2022年12月14日
2人の少女
2人の少女とは洒落怖の一つである。
【内容】
俺が19歳の頃の話です。
高校は卒業していましたが、これといって定職にもつかず、気が向いたら日雇いのバイトなどをして、ブラブラしていました。
その頃の遊び仲間は、高校の時の友人グループがいくつかあり、その日も、その内のひとつのグループの奴の家に集まり、だらだらと遊んでいました。
そのグループの連中は、地元では結構有名な悪い奴らの集まりでした。
俺はケンカも弱いし、バイクも持っていなかったけど、そのグループのリーダーが幼馴染で、家も超近かったため、たまに遊んでいました。
夜もふけてきたので、俺達は肝試しに行くことにしました。
皆幽霊なんて信じていなかったし、怖がってもいませんでしたが、行く途中、女の子でもナンパできたら連れて行こう、ぐらいの軽いノリでした。
一人がバンで来ていたので、それに6人全員で乗り込んで出発です。
幾つかある肝試しスポットのうち、一番近い所に向かいました。
そこは山の中にある墓場で、頂上に向かって墓場が広がっています。
入り口に降り立ったとき、その墓場の一番上に何か白い影が見えました。
よく見ると2人の人間で、近付いてみると、まだ中学生ほどの少女でした。
髪は長くぼさぼさで手入れをしている様子はなく、まるで人形の髪のようだと思ったのを今でも覚えています。
顔にも髪がかかり、表情は読めません。
顔のつくりは違いましたが、2人ともそっくりに見えました。
白く見えたのは、夏服のセーラー服装だったからです。
いったいどこから来たのでしょう。
あの場所から出てくるには、車でもっと山の上まで登らなくてはならないはずです。
なのに2人には、連れがいる様子もありません。
どんどん近付いてきます。
よく考えたら、ふつうこんな人気のない墓場で、不良グループに遭遇したら向こうも怖いはずです。
しかし彼女達は無表情のまま、俺達の眼の前に来て止りました。
いいようのない恐怖が襲いました。
理屈だけではありません。ぞっとするというのは、このことだと思います。
それは他のメンバーも同じようでした。
「おまえらどっから来たん?」
リーダーのMが聞きました。
2人は無表情のまま、ゆっくりと同時に山の頂上を指差しました。
どっと嫌な汗が噴き出しました。
するとそこに、どこからともなく犬が走ってきました。
しかもその犬、白内障なのか目が白く濁っているのです。
あまりにもタイミングよく現れたので、危うく叫びそうになりますたが、すぐ後ろから飼い主らしきおじいさんがやってきました。
そのおじいさんはこの近くに住んでいるらしく、いつもこの道を散歩コースにしているそうです。
おじいさんの散歩に付き合うように、自然に俺達6人と少女達は歩き始めました。
おじいさんと少女は少女達が前を歩き、何かを話しています。
おじいさんは、土の盛り上がったところをガシガシ蹴り飛ばしながら、「ここ、無縁仏の墓や。そこに卒塔婆がたおれとるやろ」と言いました。
そして又、少女達と言葉を交わすと、俺達のほうを振り向きもせずに去って行きました。
唖然とする俺達の所に少女達がやってきて、初めて口を利きました。
「いまのおじいさんに聞いたんやけど、この先にもっと怖い場所があるねんて。のろいのわら人形がぎょうさん見つかる所。行ってみいへん?」
正直俺は行きたくなかったけど、中学生の女の子が行くというのに、『いや、おっかねえからやめとく』とはいえません。
結局女の子達をバンに乗せ、行ってみることにしました。
その間、俺達は色々話し掛けました。なぜあんな所からでてきたのか。
当然女の子をナンパして乱暴し、山の中腹で置き去りにするという『六甲おろし』が流行り出した頃でした。
「もしそんな目にあっているなら、協力できることがあるならするぞ」
Mが一生懸命話し掛けても、彼女達は無表情に前を向きながら首を振るだけで、道を案内する以外は口を利きません。
とても乱暴されたようには見えませんでした。
でも、何か理由があってほしかったのです。あんな山中から、こんな子供が出てきた理由を。
しかし彼女達は、お互い話もせず、たんたんと道案内をするだけです。
とうとう目的地の神社に着きました。はじめてくる所です。
さっきの場所より何倍も不気味な所です。
高い杉の林に囲まれた小さな神社でしたが、彼女達はその神社のさらに奥の杉林に入っていきます。早足で。
Kがつぶやきました。
「あの子達って、あのおじさんに聞いて、今日はじめてくるはずなんやな。なのに、なんんであんなスタスタ進むんや。2人とも車の中で一言も相談していないのに、迷いもせず同じ方向に進んで行ってるで」
ぞっとしました。しかし、ここで2人を置いて逃げるわけにはいきません。
慌てて後を追いかけますが、その足の速いこと。大人の俺達が小走りになるほどです。
イキナリ2人が立ち止まりました。黙って目上の高さを指さしています。
見ると指差した先の杉の木に、釘をさしたような穴が無数にあいています。
いえ、よく見回すと、そのあたりの木のほとんどに穴があいています。
そして、とうとうわら人形も見つかりました。
絶句する俺達をよそに、彼女達は相変わらず無表情で、何も言いません。
「もう帰ろうぜ、つかれただろ、おまえらも送ってやるから」
Mが恐怖を隠すように言いました。
しかし彼女達はこう言ったのです。
「ここじゃダメだね。もっといいところがあるから行こう」
2人の少女 2へ
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11401261
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック