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2016年05月06日

憲法 予備試験平成24年度

設問1
 次の2点を主張する。
 @罷免を可とする裁判官に×をつけさせるのみであり、信任する裁判官に○をつけるのを認めない国民審査法15条は、「審査に付」すことを定めた憲法79条2項に違反する。
 A国民審査法に罷免を可とする裁判官が実際に罷免される手続規定がないことは、「罷免される」ことを定めた憲法79条3項に違反する。
設問2
1 @について
 憲法79条2項は、最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。と定めている。
 この規定は裁判官のリコール制を定めたものとするのが1952年の判例である。そうすると、解職のための制度であるから、解職する裁判官に×印をつけるだけで十分だということになり、現行の法15条は適法ということになりそうである。
 しかし、そもそも憲法79条2項の趣旨は、最高裁判所の裁判官の任命等に民主的コントロールを及ぼすことである。
 この司法に対する民主的コントロールについて詳述する。憲法は国民主権(前文1項、1条)を定めているが、憲法が定める三権(第4章国会、第5章内閣、第6章司法)のうちの司法は、具体的争訟について法を適用し宣言することによってこれを裁定する国家の作用であるから、多数決の方法を用いる政治部門の民主的コントロールには性質上なじみにくい。しかし、国民主権原理からは、司法権に対しても国民の意思が全く反映されないというのも適切でないし、国民から遊離した司法権(議員内閣制を採用する我が憲法の下では、内閣の構成員ですら国民は間接的にしか決められないため、その内閣によって任命される最高裁判所の裁判官は国民から遠すぎると言える)が行う法の適用・宣言に正当性を付与する必要性もある。そのため、司法に対する民主的コントロールの目的で79条2項が規定されたと考える。
 以上の意味での民主的コントロールという趣旨からは、憲法79条2項をリコール制を定めたものと結論するのは必然ではない。また、同条前段は任命後間もない段階での審査でありリコールするか否かの判断材料に乏しいため、リコール制と解するのは適切でもない。
 したがって、同条の趣旨は、内閣及び天皇がした最高裁判所の裁判官の任命(79条1項、6条2項)を国民が確認することと解する。
 そうすると、確認のためには不適切な裁判官に×をするだけでは足りず、適切な裁判官に○をつけさせるべきである。
 さらに、仮に同条がリコール制を定めたものであるとしても、不適切な裁判官に×をつけるだけで足りるとの帰結は必然ではない。解職に反対する裁判官に○をつけることを認めることもリコール制の帰結として考えられ、また、そうするほうが民主的コントロールという趣旨に適合的である。
 したがって、現行の15条は憲法79条2項に違反し、無効である。
2 Aについて
 憲法76条3項の「罷免される」という文言からは、実際に国民審査で解職される裁判官がいるというのが憲法の想定である。しかし、法にはその手続規定がない。
 この結論は憲法76条3項の趣旨をリコール制とみた場合はもちろん、任命の確認とみた場合も導ける。国民によって直接に不適切だと確認された裁判官には、在職する正当性がないからである。
 罷免の手続規定は他の規定とは可分だから、この規定がないことによって現行の国民審査法すべてが違憲無効となることはないが、この規定がないことは憲法79条3項に違反する。  以上


posted by izanagi0420new at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成22年度第1問

 A県の条例は洗髪設備なしの理容所の営業の自由を侵害し違憲無効である。以下に理由を述べる。
1 22条1項は公共の福祉に反しないかぎり職業選択の自由を保障しているが、職業は継続的活動であるとともに分業社会においては社会的機能分担の活動たる性質を有するから人格的価値と不可欠である。このような職業の意義に照らすと選択のみならず遂行(営業)の自由も同条で保障されていると解すべきである。
 もっとも職業は社会的相互関連性が大きいため公共の福祉による制約を精神的自由におけるよりも強く受ける(二重の基準の理論)。ここで公共の福祉とは人権相互の矛盾衝突を解消するための実質的公平の原理とする(一元的内在制約説)が通説的だが、人権を制限できるのが他の人権だけであると解するのは狭すぎて妥当でなく、それぞれの権利を制約するに足りる質を持つ限り様々な制約根拠はあり得ると解する。そして職業は千差万別だからそれに対する制約も各種各様である。そのため、ある規制が22条1項の公共の福祉によるものか否かは、規制の合理性があるか否かによるべきであり(合理性の基準)、国民の生命・自由の保護という消極目的の場合は規制の目的が公共の福祉に適合するものであり、規制の手段が目的と関連性を有し、合理性、必要性が認められるか否かによって判断すべきである(厳格な合理性の基準)。一方、経済の調和的発展のための積極目的の場合は、目的が正当で手段が著しく不合理でないかを検討すべきである(明白性の原則)。
2 理容所の営業も一般的に営業の自由の一環として21条の保護の下にある。理容師法は理容師の資格を定めているがこれは一定の技術をもつ者のみに営業させる趣旨であり公共の福祉に適合する。本件条例は、このような資格制に加えて洗髪設備の設置を義務付けるものであり、これは従来適法とされてきた洗髪設備なしの理容所の営業の自由を直接的に制約する効果がある。そのため、まず本件条例の目的が公共の福祉意に適合しているかどうかの検討が必要になる。
 本件条例の目的は@理容師が洗髪を必要と認めた場合や利用者が洗髪を要望した場合等に適切な施術ができるようにすることで利用業務が適正に行われるようにすること及びA理容所における一層の衛生確保により公衆衛生の向上を図ることである。まず@の目的について、現に洗髪設備のない理容所が存在する立法事実の下では、洗髪設備のない理容所の理容師が洗髪を必要と認めることはありえず、また、洗髪設備のない理容所を選んでサービスを受けに来た利用者は洗髪を希望するはずがない。これらは結局洗髪設備の設置や洗髪設備ありの理容所を選ぶ利用者の意思を後見的に定めるもので、洗髪が人格の破壊をもたらすものでない以上、公共の福祉によるものとは言えない。
 一方、Aについては、公衆衛生の向上という究極目的及び衛生確保という二次的目的はいずれも国民の生命・健康を警察目的で保護するものであり公共の福祉に適合する。
3 そうすると次にAの目的について手段審査することになるが、本件条例独自の目的は衛生確保であるから、これについて検討するのが適切である。衛生確保という目的と洗髪設備の設置を義務付けという手段は抽象的には関連性を有するが、洗髪設備のない理容所の衛生状態が洗髪設備のないことによって特に悪いことを示す立法事実はない。抽象的には洗髪設備自体が雑菌の温床になるなどかえって衛生状態が悪化することも考えられる。そのため具体的な関連性に欠けるというべきである。関連性の乏しい手段に合理性は乏しく、それらを埋め合わせるだけの必要性の大きさも見いだせない。
 なお、このように洗髪設備の設置義務付けが関連性・合理性・必要性に乏しい手段であること、及びA県では洗髪設備なしの理容所が多く開設され、その利用者が増加した結果、従来から存在していた利用者が激減しているという立法事実を合わせて考えると、衛生確保というのは表向きの目的に過ぎず、本件条例の本当の動機は従来の理容所の保護にあると推測される。法の目的を含めて立法府による再検討が必要である。
4 したがって、表記の結論となる。
posted by izanagi0420new at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成21年度第1問

問題文
 自動車の多重衝突により多数の死傷者が出た交通事故の発生前後の状況を、たまたまその付近でドラマを収録していたテレビ局のカメラマンがデジタルビデオカメラで撮影しており、テレビ局がこれを編集の上ニュース番組で放映した後、撮影時の生データが記録されたディスクを保管していたところ、同事故を自動車運転過失致死傷事件として捜査中の司法警察員が、令状に基づき同ディスクを差し押さえた。
 この事例に含まれる憲法上の問題点について、その交通事故を取材していたテレビ局が、一般人が撮影したデジタルデータの記録されたディスクを入手し、それを編集の上ニュース番組で放映したところ、同事故に関する自動車運転過失致死傷被告事件の継続する裁判所が、テレビ局に対し、同ディスクの提出命令を発した場合と比較しつつ、論ぜよ。

回答
1 本件の差押えがテレビ局の取材の自由を侵害し違憲ではないかを検討する。
2 報道機関の事実の報道は意見の表明ではないが、編集という知的過程を経ており、また、国民の知る権利に資するから、報道機関の事実の報道の自由は21条1項で保障される。報道のための取材の自由も21条1項の精神に照らし尊重に値する。
 しかし、報道機関の事実の報道の自由は主に国民の知る権利という公共の利益のために保証される憲法上の権利だから、それに優越する公共の利益のために制約を受ける。公共の利益の内容は多岐にわたるが、本件との関連では公正な裁判の実現(憲法37条1項)や、事件・事故の真相解明(刑訴法1条)がその制約根拠となる。
 もっとも、それらの制約根拠があれば直ちに制約が許されるわけではなく、具体的事例で当該制約により得られる利益と失われる利益を比較衡量し、前者が上回る場合にのみ制約が許される。
 では、本件で得られる利益は失われる利益を上回るか。得られる利益としては事件の重大性、失われる利益としては取材の自由や国民の知る権利に及ぼす影響を考慮すべきである。本件は多数の死傷者が出た交通事故という重大事件であり、真相解明への社会の期待が大きい。一方、テレビ局はこのディスクを取材目的で取材して獲得したものではなく、ドラマの撮影中に偶然得たものだから、これを差し押さえても取材の自由に及ぼす影響は小さい。テレビ局はこれを既にニュース番組で放映しており、これを差し押さえてもテレビ局に与える影響や国民の知る権利に及ぼす影響が少ない。これらを考慮すると、確かに本件の取材の自由の制約根拠は事件の真相解明という刑訴法上の利益に過ぎないものであるとしても、得られる利益が失われる利益を上回るといえる。
3 設問後段との違いについて
設問後段との違いは@テレビ局が取材して獲得したディスクであること、A編集前の動画は一般人が撮影したものであること、B裁判所の提出命令であることである。
(1)@について原告は、偶然に獲得された映像よりも取材目的で獲得した映像のほうが要保護性が高いと主張することが考えられる。
 しかし、前述のように取材の自由は主に国民の知る権利に奉仕するがゆえに認められる権利であるところ、偶然に得られた映像か狙って獲得したものかは視聴者国民にとっての重要性は異ならない。そのため、@が権利の要保護性を強めることはないと考える。
(2)Aについて、一般人は捜査機関を信頼して情報提供したと考えられ、その情報を公権力が当然に取得してよいということになると、今後捜査機関に対し情報提供する一般人がいなくなり、その意味で取材の自由が制約されうるから、取材源の秘匿も21条1項の精神に照らして尊重に値する。ただ、取材源の秘匿は取材の自由に奉仕するために認められる権限だから、それも取材の自由と同様により大きな公共の利益のために制約を受けることは、設問前段と異ならない。
(3)Bについて原告は、裁判所の提出命令は公正な裁判という憲法上の利益(37条1項)に資する点で捜査機関の令状よりも公共の利益が大きいと言える。もっとも、捜査は公訴の提起のために行われる準司法作用という側面があり、また、捜査機関の命令であっても裁判所が発する令状(憲法35条1項)に基づくものだから、裁判所の提出命令であることが提出命令によって失われる利益の増加に与える影響は限定的と考える。
(4)以上により、設問後段の場合、失われる利益の大きさはほとんど変化がなく、得られる利益は公正な裁判の実現であってやや大きい。したがって、設問後段の提出命令であっても取材の自由を制約せず合憲である。
4 したがって、設問前段の差押えはなおさら取材の自由を制約せず、合憲である。 以上

posted by izanagi0420new at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成20年度第1問

問題文
 A自治会は「地縁による団体」(地方自治法第260条の2)の認可を受けて地域住民への利便を提供している団体であるが、長年、地域環境の向上と緑化の促進を目的とする団体から寄付の要請を受けて班長らが集金に当たっていたものの、集金に応じる会員は必ずしも多くなかった。
 そこで、A自治会は、班長らの負担を解消するため、定期総会において、自治会費を年5000円から6000円に増額し、その増額分を前記寄付に充てる決議を行った。
 この決議に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。

回答
第1 原告の主張
1 この決議(以下「本件決議」という。)がA自治会員の地域環境の向上と緑化の推進を目的とする団体(以下「本件団体」という。)への寄付(以下「本件寄付」という。)をしない自由を侵害するという立論をする。
 本件決議は、従来寄付によって賄われてきた本件団体への資金提供を、A自治会の名で行うことを決め、その財源の負担を会員に強制するものである。寄付という行為はその寄付の相手方の活動に賛意を示す象徴的行為という性質を有するから、それをする・しないの意思決定は世界観、人生観、主義、主張などの個人の内面的精神作用と言えるため「思想及び良心」(19条、「思想」と「良心」は同義と解する。)として同条の保護を受けると解する。本件寄付についても、地域環境の向上をどのように行うか、緑化を促進すべきか、どのように促進するか等に対する意見は様々あり得るから、本件寄付をしない自由は19条で保障される。
2 (1)もっとも、団体の構成員は団体が社会の構成要素として活動することに付随して一般的自由が制約されうる。ある団体の活動は厳密に言えばすべて構成員の何らかの自由を制約するのであり、それを逐一問題にしていたら団体の活動自体が成り立たなくなるからである。
 では、いかなる団体の活動が許されるか。これについては原則として団体の「目的の範囲」を基準とすべきである。本件では、「地縁による団体」(地方自治法260条の2)であるA自治会の「目的」(260条の2第3項1号)が260条の2第2項1号の目的の範囲に含まれることを前提として、本件決議の内容が「目的の範囲」(260条の2第1項)に含まれるかどうかが検討される。目的の範囲内である場合には、公序良俗(民法90条)に反する等特段の事情がない限り、会員の一般的自由の制約は許されると解すべきである。
(2)「目的の範囲」は社会の構成要素である団体の活動の幅を狭めないために広く解すべきである。A自治会の目的は明らかでないが、地域住民への利便の提供と解される。本件団体は長年地域環境の向上と緑化を目的としてきたから、本件団体への寄付は、抽象的には地域住民への利便の提供に資すると考えられ、「目的の範囲」に含まれる。
(3)しかし、本件決議は自治会費を年5000円から6000円に2割引き上げるものであり、会員の負担が大きいため、公序良俗に反する。
3 したがって、本件決議は本件寄付をしない自由を侵害し、違憲無効である。
第2 反論と私見
1 「地縁による団体」は脱会の自由があり、嫌なら脱会すればよいから公序良俗に反しないという反論があり得る。
 しかし、私見は以下の理由で公序良俗に反すると解する。本件団体への資金提供はA自治会の「目的の範囲」に含まれるとしても、その本来的活動ではなく付随的活動にとどまるというべきである。というのは、A団体はたしかに地域住民への利便の向上であり、抽象的には本件団体と目的を共通にするが、別団体である以上、具体的な目的達成手段は独自のものであることが本来予定され、その具体的な目的達成手段こそが団体の本来的活動と言えるからである。したがって、付随的活動に過ぎないものに対して従来の会費の2割に相当する費用を徴収することを決定する本件決議は、本来的活動に賛同して会員となっている者であって本件決議に反対する者に対して過重な負担を強いるものである。
2 本件決議はA自治体の定期総会においてなされたものであるから、本件決議に含まれる負担を会員は承諾したのであり、公序良俗に反しないという反論があり得る。
 しかし、一般的に決議があったから公序良俗違反にならないわけではなく、年会費の2割に相当する額を一団体への寄付に使うという決議内容が相当性を欠くため公序良俗に反する。加えて、本件決議の過程は明らかではないが、本件決議が他の案件と合わせて包括的になされたものである場合や、十分な説明がなかった場合には、そのような決議を経たからと言って正当化されるものではない。付言すると、本件団体への資金提供が個人の寄付にゆだねられていた際には寄付に応じる者が多くなかったという事実からして、決議手続に何らかの問題があった可能性が高いと考えられる。  以上
posted by izanagi0420new at 20:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成19年度第1問

 A市の条例は、日本国籍を有さない者(以下「外国人」という)の公務就任権を侵害するものであり、違憲無効ではないか。
 公務就任権の法的性格について、国民は主権者(前文1項、1条)として参政権(15条)を有しており、参政権の一環として認められるという説がある。また、幸福追求権(13条)の一環とする見解もある。しかし、公務と言っても継続的に行われ社会的機能分担の性質を有するので憲法上の職業に該当すると解せるから、22条1項によって保障されると解するのが正当と考える。
 もっとも、公務は通常の職業と異なり、その就任権は参政権的性質を有するから、職業選択の自由が一般的に服する公共の福祉(22条1項)による制約以前に、公務の特殊性に基づく保障範囲の制限があると解する。そして、公務の特殊性の内容として、国の政治的意思決定権が国民に存するという国民主権原理(前文1項、1条)より、国の政治的意思決定に関わる公務には国民(すなわち日本国籍を有する者。10条、国籍法参照)が就任することが憲法上要請されていると言える。したがって、外国人には国の政治的意思決定に関わる公務への就任権は保障されていないと解される。
 そうすると次に問題となるのは、市職員が国の政治的意思決定に関わる公務を担うかである。市職員は地方公共団体の行政の執行(94条)を担う者である。その職務内容は、多岐にわたるが、「地方自治の本旨」(92条)として地方公共団体は独自の事務を行うという団体自治権限が憲法上保障されていることから、自治事務(地方自治法2条2項)が原則である。もっとも、地方公共団体はそもそもその組織及び運営に関する事項が法律事項(92条)であるから、法定受託事務として国の事務も担う。また、事実上国の職員との人事交流もある。したがって、多岐にわたる公務をあえて分類すれば、市職員の多岐にわたる職務内容のなかには、国の意思決定に関わる公務と、そうでない公務の二種類がある。ただし、それらは市職員の業務の中で混然としており、確固たる線引きが困難なものである。
 そうすると、憲法上の規範たる国民主権からは、日本国籍を有さない市職員に国の政治的意思決定に関わる公務をさせることの禁止にとどまるから、日本国籍を有さない者を市職員として採用しても、国の政治的意思決定に関わる業務をさせなければ許されるし、そうすることが職業選択の自由の観点からも望ましいと言える。しかし、前述のように国の意思決定に関わる公務とそうでない公務は混然一体としているから、採用の段階で日本国籍を有することを条件とすることも、いちいちそのものに担当させる業務が政治的意思決定の性質を有するかどうかを確認する判断を省略して市行政の円滑な運用をするために合理的な措置であるから、それが条例の根拠に基づくものである限り、許されると解する。
 したがって、A市の条例は合憲である。
 これに対して、市議会は憲法上の機関であり(93条)、市議会議員の選挙権は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項」であるから、法律事項である(92条)。そして、市議会議員の仕事は条例を制定することであるが、条例には自治条例と委任条例があり(地方自治法14条1項、同2条2項)、委任条例は国の意思決定の結果制定された法律に基づくものであるから、当然に国の政治的意思決定に関わる内容を含む。市議会議員の選挙権は、このように政治的意思決定に関わる条例を必然的に制定する代表者を選ぶ行為であり、市職員のように、国の意思決定に関わらない業務のみを担うという柔軟な態様ができない性質のものである。そのため、国民主権原理より、その権利を行使するのは国民すなわち日本国籍を有する者に限られる。したがって、市議会議員の選挙権に国籍要件を貸している法律は合憲である。
 このように、A市の条例と市議会議員の選挙権に国籍要件を定めた法律の違いは、国民主権原理に抵触する業務とそうでない業務を分割できるか否かにある。前者は分割可能だが、業務の円滑という要請から採用段階で国籍要件を貸すことも条例に根拠を有する限り許され、後者は分割不可能であるから当然に合憲だと私は考える。  以上
posted by izanagi0420new at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

憲法 平成18年度第1問

回答
(現行試験を意識し、設問1が原告の主張、設問2が被告の主張と私見という形式で書きます。)
設問1
 本法律は放送事業者の広告放送の自由を侵害し、違憲ではないか。
 広告放送は「一切の表現」(21条1項)に含まれる。そして、放送事業は放送事業者が番組を制作して放送し、番組の合間に広告放送をすることにより、番組内での広告を希望するスポンサーから広告の対価を得るビジネスモデルであるところ、その性質上、広告放送に割く時間は放送事業者が自由に決めるべき筋合いのものである(広告放送の時間が長すぎると視聴者は番組自体を見ないし、広告放送の時間が短すぎるとスポンサーから広告の対価を得ることができないからである。)そのため、広告放送の時間を制限する本法律は、放送事業者の広告放送の自由を制限すると言える。
 放送事業は広告放送の作り手たるスポンサーと広告放送の受け手たる視聴者一般市民を媒介する性質を有するから、放送事業者の広告放送の自由を制限することは、広告放送の作り手たるスポンサー及び広告会社の表現の自由をも侵害し、さらには広告放送の受け手たる視聴者一般市民の知る権利をも制限するものである。スポンサー及び視聴者は多数に及び、個々に訴えを提起するのは適切でないから、原告たる放送事業者は、スポンサーの表現の自由及び視聴者の知る権利(いずれも21条1項により保障されている)を援用して主張する。
 広告放送は、作り手たるスポンサーの製品開発の努力、及び広告会社の商品の魅力を最大限に伝えようとする創意工夫の結晶であり、両者の人格の発現物として高い価値を有する。そして、広告放送の時間を制限するという規制態様は、広告放送自体に対する直接的制約である。以上に鑑みると、広告放送の自由に対する制約は重要な公共の利益のための不可欠なものでなければならず、その手段も必要最小限でなければならないというべきである。
 本法律の目的は、多様で質の高い放送番組への視聴者のアクセスを確保することであり、公共目的と言いうる。しかし、このような目的のために広告放送を制限するという論法には、広告放送が画一的で質の低いものだという前提があり、その前提が誤っていることは、広告放送の価値について既に述べたところから明らかである。それゆえ本法律の目的には、それ自体に重要な疑義があるというべきである。
 そして手段は、1時間当たり5分という、既存の広告放送の枠を大幅に削減するものであり、必要最小限とは言えない。
 したがって、本法律は放送事業者の広告放送の自由を侵害し、違憲である。
設問2
1 放送は@有限な放送電波を利用するものであり、A視聴者に強烈な印象をもたらし、B内容が通俗的なものに画一化する可能性があるため、もともと制約が必要な媒体であるという反論がありうる。
 @については、まず、有限な放送枠で放送させるために放送法によって放送事業者は特許を与えられている。また、地上波のみならず、BS、CS、さらにはインターネット放送など、現代の放送枠は多彩であり、従来の放送の自由で議論されていた制約根拠である@は全く当てはまらない。
 Aについては、それ自体が制約根拠となりえない。視聴者は自律的に放送を取捨選択し、問題があると判断すれば放送局や第三者委員会に苦情を入れ、放送事業者が自主的に番組内容を見直すなど、視聴者と放送事業者の間での自律的な相互作用が機能している。そのため、公権力が後見的に介入する必要性は全くない。
 Bについては、単なる観念的想定に過ぎない。また、いかなる基準をもって「画一化」と判断するか不明であるが、仮に特定の視点からみて似たような番組が増えたとしても、それは視聴者が自律的判断によって選択した結果であり、公権力が介入すべきものではない。
2 広告放送は営利的表現であり、民主主義的意義に欠けるから、表現の自由一般に比べて強度な制約に服するという反論があり得る。
 表現の自由が優越的地位を占める根拠がいわゆる自己実現の価値と自己統治の価値だとすると、確かに大多数の広告放送は企業の商品の宣伝であるから、自己統治の価値は乏しいと言える。しかし、政党や公共団体が提供している広告放送も現に存在する。そのうえ、広告放送が持つ自己実現の価値は、前述のように大きい。自己統治の価値が弱いというのみで、規制目的や規制態様とのバランスを考えず、直ちに強い規制に服するという論拠自体も問題である。
3 広告放送を規制するのは午後6時から午後11時までの間と時間を区切っており、その間も全く放送できないわけではなく1時間当たり5分間は放送できるのであるから、この程度の制限は許されるという反論が考えられる。
 しかし、午後6時から午後11時はいわゆるゴールデンタイムを含み、もっとも多くの視聴者が放送を視聴する時間帯であるから、影響は大きい。また、1時間当たり5分というのは既存の放送枠を大幅に削減するものである。現に東京キー局は1社平均数十億円の減収が見込まれているほど大幅な削減である。さらに、違反した事業者は放送免許を取り消されるという強すぎる罰則を伴っているため、弱い制限とは言えない。
4 以上より、原告の主張通り、違憲である。
posted by izanagi0420new at 20:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 憲法

2016年02月14日

国際私法 平成27年度第1問

設問1
 夫婦財産制は26条による。同条1項は婚姻の効力に関する25条を準用している。この趣旨は、法令が夫の国籍に連結していたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間に同一の法令を適用する必要から、段階的連結を定めたことである。もっとも、夫婦財産制の場合には、量的制限の定めはあるが私的自治が認められている(26条2項)。2項の趣旨は、国際私法の国際的統一の観点及び再密接関係地の認定が困難であることへの配慮である。量的制限があるのは、夫婦財産制は夫婦共同体との関連が強いためである。また、基準時については明文がないが、26条も25条も変更主義を採用している。すなわち、準拠法変更が生じた場合、その効力は将来に向かってのみ生じ、変更前までの夫婦財産関係についての規律については変更前の準拠法による。そのため、回答は以下の通りになる。
(1)A建物について
 26条1項に基づき、1995年時点の共通本国法である甲国法が適用される。
(2)B土地について
 26条1項の適用によれば、2010年時点の共通本国法である甲国法が適用されることになる。
 しかし、反致(41条)が適用されないか。反致の理論的根拠として、抵触規則も含めて指定するという総括指定説は、無限の循環が生じるため妥当でない。また、当該国が管轄を放棄しているという棄権説も主権理論を前提とするため妥当でない。実質的根拠として、内国適用拡大という見解は国際主義に矛盾するため妥当でなく、国際的判決調和という見解は反致で指定された国も反致を定めていれば調和しないから妥当でない。結局反致の理論的正当化は難しい。
 ともあれ、甲国法はXYの本国法だから、「当事者の本国法によるべき場合」(41条)に当たる。「その国の法」(41条)の「法」とは国際私法を指すところ、甲国国際私法@は第一段階として夫婦の同一常居所地法を指定している。常居所とは、居所よりも長い期間居住する場所をいうところ、XY夫婦はB土地を取得した2010年の時点で10年間日本で生活しているから、XY夫婦の常居所地法は日本法である。そうすると、「その国の法に従えば日本法によるべきとき」(41条)に当たる。
 したがって、41条の適用により、日本法が適用される。
(3)C土地について
 2012年時点の共通本国法である日本法が適用される。
設問2
1(1)夫婦財産契約の効力は夫婦財産制と性質決定できるから26条による。
(2)本件の夫婦財産契約は婚姻後来日前に締結されているから、XYの共通本国法は甲国法である。そのため、甲国法が準拠法となる。甲国民法Bは夫婦財産契約の締結を認めている。
(3)したがって、A建物の所有権はXの特有財産となりうる。
2(1)また、書面により締結していたという方式の有効性は34条による。
(2)同条は、方式が実質的要件と密接に関連することから、「当該法律行為の成立について適用すべき法」を準拠法としている。そのため、本件では甲国法が準拠法となる。甲国民法Bは方式として書面を要求するのみであり、本件の契約は書面でされている。
(3)したがって、方式は有効である。
3 以上より、本件の夫婦財産契約の通り、A建物の所有権はXの特融財産となりうる。
設問3(1)
1 本件の合意に26条2項が適用されるか検討する。まず、本件合意は「夫婦が、その署名した書面で日付を記載したもの」(26条2項)に当たる。そして、来日直後にはXとYの本国法は甲国法であったから、甲国法は「夫婦の一方が国籍を有する国の法」(同1号)に当たる。
2 したがって、この合意のとおり、甲国法が適用される。
設問3(2)
1 XY夫婦は1つの契約で異なる準拠法を選択しているが、このような分割指定が許されるか問題となる。思うに、国際的な強行法規の回避をいわゆる特別連結にゆだねるべきである以上、当事者自治の原則の帰結である分割指定を否定する理由はない。しかし、相互的な権利義務関係を切り離すような指定を認めるべきではない。そこで、契約の現実的な実現可能性を要件として、分割指定を認めるべきと解する。
2 本問でも26条2項該当性を検討するに、26条2項本文の要件は(1)と同様にあてはまる。そして、「日本に所在する土地」(契約の文言)は「不動産に関する夫婦財産制」(26条2項3号)に当たる。また、「日本法」(契約の文言)は「不動産所在地法」(26条2項3号)に当たる。そして、日本に所在する土地についてのみ他と切り離して日本法とすることで特に相互的な権利義務関係が切り離されることはないから、本件契約は実現可能である。
3 したがって、B土地の所有権については日本法が適用される。 以上

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国際私法 平成26年度第1問

設問1
1(1)離婚の届出は方式の問題だから34条によるところ、同条は方式を「当該法律行為の成立について準拠すべき法」によらしめているから、先決問題として離婚準拠法が問題となる。先決問題は本問題の準拠法によるのでも本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地たる日本の国際私法が指定する準拠法による。
(2)日本の国際私法27条本文は25条を準用しており、25条は夫の本国法に連結していた法令の規定を両性平等の見地から改め、また夫婦に共通の準拠法を定める必要から段階的連結を定めている。但書は戸籍管掌者の便宜から日本法に連結している。すなわち、戸籍管掌者には形式的審査権限しかないところ、第3段階の最密接関係地の認定は戸籍管掌者には難しいからである。そのため、但書の文言上はすべてに優先するように読めるが、但書は最密接関係地に優先するに過ぎない。
(3)本件では、Pの本国法は甲国法であり、Qの本国法は日本法だから、共通本国法では連結しない。共通常居所地法(常居所とは、人が居所よりも長期間生活する地)は、PQは婚姻後5年間甲国で生活していたから、甲国と考えられる。そのため、離婚準拠法は甲国法である。
(4)そうすると、34条1項に基づき、離婚の方式の準拠法も甲国法となる。そのため、Qの届出を受けた日本の戸籍管掌者は、原則として受理しなければならない。
2 しかし、甲国法の適用が公序に反する場合は、甲国法の適用を排除することができる(42条)。要件は、@適用結果の異質性及びA内国関連性である。ここで@はあくまでも適用結果の異質性であって、適用する法自体の異質性を考慮する要件である。国際主義の観点から、日本の裁判所は外国法自体の良し悪しを判断できないからである。
 本件では、PとQは離婚に合意しているから、PとQを離婚するという甲国法の適用結果が異質であるということはない(@不充足)。
 したがって、Aを検討するまでもなく、適用結果は日本の公序に反しない。
3 したがって、PとQの離婚は日本において効力を有する。
設問2(1)ア
1 協議離婚の可否は離婚の問題と性質決定されるから27条による。同条の連結点と趣旨は前述のとおりである。
2 本件では、PとRに同一本国法は存在しない。同一常居所地は日本と解されるから、日本法による。日本の民法763条は協議離婚を認めている。
3 したがって、PとRは協議離婚をすることができる。
設問2(1)イ
1 面会交流の可否をどのように性質決定すべきか。離婚の効力とすることが考えられる。しかし、面会交流は子の利益にも資するから、夫婦間の利益だけを考慮した離婚の規定を使うのは妥当でない。親子間の法律関係とみて、32条によるべきである。
2 32条は法令が父の本国法としていたのを両性平等の見地から改め、また、複数の当事者間で同じ法律を適用する必要から、段階的連結を定めている。但書は子の常居所に連結している。この規定の趣旨は、両親が離婚した場合の戸籍事務の便宜である。
3 本件では、Cの本国法は甲国法であり、Pと同一だから、甲国法による。甲国法Cは、子は常に父の親権に服するとするから、本件でCの親権はPにあり、したがって、Pは常に面会交流できる。
設問2(2)
1 親権の有無は32条による。前述のように、同条を適用した結果、本件ではCの親権はPにある。
2 しかし、Pは服役中であるから、この適用結果は異質であり、内国関連性も大きいから、公序(42条)に反すると判断できる。
3(1)そうすると、42条で甲国法の適用を排除した効果が問題となる。この点について、法の欠缺が存在すると解し、内国の適用を拡大する見解がある。しかし、公序則を発動した時点ですでに結論は出ているから、法の欠缺は生じていないと解する。
(2)本件では、Pの親権を否定した場合、Rに親権があると考えるほかない。
4 したがって、日本の裁判所はRを親権者として指定することができる。 以上

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2016年02月13日

国際私法 平成25年度第1問

設問1(1)
1 共同養子縁組の必要性は養子縁組の問題と性質決定されるから、31条による。
2 31条1項は養子縁組を養親の国籍に連結している。養子縁組で考慮すべきは子の利益だから子の本国法とすることも考えられるが、養親子関係は養親の本国で営まれることが多いこと及び養子縁組により養子に養親の国籍を付与する国が多いことから、養親の本国法主義が採用された。
 本件では養親となるべきHの国籍は日本だから、日本の民法による。民法795条本文は、配偶者のある者が未成年者を養子とする場合に共同養子縁組を要求しており、同条但書は配偶者の嫡出子を養子とする場合には共同養子縁組を不要とする。
3(1)そこで、まずCがWの嫡出子か否かが問題となる。嫡出子とは、国際私法上、婚姻した夫婦から出生した子と解する。そうすると、Cはそれにあたらない。したがって、但書は適用されない。
(2)そうすると、次にCが未成年者か否かが先決問題となる。先決問題は本問題の準拠法によるのでも、本問題の準拠法が所属する国の国際私法が指定する準拠法によるのでもなく、法廷地である日本の国際私法により定まる準拠法による(H12.1.27)。日本の国際私法上、未成年者か否かは人の行為能力の問題と性質決定されるから、4条による。同条は、この問題について本国法主義をとる大陸法の伝統にしたがったものであり、譲許粗糖に比べて確認が容易であるという合理性がある。同条2項は取引安全に配慮している。
(3)本件では、Cは7才であり、日本法上未成年者である(民法4条)。
4 したがって、民法795条に基づき、共同養子縁組が必要である。
設問1(2)
1 養子縁組が日本の戸籍管掌者への届出によって方式上有効に成立するか否かは、養子縁組の方式の問題と性質決定されるから、34条による。同条1項は、方式が実質的成立要件と密接に関連するから、成立について適用すべき法によるとしていると解する。同条2項は、養親が異なる国籍を有している場合、片方の方式を履践することが困難なことにより養子縁組が成立しにくくなり、結果として子の利益に反することを防ぐため、行為地法に適合する方式を有効としているものと解する。
2 本件では、同条1項に基づき、「養子縁組の成立について適用すべき法」は、日本法及び甲国法である。同条2項に基づく「行為地法」は日本法である。
(1)Hとの縁組は日本法によるから、日本の戸籍管掌者への届出によって方式上有効に成立する(民法799条、739条1項)。
(2)Wとの縁組は1項に基づけば甲国法によるが、甲国民法Bによれば甲国の戸籍管掌者への届出が必要である。しかし、2項に基づき、行為地法である日本法に適合する方式として、日本の戸籍管掌者への届出は有効である。
3 したがって、日本の戸籍管掌者への届出により有効に成立する。
設問2(1)
1 Cが養子縁組により嫡出子となるか否かは養子縁組の効力の問題と性質決定される。31条1項は「養子縁組の要件は」ではなく「養子縁組は」と規定しているから、同条は養子縁組の効力についても定めていると解される。そのため、31条により、養父子間と養母子間のそれぞれで嫡出子となるかを判断する。
2(1)まず、Wの本国法である甲国民法Cによれば、CはHとWとの共同養子縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
(2)次に、Cの本国法である日本の民法809条によっても同様に、Cは縁組の日から嫡出子の身分を取得する。
3 したがって、Cは嫡出子である。
設問2(2)
1 親権は親子関係の問題と性質決定されるから32条による。
2 32条1項は、法令が父の本国法に連結していたのを両性平等の見地から改め、また、子の保護の趣旨から、父または母と同一である子の本国法に段階的に連結している。同条2項は、両親が離婚した際の戸籍記載の便宜から、子の常居所地法を第2段階としている。
3 本件は、CとHの国籍が同一だから、日本法による。民法818条3項は、父母の婚姻中は父母が共同して親権を行使することを定めている。そうすると、HとWが婚姻しているか否かが先決問題となるが、法廷地法である日本法上、HとWの婚姻は有効に成立している(問題文)。
4 したがって、Cの親権を行使するのはH及びWである。
設問2(3)
1 親子間の扶養義務の有無には通則法は適用されず(43条1項)、扶養準拠法による。同法2条は、原則として扶養権利者の常居所地法を準拠法とする。この趣旨は、それによってこそ扶養権利者の需要に応じることができること、私的扶養と同一の準拠法に依拠させることで制度間の調和が図れることである。2条1項但書と同2項では、扶養権利者保護のためさらに2段階の補正的連結を定めている。したがって、「扶養を受けることできないとき」(1項但書、2項)とは、法律上扶養義務が課せられていない場合や個別的に裁判により義務を果しえない場合をいい、事実上扶養を受けられない場合を含まない。
2 本件では扶養権利者であるCの常居所(居所よりも長期間生活している場所)は日本と解されるから、日本法による。民法877条1項によれば、直系血族は互いに扶養する義務があり、CとHは親子であるから(民法727条)日本法上直系血族である。
3 したがって、HはCの扶養義務者である。

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2016年02月09日

国際私法 平成19年度第2問

問題文
 Yは甲国に主たる事業所を有する世界有数の医薬品製造販売業者である。Yはその製造する医薬品Aを甲国だけでなく、乙国等多くの国においてそれらの国に所在する事業所を通じて販売している。医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは、日本に事業所を通じて販売している。医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは、日本に事業所も担当者も置いていない。Xは日本に常居所を有する日本人である。以上の事実を前提として以下の設問に答えよ。
 なお、各設問はいずれも独立した問いであり、本件には、法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)が適用されることを前提とする。
〔設問〕
1.Xは、乙国に赴いた際に、日本では購入できない医薬品Aが売られていたので、乙国でこれを購入した。Xは、日本に帰国後、医薬品Aをしばらく服用していたが、体調が悪くなったため、病院で精密検査を受けたところ、医薬品Aの副作用の結果であることが判明し、日本の病院で乳通院を余儀なくされた。
(1)XはYに対し、入通院に要した費用等の損害賠償を求める訴えを日本の裁判所に提起した。日本の裁判所はこの訴えについて国際裁判管轄権を有するか。
(2)XのYに対する損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。
2.乙国に常居所を有するZは、医薬品Aを大量に購入し、それが医薬品として承認されていない国々の居住者に対しても販売している。Xは、インターネットを利用してZから医薬品Aを購入し、郵送によって受領した。Xが医薬品Aをしばらく服用したところ、その副作用のため健康を害し、日本において入通院を余儀なくされた。XのYに対する入通院に要した費用等の損害賠償請求に適用される法はいかなる国の法か。

回答
設問1(1)
1 日本の裁判所が管轄権を有するか否かは民訴法3条の2以下の規定による。
2 3条の4第1項に基づき管轄が認められないか問題となり得る。同条は事業者と消費者の訴訟追行能力の差を考慮して、3条の2以下の他の規定と重ねて特に消費者を保護するために設けられた規定である。しかし、同条項は消費者と事業者との間で締結される契約に適用されるところ、本件で消費者Xは事業者Yとではなく乙国の販売店と売買契約を締結しているので、適用対象外である。
3 3条の3第8号に基づき管轄が認められないか。同条の「不法行為」とは国際私法上の概念であり、違法な行為によって他人に損害を与えた者が被害者に対してそれを賠償すべき債務を負う法律関係をいう。YはAの副作用という違法な行為によってXに入院に要した費用等の損害を与えたから、XY間の法律関係は「不法行為」に当たる。そして同号の「不法行為があった地」とは、加害行為地だけでなく結果発生地も含むと解されている。この趣旨は、不法行為地には証拠が存在する蓋然性が大きく、被害者保護に資する場合が多いからである。もっとも、不法行為が偶発的出来事であることから、加害者の予測可能性も考慮すべきであり、この趣旨で8号カッコ書きが定められている。結果発生地たる日本で訴えが提起された本件のような場合には、日本における結果発生が「通常予見することのできないもの」であるか否かが判断される。
 本件は、医薬品Aは日本の薬事法上の承認を受けておらず、Yは日本に事業所も担当者も置いていないことが、日本国内における結果発生が「通常予見することのできないもの」であることを立証する間接事実となる。一方、Yは世界有数の医薬品製造販売業者であること、Yはその製造する医薬品を甲国だけでなく乙国等多くの国においてもそれらの国の事業所を通じて販売していることは、「通常予見することのできないもの」であることを否定する間接事実となる。一般にある医薬品が未承認国の国民でも、承認国の国でそれらを買うことは容易な場合には、客観的に見て未承認国において副作用が発症する可能性はあるのだから、乙国でAの購入がXにも容易な状態で販売していたYは、Xの本国である日本で副作用が発症することを予見すべきである。そのため、本件は「通常予見することのできないもの」であるとは言えず、副作用という結果発生地すなわち「不法行為があった地」が「日本にあるとき」の要件を満たす。
4 3条の9で考慮されるべき特別の事情は認められない。
5 したがって、日本の裁判所は管轄権を有する。
設問1(2)
1 XのYに対する損害賠償請求は前述の不法行為に基づくものだから、通則法17条以下による。
2 AはYによって「生産され…た物」だから「生産物」(18条)に当たり、AはXに引き渡されているから「引渡しがされたもの」に当たる。「瑕疵」とは物が通常有すべき性質を有していないことを指し、Aの副作用はこれに当たる。そのため、本件は18条が適用される。
 同条の趣旨は以下のとおりである。生産物は性質上転々流通するから、17条によれば結果発生地が過度に広がるとともにそれが偶然に決定される可能性があり不都合である。そこで通則法は、生産者と被害者の接点であり、双方の利益のバランスをとることができるという観点から、生産物責任の準拠法を「市場地」法とする考え方を採用している。「市場地」の具体的内容は、本文では被害者保護の観点から引渡地とし、但書では生産業者と被害者の利益のバランス等の要請から主たる事業所所在地法としている。
 本件では、被害者Xが「引渡を受けた地」(18条本文)は、現実の引渡しを受けた乙国である。乙国ではAは承認されているから、乙国での引渡しは「通常予見することのできないもの」(18条但書)に当たらない。
そのため、乙国法が準拠法となる。
3 20条(例外条項)は明らかにより密接な関係がある地がある場合に例外的に当該地の法律を適用するとしているが、本件ではそのような地は見当たらない。
4 22条(特別留保条項)は日本法の重畳適用を定めている。同条は不法行為が日本の公序に関わることがあるため定められているが、不法行為は公益よりも私人間の利益調整の観点から把握されるのが最近の傾向だから、その合理性には疑問がある。
 この規定により、日本法も準拠法となる。
5 以上より、乙国法及び日本法が準拠法となる。
設問2
 XのYに対する入通院に要した費用等の損害賠償請求は不法行為の問題と性質決定され、前問と同じく生産物責任の問題だから18条による。
 本問はインターネットを通じた売買契約であり、引渡地と受領地が異なる。そのため、「引渡しを受けた地」の解釈が問題となる。前述のように、18条は生産者の予見可能性と被害者の保護との調和の観点から「市場地」法を準拠法としているのである。そして、一般的にインターネット販売のような隔地的取引の場合、消費者は世界中からアクセスするため予見不可能だから、販売場所が「市場地」となると解する。
 したがって、本件では受領地たる日本ではなく、引渡地たる乙国の法が準拠法となる。
以上

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