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2022年11月21日

つきまとう女 4



暫く車を走らせ、ビルの中に入る。その中に、若い男の事務所があるそうだ。
『〇△×事務所』と書かれたビルの一室。ここが若い男の事務所。

「探偵?」

俺がそうつぶやくと、若い男は「本業はね」と答えた。
事務所の扉を開けると、中には誰も居ない。

「あぁ、今みんな出払ってるよ。多分、社長は居ると思うんだけどね」
「俺は金なんか持ってないぞ」
「ん〜、うちの社長、金にはうるさいけど、根は良い人だし、多分大丈夫」

そう言う若い男は、奥の『社長室』と書かれた扉の前に進む。
軽く2回ほどノックをすると、中から「どうぞ」と言う返事がした。
扉を開けるとそこには、如何にもキャリアウーマンといった風貌の女が居た。
この女が社長だ。
女社長は、俺の顔を見るなり舌打ちをした。

「また、ろくでもない奴連れて来やがって……」

小声だったが確かにそう言った。あからさまに俺は歓迎されていない様子だった。

「社長、いや、その、あの、えとー、そのー」

若い男がしどろもどろになる。女社長は若い男を睨み付けると、書類を机に叩きつけた。

「あんたねぇ!うちは慈善事業で障害やってんじゃないのよ!!こんな金もない奴連れてきて、どうやっておまんま食ってくんだよ!!」

まさに男勝りな怒号だ。

「いや、でも社長わかるでしょ!?この人このままだと死んじゃいますよ!?」
「この馬鹿!!お人好しもいい加減にしろ!!」

うなだれる若い男。どうやらこいつは、本気で俺を助けたいと思ってくれているらしい。
有難い話だが、俺は人に迷惑をかけてまで助けを請うつもりはなかった。
踵を返し、俺は事務所を後にしようとした。
すると女社長が俺を呼び止めた。

「待ちなさいよ。若年性浮浪者モドキ。こいつの言うように、あんたはこのままだと死ぬよ。どうするつもりだい?」
「さっきから、何で俺が死ぬってのははっきり言えるんですか?なんか確信する様な事でもあるんですか?俺は確かに追い詰められています。でも、あなたの言う様に金はありません。この若い人に迷惑をかけるつもりもないし、俺は出て行きます」

女社長がタバコに火を点け、煙を吐き出す。

「人に迷惑かけたくないってのは良い心得だ。それならそれで、人の役に立ってみる気はないかい?」
「どういうことですか?」
「手は有るって言っているのさ」
「ま、まさか社長…」

若い男の顔が青ざめる。

「さっきあんた私に、『なんの確証があって、自分が死ぬなんて言っているのか』と尋ねたわね」

俺は頷く。

「あんた、どうやら厄介なのに取り憑かれているようよ。あんた、首吊ってる、薄汚いワンピースの女に心当たりありでしょ?」

俺は驚いた。その女の事を、今まで誰かに話したことは無い。

「ふふ〜ん。驚いているわねぇ。まぁ、私も本業は探偵なのだけど、副業で霊能関係の仕事もしているのよ。それにしても、良い〜顔で驚くわねぇ。ふふ〜ん。好きよ、そういう顔」

俺は考えた。本業が探偵で副業が霊能力者?なんて怪しさなのだ。ここに居て良いのか俺は?
でも、あのキチガイ女の事を言い当てた。それも事実だ。
だが、あのキチガイ女は霊なのか?俺の錯覚ではないのか?

「さっき言っていた良い方法って…?」

女社長は苦笑する。

「誰も良い方法なんて言ってないでしょ?ただ手はあるって言ったのさ」
「じゃあ、その手というのは?」
「私に除霊を頼むのであれば、最低でも200万はかかる。あんたには、そんな金はない。でも、そこの若いのがやるなら話は別よ。そいつは霊能者としてはぺーぺーもいい所。だから、そいつの現場実習もかねて除霊をさせてもらうなら…お金はかからない。逆にこちらが礼金を払う。ただし、身の保証のタグは一切無いけどね」

そう言うと女社長は、微笑みながらタバコを揉み消した。
それを聞いた若い男は、頭を抱えて天を仰ぐと、「オーマイガー…」とだけ呟いた。

「いや、社長。俺どうすれば良いんですか?」

若い男の問いかけに女社長は、「はぁ!?」と言い、不機嫌な態度を示す。

「今からクライアントと打診!その後に除霊方法を検討し、契約書を書き上げ、明日、あでに私に提出!!分かったか!?」
「は、はい!!いや、でも、あの、その…」
「いいからさっさと状況を開始しろ。ボケナス!!」

女社長に激高され、追い出されるように俺たちは事務所を飛び出た。
その後、俺たちは喫茶店の中に入る。

「良い店でしょ?ここ社長の店なんですよ」

若い男はそう言うと、慣れた態度で席に座る。
席は個室のようになっていて、周りに会話は届かない。
珈琲を二人分注文し、若い男はノートPCを広げた。

「じゃあ、お兄さん。これから問診を始めます。用意は良いですか>」
「気になる事があるんだが…」
「なんです?」
「君はさっきまでタメ口だったのに、急に敬語を話すようになった。なんでだい?」
「お兄さんが、俺の正式なクライアントになったからです。本当は社長にやってもらいたかったけど、仕方ありません。俺が現場実習としてお兄さんの除霊をするなら、会社から人材成費として予算が出ます。お兄さんにも、礼金として2万円が支払わられます。ある意味、金銭的にはこれが最善の方法です。ただ、俺も本当にぺーぺーなので、身の保証は一切出来ません。でも全力でやります。下手に手を抜けば、俺も死にますから」

そう言うとジョンは、優しく微笑んだ。

「言いたいことはなんとなく分かった。ただ、俺は霊とかそんなことは疎い。正直、今回のキチガイ女の事も、俺の精神疾患による幻か錯覚だと思っていたんだ。だから急に例とか、そんな事を言われても戸惑う」
「なるほど。じゃあ、少し例に関して説明します。信じるも信じないも、お兄さんの自由です」

俺は小さく頷いた。と同時に、少し悲しい気分になった。
俺はほんの少し前まで、普通のサラリーマンだった。
それが今じゃ霊だのなんだのと、怪しいことに関わっている。

「先ず、俺たちがクライアントに霊の事を説明するとき、PCを例えに用います」
「PC?」
「そう、PCです。今のお兄さんの状態は、ウィルスに侵されたPCです。PCとお兄さん、ウイルスとは地雷。つまり、お兄さんの言うキチガイ女の事です」
「また、新しい例えだな」
「悪霊が取り憑く。よく効くフレーズだと思います。では具体的に、人間のどこに取り憑くのか分かりますか?」

俺は黙ってコーヒーに口をつける。

「脳です。悪霊は人間の脳にハッキングすることで取り憑きます。そして、脳の中に自分というウイルスを根付かせ、脳を支配することで、その人間の内側から幻覚や錯覚を起こし、精神や肉体を破壊していきます。個人の脳内の出来事なので、他人には認識する事が難しいです。一般的な霊であるならば、人間が生まれつき持っているファイヤウォール=守護霊を突破することは出来ません。しかし稀に、強力なハッキング能力を持った悪霊も居ます。俺たち霊能者は、ウイルス=悪霊と同様に、人の脳内に侵入することが出来ます。霊能力=ハッキング能力です。俺たちのしごとは、悪霊=ウイルスに侵された人間の脳に侵入し、駆除=除霊することです」

何がなんだか訳が分からない。
もしかして俺は、関わっちゃいけない世界に足を踏み入れたのか?
そんなきもちでいっぱいだった。


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