2022年06月23日
邪霊の巣窟 7
それからもうこのままにしてはおけないと退魔士の人たちが大掛かりな浄化を行うことになりました。
本来はまだ変質しているとはいえ神がいる状態なので少しづつ行い、神を徐々に元の姿に戻していくのが最善だったらしいのですが事は急を要する為にたむを得ず行うことになったそうなんです。
数日後‥その浄化の儀式が始まりました。
自分はTVなどで除霊儀式などを見たことありますが、全く規模が違いました。
自分とAも当事者なため参列することになりました。
自分はこの光景を一生忘れることはないと思いました‥。
この事件ですが死者がでたにも関わらず新聞沙汰などにはなりませんでした。
どうやら退魔士関係の人たちや町の人たちが根回ししていたようでした。
じぶんは真実を知ることでの感染を防ぐ為だと思っていましたが別の理由もあったのです‥。
その理由も先ほどの自分のことと同様にこの数年後に判明することになりました‥。
今回の事件の真相も…。
あの後自分は高校に進学して高校を卒業するとそのまま就職して町を出ました。Aも高校卒業後は大学に進学して自分と同じく町をでました。
自分たちは同棲という形で一緒に暮らしてAの大学卒業後に結婚しました。
それからさらに月日が経って自分たちに娘が出来てその子が五歳になった時に実家で法事がある為に帰省する事になったのです。
実家に帰る途中。自分たちはあの神社の前を通りました。鳥居や神社自体もあたらしくなっており、昔と全く違う様子でした。
あの事件…一人の死者がでてしまった事件…。あの時自分らがMの死を確認しなければならなかった理由…。それは。
「ねえ…T‥あの時さ‥私たちがここで襲われている時…あの悪霊の中に…Mがいたよね?それを見たからあの時確認に行ったんでしょ?」
Aは思い出した様に言いました。
「うん‥‥」
そう答えると二人とも黙ってしまいました。
「ママ‥おトイレ行きたい。」
娘のEがそう言い出し自分たちは実家へ急ぎました。実家に帰って少しくつろいでいると
「E、お外で遊んでくるー」
と娘が言ってきたので
「車に気をつけてなーあんまり遠くに行くんじゃないぞー」
と声をかけました。
そしたら中々娘が帰ってこないので心配して探しに行こうとしたら半ベソかきながら帰ってきました。
「どこに行ってたんだ。心配したんだぞ」
と言うと娘の口から信じ難い言葉が出てきたんです。
「あのね。変なお兄ちゃんがこっちにおいでって言ってきたの。E行かないって言ったらお手々引っ張られたの…。それでね後ろから違う人に引っ張られてお寺(あの神社の事)に入れられて出られなくなったの」
自分は驚愕しました。まさか…と。隣にいたAも顔が真っ青になっていました。
「それで?どうなったの?何にも見なかった?体はなんともないの?」
Aが慌てて確認すると
「うん…なにも見てないよ‥。少し待ってたらドアが開いたから帰ってきたの…パパ、ママごめんなさい。」
泣き出したEをAが抱き締めて必死でなだめました。
自分はすぐに兄に連絡をとりました。
兄はあの後にそのまま本山に戻り修行をしたいと申し出たのです。
兄に色々思う所があったらしく。両親や退魔士の方たちの了承を得て本山に行きました。
兄は直ぐ電話にでました。
「おぉ、Tか。久しぶりだなー。俺も明後日くらいに戻る……お前…なんでそんな状況になってるんだ?なんだそれは!!お前何があった!!」
兄は何か気づいたみたいで自分が状況を説明すると
「いますぐ町から逃げろ!!いや…手遅れか‥いいか?いますぐ両親やあの神社の管理人に言ってあの神社に立て籠もるんだ‥。絶対に出るなよ!!俺らもすぐにいくから」
「は?冗談だろ?なんであの神社に…どういう事だよ!!」
自分はサッパリ状況が掴めず困惑していると
「お前らを狙ってる奴な‥マジで洒落にならん!怨霊とか邪霊とかそんなレベルじゃない‥まさに魔物だよ!!信じられん‥どうやったらそんな風になれるんだ‥。いいか。すぐに神社に行くんだ!!」
と言って電話が切れました。自分は困惑しながらも皆に事情を説明し、また大騒ぎになりつつも神社に立て籠もりました。そしてご神体のある部屋で朝を待つ事にしたのです。深夜遅くなり‥そろそろ眠気がきた時‥。
「おい!!俺だ!!来てやったぞ!!開けてくれ!!」
と兄の声が正面の入口から聞こえてきました。
しかし自分たちは兄のはずがないと思い
「入りたいのならそっちの方から入ればいいだろう」
と言いました。
自分とAはそいつが誰か解っていました。
「M…Mなんだろう?解ってるんだよ‥どうしてなんだ?どうして俺たちを…」
と言った瞬間に入り口が開きそこには当時のままのMがいました。
「あ…Eを連れて行こうとしたお兄ちゃん」
Eが言いました。
やっぱり…。自分はそう思いました。そしておそらくはEを後ろから引っ張って神社に入れたのはこの神社に祀られている神様なんだと思いました。
清浄に戻った神様はあの事件の被害者である自分たちの娘を守ってくれたのだと感じました。この神社に入ってご神体のそばにいてそんな気がしていたのです。
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