2022年08月16日
リアル 4
〇〇が電話を折り返してきたのは夜11時を過ぎた頃だった。
〇〇「待たせて悪いね。知り合いに相談したら連絡入れてくれて、明日行けるって」
俺「明日?」
〇〇「ほら、明日日曜じゃん」
そうか、いつの間にか奴を見てから五日も経つのか、不思議と会社の事を忘れてたな。
俺「分かった。ありがとう。ウチまで来てくれるの?」
〇〇「家まで行くって。車で行くらしいから住所メールしといて」
俺「お前はどーすんの?来て欲しいんだけど」
〇〇「行く行く」
俺「金、後でも大丈夫かな?」
〇〇「多分大丈夫じゃね?」
俺「分かった。近くまで来たら電話して」
何とも段取りの悪い話だが、若造だった俺には仕方の無い事だった。
その晩、夢を見た。
寝てる俺の脇に、白い和服をきた若い女性が正座してた。俺が気付くと、三指をつき深々と頭を下げた後部屋から出て行った。
部屋から出る前にもう一度深々と頭を下げていた。
この夢はアイツが関係しているのかは分からなかったが。
翌日、昼過ぎに〇〇から連絡が来た。電話で誘導し出迎えた。
来たのは〇〇とその友達、そして三十代後半くらいだろう男が来た。
普通の人とは思えなかったな。チンピラみたいな感じだったし、何の仕事をしてるのか想像もつかなかった。
俺がちゃんと説明していなかったから両親が訝しんだ。
まず間違いなく偽名だと思うが男は早しと名乗った。
林「T君の話は彼から聞いていましてね。まー厄介な事になってるんです」
(今さらですまん。Tと俺は、会話中の彼は〇〇だと思って読んでくれ)
父「それで林さんはどういった関係でいらしていただいたんですか?」
林「いやね、これもう素人さんじゃどーしようもないんですよ。お父さん、いいですか?信じられないかも知れませんがこのままだとT君、危ないですよ?で、彼が友達のT君が危ないから助けて欲しいって言うんでね、ここまで来たって訳なんですよ」
母「Tは危ないんでしょうか?」
林「いやね、私も結構こういうのは経験していますけどこんなに酷いのは初めてですね。この部屋いっぱいに悪い気が充満してます」
父「…失礼ですが、林さんのご職業をお聞きしても良いですか?」
林「あー、気になりますか?ま、そりゃ急に来てこんな話したら怪しいですもんねぇ。でもね、ちゃんと除霊して、辺りを清めないと、T君、ほんとに連れていかれますよ?」
母「あの、林さんにお願いできるでしょうか?」
林「それはもう、任せていただければ。こーいうのは私みたいな専門の者じゃないと駄目ですからね。ただね、お母さん。こっちとしても危険があるんでね、少しばかり包んでいただかないと。ね、分かるでしょ?」
父「いくらあればいいんです?」
林「そうですね〜、まぁ二百はいただかないと…」
父「えらい高いな!?」
林「これでも彼が友達助けて欲しいって言うからわざわざ時間かけて来てるんですよ?嫌だって言うならこっちは別に関係無いですからね〜。でも、たった二百万でT君助かるなら安いもんだと思いますけどね。それに、T君もお寺に行って相手にされなかったんでしょう?分かる人なんて一握りなんですわ。また、一から探すんですか?」
俺は黙って聞いてた。さすがに二百万って聞いた時は〇〇を見たが、〇〇もばつの悪そうな顔をしていた。
結局、父も母も分からないことにそれ異常の意見を言える筈もなく、渋々任せることになった。
林は早速今夜除霊をすると言い出した。
準備をすると言い、一度出掛けた。(出がけに両親に準備にかかる金をもらって行った)
夕方に戻ってくると、蝋燭を立て、御札のような紙を部屋中に貼り、膝元に水晶玉を置き数珠を持ち、日本酒だと思うがそれを杯に注いだ。
何となくそれっぽくなって来た。
林「T君。これからお祓いするから。これでもう大丈夫だから。お父さん、お母さん。すみませんが一旦家から出ていってもらえますかね?もしかしたら例がそっちに行く事も無い訳じゃないですから」
両親は不本意ながら、外の車で待機する事になった。
日も暮れて、辺りが暗くなった頃、お祓いは始まった。
林はお経のようなものを唱えながら一定のタイミングで盃に指をつけ、俺にその滴を飛ばした。
俺は半信半疑のまま、布団に横たわり目を閉じていた。林からそうするように言われたからだ。
お祓いが始まってから大分たった。
お経を唱える声が途切れ途切れになりはじめた。
目を閉じていたから、嫌な雰囲気と少しずつおかしくなってゆくお経だけが俺に分かることだった。
最初こそ気付かなかったが首がやけに痛い。痒さを通り越して、明らかに痛みを感じていた。
目を開けまいと、痛みに耐えようと歯を食いしばっているとお経が止まった。
しかしおかしい。
良く分からないが区切りが悪い終わり方だったし、終わったにしては何も声をかけてこない。何より、頸の痛みは一向に引かず、寧ろ増しているのだ。
寒気も感じるし、何かが布団の上に跨っているような気がする。
目を開けたらいけない。それだけは絶対にしてはいけない。分かってはいたが……。
開けてしまった。
目を開けると、恐ろしい光景が飛び込んできた。
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