金収入が減って居るとは言っても、現状でも料金収入2兆3000億円の市場規模がある日本も、水メジャーに狙われて居る市場だ。
 では何故水メジャーが日本市場に注目するのか?2013年4月、米国のCSIS・戦略国際問題研究所で、麻生太郎副総理が「日本の水道は全て民営化します」と国際社会に向けて発言したからだ。吉村氏の元には日本の総合商社のみ為らず、フランスの水メジャーからも問い合わせが来たと云う。

 水道民営化の先駆者・英国に見習うべし 第三者機関によるチェックは必須

 副作用の大きい水道民営化だが、それでも日本の水道事業の現状を見ると、水道事業体の半数は赤字経営であり、民間の力を借りざるを得無いと吉村氏は指摘する。それでは、水メジャーに対してはどの様に対応すべきなのだろうか。吉村氏は、1989年から水道民営化に取り組んで来た英国を見習うべきだと云う。

 「当時首相だったサッチャーは『必ず民間会社は利益を追求し、その結果サービスの低下・料金の値上げをするだろう』と見越し、2000あった水道事業体を21の会社にして広域化を行なった上、国がチェックする機関を3つ創設したのです。
 1つ目は、サービスの調査と料金改定の審査等をするOfwat2つ目は、水質を監視・管理・指導するDWI3つ目は、税理士や法律の専門家、ジャーナリスト等180人がOfwatとDWIを逆チェックするCCWater
 日本もこの様な第三者機関を設置し無ければ、水メジャーだけでは無く、国内巨大企業に好き放題遣られ、世界一安全な日本の水道水が維持出来無い事も十分あり得ます」


 又、吉村氏は民営化を推進する前に遣るべきことが有ると云う。

 「それはズバリ水道事業の広域化・統合化です。1400の地方自治体夫々が水道事業を行うと云う現状の運営方法は無駄が多い。1都道府県に付き1水道事業体にする、その上で資金繰り・人手不足の解消・効率化等を目指しIoT化を推進する。先ずはこちらが先決すべき課題でしょう」
 
 評論家・山本七平(筆名イザヤ・ペンダサン)は「日本人は水と安全はタダだと思って居る」と述べた。しかし、そう思えた時代はトウニ過ぎて居るのだ。


                 以上













世界中で進む水道民営化!  成功した国・ドイツの市場経済に偏り過ぎ無い政策とは?




 世界中で進む水道民営化!  

 成功した国・ドイツ の市場経済に偏り過ぎ無い政策とは?



 




             〜BEST TIMES 11/25(月) 17:01配信〜


          11-26-1.jpg

 〜此処、日本でも課題とされて居る「水道事業への民間参入」先立って、導入して居る国々の中でも、そのスタイルは国毎に違いがあり、それによって「水道民営化」の評価も分かれて来る。今回はドイツの「水道民営化」の事例を紹介する(日本の「水」が危ない 六辻彰二 著より)〜


 ドイツ・・・市場経済に偏り過ぎ無い民間参入

 先進国の中で「水道民営化」による問題が比較的少ないのがドイツだ。2011年のドイツ水道局の資料によると、上下水道の64%は民間事業者によって経営されて居る。又、ドイツにも水メジャーと呼べる大企業はあり、巨大エネルギー企業で世界屈指の水企業でもあるRWEは、ドイツ国内で630万人以上に給水して居る。(三井物産戦略研究所)
 しかし、ドイツでは水の安全が総じて保たれて居るだけで無く、水道料金の上昇率もインフレ率を下回り続けて来た。

 勿論、ドイツも水道事業の再公営化の波と無関係では無い。トランスナショナル研究所等の報告では、2000年から2014年迄の間に、世界全体での水道再公営化180件の内、ドイツのものは8件含まれる。この内1件は、首都ベルリンのものだった。
 ヨーロッパを代表する都市の一つベルリンでの再公営化は、パリのそれと並び、水道再公営化の波を象徴する。但し、上水道の30%下水道の24%が民間事業者によって経営されて居るフランスで49件の再公営化が発生した事に比べると、ドイツの8件は頻度が随分低い。

 何故、ドイツでは水道事業への民間参入が進みながらも、他の国より問題が少ないのか。結論から云えば、市場経済に偏り過ぎずに民間参入を進めて居るからである。その象徴は「ベルリン・モデル」と呼ばれる手法だ。
 これはベルリンの再公営化にも関わる事なので、先ずその名の由来に為ったベルリンの「水道民営化」に付いて見て置こう。







 ベルリン州は1998年、民間投資家との共同出資により、上下水道公社の経営を行うベルリン水道持ち株会社を設立した。ベルリン州と投資家の出資比率は、それぞれ50・1%と49・9%で、これによって民間企業に水道事業の経営を委託しながら、自治体がこれを監督する事が可能と期待された。
 これをベルリン・モデルと呼ぶ。フランスやアメリカの水道事業でコンセッション方式の導入が広がり始めた1990年代、ドイツでは単純な規制緩和への根強い反対意見があり、自治体の関与が強いベルリン・モデルはこれを反映したものだった。

 但し「本家」ベルリンではその後、ベルリン・モデルが衰退した。1999年、ベルリン水道持ち株会社の49・9%の株式がRWEとヴェオリアの企業連合に買収され、その後ベルリン当局との非公開の協定により経営権が企業連合に委託されたのだ。
 「ドイツ史上最大のPPP」と呼ばれたこの契約には、ベルリン州が民間投資家に8%の配当を28年間保証する内容も含まれて居た。この株主配当が重荷と為り、設備投資の不足と料金の高騰が発生した為、市民からの強い批判を受け、2011年には契約内容の公開を求める住民投票が実施される事態と為った。

 住民投票の結果、賛成多数でヴェオリアへの配当保証を含む契約内容が公開されると、抗議運動は更に加熱した。高まる批判に、ベルリン当局は翌2012年にRWEから、2013年にヴェオリアから、夫々株式を買い戻す事に合意せざるを得無く為ったが、この為に13億ユーロの負担を余儀無くされ、その分が再公営化後の水道料金に上乗せされる事に為ったのである。
 これが反面教師と為り、ベルリン・モデルは寧ろドイツの多くの地方都市で維持され、コンセッション方式は一部の大都市に限られて来た。ベルリン・モデルの最大のメリットは、当事者同士の間で情報格差が小さく、プリンシパル・エージェント問題が発生し難い事で、これによって安全面・コスト面での問題の発生が、全面的で無いにせよ抑えられて来たと云える。

 更に、民間の水道事業者が利用者から直接料金を徴収する場合は、連邦カルテル庁等公的機関の監督を受け無ければ為ら無い。但し、公的機関と民間企業の言わば共同経営だと、特定の地域での独占営業に為り易く、競争原理が働き難いと云う批判もあり得る。
 これは或る程度、ドイツの事例にも当て嵌る。ドイツの水道事業では純粋な企業間の競争も、或はイギリスで行われているヤードスティック規制(一定区域で独占的に事業を行う企業各社が相互にパフォーマンスを評価し、低パフォーマンスの企業にはペナルティを科す制度)も働か無い。

 その一方で、ドイツでは、水道事業に参入する民間事業者に、様々なレベルでの監査・監督が義務付けられて居る。先ず、民間事業者は当然、入札で競争に晒される。次に、民間事業者は自治体によって価格面のパフォーマンスも査定される。
 自治体が事業者の情報を常時把握して居るベルリン・モデルでの査定は、民間企業に事業を丸投げし易いコンセッション方式の基での査定より厳格なものに為る。又、自治体間で相互のパフォーマンスを比較するベンチマーキングも導入されて居る。こうした様々な制度を指して、ミュンヘン大学IFO経済調査研究所のヨハン・ワッカーバウアー上級研究員は、ドイツの水道事業で「半競争」が働いて居ると表現する。

 とは言え、ベルリン・モデルが民間事業者を実質的に監督し易く、プリンシパル・エージェント問題を発生させ難いとしても、これが何処にでも輸出出来るかは別問題だ。自治体が十分な能力と権限を備えて居なければ、ベルリン・モデルは成立し無いからである。
 言い換えると、ベルリン・モデルは市場経済に傾き過ぎ無いだけで無く、連邦制で自治体の独立性が高いドイツならではのものと言える。


              11-26-2.jpg

              文 六辻彰二     以上







貴方のはじめての婚活を応援します
はじめる婚活 まじめな出逢い
*:.,.:*< スマリッジ >*:.,.:*

https://px.a8.net/svt/ejp?a8mat=356SUZ+432376+46ZK+62ENN








×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。