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2022年12月20日

姪と人形 3



(れ)
その日オレと姉は昼飯も食っていなかったが、もう陽は傾いていた。
姉はダルそうであったが、強いて子供達のために夕食を作った。この余計者の為にも肩身の狭い思いがしたが、今はこの親子の傍にいた方がいい気もする。
そして検査の結果次第では義兄にも話しを通した方がいいかもしれない。
そこまで考えてオレはハタと気が付いた。
母屋はどうした。まず姉の義父母、義兄達に左右田院すればいいではないか。
その晩、何故か甥が一人で寝るのを非常に嫌がって、結局オレの部屋で一緒に寝ることになった。
オレにあてがわれた部屋は二階の真ん中の部屋。
二階にはこの部屋の両脇に、一つは半ば納戸代わりに使われている四畳半くらいの部屋が一番奥に。
もう一つは義兄が書斎として使っている部屋が階段寄りにある。
甥と姪の部屋、それから姉夫婦と姪の寝室は一階にある。
建て売りではない、設計士が義兄と相談しながら図面を引き、地元の大工が建てた割合しっかりとした造りの家だ。
建ててまだ10年経っていない。
その家が微かにだが揺れだした。
地震、小さいが確かに揺れている。
まだ起きていた甥が布団からT日出して、しがみついてきた。

(そ)
けっこう長く揺れが続いたような気がしたが、実際には10秒位ではなかっただろうか。
オレもあの地の底の唸りのような自身というものが嫌いだ。
揺れが完全に収まると、オレはまた一昨夜の夜と同じ様に、甥を腰にまとわりつかせて階下にいる姉たちの様子を見に行った。
部屋の前に立ち襖を軽く叩いた。返答はない。
そっと開けてみると、姉も姪も寝ていた。
小さくはあったが、かなり小刻みに揺れていたはずだ。
二人Tも余程疲れているのか、眠りが深いのか。
襖を閉めて、茶の間に入るとカーテンを開けて母屋の様子を伺った。
この家と母屋の位置関係は互いの家が見えにくかったが電灯は点いていないようだ。
念のため窓を開け庭に降りてみた。
やはり誰も起き出してはいないようだ。
もっとも深度2程度なら気が付かなくても無理はないか。
でも毎年この時期になると、東海沖地震が囁かれる中、静岡に住んでいるならもう少し「デリケートがあって欲しいとも思う。
振り返って癒えの方を見る。
甥が窓際でこちらを見てる。逆光で表情は見えない。
茶の間に戻り甥を二階に促す。瞬きが妙に少ない。
まだ怯えていた、老いも俺も。
とたん東京に帰りたくなった。娘と、二人の息子に会いたくなった。

(つ)
甥と二人、再び蒲団の上に横になった。
昼間の事がまだ頭の中に残っていて、念の為、甥に聞いて見た。
あの人形の事、何か知らないか。
あるいは、あの人形、どこかに移動しなかったか。
甥を疑ってるわけではなかった、ただ念の為。
昼間、頬にあの髪の毛が張り付いていたのが気になっていたから。
あるいは人形の件は甥の質の悪い悪戯か。
みんなが、いやこの時点ではオレと甥だけだったが、疑心暗鬼になっていた気がした。
甥は、知らないと言った。あの人形には触りたくないとも。
オレも同感だよ。
翌日、オレは神社に行った。
かなり捜したが、やはり人形は無かった。
あるいは猫がくわえて、縁の下にでも持ち込んだか。
そこまで探した。
シンの三柱(スマン漢字が出てこない)、この下にもあったのかどうか、そこまで確かめる余裕はなかった。
ただ帰り際に古びた板に書かれた、この神社の祭神を読んだ。
素戔嗚尊、櫛稲田姫尊、それともう一つ、読みがまったくワカラン、毒蛇気神尊
ドクジャキシンミコト!?
この読みが分からない為、オレ達は結構苦労した。

(ね)
肝心の人形が見つからずオレは途方にくれた。
しかし、何もあの人形でなくても、同じ場所にあった物なら同じ物が付着しているかもしれない。
姪がどの辺りから、あの人形を引っ張り出したのかはしらないが、とりあえず俺は箱の中に積まれている物から上層部から一点、中頃から一点、それと下の方にも格子からはみ出てる破魔矢の屋根に黒いシミがあったものだから、ついでにそれも。
計三点それぞれの一部を切り取ってケースの中に収めた。
その日、神社から帰った後、オレは母屋に行った。
姉の様子を少し伝えておいた方がいいと思ったからだ。
ついでに、あの神社の管理者、あるいは神主の住所を尋ねてみようと思ったが説明するのが難しい。
結局その日は聞かずにおいた。
この家でスイカを馳走になった。見の黄色い小玉西瓜だった。種が少なく、よく冷えて非常に美味だった。
姉に取っては義姉にあたる、小柄だが気さくな奥さんが、ウチではまだ西瓜を井戸で冷やしていると、半ば自嘲気味に半ばは自慢げに言っていた。

(な)
そう、この敷地には井戸があった。
この地方は海が近いが、ワサビの名産地でもよく知られる水の綺麗な所でもある。
そして水を大切にする所だ。
その井戸の傍らに木でできた小さな祠、稲荷のようなものがある。
毎朝その前には白米、菓子などを供えるのがこの家の決まり事だ。
何を祀っているのか、まだはっきりとは聞いたことはない。
が、水を鎮める神様だと言う。
昔、この地方を悪い疫病が襲い多数の死者が出たらしい。
手を尽くしたあげく、原因は自ら、となったらしい。
それからだそうだ。どの家でも井戸の傍らに祠を置くようになったのは。
母家を辞して姉の家に戻った頃は、もう昼時になっていた。
ただそれがどれくらい昔なのかわからない。
素麺のツユを垂らすなT、姉が姪を叱っている。
姉の顔に、以前にはない険ああるようだ。母家の奥さんの朗らかな顔を思い出しながらそう思った。
午後は本屋に行くつもりだった。
この時点でオレは神秘主義に陥っているつもりはなかった。ただ何となくあの神社の祭神に興味を惹かれたからだ。

(ら)
日本の神々、似たような本は何冊かあった。
どれも素戔嗚尊、櫛稲田姫尊の名はあるのだが、毒蛇気神尊の名はどの本にも見当たらあかった。
姉の家にはパソコンがない。
仕方なく予め状況を掻い摘んで報せておいた、先の友人にネットで検索してもらう事にした。
素戔嗚尊、本には元々出雲の地方神だったらしが、インドの祇園信仰と融合する事で全国で祀られるようになったと書いている。
説明は省くが牛頭天王と同一と見られる事が多いそうだ。
八坂神社、氷水神社に祀らえる。
ご利益は災厄、疫病を除くと書いてあった。
櫛稲田姫の方は古事記では櫛名田比売、日本書紀では奇稲田姫と書くらしく、素戔嗚尊の妻。
有名な八岐大蛇のヒロイン。
名が示す通り、稲、水田の神様。
素戔嗚尊が奉られる神社には大抵一緒に祀られているらしい。
他にも色々書いてあったがよく解らんし退屈だ。
本を枕に寝てしまった。


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