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2022年10月07日

廃病院の地下 


廃病院の地下とは洒落怖のひとつである。


【内容】



まだ俺が大学にいた頃だから、もうニ三年前になると思う。
田舎を出て県外の大学に通ってた俺に、実家から『婆ちゃんが倒れた』って電話があった。
昔から色々と面倒見てくれてた婆ちゃんで、俺はすぐさま実家に帰って病院に行った。
幸い、婆ちゃんは大事には至らなかったんだけど、俺はもしもの場合に備えて、一週間かかそこらまでバイトも大学も休みとっちまってた。
家にあった俺の部屋は弟に使われてたし、居間でゴロゴロしてても退屈だったから、俺は県内に残っている友達に電話をかけた。
みんな仕事に就いてたり専門行ってたり忙しそうだったけど、やっぱり暇人はいるもんで、県内の大学に行った友達が三人、次の日から会うことにした。
つっても本当に実家のある町っていうか、県そのものが田舎なんで、やること言ったらカラオケとかボウリング、あとは車で三十分かかるネカフェでダーツやらビリヤード。
飲みにいこうかって話も出たんだけど、一週間分の稼ぎがなくなって来月のことも考えて俺が断った。
だから俺らがやれるっていったら、ぶらつくのに飽きてファミレスのドリンクバーで粘るみたいなことしか出来なかった。

あと二日で俺が帰るっていう火曜の夜に、帰ってきてからずっとツルんでいた三人のうち二人と、霊の如くファミレスでダベってた時だった。

俺「マジ暇じゃねぇ?相変わらず何もねぇなココ」
A「そりゃトウキョーに比べたらな。いいよなお前は県外で」
B「んじゃあさ、あそこ行ってみねぇ?」

Bが言ったあそこっていうのは、地元に住んでいる俺達の世代では有名な場所である、廃病院のことだった。
ウワサじゃ手術室にはまだ機材やらメスやらがまんま残されてるだとか、地下にひからびた死体が残ってるとか、看護婦の幽霊が出るとか、まぁそういう場所には火なら座右ウワサになるような話ばっかだった。
正直俺は内心ビビって気乗りしなかったけど、AとBが盛り上がって三人内の最後のCにまで連絡つけて、後からCは現地に来ることになった。

その廃病院は結構昔に潰れたそうで、俺らが住んでる町よりも田んぼや畑やらが多い村の、人気の無い場所にある。
田舎は土地が安いからかどうなのか知らないけど、三階建ての、出来た当時は結構立派だったと思わせる外見だ。

A「俺の先輩の友達がここに来て、タバコぽい捨てしてたら急に変になってさ、ひたすら『××町に帰る、××町に帰る』って言いながら、やべぇことになっちまったって。その人△△に住んでるのに」

そういうことは来る前に言えよと内心キレかけた俺だったが、ビビっていると思われるのもイヤだったんで「へぇ」と軽く流した。
病院の周辺には、少し離れたトコに田んぼとかポツポツとある街灯があるだけで、入り口の正面のガラス張りの扉には、鎖と南京錠で厳重にカギがされてた。
たまに俺らみたいな暇なやつらが来るからか、ゴミやイタズラ書きなんかが酷くて、窓ガラスも一階部分のは殆ど割られてた。

俺「んじゃどうする?C待つ?」
A「いいじゃん先に行ってようぜ。どーせ車あるからわかんだろ」
B「じゃあ俺先に行くわ。こっちの窓から入れっから」

コンビニで調達した安っぽい懐中時計をそれぞれ片手に持ち、俺らは病院の中に入った。
今思えばマジでやめとけばよかった。

中に入って脚を地面につけると、割れたガラスを踏んでパキパキって音がした。
そん時になぜか俺の全身が寒くなって、鳥肌がヤバいくらい立った。
本気で今すぐ窓から逃げ出そうかって思ったくらいだったけど、BとAがスタスタ先に行っちまうし、車の鍵持ってるのはAだからそうもいかなくて、俺は置いていかれないように後からついていった。
一番後ろってのは本当に怖いもんで、全然奥が見えない背後の廊下の暗闇から、なんかサダコみたいなヤツが走ってきたらどうしようとか、本気でビビってた。

受付の広い空間に出て、Bがあたりをライトで照らすと、そのまんまで放置されていた長イスとか、床に散らばったファイルなんかが土でグズグズになって、ナースセンター?の中なんかも、棚が倒れたり窓口が割れたりして、相当雰囲気があった。

A「うおこぉえ〜」

嬉しそうにAが喋ると、なんだか山びこみたいに奥に声が響いていくのがわかった。

A「どこ行く?」
B「やっぱ下でしょ。死体見ようぜ死体」

虫の知らせって奴だったのかもしれない。何故か本気でイヤだって思ったんだ。
だから俺は渋るAとBを説得して、「上に行こう」って言った。
ホントはもう出たかったけど、馬鹿な話、ここで帰ろうなんて言ったらチキン扱いされるのが嫌だった。

俺らが途中にあった病室やら診察所なんかを覗きながら、二階に上る階段を上がる途中、俺は変なもんを見た。
階段を上る途中で、俺はビビってたからちょくちょく後ろを振り返ったら、ちょうど壁っていうか階段の区切り?っていうのか?その角んところに足が見えた。
壁の向こうは地下に下りる階段があった。
ほんっきでビビった。足が止まって息がうまくできなかった。
先行ってたBが「どうした?」なんて声をかけたところで、金縛りみたいな状態から戻って、俺はあれは気のせいだってひたすら自分に言い聞かせて、二人の後をついていった。


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